ガンプライブ!サンシャイン!!~水の乙女と宇宙を求めるもの~   作:ドロイデン

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天使の落日 その四

 ――初めてそれと出会ったのは、まだ小学生になってすぐの頃だった。

 

 最初は、オカルトみたいに動くそれを気味悪く思って近づかなかったのだが、幸か不幸か、なんの因果か幼馴染みの少女と共に始めたのがきっかけだった。

 

 別にそのうちその幼馴染みが飽きるまで適当に……そんな思いだった私は、いつの間にかその幼馴染みよりも熱中してしまい、小学五年生の頃には自分と幼馴染みの専用ガンプラを作り、私はそれで優勝したくらいだった。

 

 中学に上がってもその熱は収まるどころか尚も燃え上がり、私は模型部での新人エースとまで呼ばれるほどだった。幼馴染みの方はちょくちょく続けていたようだが、それでも夏にはやめてしまったらしい。

 

 かくいう私は、秋の新人戦ソロの武門で県大会上位に食い込んだ。みんなが応援してくれて、まるでプロにでもなったような気分になれた。

 

 そしてその年の冬、転機が訪れた。部の友達とガンプラバトルをしてたとき、()()()()()()()()()ようになった。まるで粒子が、相手の一挙手一投足全てを教えてくれるような、そんなふうに感じだった。

 

 今思えば、その時から私は狂い始めていたのかもしれない……そう思えてならなかった。

 

 

 

 

 

 

「……朝、か」

 

 目が覚めた私は、ベッドから降りて軽く伸びをする。何時ものように共働きで朝早くから仕事……というか深夜になっても帰ってこないこともある両親が居ないことを確認して、何時ものようにカーテンを閉めて机に向かう。

 

 平日なのに学校はと言うだろうが、私自身、学校にいく意義を見つけられず、何より初日に大々的な自己紹介でミスをしてから行く気にまったくなれなかった。

 

「えっと……今日は……っと」

 

 そんなこんなで、暇潰しの如くパソコンでオカルトサイトを物色――

 

『』ピンポーン!!

 

 突然のチャイムに気分を削がれた。何事かと確認すると、見慣れた茶色い髪の毛が……

 

「…………よし、居留守しよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『』ピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポン!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「五月蝿いわ!!近所迷惑でしょうが!!」

 

 あまりの五月蝿さとしつこさに、それはもう怒り心頭でドアを開ける。やはりというか、そこには鞄を持ったずら丸の姿があった。

 

「こうでもしないと善子ちゃんは出てこないから仕方ないずら」

 

「にしても限度があるわ!!()()6()()()にこんなことして、周りから文句言われたらどういうつもりよ!!」

 

「善子ちゃんの家の鍵を使って無断で開けなかっただけマシだと思うずら」

 

 確かに母さんが、私と中の良いうえに幼馴染みのこのずら丸に合鍵をもしものために渡してはいるけども……。

 

「それはそれよ!!……まぁ良いわ、それで、何のようなの?」

 

「いい加減登校しないと留年じゃなくて退学になっちゃうから、無理矢理にでも連れていくずらよ」

 

 そういうずら丸の手には某世界を股にかけて捜査する警部のような、ロープに繋がれた手錠(しかもガチモン)が握られていた。

 

「……はぁ、分かったわよ。でも、その前に朝御飯作らないと……」

 

「善子ちゃん……また変な料理作るんじゃないよね?」

 

「変な……!?」

 

 失礼な!!前に作ったのだってちゃんとまともに食べられる代物だったわよ!!

 

「お好み焼きに鷹の爪の粉末混ぜたり、タバスコまるごと一本使った赤い焼きそばは、どう見てもまともじゃないずら」

 

「……そう言いながらバクバク食ってたのアンタじゃない」

 

 冷静に突っ込むと、事実だからか罰が悪いように視線と首をずらす。

 

「まぁ良いわよ。作るっていってもフレンチトーストだから。……勿論アンタの分もそれなりに作ってあげるけど」

 

「……ピザソースは入れないよね?」

 

「どこの不完全な超能力アニメの妹よ!!」

 

 

 

 さて、仕方なく引き摺られるような形で学校に来たは良いのだが……

 

『』ガヤガヤ!!

 

「…………」

 

 どういうわけかクラスメイトのほぼ全員から囲まれて質問攻めにされていた。訳が分からない。

 

「ずら丸……これはどうしてこうなった……」

 

「えっと……頑張るずらよ」

 

 何の説明すら無かった。さすがにちょっとだけイラっとしたが、周りからラッシュの如く質問という質問をぶつけられ、ともかく疲れが溜まる。というのも

 

「善子ちゃんって……」

 

「良いよね善子ちゃん……」

 

「ねぇ善子ちゃん……」

 

 どいつもこいつも、私の本名をずかずかと、コンプレックスを的確に突いてくる。それはもう射的の的にサテライトキャノンを連写して当てるが如く、今にも切れ込みで倒れそうな木にハイパービームサーベルを振るが如く、ともかくオーバーキルなことこの上ない。

 

 なんとか表情に出さずに耐えて耐えて……とにかく耐えて居たのだが……その時は訪れた。

 

「確か善子ちゃんってガンプラバトル強いんだよね!!てことは新しくできたうちの学校のにも入るの?」

 

