ガンプライブ!サンシャイン!!~水の乙女と宇宙を求めるもの~ 作:ドロイデン
「さて、昨日申請手続きが完了したわけで、これより一年生二人を交えて会議を行うわけだが……」
部室にて、全員をとりあえず机に座らせて進行を始める。ちなみになぜ俺かというと、やるべき千歌が面倒だからと俺に全振りしやがった。
「近いショップバトルを中心に探したわけなんだが、何か希望はあるか?」
「とりあえずどんな大会があるかにもよるんじゃないかな?」
うちの部の良心こと桜内さんがそう言うと、花丸とルビィも頷いてる。
「うーん、さしあたって一番近いのは学校の近くの模型屋かな。タッグトーナメントバトルルールで、当然ながらランクはAと高いけど、そこまで強豪が出てくるって程じゃないな」
調べた所によると、黒澤家網子の双子蟹漁師が副業経営してるらしく、蟹漁解禁まではそれで生計を立ててるとかなんとか。
一応俺も何度か模型を買ってるけど、どういうわけかアルバイト含めて店員が『ヴァサーゴ』なり『Gファルコン』なり、はたまた『ジェニス改』と、『GX』作品ばかり買わせようとしてたのは良い思い出だ。
「タッグバトルか~そう言えばやったことないね」
「ガンプライブでも正式採用されてるレギュレーションの一つだからな。それのついでだ」
ガンプライブ等の公式チーム大会では基本的に3~5の試合での先取制になっていて、そのうち絶対に含まれるのが
何が勝敗になるか不明な特殊戦を除いて厄介とされるのが、今回のタッグマッチバトルだ。基本的には三対三と同じなのだが、フィールド範囲が通常より少し狭いうえに、アーケードゲームでいうところの疑似タイとなって援護出来なかったり、最悪先に片方を潰して残りでという事もされかねないという、かなり厄介なバトルルールなのだ。
「幸いなのは、俺達がどう組み合わせてもたいていなら、なんとかなりそうってことだな」
現メンバーで恐らく最強のは桜内さんの『デュエル・フルングニル』とルビィの『スローネドライ・ヤークト』だろう。実弾とビームの混成弾幕とファングを組み合わせたら厄介このうえなく、そこにバスターソードで斬り込んでいくのだから相手からしたらたまったものじゃない。
残る三人のうちまずは千歌なんだが……はっきり言って誰と組んでもそれなりに対応できる機体ゆえに、千歌の技量だと誰と組んでも平々凡々という感じに収まってしまう。曜は曜で腕は良いが、はっきり言うと機体スペックが悩み所という感じで、これまた平々凡々というところだろう。
最後に花丸ちゃんなんだが……この娘が一番のジョーカーというか、はっきり言って動きが妙に天然というかなんというか、素人じゃないけど熟練者でもないという……なんとも微妙としか言い表せないのだ。
まぁでも、それぞれ平均すれば何とでもなるし大丈夫と言えば大丈夫だろう……多分。
「で、でもマルはそこまで上手じゃないから……」
「うーん、まぁ花丸ちゃんがそう言うなら仕方ないが……さて、残り四人をどう組ませたものか」
「え!?昴君はやらないの!?」
「奇数になるんだから仕方ないだろ。俺はプロだし、何より昨日買った29㎜徹甲機関銃の作成&改造もしなくちゃならないしな」
なにやら千歌がブーブー言ってるが、仕方ないものは仕方ないと諦めろ。
「んで組み合わせだけど……俺としては千歌と桜内さん、曜とルビィの組み合わせが最適かな。性能を考えると」
千歌と桜内さんは言わずもがなだ。そして高火力高性能なルビィと援護に回りやすい曜、この二人の組み合わせもそれなりだと思う。なによりこうすれば、決勝戦で戦うことになってもどちらかが一方的、という最悪な状況は避けられる筈だ。多分。
「えぇ、私は千歌ちゃんと組みたいよ~昴君」
「そうなったら前みたいにルビィに尽く追いかけまわされるぞ。しかも梨子ちゃんも相手だから余計に大変に」
「生意気言ってすみませんでした!!」
前回のサフィ事件(?)のせいか、どうにも曜はルビィと戦うのだけは嫌らしい。まぁ仕方ないと言えばそれまでだが。
「んじゃそういうことで――」
「しつれ~い!!」
纏めようとしたその時、突然の鞠莉さんの乱入により、俺は少しだけムッとした。
「――どうしたんです鞠莉さん?」
「昴、少しだけ来てちょうだい、あと……そこの花丸ちゃんだっけ?あなたも」
「ずら?」
「で、俺と花丸を呼び出して、いったい何の用です?」
理事長室にて、高いであろう椅子に座る鞠莉さんに、そう聞くと、彼女はだいぶ不機嫌そうな表情をしていた。
「……二人とも、津島善子って娘の事は知ってるわよね」
「え、そりゃあまぁ……」
「ずら」
知ってるも何も、俺は一度だけだが直接会ってるし、花丸ちゃんに至っては幼馴染みだ。
