ガンプライブ!サンシャイン!!~水の乙女と宇宙を求めるもの~   作:ドロイデン

39 / 71
天使の落日 その九(二年生+ルビィ√)

 時は進んで二日後の金曜日、大会前日だというのに私達四人はあることに気づいた。それは……

 

「今更だけど……コーチ決めた見つけなきゃだよね?」

 

 ということである。

 

 というのも、ガンプライブ、全国大会のそれぞれには共通の大会規定が存在し、『監督またはマネージャーを一名登録すること』ということである。

 

 かの全国大会優勝チームのトライファイターズや、μ's(特別顧問として理事長)でさえちゃんとしたコーチやマネージャーが存在しているというのに、私達はそれを怠っていた。

 

 最も今回のは地方のローカルショップだから関係ないものの、このままにしてて良い問題でもない。

 

「昴くんをマネージャー……ってわけにもいかないしね」

 

「そりゃ、昴くんは世界大会予選があるから、私達とは時期的に難しいしね」

 

 曜ちゃんの言う通り、ガンプラバトル世界大会地区予選は六月中旬から始まり、勝ち進めば八月の頭から世界大会の開幕、終わりは例年通りなら少なくとも夏休み修了一週間前の二十日前後までは掛かる見込みだ。

 

 そして私達の目指すガンプライブは……夏休み序盤の七月末に予備予選が、そして中旬に地区予選、そこから地方予選があり本選がありで、終わるのはだいたい十月近くになる。

 

 中にはそろそろ行われるガンプライブや高校生ガンプラ全国大会(だいたい時期は同じ)と世界大会を兼任する猛者も居るが、昴君曰く、そういう人間のおおよそは世界大会予選で自分の機体の調整のためにやってるだけとのことで、直接的に言えば勝つつもりが無いふざけた人間が多い……とのことだ。

 

 というわけで、タイミングの問題で昴君を監督ないしマネージャーにすることはできないということだ。

 

「そもそも高校生とはいえ現役プロをマネージャーにするのは……ピギィ!!すみません」

 

「「「だよねー……」」」

 

 ルビィちゃんの指摘通りだ。寧ろ現役プロの昴君と練習できてるほうが奇跡に近いし。

 

「うーん、こうなったら鞠莉さんのつてに頼んでなんとか……」

 

「鞠莉さんの身内だと寧ろ物理的になんとかなっちゃいそうからダメかな」

 

 梨子ちゃんいわく、鞠莉さんの所のファイターの大半が無口なリアリストな戦闘凶だったり、シスコンだったり、逃走魔のロクデナシだったり、キレると笑顔で黒く笑い続ける人だったりと、全くもって危険極まりない。

 

「じゃあダイヤさんとルビィちゃんの家は?」

 

「ピギィ!?えっと、鞠莉さんのところまでとはいかないけどやめたほうが良いと……思います」

 

 これまたルビィちゃんいわく、霜月兄弟で漸くまともらしく、全身茶色タイツで巣潜り漁をする男性とか、投網漁なのに連携が全くない三馬鹿とか、ジャズをガンガン流して一本釣りしてる狂人など、どちらかと言えば変人奇人という意味で危険という。

 

「……これ、詰んでない?」

 

 曜ちゃんの言葉に全員が無言で答える。流石にここまで酷いと逆に驚きなんだけど、ホントに。

 

「だ、だったら私達の親類は……って、うちは旅館もあるから無理だ」

 

「私お父さんがいつ帰ってくるのが分からないからちょっと……」

 

 言った側からそろってダメとなる。

 

「梨子ちゃんは?」

 

「うーん、お母さんならバトルもやってるから外部顧問って形なら……けど……」

 

「「「けど?」」」

 

「結構ノリで動くこともあるから、前に専用にカスタマイズしたフリーダムでお店の仮想敵を無双してたし」

 

「「「……ホントに?」」」

 

「ホントに」

 

 まるで遠い目をしてる事に若干引きながらも、他よりはマシだと思う。というよりも思いたい、ホントに。

 

「……とりあえず、保留にしておこう?流石に一存じゃ決められないし」

 

 梨子ちゃんの言葉に揃って頷く。というより、これ以外今は何もないし。

 

