ガンプライブ!サンシャイン!!~水の乙女と宇宙を求めるもの~   作:ドロイデン

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ふ、まさかの連続投稿だぁ!!やぁってやるぜ!!


天使の落日 その九(昴&花丸√)

 あれからさらに二日が経ち、俺達は再び沼津の喫茶店で唸っていた。というのも

 

「目的がだいたい分かってるのにどうもできないってのがこんなにも厄介だとはな……」

 

 おそらく目的は津島善子の目。いや、その能力自体だろうことは、チラリと見れた奴の姿から大体検討はついていた。

 

 粒子放射光過敏症……旧ガンプラバトル時代から少ないながらも見られた症例で、特定の粒子の光の流動が分かる特異体質。いわゆる、『プラフスキー粒子に愛された人間』だと、そう言われるほどであった。

 

 特にかのセイ&レイジ組の優勝した大会でのベスト4、『キュベレイ・パピヨン』を駆った『アイラ・ユルキアイネン』がこの能力で勝ち進んだ事でも一時期は有名になった。

 

 しかし、『アイラ・ユルキアイネン』のバックスポンサーであったネメシス……さらにその奥にいた『フラナ機関』はそれを軍事転用できないかと画策、三代目メイジン・カワグチすら巻き込んでまで行ったことにより一時期はチームネメシスの信用度はがた落ちとなったぐらいだ。

 

 そしてもし、もし奴が本当に俺の予想通りなのだとしたら……

 

「タイムリミットは遅くても明日……それまでに片を付ける必要がありますね」

 

「そうですね……でも無断で中に入るには色々と問題がありますし……」

 

 現在、政治的に波風を立てたくない源十郎さんの意向のせいで、警察に捜索願いを出せない現状、正しく人参をぶら下げられたロバの気持ちだった。その時

 

「……すみません、ボスから電話が来たので」

 

 携帯の着信に素早く緒川さんは手に取り……

 

「はい……はい?……分かりました、すぐに向かいます」

 

「……なにかあったんですね?」

 

「えぇ、五紘さんの方から連絡が来たそうです。これから事務所に向かいます」

 

 

 

 

 

「初めましてだな。私が津島善子の父親、津島源十郎だ」

 

 そんな挨拶をする偉丈夫というか、筋肉の固まりというか、兎も角筋肉でできた大男のような姿をしてる強面の笑顔という、誰もが逃げそうな顔で出迎えられ少しだけ後退りしてしまった。

 

「……どうも、善子さんの先輩の天ノ川昴です」

 

「お久し振りです、源十郎おじさん」

 

「ふむ、時間が一分と惜しいので詳しくはあとでとして、二人とも話は緒川から聞いているな?」

 

 まさしく傍若無人というように聞いてくる彼に多少驚くも、娘が掛かってると思えば当然だと割りきる。

 

「一応は、それで五紘さんでしたか?その人はなんて」

 

「その事なのだが……」

 

「――それについては直接話をさせてもらおうか」

 

 虚をついて入ってきたドアから現れたのは、サングラスに燕尾服を着た細身の中年男性の姿だった。

 

「兄貴……」

 

「久しぶりだの源十郎、相も変わらず身勝手にやっとるようだな」

 

「黙れ、お前こそ俺の娘に賭博なんぞ関わらせおって!!」

 

 まるで鬼のような雰囲気を漂わせて源十郎さんは彼を睨む。

 

「そうさせたのは貴様の自業自得だろ。何が少年少女のための政治だ?娘一人幸せに出来ておらん馬鹿者ができるわけがあるまいて」

 

「なんだと!!どういう意味だ!!」

 

「そのままの意味じゃよ。嬢ちゃんは言ってたよ、自分が居なくても両親は別に困ることなんて一つもない、むしろ居ない方が良いと思ってるとな。

 しかも聞いてみれば中学になってからほとんどお前も妻の方も夜に帰ってきてないときたうえに、嬢ちゃんの趣味を無駄の長物となじって見せたそうじゃないか」

 

「それは……あんな下らん遊戯事に時間を裂くくらいなら勉学に励み、優秀な大学に入った方が……」

 

「…………ふざけんな!!」

 

 源十郎の言い分に俺は堪らず声を荒らげた。

 

「アンタ、自分の娘がバトルしてる姿を見たことあるのか?」

 

「ふん、何を言い出すかと思えば……そんなものにかまけてられるほど暇じゃないんだよ、私は」

 

「(やっぱり、だから善子はあんな顔をしてたのか)なぁ知ってるか?善子が去年の中学の全国大会での決勝戦、アイツは()()()()()()()()()()、インタビューの時も、優勝したトロフィーを受け取った時も、一回も笑ってなかったんだよ!!」

 

「ふん、それはただつまらなかっただけだろ?」

 

 流石にイラっときたものの、殴ったところで何の解決にもならないためグッと堪える。

 

「まだわかんねぇのかよ、善子は……アイツはアンタらに直接でも見てもらいたかったんだ!!自分の戦う姿を!!」

 

「なに?」

 

「花丸ちゃんから少しだけ聞いた。善子は中学二年の頃から所属していたガンプラバトル部の他のメンバーから酷く邪魔に思われてたそうだ。

 ソロマッチルールなら兎も角、善子一人に何人がかりで相手しても勝てない、それが段々と周りと確執を生んでしまったんだろうな」

 

 事実当時の映像を何度も見たが、津島善子の学校の応援は一切なく、団体戦は地区予選を敗退していたと聞いた。

 

「それでもアイツがガンプラバトルをやめなかったのは、ガンプラバトルが大好きで、それをする自分の姿を源十郎さん、アンタに見てもらいたかったからだ!!