「それがいったい……」
「――詳しくは自分が話させて貰います」
と、そう言ったのは後ろから入ってきた若緑色のスーツを着た……かなり中性的な顔立ちの男性だった。
「えっと、貴方は?」
「自分は津島源十郎の秘書で、緒川慎一と申します。いきなりのところ申し訳ありまさん」
なんとも丁寧な口調で言う彼だったが、目は完全に後悔や焦りというそれが随分と見てとれた。
「お久しぶりずら、緒川さん」
「花丸ちゃんこそ、いつも善子さんがお世話になってます」
こちらは知り合いなのか笑顔で挨拶してる。
「それで、態々秘書の方が来るってどんな事態なんです?」
とりあえず事の次第を聞いてみると、緒川さんはだいぶ顔を苦くしている。
「……実は、昨日の夜から善子さんが帰宅してないんです」
「……なに?」
どういうことか問い詰めて、聞き出したのを要約するとこういうことだった。
昨日の夕方、ここ最近では毎日のように善子は出掛けていて、帰ってくるのも夜遅くだった。一応善子にはバレないように遠くから護衛役が警護してたのだが、毎回のごとく撒かれてしまったという。
それでも夜にはちゃんと帰宅していたので問題は無かったのだが、昨日に限っては帰宅すらしてないという。
緒川さんもその事を今日、源十郎本人から知らされ慌てて捜索するも見つからず、偶々護衛役が俺が善子の後を着けていたのを覚えていたらしく、放課後になって聞きに来たということらしい。
「……つまり、善子が行方不明で、何か知ってるかもしれない俺に聞きに来たということですね」
「ええ、善子さんはどうにも変装してたみたいですけど、はっきり言って……」
「……ありゃ不審者にしか見えなかった」
まぁ変装スキルなんて日本じゃ使うどころの話じゃないからあんまり関係ないが。というか
「そういうのは警察の仕事だろ、捜索願い出して……って訳にもいかないか」
「えぇ、善子さんは政治家である源十郎さんと、かのファッションブランドの社長である奥様の娘……つまりご令嬢です。それが行方不明なんてことになればマスコミが黙っていない」
「確かに、こういうときの報道関係はマスゴミとまで言えるくらいに酷いからな」
俺がその実体験で被害者だし。
「それに、今回の件は警察には任せられないといいますか……」
「任せられないって、まるで違法な商売でもしてるみたいな言い方だな」
「…………」
俺がそう言うと、緒川さんは何も言わずに閉口してる。
「…………緒川さん、まさかずらよね?」
「…………善子さんがいつも撒かれてる場所には、源十郎の兄である五紘さんが経営してる、賭博ガンプラバトル場が存在してます」
「…………なんてこったい」
そりゃ警察にも言えるわけも無いわな。というか、政治家の兄が違法賭博の支配人とかどうしろというんだよ。
「といっても最近導入されるであろうカジノ法案が可決されれば正式に公にするということらしいですが」
「そういう問題じゃ無いだろうが……というか百パーそこに居るだろうな」
「はい、私も源十郎もそう思っています。ですが正式な所在は私や源十郎さんも知らされていなくて……どうにも手出しができないんです」
まぁそんな簡単に行けば違法賭博なんて摘発されるわな。
「だったらヤジマ商事に頼んで、マスター権限でガンプラバトルのシステム稼働ログを確認すれば?事情さえ分かればニルスさんなら喜んで対応しそうですけど」
「そちらは既に対応したんですが……ネットワークシステムに繋いでないのか、ログが無いんです」
「なら粒子バッテリーの購入ログは?ガンプラバトルをするには専用の粒子タンクバッテリーが必要な筈だ、それを辿れば場所は割れるはずです」
うちの学校はそこまでじゃないが、模型店となるとほぼ毎日稼働してるから、どうしても月に一つは予備のバッテリーを購入しなければならなくなる。
そのため購入記録を調べれば、誰がどこに仕入れたかも分かる筈だが、
「恐らくそれも空振りに終わるかと思います。粒子タンクバッテリーは自宅配送にすれば良いことですし」
「あぁ、そういや……」
今更だが、鞠莉さんの家にもバトルシステム置いてあるし、一部の金持ちは自宅に置いてることもあるのを忘れてた。
「つまり足を掴むのは大変と……」
「そういうことですね……はい」
「ずら……」
なんともはや、呆れる以前に頭が痛くなる思いだよ。
「で、その場所ってどこなんだ?」
「それが
昴さんが引き返されたビル付近なんです」
実は次回からルート分岐します。具体的には二年生+ルビィのタッグバトル大会ルートと、昴+花丸ちゃんのヨハネ救出ルートです。一応予定としては交互にルートを更新していこうと考えております。
次回は多分二年生+ルビィルートの更新を予定したいと思います。ではでは