「じゃあ明日の大会のために、練習を始めないとね。ダメージレベルはCで……フィールドはどうする?」

 

「あ、大会のフィールドは全試合共通だからそこにしたほうが良いかも」

 

 そう言って梨子ちゃんがフィールドを展開し、それぞれが配置に着く。

 

「それじゃ、模擬戦スタート!!」

 

 

 

 

 サフィside

 

「ピギィ……」

 

 降り立ったフィールドを見渡して私はため息を着きたくなった。空は曇っており、地面は氷と雪に被われた山々のフィールド……『フォートセバーン』だった。

 

(氷……多分湖だよな?落ちたら大変なこのフィールドを選ぶ度胸が分からないな)

 

 実際近くの岩場に着陸して、目の前の氷に軽くソナーを使うと、中から反響してるし間違いない。ゆえに地上戦は厳しいと諦める。

 

『サフィちゃん、千歌ちゃんたちの反応ってある?』

 

『あぁ?……いや、まだ無いな』

 

 おそらく索敵圏外に居るのか、それとも……

 

「!?アラートが……!?」

 

 どこからと思い確認すると、なんと上から大量のミサイルが落ちてきやがった。慌てて飛んで回避するも、爆砕する氷が下から襲ってくるせいで少くないダメージが入る。

 

「くそったれ!!」

 

『サフィちゃん、今援護に……って千歌ちゃん!?』

 

 どうやら相方の方はリーダーとかち合ったようで、通信から爆音がちょいちょい流れてくる。

 

「チィ!!てことはさっきのミサイルは……」

 

『考えてる暇は与えないわよ!!』

 

 と、聞きなれた声と共に重粒子砲とミサイル、機関銃の三重奏が上から迫ってくる。

 

「!?GNフィールド!!」

 

 流石に躱しきれないと判断し、粒子フィールドを形成して防御するが、あまりの威力にノックバックしてしまい落ちてしまう。

 

「ぐぅ……!!」

 

 流石に水中に突っ込むわけにはいかないため、スラスターを吹かせて雪原に逃げ込む。

 

「おい!!今どこに居やがる!!」

 

『えっと、東側の森の中!!』

 

「くそ、反対方向か!!」

 

 今居る西側の雪原からでは遠すぎる。しかも上を取られてると来やがった

 

(サフィちゃん……)

 

「(うっせぇルビィ!!話しかけてくるんじゃねぇよ!!)くらえファングゥ!!」

 

 頭に響く主様を脅しておき、私は起死回生のためにファングを放つ。が、

 

『それは読み通りなのよ!!アルフ、弾幕軌道確認』

 

『あいよ!!粒子防護障壁展開!!』

 

 まるで分かってるようにファングのビームを無効化し、その上で機関銃で落としてきやがった!!

 

(サフィちゃん、お願いだから話を……)

 

「(出てくるんじゃねぇって言ってんだろ!!弱虫がぁ!!)ビギャァァァ!!」

 

 さらにファングを射出し、私自身もバスターソードを二つ抜いて接近戦をしかける。しかし

 

『アルフ!!』

 

『了解!!ブースター、パージ&ゴー!!』

 

 さらに会費したうえで、今度は背中のパッケージをパージし此方にぶつけ、それを自爆させやがった。お陰で左手のバスターソードを落としてしまい、それはクレパス内部に転落してしまった。

 

「なめるなぁ!!」

 

 それでも私は構わずに突進し、彼女が抜いたビームナイフと切り結ぶ。軽いはずなのに正面からぶつかり合う剣撃に驚くが、そうも言っては居られなかった。

 

『アルフ!!』

 

『分かってるっての!!』

 

 なんと脇から補助アームと昴さんの良く使う重機関銃のようなものが二つも現れたのだ。ギョッとして退避するも、流石に間に合わず左腕と右足に少くないダメージが入り、ゆっくりと落下していく。しかもそこは大きめのクレパスが……

 

(サフィちゃん!!)

