ガンプライブ!サンシャイン!!~水の乙女と宇宙を求めるもの~ 作:ドロイデン
「花丸ちゃん花丸ちゃん!!」
それは何時ものようにルビィちゃんの声から始まった。
図書室の貸し出しカウンターにて何時ものように小説を読んでいたマルに、ルビィちゃんが駆け込むように図書室の外からやって来た。
「ルビィちゃん、図書室はお静かにずらよ」
「ピギッ!!ご、ごめんなさい……」
軽く注意すると、シュンと項垂れる赤い髪の毛にニッコリと笑いながら、読んでいた本に栞を挟んで閉じる。
「それで、ルビィちゃんはどうしたの?」
「先輩達、ホントにガンプラバトル部立ち上げたらしんだよ!!」
「……そっか~」
ガンプラバトル……その言葉にマルは少しだけ心が痛くなった。
マルも少しだけ昔からの友達に教えてもらってやったことはあるし、その時の興奮は覚えてる。それにルビィちゃんがガンプラバトルが大好きなことも。けど……
「花丸ちゃん?」
「ううん、それでルビィちゃんはどうしたいの?」
「ルビィは……そんなに上手じゃないし、ビルダーとしても……それに前に出るの苦手だから」
「……そっか」
ルビィちゃんの言葉が事実だけど真実ではないということは何となく分かってる。ルビィちゃんは優しすぎるから、周りを見すぎちゃうんずら。
「花丸ちゃんは?」
「マルはそういうのに疎いから、それにガンプライブだったずら?に出てる人みたいに可愛くないし、方言出ちゃうし……」
「そっか……」
そこからは暫く静寂だけが室内を覆う。ほとんど無人で、人数の少ない図書室に風の音だけが木霊して――
「あ、ここに居た~!!」
「「!?」」
突然の大きな声によって、その静寂は一変して無くなってしまった。
声の主はルビィちゃんが話してた、マルやルビィちゃんをガンプラバトル部に誘う二年生……高海千歌さんだった。
「千歌ちゃん、ここは図書室だから静かにね」
「あ、そうだった……」
「もう千歌ちゃんったら……」
その後ろから同じく二年生で千歌さんの友人の二人もやって来て、その手にはかなりの本があった。
「どうしたずら……じゃなくて、したんですか?その本?」
「部室だった所に大量にあって……もしかしたら図書室の本じゃないのかな~って」
ベージュの先輩がそう言いながら、カウンターに持っていた本の数々を乗せるので、マルはそれを一つ一つめで確認していくずら。
「……確かに図書室の本ですけ」
ど、と言おうとしたその時、千歌先輩が突然私の手を握ってきた。
「ね!!一緒にガンプラバトルしよう!!」
もう何度目かの勧誘だったずら。
「えっと……マルは初心者だし、どちらかと言えば、ちょっとそこまで興味は……」
「ルビィも……」
「ガーン!!」
マル達二人の拒否に先輩はショックでカウンターに倒れる。ノリが良いずら~。
「まぁ気が向いたら入ってくれれば良いよ。私達もほとんど初心者と変わらないし」
赤紫の髪の先輩の苦笑いの言葉をくれると、千歌先輩を引き連れて(襟首つかんでるから引きずって?)出ていってしまった。
「……ねぇ、二人とも。別にやりたくないとかじゃないんだよね?」
「「え?」」
と、残っていたベージュの先輩が小声で聞いてきた。
「もしそうならこういう手もあるんだけど……」
「……」
家に戻ったマルは、自分の部屋であるものを取り出していた。
「……あったずら」
それは昔、幼馴染みの彼女と共に作った初めての自分専用のガンプラだった。といってもカスタマイズされてるのはさほどで、ちょっと見た目が微妙になってるのが悲しいけど。
正直言えば、この機体を使ったのは一度だけで、今扱えるのかと言われればちょっと難しいかもしれない。けど……
