ガンプライブ!サンシャイン!!~水の乙女と宇宙を求めるもの~   作:ドロイデン

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天使の落日 その十一(二年生+ルビィ√)

「う~ん、どうしよう」

 

 千歌ちゃんはそう言いながらとあるガンプラのキットを目にしていた。両肩にガトリングとブーメランセットになったものがそれぞれ取り付けられ、背中にはオレンジに塗られた二枚翼と白い砲身、そして特徴的なストライク顔。

 

「千歌ちゃんそんなに好きなの?その『ストライク・トゥモロー』」

 

「好きなんてレベルじゃないんだよ梨子ちゃん!!もうこれは尊敬!!尊敬のレベルなんだよ!!」

 

「いえ、それはまぁ分かるけど」

 

 千歌ちゃんはどうにも『μ's』のガンプラに心酔というか、もう拝みたてるくらいになっていた。

 

「穂乃果さんの『ストライク・トゥモロー』、絵里さんの『アンギルスエピオン』、にこさんの『カスタムザクF2521』は特に凄いんだよ!!作り込みから性能までどこからみても最高なんだよ!!」

 

「うん、途中なんか寒気がしたけど、確かにどれも見た目からして性能が高そうなのが分かるわね」

 

 特に『アンギルスエピオン』、ベースは『エピオン(EW』というかなり特徴的な羽を細かく白よりの水色で塗られていて、ビームソードを二つ構えるその姿はかなり独特なのはすぐにわかる。

 

『1回戦第三試合をするプレイヤーの方、五分後に試合開始なのでフィールドの近くに来てください』

 

「あ、千歌ちゃん」

 

「ふぇ?もうそんな時間か~」

 

 LINEを見てみれば曜ちゃんも一試合目勝ったということらしいし、

 

「私たちも頑張らないとね、千歌ちゃん」

 

「うん、そうだね梨子ちゃん」

 

 

 

 

「レーダーに敵影は無し……まだ近くに居ないようね」

 

 フィールドに降り立った私と千歌ちゃんは初期配置の森で作戦を練っていた。

 

『最初から動かないってことは、何かを狙ってるのかな?』

 

「そうね……サイコミュ系の機体の可能性もあるけど、地球系のフィールドだとあまり使い勝手が良くないから狙撃……」

 

 森林以外は基本的に見晴らしが全体的に良いこのフィールドで戦う場合、如何に相手を先に見つけるかが鍵となる。

 

 と、その時、猛スピードで敵の機体らしき一体がこちらに近づいてきた。

 

『!!梨子ちゃん!!』

 

「分かってる!!」

 

 私はすぐにオルトロスを取りだし、千歌ちゃんも手持ちのビーム砲をバスターモードにして構えて発射する。

 

 轟音と共に森林が焼き焦げ、かなりの爆発音が鼓膜に響く。

 

『やった?』

 

「そんなわけないでしょ千歌ちゃん!!」

 

 そうだとすれば余りにもお粗末すぎる。

 

 そしてその考え通り、爆発の煙の奥から出てきた白と青にカラーリングされたガンプラ……『1.5ガンダム』をカスタマイズしたであろうその機体の姿を現した。

 

「千歌ちゃん!!接近戦お願い!!」

 

『了解!!』

 

 その指示に千歌ちゃんはビーム砲をしまい、対艦刀を抜いて切りかかるが、相手も装備していた実体剣で受け止める。

 

 しかも徐々にだが、まるで押し返すようにその剣が押していき、千歌ちゃんの機体が一歩下がった

 

『く……あんな細いのになんてパワー!!』

 

 同感だった。如何に千歌ちゃんの機体のベースとなった『インパルス』が粗く作られていたということを踏まえても、両手で構えた対艦刀を片手一本の長剣で押し返すなど埒外にも程がある。

 

「だったらこっちから援護すれば……!?」

 

 すぐに判断してアサルトライフルを構えようとした次の瞬間、上からの熱源反応にすぐに避けた。次の瞬間、まさしく狙ったように二筋の緑の熱線が、先程までいた場所を貫いていた。

