ガンプライブ!サンシャイン!!~水の乙女と宇宙を求めるもの~ 作:ドロイデン
「今さらだけど、サフィちゃんってそんなに強いかな?」
試合を見ながら、突然放たれた千歌ちゃんの言葉に私はえ、と呟いた。
「急にどうしたの千歌ちゃん?」
「うーん、何て言うか……サフィちゃんって基本的にバトルの時しか表に出てこないでしょ」
……昴くんやルビィちゃん本人の言葉通りならその通りだ。
「けど、そのサフィちゃんが動かしてる機体って、元々はルビィちゃん自身が動かすために作ってるから……その、上手く言えないけど、変じゃないかな」
「……そう言われれば」
武装から見ても、バスターソードこそ二本も装備してるが、それ以外はメガランチャーやファング等といった遠距離武器が殆ど、装甲もどちらかと言えば厚く後方支援や遠距離戦の機体のような感じだ。
だが実際に動かすサフィちゃんはファングこそ多用するが、それでもどちらかと言われれば格闘戦……特にバスターソードによるパワー勝負だ。
機体とパイロットの適正相性が異なる機体に乗れば、それは当然言わずもがなだ。
「私の言ってる事が間違ってて、サフィちゃんもちゃんと強いんだとしてもさ、多分機体がミスマッチになってて全力が出せないんじゃ」
同じことだよね、という千歌ちゃんの言葉にどこか暗い影のような物が見え、私は思わず一歩下がった。
今まで見たことのないその表情は、まるで何かを物語っているかのような、悲壮感にも似た闇だった。
と、その時離れた場所で戦っていた曜ちゃんと果南ちゃんの対決が終わり、モニターディスプレイに映った曜ちゃんの顔写真が、カラーから白黒へと変わる。
「はぁ……はぁ!!」
「あれ!?昴くん!?」
と、後ろから何か急いでるような声が聞こえ何事かと思うと、そこには息も絶え絶えに汗をかいた昴くんが、膝に手を付きながら立っていた。
「ぜぇ……果南は……」
「え?果南ちゃんならさっきまで曜ちゃんと戦ってたよ。ほら」
千歌ちゃんの言葉を聞いた昴くんは息を整えながらディスプレイに視線を向ける。
「ふぅ……曜はルビィと組んだんだな」
「うん、そのルビィちゃんなんだけどさ……」
そこで千歌ちゃんはさっきの疑問を昴くんにぶつけてみる。
「……はぁ、バカ千歌にまで気付かれるか」
「む!!千歌はバカじゃないよ!!」
「お前は普通におバカだ。で、そのお前が言う通り、というよりそもそもルビィには
致命的に?
「俺にアイツが師事してた頃……というより生来のものというべきか、ルビィはかなりの慎重派というか、ビビりだ。格闘戦なんてもっての他、接近するのもビームライフルの射程距離前後だ」
「確かにルビィちゃんって小動物?みたいな感じだよね」
「サフィが動かすからこそバスターソードを装備してるが、本来のルビィのバトルスタイルは中遠距離援護射撃、つまりサポーターってやつだ」
なるほど……と、そう思った時ふと疑問に思う。
「でも、だったらバスターソードじゃなくて普通のビームサーベルで良いんじゃないの?機体重量から考えても、その方が」
「桜内さん、ファングとかメガランチャーとか装備してることも考慮すると、ビームサーベルまで装備させたら幾ら粒子量にブーストが掛かる太陽炉搭載型でもすぐにガス欠しちまうよ」
それに、と昴くんは続ける。
「何も考えなしに、ただでさえ重たいバスターソードを二つも装備してる訳じゃないさ」
「???」
サフィ視点
「サフィが足枷だと……」
目の前にいる姉の言葉に、サフィはコンソールを握る手に力が入った。
「そんなわけあるか!!サフィがあんなへなっちい泣き虫の足枷?寝ぼけるのも大概にしやがれ!!強いのはどう見てもサフィのほうだ!!」
『弱い犬ほどなんとやら……いえ失礼、貴女は犬以下ですから尚更ですわね』
飄々と、淡々と言ってのける姿にサフィの怒りの導線に火がつく。幾ら姉とはいえ頬がヒクついて仕方ない。