 

「(一々叫んでんじゃねぇっつってんだよ弱虫が!!)ピギャァ!!」

 

 生きているスラスターを使い、着地場所をクレパスから辛うじてずらす。だが瞬く間にアラートが上から鳴り響く。

 

『くらぇ!!』

 

 両腕に構えられたオルトロスを見て、こちらも急いでビーム砲を

 

『させないよ!!』

 

 構えようとした瞬間に、補助腕の機関銃が直撃してしまい、慌ててパージするが体勢を崩して倒れてしまう。

 

「くそ!!」

 

(サフィちゃん!!対応変わって!!)

 

(テメェが同行できる分けねぇんだよ!!良いから黙ってろ!!)

 

(このまま負けるよりは良いでしょ!!)

 

 主様の正論にぐうの音も出ず、若干イラつきながらも主導権を渡すことにする

 

「(これだけ残ってれば……)ファング!!音声マニュアルコントロールモードに変更!!」

 

(んだと!?)

 

 まさかの主様の暴挙に唖然としてしまう。ファングやドラグーンといった空間認識兵器はプログラムによるオートコントロールが基本だ。それを、ただでさえ難しい音声コントロールで使うなど狂気の沙汰だ。

 

「システムパターン1!!稼働中ファングの半分を突撃、半分を射撃でそれを援護!!さらに追加のファングはステルスモードで突撃!!」

 

 だがそれを、まるで手足を動かすかのごとくやりきる。事実向けられていたオルトロスを破壊し、ビルダーの先輩に射線が通らないようにひっきりなしに攻撃をし続けている。

 

「今のうちに曜さんの方へ合流を!!」

 

(だったら私に交代しろ!!音声システムで動きが乱れてる今なら、私の操作で撒くことはできる、少なくとも今の機体状況なら主様よりはマシな回避移動ができる!!)

 

「(う、うん……お願いねサフィちゃん)……っち、お願いかよ……めんどくせぇ」

 

 とにかく動く背部スラスターを動かして地面スレスレの低空飛行で移動を開始……ってアラートだと!?

 

『ごめん梨子ちゃん!!遅くなった!!』

 

「千歌先輩だと!?ってことはまさか!!」

 

 慌ててモニターを確認すると、ダメージ設定Cでのダメージゲージが真っ赤に染まった相方のデータが映し出されていた。

 

 それと同時に、千歌先輩のダメージゲージも一割残してほぼ真っ赤、つまり

 

「(追い詰めたうえで負けたのか!!くそったれ!!)」

 

 このときの私は知らなかったが、曜先輩は千歌先輩のミサイルを喰らってしまい、湖の中に叩き落とされたせいで機体全体にダメージを受けてしまい、それでも残り一割まで削っていたらしい。

 

『どう、まだやるルビィちゃん?』

 

 上からビームライフルを突きつけられ、完全な投降勧告を先輩から受ける。頭の中が沸騰して、気化して、爆発して堪らないくらい怒りに燃える。だが……

 

「……降参する」

 

 ダメージも多く、援護もなし、武器もまともに無い模擬戦という状況で歯向かっていけるほど、まだ理性は粉微塵とはなっていなかった。

 

 

 

(くそくそくそくそくそ!!クソォ!!)

 

 模擬戦後、あまりの自分自身の戦いの内容に、珍しく悪態を主様の精神で叩きまくる。かくいう主様はいつも通りの苦笑いである。

 

(最初に苦戦覚悟で合流しとけば!!少なくともあんな不様はさらさなかったのに!!)

 

(仕方ないよサフィちゃん、今回のフィールドは今まで殆ど使ったことのないフィールドだったし)

 

(それでもだ!!少なくとも先輩よりも強い私が!!先輩よりも相手にダメージを与えてないんだぞ!!しかも与えたダメージってのも後半、主様がやったファングでのダメージ!!私は一切ダメージを入れてねぇんだ!!)

 

 私のファングは無効化され、近寄れば機関銃でゼロ距離射撃され、終いにはスラスターまで半分破壊された。これ以上ない敗北だった。

 

(主様!!明日にこの借りは倍にして返すぞ!!強い私が負けたままでいられるか!!)

 

(う、うん……)

 

 私はそれだけ言って意識を落とす。次覚醒したら……この溜まったストレスを爆発させてやるからな!!待ってやがれ、桜内梨子!!


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。