ガンプライブ!サンシャイン!!~水の乙女と宇宙を求めるもの~ 作:ドロイデン
「中々に手強い相手ですね、流石は世界大会ベスト4のパートナーというべきでしょうか」
『シノビストライク』の右手に持ったククリナイフを構えながら、敵対する『ハイペリオン』と正面から向き合う。
『ふん、パートナーといっても私にはそこまでの実力は無いがな!!』
対する『ハイペリオン・ミラージュ』は背中に取り付けていた大型のランスを抜いて構えてくる。
「やはり得物も槍ですか」
『ふん、リーチを取るのは近接戦では必定だからな、悪いがすぐに落とさせてもらうぞ!!』
そう言いながら飛び出してくる突きの一撃は中々に早く、ナイフで剃らすことが精一杯だった。けど、
『っ!?消えた!?』
それでも『シノビストライク』に装備されたミラージュコロイドを使えば奇襲すること位はできる。
(背中貰った!!)
『甘い!!』
攻撃しようとナイフを突き立てようとした瞬間、まるで分かったかのようにALが展開されて防がれてしまった。
しかもどういうカラクリか、展開しているのは背中だけ……前方の方は全くALは張られていなかった。
「く!?なぜ背中を攻撃することが……」
『ふん、教えるわけがないだろ!!』
さらに振り返って左腕の五連装ビームの熱線が飛んでくると、慌ててアーマーシュナイダーのケースからABCマントを取り出してガードするが、それも一瞬で燃え尽きてしまった。
「ならば!!」
さらにクナイを四本取りだし投げるが、それも瞬時に展開されたALに防がれて弾き返されてしまった。
『その程度の武器で私を倒そうなどと、傲慢にも程があるぞ!!』
そう言って『ミラージュ』に装備された胸部のビームを此方に向かって撃ってくるが、高出力ビーム砲を避けることなど容易い、そう思い回避した次の瞬間だった。
突如後方からアラートが鳴り響き、振り替える暇もなく先程避けたはずの収束ビームが右足を直撃し、爆発したのだ。
「ぐぅっ!!なんです、今のは!?」
画面を確認し全体を見るが、デブリが複数浮いてるだけでビットのようなものは全く見えなかった。
(『ゲシュマイディッヒ・パンツァー』でビームを曲げた?けど曲げたとしてもノータイムで逆進してくるなんてあり得ない!!いったいどんな手品を……)
『驚いてる余裕は無いぞ!!』
「チィ!!」
まるで今が好機とでも言うように両手、胸部、さらにフォルファンクトリーの計13門のビーム砲が飛んできた。だが、片足が失ったとはいえ
(ミラージュコロイド起動!!)
完全にレーダーから消える特殊ステルスを持ったシノビストライクの限界起動時間まで使えば距離を取ることくらいは……
そう思った時、再び後ろから警告音が鳴り、次の瞬間残された右肩、左肩、頭、右足の全てをまるで狙ったように相手のビームに撃ち抜かれた。
「うぁぁぁぁ!?」
残されたのはコックピットだけ、ミラージュコロイドもダメージによって強制解除されてダルマの状態で浮かんでいると、悠然と手に持ったランスを構えたやつがやって来た。
「そんな……レーダーからは完全に消えてたはず……」
『ふん、私がこのランスを使ってる事で気付かんとはな、兎も角貴様はここでリタイアだ……!!』
彼は右手の槍を高く掲げて、その穂先をコックピットに向けて――
昴side
ヨハネとの戦いから数分が経過していた。重突撃銃の実弾の弾幕は掠りともせず、それどころか奴の機体……『ロストウィングガンダム』のフェザーボムの爆風によってこちらは被害甚大といったところだった。
(羽を撃ち落としても爆風と衝撃波がやって来るうえに数が多い、近寄ろうにもこれじゃあ!!)
『……無様に塵と消えなさい』
さらに言えばツインバスターライフル……いや、ツインバスタードライツバーグの高火力高出力のビームによって、避けても機体の一部が熱でヤられるという最悪な状態だった。
すでに増加装甲、ビーム砲、シールドは消滅し、翼のスラスターもいつ熱で壊れるか分からないうえに、残ってるのは重突撃銃が一丁と、試作段階の重斬ビームソードが二振りだけ、圧倒的に不利な状況は依然として変わってないどころか、むしろ酷くなってる一方だった。
「くそ、津島!!お前はそんなバトルが楽しいのか!!」
『……私はヨハネよ。それにバトルが楽しい?戦いってのは生きるか死ぬかのどっちかだけよ、楽しいなんて感覚は必要ない』
「くそったれが!!」
ドライツバーグの反動で機体自体が暫くクールタイムなのか動けなくなる所を突いて懸命に接近しようと試みるも、それを阻むようにフェザーボムが進路上に多数配置され、近付くことが物理的に難しく、回り道しようとしてもその間に機体のクールタイムは終わって逃げられてしまう。
イタチごっこ、しかし時間が経つにつれて此方が不利になっていくという状況に、俺は歯噛みしたくなった。
「まだか……まだなのか花丸ちゃん……」
状況を打開できる唯一の鍵、しかしその残り時間約二分がとてつもなく長く、狂おしい物に感じられるなど始めての感覚だった。
『……正直ガッカリね』
「あ?どういう意味だ、そいつは」
『そのままよ、あの男はアンタが私を倒すことができるほどに強いなんて言ってたけど、拍子抜けにもほどがあるわ』
まるでつまらないとでも言うようにため息をつき、さらには欠伸までして余裕だとアピールしてきやがった。
「そいつは失礼したな、けど、そんなピーキーすぎる機体で俺を完全に仕留められるのかよ!!」
『……いや、貴様は既に負けている』
何だと、そう思った次の瞬間否が応でも理解できてしまった。辺り一面、いつの間にかフェザーボムが360度上下左右全てを覆い尽くしていた。
「しま!?」
『炎に焼かれて消えなさい……』
静かにそう呟かれた次の瞬間、囲っていたフェザーボム全てが爆発、爆炎と衝撃波が機体を襲った。
「グァァァァァァ!?」
翼はもげ、肩などのパーツの幾つかが衝撃で壊れ、頭部の半分が吹き飛んだ。
さらに手持ち武器まで爆発に飲み込まれ、スラスターが壊れたせいで踏ん張ることができず、デブリヘと機体を叩きつけられる。
「く、スラスター……さらに出力制御がイカれたか」
何とか機体自体は動くものの、それでもスラスターの全てが爆発でお釈迦になったことで、デブリを蹴らないと移動できないだろう。それに加え……
『……これでおしまいよ』
目の前でドライツバーグを構えるヨハネの機体がある状況では何の意味もない。
もはやこれまで、収束するエネルギーの光を見ながらそう思った。
『『まだ終わらないずら/デース!!』』
まるで狙ったように『ハイペリオン・ミラージュ』の槍の穂先を、『ロストウィング』のドライツバーグを二筋のビームの光が貫き、爆発させた。
「今の台詞……まさか!?」
モニターの拡大望遠を最大まで使い確認したその姿に、俺はニヤリと笑った。
そこにいたのは全身を重装甲にフルアーマー化された『パラス・アテネ』と、黒い翼にツインバスターライフルとビームサイズを構える『ウィングガンダム0シフェル』の姿があった。