ガンプライブ!サンシャイン!!~水の乙女と宇宙を求めるもの~ 作:ドロイデン
「さてお前ら、現在ガンプラバトル部は結構な意味で危機的状況に陥っている」
放課後、二年生一年生それぞれ全員が集まる中、俺はいわゆるゲンドウポーズで席に座っている。
「曜、お前なら分かってるよな」
「ちょっと待って、なんで部長の私じゃなくて曜ちゃんなの!?」
「お前の頭は鶏だからだバカ千歌」
この間のテストなんか、赤点こそないが平均点数50.0点とかどうなんだ?平均すぎるぞ。
なお俺と曜、梨子の三人はそれぞれ上から数えた方が早いくらいで、ルビィと花丸も同じく、津島は少し劣るがそれでも充分上位なのは明記しておく。
「んで、曜?」
「危機的状況って、コーチが居ないからって事でしょ?」
「ピギッ!!そんな大変な状況なの!?」
「そんな状況なんだよ」
何度も言ってるが、ガンプライブ出場の条件の一つに『顧問または指導者が最低1名存在すること』とある。これはあくまで部活の大会という名目である以上、大人という保護者が必要であると明記するための条件だ。
うちのガンプラバトル部はメンバーこそ6名も居るが、顧問や指導者は存在してない。強いて言うなら鞠莉さんだが、理事長とはいえ同じ高校生なので話にならない。同じ理由でプロである俺も同様だ。
ちなみに他にも『学業不振でないこと』、『機体は全てオリジナルカスタマイズであること』、『肩にチームエンブレムの入ったシールを張ること』、『チーム専用の衣装を用意すること』というものがあるが、ここではとりあえず割愛しよう。
「今度お前らを参加させる東京の大会もガンプライブと同じレギュレーションだから、唯一満たしてないのが保護者枠なんだよ」
「それならまるのおじいちゃんに頼めばいいずら?選手としては引退してるけど、保護者なら」
「残念ながら身内保護者は規則で禁止されてる」
というのも身内が保護者枠の場合、事故や怪我などの万が一の事が起きた場合の対処ができなくなる可能性があるためだ。
「なら霜澤さんとか、鞠莉さんのところのプリペンターは?」
「プリペンターは鞠莉のじゃなくて小原財閥の一部門だから、いろんな意味で毎日大変だから無理だな。それに霜澤さんは本業は蟹漁師で模型店も経営してるんだ、これ以上仕事を増やしてやるなよ」
フェリーニさん曰く、ちかりこようの三人に特訓を着けたときは偶々店が閑散期で漁のほうも禁猟期だったからできただけで、そうでなければ色々だと言っていた。
「なら緒川さん……パパの秘書のアイツは?」
「そろそろ選挙近づく季節で忙しくなるんだからやめてさしあげなさいな」
まぁあのリアルSINOBIならできなくはないだろうが。
「むー……」
千歌は剥れてるが、こればかりはしょうがないからな。
そんなとき、狙ったかのようにスマホが鳴り、映ってた名前に一瞬驚くがすぐに通話に出る
「もしもし」
『あ、昴はん?今大丈夫ですか?』
「ええ、急にどうしたんです真央さん?」
「「「「「「!?」」」」」」
女子メンバー全員驚いてるが、俺自身が一番驚いてるのでとりあえず無視する。
『いや~ちょっと旅館の方に工事が入ってもうてな~せやから昴はんの友人さんが経営しとる旅館に暫く厄介になりたいんやけど』
「工事って、何かあったんです?」
『あったというか、老朽化のせいやな。結構ガタが来とるから、1度耐震とか含めて完全改修するって三咲ちゃんが』
そういえば確か前に1度行ったとき、壁とかがボロボロだった気がする。
『それに世界大会出場者が良く来る旅館の変わりをやるから、三咲ちゃん達も可能なら手伝いしたいって言うてくれとるよ』
「あー、そういや何気に彼処って老舗ですからね」
何せ真央さんや伊織さんといった世界大会出場を何度もしてるファイターが行きつけにしてるくらいだし。
「けど『とちまん』にはバトルシステムは置いてませんよ?」