 

 慌てて熱源の方向を確認すると、翼のついた紅いガンダム……恐らく『イージス』のカスタム機が浮かんでいて、ゆっくりとその身体を地面へと下ろした。

 

 さらに千歌ちゃんと戦ってた『1.5ガンダム』のカスタム機も近寄り、私はすぐに千歌ちゃんと合流する。

 

「千歌ちゃん……分かってると思うけど」

 

『うん……はっきり言って強すぎる』

 

 強敵なんてレベルじゃない、まさしく本気の昴君二人を相手にしたような実力に、私も千歌ちゃんも圧倒された。

 

『……まったく、貴女ともあろうものが仕留め損ねるとは、どうしたものですか?』

 

『え?』

 

「その声……」

 

 どこかで聞き覚えのある、しかも特徴的なしゃべり方……

 

『そうは言うけど、単純なパワーだけ見たら同じぐらいだったんだからしょうがないでしょ』

 

『え?え?』

 

 さらに聞こえてきたどこか呑気なのに筋の通った声を聞いて千歌ちゃんはさらに混乱し始める。うん、私も同じだった。何故ならその声の主は……

 

『か、果南ちゃんとダイヤさん?』

 

 

 

 

 

 

『あれ?今ごろ気付いたの千歌?』

 

『まったく……ぶっぶーですわね、これは』

 

 

 

 

 

「『う、ウソォ……』」

 

 どうやら『1.5』のカスタム機が果南さん、『イージス』のカスタム機がダイヤさんという三年生コンビが相手だったのだ。

 

「ど、どうしてダイヤさんがここに?しかもガンプラバトルを?」

 

『……まぁとある人物から、『ルビィの戦ってる姿を見ろ』と言われまして……一人で行くのもなんですから果南さんを誘ったら……』

 

『久しぶりに色々溜め込んだストレス発散したいし、私が勝手にバトルに申し込んだわけ。この大会は当日受付だしね~』

 

 ……なんとも傍迷惑な話だ。

 

 だが、しかし同時にあの強さにも納得した。三年生には鞠莉さんがいる。昴くんは鞠莉さんの会社とプロ契約してるから、そのついでにバトルを鍛えられたと考えれば筋は通る。

 

 ついでに言えばルビィちゃんの師匠も昴君……その繋がりでダイヤさんが昴くんに師事してもらったとも考えられるし、果南さんに至っては幼馴染みだから問題ないとも言える。

 

 ……こう言ってはなんだけど、私達が苦戦する結果って大抵昴君が原因なのよね……。

 

『けど果南ちゃんは復学してもガンプライブはやらないって』

 

『べつに趣味でガンプラバトルするのは勝手でしょ?それに昴が楽しんでるのを隣で楽しみたいしね』

 

『な、なるほど……さすが果南ちゃん』

 

 若干呆れてるが、すぐに私達は武器を構え直す。それに吊られて三年生コンビもそれぞれ剣とビームライフルを構える。

 

『それじゃ私の『1.5ガンダムゼブブ』と』

 

『私の『イージスガンダム・ディアマンテ』の相手をしてもらいますわよ!!』

 

 先に動いた『ゼブブ』が私達を両断するように剣を振るう。それを千歌ちゃんは対艦刀で受けとめ、瞬時に投げ飛ばす。

 

「喰らえぇ!!」

 

 宙に浮いたところをオルトロスで砲撃するが、まるでそれを読んだように何やら小型のユニットが三つ飛び、そこから展開されたビームバリアによって無効化される。

 

『ナイスダイヤ!!』

 

『軽口を叩く前にさっさと落として下さいな!!援護するこちらの身にもなってください!!』

 

『相変わらずダイヤは固いよね~まあそこが美点なんだけど!!』

 

 そう言って果南さんは腰のGNバスターライフルを抜いて射撃……いや砲撃!?