 それをアンタは平然と切り捨て、あまつさえ下らない遊戯だと善子の目の前で罵った!!それがどんなにアイツにダメージを与えたと思う!!」

 

「少年の言う通りだな、別に嬢ちゃんに対する教育方針についてとやかく言うつもりはないが、それでも限度ってものがある。ただ自分の意見を押し通そうとするだけでは家族も政治も崩壊するのが関の山だ」

 

 いつの間にか話がすり替わってる気がするが、そんなことはどうでもよかった。ただこの冷血漢にもの申さねばという気持ちだけが胸に残った。

 

「黙れ!!貴様のような若造に何が分かるというのだ!!」

 

「分かるさ!!俺は両親を事故で失った!!俺も昔は今のアイツみたいに一人だった……他人から気味悪がられ、親からの愛情ももらえない、そんな同じ生活をしてきたアイツの先輩だからな!!」

 

 流石にこれは大人三人も驚いており、まじまじと目を見開いていた。

 

 思い出したくもないあの日の朝、当時小学二年生だった俺は、両親と共に初めて通う学校に車で向かっていた。学校に到着し、俺が車を降りて校門を潜った次の瞬間、真横から大型トラックが両親の車に突っ込んだ。

 

 原因はトラック運転手の酒気帯び運転と居眠り運転が重なった事故で、調度その時運転席から降りた父は避ける間も無く撥ねられ即死、母は車が横転して下半身を挟まれてしまい、救助が間に合わずその後の車の爆発で亡くなった。

 

 俺も母を助けようと近寄り、その後の爆発を受けて入院、結果として世界大会予選リーグ決勝前までその事を記憶から忘却し、右腕と左肩に今でも跡が残る大火傷を負った。

 

 転入初日に両親を学校の目の前で失った。そのことで他の生徒達から苛めを受け、教師達からも毎日のように哀れみの目で見られ続けた。多分従姉だった曜や、その幼馴染みだった果南や千歌が居なかったら引きこもって自殺していても可笑しくない程の精神だった。

 

 今でも思うのだ。父や母ともっとしっかりと話をしたかった。一緒に遊んだり食事したりしたかった。もっと……もっと……そんな後悔しか俺は両親に持てないのだ。

 

 事故相手からの慰謝料の振り込みと、身体に残る火傷跡を見る度に自分自身が嫌になり、なぜ自分がこんな目にあわなければならないのかと何度も自問自答してきた。そんな自分自身が一番嫌いで、自己嫌悪で死にたくなったことも数十では足りないかもしれない。

 

「けどな、アイツは俺以上に辛いんだよ!!助けてくれる筈の友人すら居なくて、心の支えが粉々に砕けて、一歩間違うことになっても止めてくれる人間すら居ない!!そんな状況だといってもまだアンタは津島善子という、自分の娘から目を背けるのかよ!!」

 

 孤独と孤立は違う。自分一人しか信じれなくても周りが支えてくれた俺に比べて、誰にも助けてもらえず、ただ独りで耐え続けてきたアイツの闇は、多分俺なんかと比べたらいけないものだ。

 

 だけど、そんな俺でもアイツのための添え木になってやることくらい、翼のもげた天使に蝋でも翼を与えてやるくらいの横暴さは許されて良いはずだ。

 

「ぐ……」

 

「カッカッカ……暴論だが、こりゃ少年の方がよっぽど正論だな。源十郎、お前さんの敗けだよ」

 

「黙れ、そもそもお前が娘を違法賭博なんぞに引き込むからこんなことになったのだぞ」

 

「そうさな、だが私がしたのはあくまで、退屈な顔でガンプラを眺めてる弟の娘を、悩みの捌け口としての場所を与えたに過ぎん。お前の娘に関しては賭け事の一切をしておらんしな」

 

 しれっとしているが、なんというかOTONAだこの人。

 

「ならばなぜ娘が戻ってきてない!!」

 

「そりゃこっちが聞きたいくらいだ。月曜だったか?その日まではほぼ毎日のように来ておったのに、二、三日続けて来んかったから不思議に思って聞いてみたら案の定だ」

 

 しかもだ、と五紘さんは言葉を続ける。

 

「こっちに来る前に店のGPベースを確認してみれば、狙ったように無くなってやがると来たもんだ」

 