「だったら切り裂かれて落っちね!!」
バスターソードを抜いて一気に斬りかかる。この肉厚の大剣をくらえばどんな機体だろうと――
『無謀と勇猛を履き違えてますわね』
だが、渾身の一撃は本来なら叩き切れる筈のシールドに受け止められ、さらに流された隙へ蹴りの一撃が機体の左脇を襲う。
「ぐ!!」
すぐに姿勢を建て直し、再び突撃するもそれは全て避けられ、一変の掠りもしない。
『それが貴方の全力ですの?だったら……今度はこちらの番ですわよ!!』
ビームサーベルを展開し、それを突きの要領で飛んでくる打突を回避しようとするが、後ろへ避けようとしたタイミングに後方からALユニットによるビームを受けてしまう。
「っ!!ファン『させるわけがありませんわよ!!』!?」
なんとか反撃しようとファングを出そうとした瞬間、まるで見計らったように高エネルギーのビーム砲……スキュラの火線が目の前へと照射される。
寸での所でGNメガランチャーを後ろへ展開して発射、相殺することはできたものの、衝撃波によってそれは焼けつき、使い物にならなくなってしまった。
「クソ……!!奴は」
スキュラを使ってきたと言うことは、お姉ちゃんは必ず変形している。ならその隙を……
『……昴さんの教えすら守れませんのね、貴女は』
「!?」
だが、まるで狙ったように後ろからそれはやって来た。変形し、特徴的な四本のクローを展開させながら。
すぐに逃げようとしたものの、振り返ってる隙に機体は組み付かれ、しかも両肩と両足が動かせないように固めてきた。
「しまっ!!」
『これで終わりですわよ』
丁度コックピット部分に突き付けられたスキュラの砲門にエネルギーを収束させていく。このまま受ければ間違いなく直撃、いや、確実に負ける。
(負ける……?このサフィが……?)
そんなことは絶対に嫌だ。負けたら……サフィが負けてしまったら……
(ありがとう、サフィちゃん)
「……え?」
一瞬ルビィの声が聞こえたと思った次の瞬間、組み付いていたイージスのウィングと肩へ紅いビームが突き刺さった。
『!?』
突然のことに驚いたお姉ちゃんは組み付きを解除してすぐその場から離れる。次の瞬間、射たれたその部分が爆発し、飛行するために使っていたユニットがパージされる。
(今のは……)
(私がやったんだよ、サフィちゃん)
サフィを救ったのは、なんとルビィがいつの間にか放っていたファング二機だった。
(けど、ファングはあの時全部回収して……)
(二機だけ、何時でも射てるように隠しておいたの。最初から)
(さ、最初から!?)
つまりルビィは試合が始まった瞬間から、ファング二機を出しっぱなしにしていたと言うのだ。
(サフィちゃん……ごめんね、ルビィが弱かったから……任せっきりにしちゃって)
(ルビィ……)
(でもね、ルビィは、ルビィの全部を使って、お姉ちゃんと戦いたいの!!だから……)
そういってルビィは隣に立ってサフィの手を握る。目に見えない、同じ人間だというのにそんな感じがした。
(ルビィにサフィちゃんの力を貸して欲しい!!私だけじゃ勝てないけど、サフィちゃんと一緒なら……)
(……)
……全く、この主様……いや、ルビィはホント、
(……あの時を覚えてるんだろ)
(うん、師匠が入院して、お姉ちゃん達がバトルを止めて……そしてサフィが生まれた日)
(あの時、ルビィは強くなりたいって願った。だからサフィが生まれた、けど……もうサフィは要らないんだな)
(そんなことない!!)
ルビィは否定するが、サフィはそうとしか思えなかった。
(要らないだろ、あのお姉ちゃんから足枷扱いされたんだ……サフィは必要ねぇってことだろ)
(……そうじゃないよ)
(そうだろ)
(違う!!それはルビィとサフィちゃんが別々で戦ってたからだよ!!一緒に戦えば……きっと)
一緒に戦えば?