「……ルビィちゃんと……善子ちゃんの為に……」
表舞台なんて似合わないと自覚しつつも、友達のためを思って私は自分の機体の調整を、久しぶりで覚束ないながらも頑張るのだった。
「ずら!!ヤスリが刺さったずら!!」
……頑張るのだった。
ルビィside
「うぅ……」
家に戻ったルビィは自分の部屋でかなり悩んでいた。いや、悩みというかなんというのか……ともかく考えていた。
「……こういうときは」
一人で考えても仕方ないと諦め、携帯でとある番号に繋ぐ。
『…………珍しいな、ルビィからこっちに電話かけてくるって』
「……お兄さん……いえ、昴師匠」
相手はお姉ちゃんの友達の友達で、私にガンプラバトルの戦い方を教えてくれた昴さんです。
『師匠って言い方はやめろって……で、ルビィがそう言うって事は千歌達になんか言われたか?』
「……えっと、それが……」
とりあえず言われたことについてを事細かく話すと、電話越しに微妙な唸り声が聞こえてくる。
『……そういうことか、こんなこと考えつくのは曜だな……ったく、面倒なことを』
「それで、お兄さんにどうしようかと相談したくて……」
『まぁ普通に……って言いたいんだが、お前の場合事情が事情だからな……前になったときは俺とダイヤさんの二人がかりでも大変だったし』
お兄さんにそう言われ、ほんの少しだけ凹んだ。とはいえ知ってるのが三人だけだし、仕方ないと言ったらそこまでだけど。
『ま、せいぜい本気で暴れても大丈夫だと思うぞ?何せ三対一とはいえ、俺に勝った三人だしな。下手なファイターなんかよりはマシだろ』
「……で、でも」
『ならルビィ、俺から見てお前が本気で戦えていたなら、一日だけなんでも言うことを聞いてやる。スイーツだろうが服だとか奢れと言われたらやってやるよ』
「……ホントですか?」
『男に二言はねぇよ。それに、
愛弟子、そう言われた瞬間顔が燃えるように赤くなるのが感じ取れた。大好き(LOVEじゃなくてLIKEな意味で)な師匠にそんなこと言われたら、今までの弱気が嘘のように引いてくる。
『まぁ、一応ダイヤさんには話は通しておくけど、ルビィからもちゃんと言えよ』
「は、はい!!頑張ルビィします!!」
『その意気だ……って果南さんいきなり抱きつくな!!服を脱がそうとするなぁ!!』ブツッ!!ツーツー……
……どうやらお兄さんは果南さんの餌になってしまったのが聞こえたが、気にしたら大変なことになりそうなので頭からはずした。
けど……
「……お兄さんと一日……お兄さんと一日……////」
あぁ、早く
「……ルビィ……はしたないですわよ」
「ピギィィィィ!?お、お姉ちゃん!?」
いつの間にか帰ってきていたお姉ちゃんに生暖かな視線を向けられていたのに気づいたのは、通話を終えて三十分くらいしてからだった。
梨子side
「フフフ……できたわ……漸く完成したわ!!」
机の上で、漸く完成した目の前の機体にうっとりと目を這わせる。白いボディに赤紫のライン、カスタマイズしたライフルに、両腰には少し大振りなナイフを二つと左肩のミサイルポッド、どれをとっても最高の出来になっていた。
「あとは専用のサポートAIを乗せれば……フフフ……」
「梨子~……お夕飯できたけど……」
「は!!」
その言葉に気づいたときには既に遅く、どう見ても苦笑いというか不思議な表情をしていたお母さんの顔に顔が赤くなってしまった。
「大丈夫よ梨子、お母さん分かってるから……えぇ、分かってるから」
「ご、誤解!!誤解なんだってお母さん!!」
その後何とかして説得はできたものの、暫くお母さんから奇異の目を向けられるようになったのは言うまでもなかった。