ガンプライブ!サンシャイン!!~水の乙女と宇宙を求めるもの~ 作:ドロイデン
こうして相対するのは何年ぶりだったずらか。一年……いや、多分善子ちゃんが中学に上がる少し前だったずら。
あの頃とは段違いに精巧に作られていて、多分、昔のまるじゃあそこまでの機体を作ることは出来なかった。そういう確信があった。
けど、それは昔のことで、今のまるではない。だからこそ、お爺ちゃんから受け継いだこの国木田流の技術で、善子ちゃんを救うって、そう決めたずら。
『……私にウィングガンダムで相手をするなんて、随分な思い上がりをしてるようね』
善子ちゃん……いや、善子ちゃんの皮を被った何かはまるでうんざりするように此方を睨む。
「思い上がってはいないずらよ。善子ちゃんを倒すなら、同じく善子ちゃんの機体を使えばいいことずら」
『……私にはそんな機体を作った覚えは無いわ。作ったとしても、記憶にないなら捨てたか何かをしたはずよ』
確かに何かの言う通り、これは善子ちゃん自身が作った『ウィングガンダム0シフェル』そのものじゃない。けど、
「その慢心が命取りになるずらよ!!」
まるは機体のコンソールでハイパージャマーを展開し、機体を宇宙の闇の中へと消滅させる。
『……透明化なんて無駄なことを……私には粒子の流れが見えてるのよ』
そう言いながら的確にまるが居るところにフェザーミサイルを飛ばしてくる彼女にまるは舌を巻いた。流石は善子ちゃんの体を使ってるだけはある。けど
「だったらこれはどうずら!!」
再びハイパージャマーのパネルを押して透明化を解除すると、右手に持っていたバスターライフルを発射、オレンジ色の閃光が一気に駆け抜けていく。
『無駄だって言ってるのが分からないの』
しかしそれも彼女のトライツバーグ装備のバスターライフルの一撃で相殺され、衝撃波がまるの機体を襲う。
「ぐぅ!!」
『……下らない、例えそれが私が作った物だとしても、操縦する人間が未熟じゃ宝の持ち腐れね』
「……確かにそうずら、正直
そう、
「けど、それももう終わりずら」
『……なに?』
「ここから先は……今までのように簡単にはいかないずらよ!!」
そう言ってまるはハイパージャマーの粒子だけを展開し、その左手にビームサイズを構える。
「いくずら!!」
『なんど同じこと……!?』
恐らくフェザーミサイルで攻撃しようと思ったのだろう、しかしそれをバスターライフルを高速連射のビームに切り替えたそれを射つことで防ぐ。
『そんな……なんで先読みが!?』
「無駄口を叩いてる暇はないずらよ!!」
肩のマシンキャノンを展開だけし、左手のビームサイズを呼び動作無しに投げつける。マシンキャノンを予想していた為か、まさかの攻撃に相手は思わずバスターライフルを盾代わりにしてしまう。
『また先読みが……いったいどうなってる!!』
ヨハネと呼ばれた何かは、被ってる善子ちゃんの顔を思い切り歪ませているが、そんなことまるにはどうでも良かった。
「まるは善子ちゃんとバトルするずら!!偽者はお呼びじゃないんずらよ!!」
『ぐ!!舐めるな!!』
昴視点
「……まさか、あそこまでヨハネを追い詰めるなんてな」
中破……いや、ほぼ大破した『AHM』のメインカメラから見る二つの『ウィングゼロ』の戦いに、俺は思わず友軍である彼女にそう呟いた。
先読み封じのハイパージャマー……アレは恐らくジャマーそのものをプラフスキー粒子のように動かすことでそれを可能にしたのだろう。
それをやってのける花丸ちゃんもだが、それを行える機体もそうだ。幾ら津島善子の機体の『0シフェル』だとしても、アレは花丸ちゃんが速攻で作り上げた言わば模造品、コピーだ。
だと言うのに、彼女はその性能の全てを、本物と同じように再現してしまっている。その特異性は普通に考えれば異常だ。だが、
「これが、嘗て『ガンプラ心形流』と対立した『国木田流』、その正当後継者の実力か」
彼女の実家であるお寺の住職……つまりお祖父さんの代から延々と続いてきたその技術、それは元々映像や画像を元に、ガンプラを一から完全に再現して見せる、創造ではなく模倣する技術。
そして彼女の父の代にて、使う人間の技さえ、それが例え現実の人間ではなくアニメのそれであろうと、自分自身が模倣するという離れ業まで完成した。その技術はかの3代目メイジンすらも驚嘆の一言に尽きたという。
そしてその3代目の後継者である彼女……国木田花丸という少女もそれは同じ、いやそれどころか、血筋というべきか、さらにそれは進化していた。
「本人をコピーし、さらにそれをアレンジすることで相手を上回る、か。厄介極まりないだろ」
今はまだ相手を直接観察しなければ模倣できないとはいっても、彼女のアレンジの引き出しが増えればそうではなくなるだろう。
戦う度に、戦いを観察する度に強くなる、それが国木田花丸という少女の強さ。一見すればただ地味かもしれないが、たった五分足らずでヨハネの動きや思考をトレースすらして見せた成長速度は、恐らくプロでも中々居ない。
「これで完全な自分専用機を持ったら更に化けるな」
進化する度に機体を変えていてはガンプラバトルでは着いていけなくなる。彼女の課題は、技術を生かせる機体というべきだろう。
「頑張れよルーキー、俺じゃ救えないんだ。お前が何とかしやがれ、幼馴染みなんだろ」
聞こえてないだろうその言葉を呟きながら、俺は内心この大破した機体をどう直すべきか――
「!?」
その時、手に持っていた携帯から聞き覚えのある音楽が流れてきた。しかも、それが意味するのは――
『昴!!今の音楽って』
「恐らくその通りだよあの馬鹿!!」
鞠莉ですら気付いたその音楽は、俺達の共通の知り合いが無茶をしやがった証拠。しかも前もって相談の一つもなしでだ。
『昴、機体は私が責任もって回収するから――』
「ッ!!でもここを抜けるわけには」
『大丈夫、ここは私が何とかする、それに現場にはダイヤも居るって』
「ダイヤさんも?」
いったい二人は何を……
『場所は霜澤模型店、そう言えば分からない?』
「ッ!?千歌達が今大会やってる場所じゃねぇか!!」
時間的に今は決勝戦をやってる頃……つまり、そうしなければならない事態に陥った?あの二人が?
「……ガンプラの回収と、あとをお願いします」
『うん、私に任せなさい』
俺はGPベースを回収してすぐにその場を離れる。ここからそう遠くはない目的の場所へ、俺はすぐに走り出した。