ガンプライブ!サンシャイン!!~水の乙女と宇宙を求めるもの~ 作:ドロイデン
まぁそんな駄目な作者は置いといて、ルビィちゃん生誕祭じゃ~!!
それは、今から二年前の春のことだった。
「ピギィ?果南さんと鞠莉さんが家に?」
夕食後、お姉ちゃんが言ったその言葉にルビィは首を傾げました。
「ええ、次の日曜日に、私達三人でガンプライブ用の機体を考えようと思いまして」
「へぇ!!お姉ちゃんガンプライブやるんだぁ!!凄いね!!」
「ええ!!ですが……私の機体をどうしようかと思いまして……」
若干テンションが低いお姉ちゃんに少しだけ驚く。お姉ちゃんはガンダム好きなのだが、その知識量がとても多いせいで好きな機体が多いのだ。それに――。
「お姉ちゃんニッパーとか使って怪我するの何時もだしね」
「さ、最近はそうでもありませんわよルビィ!!」
憤慨してるが、つい昨日の夜に『グシオン』のゲートと一緒に指を切ってた所を見たら説得力の欠片もないんだどね。
「ちなみに候補はいくつか決まってるの?」
「ええ、一応三つまでには……というわけですのでルビィ、土曜日にでも一緒に模型店に行きましょう」
というわけで、その土曜日、黒澤家御用達(というより網子漁師の人が経営してるだけなんだけど)の模型店にやって来ました。
「うーん……どうしましょう……」
お姉ちゃんはどのガンプラにしようか眺めている。こうなったときのお姉ちゃんって長考に入るから大変なんだよね。え、ルビィ?ルビィは――
「ええい!!」
バトルシステム使ってフリーバトルの真っ最中です!!愛用してる素組の『スローネドライ』のビームサーベルで、相手の多分同じく素組『グフ・カスタム』の剣で切り結ぶ。
ガドリングシールドをビームサーベルで貫き、コックピットを貫くと私は溜め息をつく。
かなりの強敵だったというのもあるが、素組では武装が少ない『ドライ』では良くやった方だと思う。
「ピギ?また乱入?」
現れたのは、『デナン・ゾン』と『デナン・ゲー』を組み合わせたようなカスタム機で、ショットランサーを右腕に構えて飛んできた。
「ピギ!!カスタム機!!」
すぐに只者じゃないと思い、ルビィはGNハンドガンで迎撃する
が、それを相手は槍を回転させて弾き飛ばし、まるで格好つけるようにポーズする。
『そのような素組の支援機で、円卓の加護を受けた我がデナン・エクターを倒せると思うなかれ!!』
声高らかに名乗りをあげる相手の男性は槍で突撃しながら左手でビームガンを射ってくる。
「ピギャァァァ!!」
あきらかにビームガンの威力を超えていて、掠っただけで体勢が崩れ、ルビィの『ドライ』はフィールドの道路に叩きつけられ、そのすぐそばにあの『デナン・エクター』が降りてきた。
『中々に見所があったが、この我と我が愛機と出会ったことが運の尽きよな……』
そう言って相手は手元のランスを逆手に握り、
『せめて、この聖槍たるロンゴミニアドに突かれて果てるがよい!!』
勢い良く振りかぶった槍をそのまま私の機体の胸部へ――
『獲物を前に舌舐めずり、三流のやることだな』
突然の音声と共に、目の前のデナン・エクターの背中が突如として爆発した。
『な、なにやつ!!』
男はそう言いながら後ろを確認する。私もモニターを確認してみると、助けてくれた相手の姿が分かった。
そこに居たは腰だめでバズーカを構えて、ビルに立つ黒っぽい灰色の『ジン・ハイマニューバ』の姿があった。そして、それは……
『な!!『ザク殺しのジン』だと!!』
この内浦ないし沼津で有名なファイターだった。ガンプラとしてはピーキーな『ジン』を操り、過去に数多のザク使いを相手にして、そのすべてを合わせ目通りに切り裂いて修復不能にするほどの実力者。
そんなファイターがなぜ?
