ガンプライブ!サンシャイン!!~水の乙女と宇宙を求めるもの~ 作:ドロイデン
皆さん、オハヨーソロー!!渡辺曜であります!!ショップ大会当日の今日……なんでありますが……
「…………」
なんか隣の席でルビィちゃん……じゃなくて多分サフィちゃん(?)が呪詛みたいになんか呟いてるんだけど!?怖すぎるよ!!
「る、ルビィちゃん?大丈夫?」
「ピギィ!?え、あ、はい……大丈夫です大丈夫……大会とか久しぶりで緊張して……」
「え、あ、そうなんだ……」
どうやら緊張してブツブツ言ってるだけだった。うん、とりあえずサフィちゃんが出てきてないことだけは安心できるね。
「でも改めて考えてみると、ルビィちゃんと組めてなんだかホッとしたかな」
「え?」
私の言葉に意味が分からないのか、ルビィちゃんは首を傾げている。
「ほら、私とルビィちゃんってあんまり関わるってことないでしょ?私もルビィちゃんも千歌ちゃんに引っ張られた形だったし」
現に私は千歌ちゃんと漸く何か一緒のことが出きるって事もあって、何かと千歌ちゃんと組もうと躍起になってたぐらいだし。
「だからね、側から見る千歌ちゃんじゃなくて、少し離れた距離から見て……って風になれれば良いなぁなんて思ってて、梨子ちゃんとはよく一緒にいるから、今度はルビィちゃんと一緒にって」
「……えっと」
「あぁ、ごめんね。うまく説明できてなかったよね」
「いえ、でもなんだが、昴お兄さんと似てるなって思って……」
ルビィちゃんの一言に、私は少しだけうーん、と唸る。
「まぁ従姉弟同士だからね、根っこのところは似ててもおかしくはないと思うよ」
「いえ、従弟だからってそんな……なんていうか……重たいっていう感じです」
「重たい?」
ルビィちゃんは頷きながら言葉を続ける。
「昴お兄さんって、なんていうか繋がりを大事にし過ぎてるように思って……私にガンプラバトルを師事してくれたのも、偶々お姉ちゃん達が練習してて……世界大会の準備とかもしなきゃいけなくて忙しいはずなのに」
「あはは……多分それはアレだね、昴の過去の反動が原因かもね」
なにせ昴はあの事故から常に疑心暗鬼だった。常に同情やらなんやらのせいで自分以外の誰も疑って掛かって、私と千歌ちゃんや果南ちゃんでさえそれを解くのに一ヶ月近くかかったぐらいだ。
その結果、今は寧ろその時の分を埋めるように他人との距離を詰めようと色々とやってるみたいだけど。
「まぁそれでも昔みたいに変に意地を張らなくなってくれた分、義姉としては微妙なんだけどね」
「そうですか?ルビィにはそうは見えないような……」
「ふふ、いずれ分かるよ、ちゃんとね」
ショップに到着した私とルビィちゃんは、大会の受付を済ませると、山のように積まれているガンプラを覗きこむ。
HGUCシリーズやSEED、AGEに鉄血は元より、高額だが今ではお目にかかる事すら困難な旧キットのガンプラまで様々な品が網羅されているのだが……
「……蟹多くない?」
「……そうですね」
店長であるあの兄弟の愛機であるヴァサーゴやアシュタロンはまだ分かるのだが、なぜかズゴック系などの見た目が甲殻類(主に蟹)な機体が棚一つ選挙してるのだから仰天ものだ。
「君たち、僕らの本業は蟹漁師だってこと忘れないでね」
「ピギャ!?」
「うわ!!」
いつの間に現れた弟のオルバさんに驚き、そろってその顔を見た。
「それと、そろそろ一回戦始めるから準備してね、君たち」
「あ、はい……」
「す、すみましぇん……」
何やら舌足らずに言ってるルビィちゃんを持ち帰りたい気分になるが、そこは自慢の千歌ちゃんへの愛で乗り切る。
え?おかしい?千歌ちゃんへの愛があればたとえどんな小動物のもふもふにも負けないんだよ私は!!
千歌ちゃんとの愛を愛を愛を……ってこれはいろんな意味でアウトだから止めとこう、昴君とは違う昴君が精神的に病むことになりかねないしね。
「曜さん……大丈夫ですか?」
「へ?あぁ、うん、大丈夫大丈夫」
ま、兎にも角にもバトルを始めようかな!!