(……どうやってだよ。サフィとルビィは一心同体、どっちかが表に出てたら、どっちかは出られる訳がねぇだろ)
(ううん、ルビィとサフィちゃんならできる)
(……どうして言い切れる)
(だってそのために……
「TRANS-AM……機動!!」
ダイヤ視点
「これは……!!」
それはあり得ない物でした。目の前のスローネの肩の後ろから二つもの巨大な輪が現れましたの。
勿論それが何を意味するのかは分かっている。だが、それでもあり得るのか、その輪の色は
「GNドライブと疑似GNドライブを並列運用……しかもそれでTRANS-AMを発生させるなんて!!」
本来……00でもGNドライブの並列運用はかなり難しく、専用に調整するなどしなければTRANS-AMはおろか機体そのものを動かすことすらままならない。ましてやTRANS-AMを発生させる等もっての他だ。
それをあろうことかオリジナルGNドライブと疑似GNドライブでなど、いったいどうやったらそんなことを……
「まさか……」
ルビィ視点
(おいルビィこれは……)
(TRANS-AM・BURSTを応用した特殊モード……この状態の時だけ、ルビィとサフィちゃんは反射と思考を融合した超兵のように戦うことができる)
(だがGNドライブの並列は……ましてや片方は疑似……いや、まさか)
(『ダブルオーガンダム』での『オーライザー』みたいに、『ヤークトユニット』をそれに当て嵌めたんだよ)
簡単に言えばヤークトユニットは並列化処理のためのアンプ……だが、それはオーライザーのそれよりもかなり難しい。けど、
(元から仕込んでた……っていうのか)
(うん、この機体はGNドライブを三つ取り付ける事ができて、今まで背中の一つだけしか着けなかったんだけど、お姉ちゃんとの戦いのためにTRANS-AM中にだけ使うGNドライブを取り付けたんだ)
(ツインドライブならトライドライブ……)
その通り。けど、これを使うとメンテナンスが大変だからいつもは肩の二つは外してたんだけどね。
(けどそれを使った……なら!!)
(ルビィとサフィちゃんの力で……お姉ちゃんに勝ってみせる!!)
私たちはそう意気込むと、目の前に立つ同じく紅いガンダムに目を向ける。
「……行く
『ッ!!』
TRANS-AMによる加速で一気に駆け抜けると、サフィちゃんはバスターソードの柄同士を取り付け、ダブルセイバーとなったそれを振り回す。
流石に
『!!アルミューレユニット展開!!』
が、流石にお姉ちゃんお得意の絶対防御の障壁に防がれ、弾かれたバスターソードが此方へと戻ってくる。けど、
(ルビィ!!)
「大丈夫だよサフィちゃん!!」
戻ってきたバスターソードの柄を半回転させ、大剣の刃の方向を揃える。まるでそれは大弓のよう形をとり、剣先同士にビームの弦が現れる。
そしてファングの一つを手に取り、それを矢のように構える。そのしてそれ引き絞り、目標を定めると
「ファングシュート!!」
お姉ちゃんの機体へと撃ち抜く。高速で放たれる矢の一撃はALの光波障壁とぶつかり合う。
「(いっけぇ!!)」
私とサフィちゃんの叫びを乗せたそれは障壁とぶつかり合いバチバチと火花を飛ばす。そして――
「見事、ですわ」
絶対に防ぐというその障壁を見事貫き、ファングの矢はそのコックピット部分を確かに貫いた。
なんだか中途半端な終わりかたですが、次の次の本編投稿で今章のそうまとめをするつもりなので、そこで一気に書いていくので、悪しからず
……なのでコンクリートに埋めるのだけは勘弁してください曜さん!!しかも下半身だけ!!
曜「でも今章の台詞少ないよね?」
そ、そのぶん一期の11話の回で融通するんで、ホント沼津の海に沈めるのだけはご勘弁を!!
曜「うーん……」
……
曜「でも今少ないから二時間深海にヨーソローしてきてね♪」
イィィィィヤァァァァ!!(沈没)