『たく、あの体力バカ、無理矢理連れてきたうえに知り合いだからって……あとで覚えとけよ』
……え?それってどういう……
『く、『ザク殺し』が相手だろうが、この聖なる力を得ている『デナン・エクター』が負ける道理はない!!』
そう言って相手はこちらを無視し、『ジン』に向かって飛んでいく。両手に構えたビームガンを連続して打ち続けるが、それを『ジン』は空中で、まるでステップするように避けて接近する。
『な、なぜ我が攻撃が当たらん!?』
『そんな狙いも適当なビームガンなんて食らうかボケ』
『なんだとキサマ!!』
憤慨したように男はビームガンを捨て、ランスに持ち換えて突撃する。
『我が聖なる槍の一撃で滅しろ!!』
『やなこった!!』
そう言ってジンは重斬刀を二本抜き、右で槍を受け流し、左で突きの一撃を肩にぶつける。
しかし、そこはカスタム機というべきか、寸での所で掠めるように避けて、デナン・エクターは再び距離を取る。
『く、そのようなザク擬きに我が押されるとはな!!』
男の人がそう言った途端、ルビィの背中になにか分からない寒気のようなものが走った。
『……テメェ……今、何て言いやがった?』
『む?ザク擬きと言ったのだ!!その通りであろう?』
次の瞬間、まるで心臓を握り締められたような圧迫感を感じた。まるで本能が逃げろと叫んでるような、そんな感じの……
『精々……知り合いの対戦相手を手助けするだけだったんだがな……お前、今一線踏み抜いたぜ』
『は?――』
男が呆けてる一瞬、まるで瞬間移動でもするようにジンはデナン・エクターの目の前に接近し、まるで踵落としのように蹴り落とし、そのインパクトでアスファルトから土煙が上がる。
『カハッ!!い、痛いだと!!そ、そんな馬鹿な……なんで』
男の言葉にルビィは首を傾げました。ガンプラバトルで肉体に痛みが現れるわけがないのだが、幻痛にしてはリアリティーがありすぎる。
『テメェは今、俺の目の前で言っちゃいけない言葉の一つを言ったんだ、その報いは受けてしかるべきだよな?』
『ぐ……だ、だが!!』
再び立ち上がって槍を捨て、腰から装飾された剣を抜いて構えた。
『せ、せめてこの聖剣の一太刀を!!』
スラスターを吹かせ、その機体は正面から上段に斬りかかる。
『洒落クセェ!!』
しかしそれを真下から振り上げた重斬刀で叩き折り、コックピットにその剣を貫いた。
『わ、我がデュランダルまで――無念!!』
それを言い残して、デナン・エクターは爆発した。
『……デュランダルは円卓の騎士じゃなくてシャルルマーニュの騎士だろうが』
そんな黒いジンのバッサリとした断言と共に。
「す、凄かった……」
バトルが終わり、フィールドから出たルビィには、そんな言葉しか出なかった。
圧倒的な攻撃力、冷静な判断力、そしてまるで機体を手足のように操るその技術……どれもが圧倒的だった。
「お疲れさまですわね、ルビィ」
「お、お姉ちゃん……」
と、近くに居たらしいお姉ちゃんが声をかけてきて……ってあれ?
「果南さん?あとその人は?」
そう、なぜかお姉ちゃんの友人の果南さんと、どこかで見たことのあるような顔をした男子が立っていた。
「こちらは天ノ川昴さんといって、ルビィと同じ中学の三年生で、果南さんと幼馴染みらしいですわ」
自己紹介され、ルビィはすぐに頭を下げる。が次の瞬間、
「どうも、さっきのバトルぶりだな」
「え?その声……」
通信越しだったが聞こえた特徴的な声が、しかもそれが目の前で聞こえたのだ。
「そ、俺がさっきのジン使いだよ」
「え、えぇ!!」
驚きを隠せなかった。あんなに強いのに、私と一つしか歳が違わない……その事実が驚愕しなくてどうなるというか。
しかも昴さんはしまっているケースからさっきの黒灰色の『ジン・ハイマニューバ』を見せてきた。シールを殆ど使わず、スプレーじゃなく筆で前身細部まで塗られた作り込みに感嘆のため息が出る。
「じゃ、じゃあザク殺しの噂も……」
「ん?あぁ、俺がジンを使うことを貶してきた連中をパーツ単位で合わせ目通りに切り裂いてやったことがあるんだよ」
もっともそれをやったあと、なぜか相手が気絶してるんだけどな、と呟く彼に冷や汗が止まらなかった。もしあの場でジンをピーキーだとか口に出してたらおんなじことになってかもしれない。
「つか、俺が行かないで果南が行けば良かっただろ。ルビィとも知り合いなんだしよ」
「しょうがないじゃん、今日は『バエル』持ってきてないんだし、それに女の子を助けるなら男の子じゃないと」
「釈然としねぇ……」
頭を掻きむしりながら呟く彼を見つめていると、お姉ちゃんが肩に手を置いた。
「どうせですしルビィ、昴さんにガンプラバトルのコーチをしてもらったらどうですか?」
「ピギィ!?ど、どうして!?」
「話によれば、昴さんは明日果南さんと共に我が家へと来るそうなので、これを期にと思いまして」
明日、家に来る?
「お姉ちゃん……ホント?」
「こんなことで嘘をついてどうなりますの」
つまり本当。てことは……
(あの凄い技術を教えてもらえる!!間近で!!)
「お、お願いします昴さん!!」
「まぁ、俺も身近でバトルできる相手が欲しかったしな……俺の練習は厳しいぞ」
ニヤリと笑いながらいう昴さんに、私は内心炎が燃えた。あきらかに挑戦だということがすぐに分かった。だから、
「つ、ついていきます!!昴さん!!」
この日から、私と昴さんの師弟関係が始まったのだった。
オマケ
「ところでルビィ、頼むからさん付けはやめて欲しいんだが」
「へ?どうしてですか?」
「その呼ばれ方だと何故か知らないがロリコンって言われそうで怖い」
「……なら師匠でどうですか?」
「それはそれで……まぁ、別にいっか」
オマケは
昴という名前+昴の部活がバスケ+赤い(ピンク)髪のロリということですwわかる人には分かりますよね~w
ということでルビィちゃん、Happy Birthday!!
また、今回使わせてもらった『デナン・エクター』を提供して頂きました駄ビン・レクイエムさん、本当にありがとうございました。