『それについてはそちらが良ければ業者に頼んでうちのおんぼろで良ければ渡します~』
「……とりあえず、『とちまん』と話をしてみますから、明日こちらから折り返しても?」
かまへんよ~という了承を貰い、俺は挨拶をすると電話を切った。
「と、いうわけだが……千歌、これからとちまんに向かうが……なんとか説得するの手伝え」
「え、えぇぇぇ!!」
結果から言うと、話したところ簡単というかあっさりというか、高海家家長であり、あのトンでもロリママ……千歌ママさんの登場&鶴の一声で受け入れ許可が出た。
「あの姿で三児のママ……」
「いつも思うが、あの人会うたびに幼児化が進んでるよな」
「それは……否定できないけど」
「だろ?絶対アレ、アポ○キ○ン48○9飲んでるって」
俺と梨子さんの言葉に千歌は微妙に引き攣った顔で頷く。確か俺が小学生の頃から身長とか見た目が全然変わってないしな。
しかも昔1度だけガンプラバトルしたことがあるが、小学生とはいえ結構出来の良かった俺の素組『ジン』を、同じく素組の『チビッガイ』でフルボッコにされた経験があり、未だに『ベアッガイ』シリーズを見る度に体の震えが止まらないくらいだ。
「でも良かったね、これで真央さんに良い返事ができるよ」
「……いや、これはある意味チャンスだぞ」
今更ながら状況を頭のなかで確認し、まるで電撃のように結び付く。
「……昴くん、悪巧みしてないよね?」
「?俺は悪巧みとは一切無縁だぞ?」
「「嘘だね」」
「酷くねえか!?」
こんな純粋な人間を捕まえて悪逆非道とはどういう了見だ。
「昴くん達との三対三」
「あれは鞠莉が仕組んだことだ。俺はただスポンサーからの命令に従っただけだ」
「鞠莉さんからノリノリで計画に荷担してたって聞いたけど」
「寧ろ諌めてたんだが?お前らあの鞠莉が誰を呼ぶつもりだったか分かってるのか?」
あのダブルカワグチを呼ぶつもりだったんだぞ?あのバトルでは一切自重自粛の欠片も無いどころか、寧ろ大人げないことで有名な二人を。
「この間の善子ちゃんの一件は?」
「アレも鞠莉からの依頼だ。寧ろこっちは津島にフルボッコにされたんだぞ」
「……昴君って実はそこまで戦績高くないの?」
「グハッ!?」
梨子さんからの鋭い一言に俺は崩れ落ちる。というのも真央さんとの練習試合以来、本編で1度も白星挙げてないのだ。しかも大抵メタ張られてのフルボッコ、正直泣きたい。
「実は昴くんが一番ガンプラバトル部では最弱?」
「ぐほっ!?」
「しかも一月後に負けにいくのが確定してるメンバーとの試合でまた黒星」
「がはっ!?」
「負けてばかりの主人公って、もうタダのネームモブなんじゃ」
「やめて千歌ちゃん!?昴くんのライフはもう0よ!!」
千歌のオーバーキルに俺は完全にノックアウト、気付けば海岸でのの字を描いていた。
「あいきゃんだいぶ……」
「「待て待て待て!!」」
意気消沈で海に沈もうとしたが、流石に両腕を二人に羽交い締めにされて阻止されてしまう。
「アハハ……どうせ最弱なんだ……俺もジンも。ザクに比べて改造しにくいしさ、機動性が高いだけだって弱いって何度も言われたしさ……うん」
「あ、卑屈モードに入っちゃった……」
「こら千歌!!昴をあんまり弄らないの!!こう見えてメンタル弱いんだから」
「果南ちゃん!?」
いつのまに現れたのだろうみんなのお姉さん果南に俺は所謂お米様抱っこされると、
「あとは私が何とかするから、昴は貰ってくよ」
「「え、あ、はい」」
お持ち帰りされました、まる。その後?聞くだけ野暮ということにさせてもらおう。
なお数日後、此方へやって来た真央さんにコーチを頼んだところ快く引き受けてくれたことは、また別の話。
「ちょ!?ワイの出番少なすぎとちゃいますか!?」
「台詞すら貰えない私よりは良いと思いま~す」
「そもそも名前すら出てきてないのですが、私の場合」