 

「千歌ちゃん回避!!」

 

『させませんわよ!!いきなさいプリスティス!!』

 

 回避しようとした瞬間、私と千歌ちゃんの機体を覆うように再びビームの膜が貼られた。しかもバスターライフルの射線の上部だけは開いた状態で。

 

「く、だったら!!」

 

 逃げられない状況を確認した私は、すぐに再びオルトロスを構える。粒子的な問題であと一発が限界だが、GNバスターライフルを相殺ぐらいはできるはず!!

 

「『喰らえぇ!!』」

 

 互いに発射された重粒子の砲撃がぶつかり合うと、激しい白い光と共に爆発し、爆風が互いそれぞれの機体を襲った。

 

「ぅ……千歌ちゃん、大丈夫?」

 

『な、なんとかシールドで爆風を抑え込めたからなんとか……けどスラスターとか結構厳しいかな』

 

 当然の話だ。重粒子砲撃がぶつかればそれなりの衝撃波と爆発が飛んでくる。そうなれば幾ら重装備の機体でもスラスター周りに不具合が出てくる。

 

 現に私の『デュエル・フルングニル』もバックパックのスラスターや、腰付けのガトリング砲がこの試合使い物にならなくなっているとサポートAIのアルフが言っていた。恐らくパージしなければ動けないが、パージすればその分さらに不利になるのは明確だ。

 

『それより果南ちゃん達は』

 

 確かに、いくらなんでもあれだけのビームの爆発を受けてただで済むとは思ってない、私達と同じように幾らかはダメージが入ってるはず……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『危ないですわよ果南さん!!おかげで私のプリスティス二つ壊れましたわよ!!』

 

「『な!?』」

 

 そう言って出てきたダイヤさんの『イージス』は傷一つなく全くの無傷、いや、それどころか爆発の煤すら着いていなかった。

 

『別にあれぐらい簡単に作れるじゃん、平気平気』

 

 さらに降りてきた果南さんはどうやら上空に退避したのかこれまた無傷で、ここまで来たら諦めが付くレベルだ。

 

「千歌ちゃん……勝てる見込みある?私にはまったく感じられないんだけど」

 

『ごめん梨子ちゃん……同じだよ』

 

 今回は互いにトリモチ武器は搭載してないし、してても恐らくあのビームのバリアで防がれて終わり……最悪だ。

 

『うん、二人も強かったし、ここは私がサクッと倒しちゃうよ?』

 

「『ま、魔王だ……魔王がここにいる』」

 

 一歩一歩、ゆっくりと歩いてくるその姿は、カラーリングも相まって白い魔王が裁きを下すように……

 

『じゃあ二人とも……お疲れ様♪』

 

 あっさりと剣をコックピットに突き刺されたのだった。




一番厄介な敵は身内だったというオチ……

というわけで軽く三年生二人のガンプラを紹介します

『1.5ガンダムゼブブ』
パイロット・松浦果南
装備
・GNバスターライフル
・シールド内蔵実体剣
・アルヴァアロンキャノンⅡ
・トランザムシステム
設定
『1.5ガンダム』に『グリムゲルデ』のパーツをミキシングしたガンプラ。全体的に速度と格闘戦を重視した作りになっている。
本来なら『グリムゲルデ』ではなく『バエル』を使用するつもりだったのだが、バーツの位置関係の問題で(剣の収納部分とGNドライブ)『グリムゲルデ』のシールドと剣をカスタマイズしたものを使用している。


『イージスガンダム・ディアマンテ』
パイロット・黒澤ダイヤ
装備
・ビームライフル
・ビームロングクロー
・ビームサーベル
・小型ALユニット×11
・ハイパースキュラ
・グリフォンビームブレード(翼&脚部)
設定
『イージス』をベースにカスタマイズしたガンプラ。
 背中ににMS形態での飛行を可能にするために、グリフォン発生装置を搭載したブースターウィングを装備し、支援向きに作られている。
 小型ALユニット(プリスティス型)は、自分及び味方の援護目的に作られており、飛び回るビームナイフ型トラグーンとしての役割と、複数機で機体を覆うアルミューレリュミエールとしても使うことができる(全部使えば最大で6体まで覆える)

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