「……ッ!!」

 

 私は思わず唇を噛みたくなる程にイラっときた。私にとっての琴線に、彼女は容易く踏み切ってしまった。

 

「……やらない」

 

「え?でも……」

 

「やらないって言ってるでしょ!!私はもうヤめたのよ!!……ガンプラバトルは……」

 

 私の苛立ちに、周りは唖然とする。そりゃそうだ、寧ろこうならないほうが可笑しいぐらいだ。

 

「……ごめん、いきなり怒鳴って。ちょっと色々あって……もうやるつもりは無いんだ」

 

「……ううん、私達も……」

 

 なんとか和解はしたが、それ以降なんともいたたまれない空気になってしまい、私はため息しながら教室から出るのだった。

 

 

 

 抜け出してやって来たのは屋上だった。何とかと煙はということではないが、やはり自分で『堕天使ヨハネ』を自称してるだけに風を直に感じれる屋上は何とも気分がよかった。

 

「はぁ、こういうところって落ち着くわ……って」

 

 お気に入りの一つの給水タンクの上に乗ろうと階段を上ると、そこには何故か寝袋を身に纏って眠ってる男子生徒が……ってあれ?

 

「確かコイツ……プロの……」

 

 うろ覚えながら、こんなところで爆睡してる猛者がかの有名なジン使い、『灰色の流星』だというのに気付いた。

 

 そういえば入学初日にもうちの制服着ていたなぁ、と遅まきながら気付くと同時に、何故にこんなところで寝袋広げて安眠してるのかと疑問に思う。

 

「……ん?誰か来たのか」

 

 と、私の気配に気付いたのか、寝袋男はのそのそとそこから出てきて欠伸を漏らす。

 

「お目覚めのようね、『灰色の流星』さん」

 

「……あー、確か津島だよな、一年の」

 

 どうやら初日のことをコイツも覚えていたらしい。

 

「最年少プロに覚えてもらって恐縮の至り……ってね」

 

「良く言うよ、多分技量とかじゃ圧倒的に上だろ」

 

「……そんなことないわよ」

 

 誉めてるつもりだったのだろうが、それは私にとっては触れられたくない部分だった。

 

「私はただただ見えるだけよ、見えたから対処して、見えたから対応する。それを繰り返してるだけ」

 

「見える……ねぇ、まるでニュータイプやXラウンダーじゃあるまいし」

 

「事実よ、まぁニュータイプとかみたいにテレパシーなんかは使えないけどね」

 

 まぁそうなったらなったらで、どちらかと言えば田舎なこんなところに居るわけないんだけど。

 

「……ところで、アンタはなんでこんなところで寝てるのよ?」

 

「四時に理事長に叩き起こされた挙げ句頼まれごとされてな、なんやかんやで終わらせたは良いが疲れたからここで仮眠を取ってた」

 

「ふーん……大変ね、アンタも」

 

 半分呆れながらそう言うと、彼は苦笑いを返す。

 

「別に、態々こんなところに降りてきたヨハネ様には及ばねぇよ」

 

「良い心がけね……なんなら私のリトルデーモンになる?」

 

「僕ね……案外、僕にされたいって口じゃねぇのか?」

 

「んな!?」

 

 まさかの逆襲に立ち上がろうとしたそのとき、ただでさえスペースの狭い給水タンクの上だったために、私の体が屋上の床に背中からアタックしてしまう。

 

「イッタァァァ!!背中、背中がぁ!!」

 

「おいおい、大丈夫か堕天使ヨハネ様?」

 

「そう思うならこっち向きなさいよ!!」

 

「いや無理だろ」

 

 なんでよ、そう聞き返すと彼は欠伸を漏らしながら

 

「背中からぶつけたってことは、最悪、()()()()()()

 

 見える?はてなんの事か……そう考えた瞬間、私の体が奥から熱くなっていくのが分かる。

 

 私は背中から落ちた……そしてその痛みで未だに動けない……そして今の私は制服……つまりブラウスとスカートだ。ここまで言えば余程のラノベ主人公並みの鈍感でもなければすぐに分かるだろう。

 

 つまるところ、下着が見えてしまう……それを懸念しているのだこの男は。そしてもしうつ伏せになれたとして、それでもスカートが捲れてないと限らないから困りものなのだ。

 

「うぅ!!覚えてなさいよ!!////」

 

「いや自爆だから」

 

 冷静に突っ込まれ、私はひたすら背中の痛みが引くのを耐えるだけだった。




オマケ

千歌「むぅ……」

曜「どうしたの千歌ちゃん?」

千歌「私の出番が最近少ないような……というか前回に至っては台詞二つだけだし」

梨子「ほ、ほら千歌ちゃんは最初のバトルで美味しい所いっぱい貰ったから、仕方ないよ」

千歌「それでも出番が欲しいんだよ!!このままじゃ果南ちゃんに全部持っていかれちゃうんだよ!!」

曜梨「それは……否定できない」

千歌「でしょ!!というわけで作者を〆に行ってくる」



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

ドゴッ!!バギッ!!ガッシャーン!!

作者「ギャァァァァ!!千歌ちゃん!!空手、空手はヤバイってぇ!!」

千歌「だったら出番寄越せぇ!!」

花ル「千歌ちゃん凄い……」

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