「一回戦の敵は『ザク』系だね」
フィールドの雪原で光学迷彩マントを装備しながら私は手持ちのムラマサをライフルモードで準備する。
相手は梨子ちゃんが使ってた『ザクファントム』に恐らく『レジェンド』のレドームを『デストロイ』のように改造して取り付けた機体で、どう見てもかなりのカスタマイズをされていた。
『チ、そこまで珍しくもない『ザク』にあんなバカ火力の装備取り付けやがって』
ルビィちゃん……じゃなくてサフィちゃんも流石に厳しいのか舌打ちしてまで酷評してる。
『もう一体の方は見つからねぇって事は……挟撃狙いか?』
「でもあの『デストロイザク』は動きがだいぶ重そうだけど?」
さっきからゆっくりとホバー移動してるところから見ても、余りの火力と重量で動けないのだろうが、それだと挟撃狙いとは……
『ッ……先輩!!すぐにその場から離れろ!!』
「っ!!」
サフィちゃんの怒声で慌ててその場から離れると、次の瞬間、さっきまでいた場所に爆発が飛んだ。
「今のはグレネード!?でもどこから!?」
慌てながら確認するも、辺りには機体の影すら見当たらない。
『先輩!!あの重量級も動き出しやがった!!狙われてやがるぞ!!』
更なる指摘に私はスラスターを吹かしてその場から一気に離れる。その次の瞬間、あのレドームから発射されたのだろうミサイルや重粒子ビーム砲が凪ぎ払うように私へ迫ってくる。
「チィ!!」
仕方なくビームライフルで牽制しつつ、装備してたマントを深く被り直して逃げるが、流石に数が多すぎる。
「サフィちゃん!!今すぐ『ザクデストロイ』を仕留められる!?」
私はすぐさまサフィちゃんに通信を送りなんとかできないか相談する
『出来なくないが、それだともう一機の方はどうする!?』
「あんな火力で来られたらこっちの装備じゃもたないよ!!それにあれだけの威力を射つためにエネルギーを再チャージしないといけなくなるはず!!」
機体の粒子量は各々の設定によりまちまちだが、あの規模の砲撃となるとかなりの消費するのは当然だ。
梨子ちゃんの『デュエル・フルングニル』も、火力と粒子の都合をつけるために、高火力の武器は重粒子ビーム砲一本以外はほぼ全て、そこまで使わない代わりに弾切れの危険のある実弾をメインにしているというぐらいだ。
ならばそれ以上のビームを射っている相手は必ずエネルギーを再チャージするための、何らかの手段を用いてるのは当たり前と考えるべきだ。
「だからサフィちゃんはそれをさせないで一気に倒す!!そうすればあとはなんとかできるから!!」
『……三分で決着つけてくるから、死ぬなよ』
「全力全開でヨーソロー!!」
そう言って通信を切ると、私は雪原から外れた凍った湖まで逃げ切る。
「さて、いくら相手がステルス使ってるとしてもここなら……」
辺り一面何もなく、それどころか完全に開けた地形である氷上ならばと、氷が砕けないように着氷する。
そしてレーダーを最大まで稼動し、私自身も目を閉じて耳を澄ませる。
(見えないなら感じとる……邪魔な音は全部シャットアウトして……)
遠くで聞こえる爆発音、ビームの鳴る音、それらを意識の外から全て追いやる。自然な風の音だけが耳に響く。
(…………来た)
かなり小さいが、それでも聞こえた僅かな間接の曲がる音が鼓膜の奥を刺激する。
(パパみたいに音の距離までは分からないけど方角だけなら)
再び音が鳴るのを聞くために、さらに邪魔な音を全て排除、まるで虚無のように何も聞こえなくなる。しかし、
「見つけたぁ!!」
本の少しだけ聞こえた明らかに不自然な風の音が背中の左側から聞こえ、私は両手に構えていたムラマサライフルの引き金を引いた。
放たれたピンクの光線は、素早く、一直線に、そして確かに、隠れていた機体の右肩にへと直撃した。
「ヒット!!」
すぐさまムラマサをブレードモードに直して一気に射った方向へ駆け抜ける。その方向には右腕を焼失した、雪原迷彩のカラーが施された近接装備の『ザクⅡ』が立っていた。そのすぐそばには焼け尽きたマントの燃えかすのようなものが見てとれる。
「どうやら私より上等なステルス用のマントを装備してたみたいだけど、それが無くなればこっちのものだよ!!」
しかし相手も手練れと言うべきか、こちらに来たとわかった瞬間に背を向けて逃げ始める。ご丁寧にスモークグレネードなんてものを使ってまでだ。だが、
「悪いけど、この『カノーニア』の索敵範囲を舐めないでね!!」
元々砲戦援護を目的としていただけに、索敵レーダーの範囲がかなり広く作られているこの機体には、ただのスモークぐらいでは意味を成さないどころか、寧ろ砲撃を隠してくれる隠れ蓑なんだよね!!
「『ヴェスパー』、ハイパーチャージ!!目標、『ステルスザク』!!」
名前は違うのだろうけど、そんなことは今はどうでもいいからね!!相手が分かればそれでいいんだよ!!
「バースト……シュート!!」
腰だめに放たれたピンクの重粒子砲撃は直線上の木々を飲み込み、まるで地面を抉るように直進し、逃げていたザクを飲み込み爆発した。
確認のために接近すると、そこにはボロボロになって半ばから折れた粒子結晶刀を左手に構えながら動かなくなった黒焦げだらけのザクの姿だけが残っていた。
「任務……完了」
そして同時にバトル終了の機械音声が流れ、私達は無事に一回戦を突破することに成功したのだった。
はい、というわけで久しぶりの更新じゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!!はい、そんなわけで次回は昴丸vsヨハネの予定です。
そして今回の機体……後半にて出てきたステルスザクこと『ザク・ザ・リッパー』を送っていただいたQooオレンジ様、ありがとうございます!!今後も励みになるので、オリジナル機体や感想、評価など、色々お願いいたします。