ガンプライブ!サンシャイン!!~水の乙女と宇宙を求めるもの~   作:ドロイデン

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すまない……今まで更新してなかったのに二話連続更新してすまない……


天使の落日 その十六

 あのあと、様々な事が矢継ぎ早に進んだ。

 

 まずナイン・バルトは司法取引というか、彼に取引を持ちかけた一味を一網打尽にしたことで厳重注意ということに落ち着いたそうだ。

 

 というのも彼の研究は確かに違法に近かったが、それでも彼は研究していただけにすぎず、今回の事件も津島に声をかけはしたが着いていったのは津島自身の意思だし、何より彼女の家庭環境がネグレクト同然だったこともあって、警察から両親共々それなりのお説教を受けることになった。

 

 ナイン・バルト自身、これには若干不服だったものの、津島の親父さん曰く、自分達の不注意のツケを払わせてしまったことによる便宜だということで、被害届をだすつもりはないということがあり、不承不承というような感じで納得していた。

 

 親父さんは今回のことで家族の大切さが身に染みたのか、あの戦いの後、できる限り津島と話をする機会を少しずつ増やしてるそうだ。

 

 一方でタッグバトル大会の方はというと、決着としてはルビィと曜のコンビが優勝という形にはなったものの、内容からしたら事実上の引き分けとなった。

 

 というのもルビィが姉であるダイヤさんを倒した直後に時間切れとなり、粒子残量の差でギリギリの勝利というなんとも後味の悪いというかなんというかな決着となったからだ。

 

 決勝のMVPであるルビィも微妙な表情だったが、バトルだとこういうことがたまにあるから、仕方ないと言われればそれまでだ。

 

 で、バトル終了直後に俺は果南のポニテを無理矢理引っ張って正座させ、かなり危険な阿頼耶識トランザムを俺に事前の断りもなく行った事を声を大にして説教した。

 

 文字通り命削りも当然なあの技を、時間ピッタリとはいえ無断で使ったんだ、あの事故を知ってる俺からしたらかなりハラハラした。

 

 同時に果南から曜の無意識のアシムレイトとEXAMの併用を聞いて曜もついでにお説教、幼馴染みトリオで千歌だけが怒られないという大変珍しい風景となった。

 

「で、鞠莉……これはいったいどういうことだ」

 

 翌日、会長室で鞠莉に回収してもらった俺の機体を見て、彼女に少しだけもの申したくなった。

 

「ん?私なりの誠意の気持ちよ」

 

「誠意の気持ちなのは分かった。けど、なんで俺の機体が魔改造されてんだよ!!」

 

 というのも頭部の鶏冠パーツが一部削られ、その部分にクリアパーツの角が埋め込まれ、今まで肩に取り付けてたビーム砲を腰付け可動式スラスターユニットのような形になり、それに伴ってスラスターの量が若干増えてる。

 

「今までのより取り回しを良くしてあげたんだけど、不満だった?」

 

「不満じゃないけど!!不満じゃないけどな!!勝手に人の機体改造するな!!慣れるのにどんだけ時間掛かると思ってんだ!!」

 

 自慢じゃないが、俺は他人に作って貰った機体を動かすのが苦手だ。いつも自分で作るときは大体脳内でその機体の動きをイメージしてるから、それができない他人の機体だと、どうしても暫く慣れるための練習をしなきゃならなくなる。

 

「ダイジョーブ!!操作の癖とかは殆ど変わらないのに、今まで以上の戦いができマース!!」

 

「そういうことじゃ……あぁもういい。それで、果南の精密検査は?」

 

 大会直後に鞠莉の親父さんの知り合いが経営してる病院に叩き込んで、今日明日ととりあえずの検査入院中の幼馴染みの事を聞いてみると、

 

「検査には今のところ異常はないらしいわよ。やっぱり関係を持ってると気になったり」

 

「それ以上言うならヘリの限界高度からパラシュート抜きでスカイダイビングさせるぞ」

 

「イッツァジョーク!!」

 

 冗談に全く聞こえないが、鞠莉さんがふざけるのは何時もの事だから諦めた。

 

「そういえば、善子ちゃんもAqoursのメンバーになったそうじゃない」

 

「まぁ今は機体のオーバーホール中だがな」

 

 何せ『ウィングガンダム0シフェル』の改良機……『ロストウィングガンダム』はあの戦いで大破してしまって、現在花丸ちゃんが作ったレプリカの『0シフェル』とパーツを合わせて何とか修理してるらしい。

 

「でも、これでやっと六人ね。昴も含めれば七人で、規程最大人数の10人に届く」

 

「……まだダイヤも果南も、何より俺も出るとは言ってないぞ」

 

「やるわよ……だってAqoursは私達から始まったんだから、やらないわけにはいかないの。これがラストチャンスだから」

 

「……もうタイムリミットはないのか?」

 

「無い……に近いわ」

 

「そうか」

 

 もう二年前から話自体は出ていたのを、鞠莉さんがなんとか繋ぎ止めてくれてたそれは、もう何時でも途切れてしまう、そんな脆く儚いものになりかけていた。

 

「昴……」

 

「俺に頼むのはお門違いだろ、俺だって小原のおかげで今生活できてるんだ……下手なことはできない」

 

「そう……よね」

 

 鞠莉さんも分かっては居たのだろうが、それでもどうしてもやりきれない思いが募っている。

 

「それでももし、もしも果南が……アイツが再びAqoursとして戦場を駆け抜けるなら、その時は俺も覚悟は決めるさ」

 

「昴……!!」

 

「一回、ちゃんと本音でぶつかってみろよ。三年生は三人とも、どこか堅物なやつばっかりなんだからさ」

 

 俺はそう言って会長室から出ると、そこには待ち構えていたかのように千歌が立っていた。

 

「昴くん、タイムリミットって聞こえたけど、それって」

 

「明日には分かるから安心しろ、で、それぞれ機体の修復は終わったのか?」

 

「うん。けど……」

 

 千歌が決まりが悪そうに目を泳がせてるのを見て、なにかあったのかと問いかけてみた。

 

「正直に言ってほしいんだけど……私達って今のレベルで全国まで行けるのかな、って思って」

 

「……」

 

「勿論私もみんなもいくつもりなんだけど、正直今の私達がどこまでやれるのかなって思って……」

 

 なるほど、言いたいことは良く分かった。

 

「つまりダイヤさんと果南にボロ負けして自信を無くしかけてる、と」

 

「も、勿論ダイヤさんと果南ちゃんが昴君と一緒に戦ったりしてたのは聞いてるから強いのは納得できるんだけど、そこまでじゃないよ!!」

 

 むきになって反論してくるが、まぁ何となく分からなくもない。

 

「なら、折角だし体験させてやるとするか」

 

「へ?何を?」

 

「実は海開きの一週間後に東京でとある大会があってな、そこでスペシャルバトルとして俺が出る予定なんだが」

 

 俺はそう言って携帯を取り出す。

 

「そこの出場チームに組み込めるように頼んでみる、もし無理なら俺らの試合を観戦ってことになるだろうが、多分あの三人なら断る理由がないからな、多分出られるだろ」

 

「あの三人?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「今回の大会のスペシャルバトルのメンバー、『三代目』メイジン・カワグチ、『白翼の女神』絢瀬絵里、そしてトッププロチーム『ARISE』綺羅ツバサ……あの三人に頼めば何とかしてくれるだろ、多分」

 

 

 

「え、えぇぇぇぇぇぇ!!!!!!」


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