「ちょ、ちょっと待ってください!!GPベースを盗まれたんですか!?」

 

「どういうわけかな。しかも容れておいたケースはこじ開けられた形跡もない、つまりは内部から持ってかれた可能性が高いな」

 

 呆れるように肩を竦める五紘さんに他の俺たち全員から鋭い視線が奔る。それと同時に彼はタブレットを一つ取りだしてこちらに渡す。

 

「一応怪しいと思われる顧客は百人弱まではピックアップしてはおるが……見つけるのはほぼ困難だろうな」

 

「……いえ、多分その必要は無いと思います」

 

 俺はそれを受けとり、とある人物を探しだす。恐らくこの中にも……

 

「……見つけた」

 

「「「「!?」」」」

 

 俺の一言にその場にいた全員が驚く。そしてそれを見えるようにテーブルに置くと、タブレットには一人の男性の姿が写し出されていた。

 

「ナイン・バルト……元フラナ機関に所属していた、エンボディシステムの開発者です」

 

 嘗て、アイラ・ユルキアイネンや三代目メイジンを実験体としてP.P.S.E時代最後の世界大会にて暗躍した男。

 

 今もなお、人体実験行使や少女誘拐等の容疑で指名手配されているのだが、まさかこの沼津内浦に潜伏してるとは、見掛けるまでは思いもよらなかった。

 

「この男が……」

 

「しかしなぜ娘を誘拐する必要がある?」

 

「多分、花丸ちゃんでも分かる話だ、これは」

 

 いきなり声を掛けられ驚いているが、その顔はすぐに納得に変わった。

 

「もしかして、善子ちゃんの()ずら?」

 

「その通りだ。恐らく善子の目は後天的な粒子放射光過敏症……プラフスキー粒子の流れや動きが分かる力がある。それを目につけたんだろうな」

 

「だがそれで何をするつもりだ?たかが粒子の流れ?それが分かるだけでなにができる」

 

 確かに源十郎さんの言う通りだ。たったそれだけの能力、けど、ある一定の人間からしたらそうとは限らない。

 

「俺は過去に、プラフスキー粒子を軍事研究に利用する動きが数回だけあったと記憶してます」

 

「粒子を軍事研究するだと?」

 

「ええ、あの粒子は限定空間内に置いて、変容することで模型プラスチックから机上の空論とされているビームを射てたりするようになります」

 

 ここまで言えば大人たちも分かったようで驚愕の顔をしている。

 

「もし転用できれば、ただのモデルガンから人を焼き殺せるビームを簡単に射てるようになる……ですから現ヤジマ商事はその研究の一切を禁じました。けど」

 

「裏組織ではそれが未だに続いてる……というわけか」

 

「そしてその技術は日本だけが独自特許とされている……そんな中で粒子の流が読める人間は充分なモルモットとしての価値を、奴等からしたら喉から手が出るほど欲しい人材です」

 

 事実、過去にその実験を取り締まった際に、研究施設内部に既存の火器ではありえない焼けかたをした部屋の壁や穴が無数に見つけられたと言うくらいだ。

 

「つまりナイン・バルトの目的は、それを裏組織に売り付けること……」

 

「それに加えて密かに国から出ることでしょうね、海外の方がその実験は盛んに行われてるって聞いたことがありますし」

 

 ただの誘拐事件のはずがここまで大事になるとは思ってなかったのだろう、源十郎さんは頭を抱えて崩れ落ちる。

 

「……何か手は無いのか?」

 

「……源十郎、お前」

 

「何が政治家だ、何が幸せのためだ、娘を犠牲にして得られたそれに……そうなって欲しいと思った娘を犠牲にしてどうなるというのだ」

 

 ぼそぼそと呟くそれは、溜め込んでいたものを吐き出すような……そんな心情が込められていた。

 

「こうなるなら娘と正面から話をすれば……あの娘の言葉に耳を傾けていれば……私は……」

 

「……か、まだ遅くは無いぞ源十郎!!」

 

「だが……」

 

「お前の娘をきっかり救って、しっかりと今度こそ向き合ってやれば良いさ。そのためにも、今はしっかりと立ち上がれ!!そうだろ?海鳴源十郎……いや、津島善子の父親、津島源十郎!!」

 

 そういって差し出された五紘さんの手を、源十郎さんは迷いながらも、ゆっくりと掴んで立ち上がった。

 

「シャキッとしろ、父親がそれでは助けられるものもできなくなるぞ」

 

「……ああ!!」

 

 

 

 

 

 

「さて、それじゃあ面倒な後輩を助けに動くとしますかね!!」




次回から二年生√は大会を、昴√はヨハネ救出がスタートします!!ちゃんと両方ともガンプラバトルはありますから、よろしくお願いします

え?花丸ちゃんの台詞が少ない?シ、シリアス過ぎて台詞を入れられなかったんや……ヨハネ様救出バトルではちゃんと沢山入れますから!!ほ、ほんとですよ!!

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