ガンプライブ!サンシャイン!!~水の乙女と宇宙を求めるもの~   作:ドロイデン

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高海千歌生誕祭番外編2017

「やって来ました……水族館!!」

 

 ハイテンションな千歌のかけ声に、俺は若干ため息つきながら苦笑いをしていた。

 

「元気無いね昴君」

 

「誰のせいだ誰の、果南に断り入れるの大変だったんだからな」

 

 というのも、世界大会等があるため今年はダイビングできる回数が少ないからということで、前半は本当に果南とダイビングシーウォッチするつもりだったというのに、その初日に無理矢理千歌がシーパラダイスに行くことを約束させられたのだ。

 

 これには普段温厚な果南も若干ブチギレで、埋め合わせに色々とさせられるはめになったのだ。肉体的に持つのか厳しいところである。

 

「だいたい、なんでシーパラダイスなんだよ」

 

「いや~内浦の近くで遊びにいくとなるとここしか無いと思って……模型ショップだと結局いつもみたいにバトルして疲れる~ってなるから」

 

「そこはまぁ同意するし分からなくもない……」

 

 実際東京と違ってかなり田舎な場所だということもあるし、何より人口が少ないからそういう観光行楽地は少ないしな。

 

「で、本音はなんだ?」

 

「な、なんの事かな?」

 

「惚けんな、お前が無理矢理駄々を捏ねるときなんて中々無いからな。意外と物わかり自体は良いほうだし」

 

 カリスマ性というやつは無いが、精神的なタフネスと周りの状況を見て行動できる決断力という意味ではリーダーというに相応しい千歌が駄々を捏ねてまでするのは、多分梨子ちゃんを加入させるためのあれ以外多分無い。

 

「う……バレてた?」

 

「当たり前だ。曜には劣るが何年幼馴染みやってると思ってんだよ」

 

「ダヨネー……」

 

 千歌はそう言うとガックリと肩を落とす。

 

「でも昴君が悪いんだよ!!」

 

「はい!?どうしてそうなる?」

 

「だって昴君、最近私とは全然二人っきりで話したりしてくれないじゃん!!」

 

 そんな事はと思って振り返ってみるが、確かにガンプラバトル部結成以来、二人だけで話したかと言われれば全てNOだった。

 

「曜ちゃん、梨子ちゃん、ルビィちゃん、花丸ちゃん、善子ちゃん、鞠莉さん、果南ちゃん、ダイヤさん……みんな番外編込みで少なからず二人っきりで行動したことがあるのに私だけ無い……それって凄い不平等だと私は思う!!」

 

 う、メタいが確かにそうだし、まさか千歌に正論を突かれるとは思っていなかった。

 

「というわけで、今日は思いっきり二人っきりで遊ぶということです!!」

 

「まぁ別に良いけどさ……それなら直接果南に言ってくれよ」

 

「え?首折られたくないから無理」

 

 デスヨネー。

 

 

 

「しっかし、水族館ってのも来るのは久しぶりだな」

 

 とりあえず水族館に入ってみて色々とぶらりと見て回る。

 

「そうだね~多分小学校低学年くらいじゃないかな?」

 

「そうだろうな……」

 

 東京の人間が某ネズミの国に積極的に行かないのと同じように、近すぎると逆に行く気にもならないということだろう。

 

「それに俺はダイビングすれば種類は兎も角、泳いでる魚はよく見てるしな」

 

「いつも思うけど、ダイビングって大変だよね?なんで始めようと思ったわけ?」

 

「まぁ最初はガンプラバトルの為だったな。ダイビングっていう無重力に似てる空間だしな」

 

 ふーんと詰まらなそうに言うが、次の瞬間眼を輝かせる。

 

「このちっちゃいのカワイイ~」

 

「カクレクマノミだな。珊瑚と共生してるから中々姿を現してくれないんだ」

 

 映画の題材にもなったオレンジの小魚を眺めながら、千歌のニヤニヤした表情を写真に撮る。

 

「あ~!!なんで撮るの~!!」

 

「安心しろ、AqoursのグループLI○Eに貼るだけだ」

 

「それはそれで大変なことになるからダメ~!!」

 

 スマホを奪い取ろうとぴょんぴょん跳ねてくるのをちょいちょい避けながら、再び千歌の写真を撮る。

 

 五分ほどそれを繰り返すうちに千歌の顔がハリセンボンのように膨れ初めて少しだけ笑う。

 

「悪い悪い、冗談だからその顔はやめろって。女子高生がする顔じゃないぞ」

 

「昴君が悪いんでしょ!!もう……」

 

 若干顔が赤い気がするが、とりあえず本人の名誉のために言わずにおこう。

 

「っと、そろそろアシカとイルカのショーが始まるみたいだぜ」

 

「イルカ!!行こう昴君!!」

 

 なんとまぁ現金というか、別にそれが千歌らしいと言えばそうだから別に構わないが。

 

 

 

 ショーを見に来てみると、やはり八月の頭というだけにお客さんが満員御礼と言わんばかりに座っていた。

 

「ひゃ~人が多いね~」

 

「まぁ夏休みだからな。普通に観光客とかが遊びに来てるんだろ」

 

「そうかもね~あ!!そろそろ始まりそう!!」

 

 そう言いながら席で事前に買っていたソフトクリーム(バニラ)を舐めながらはしゃいでいる千歌を見つつ、俺も苦笑いでソフトクリーム(抹茶)を嘗めてステージを見つめる。

 

 イルカが宙を舞い、アシカのボール芸等のパフォーマンスをする度に観客の観客が会場を覆い、千歌も夢中になってはしゃいでる。

 

(そういや、千歌と出掛けること自体も久しかったな……)

 

 多分中学になってから、話はしても出掛けるのは果南とばっかりだったからか、修学旅行以来だろう多分。

 

 いつ以来と思っても思い出せず、それほどまでだったと逆に痛感するくらいだった。

 

(……案外、俺って千歌のことを知らないのかもな……)

 

 

 

 

「あぁ楽しかった!!」

 

 夕方になって外を出ると、俺と千歌はバス停のベンチで一緒に座る。

 

「そうだな、なんか色々と久しぶりだったし」

 

「ふふ、そうだね~」

 

 そう喋りながらバスを待つ。しかし数分くらいしてからか互いに無言になり、シンとした空気が流れる。

 

「ねぇ昴君」

 

「……ん?」

 

「私って役に立ってるのかな。皆みたいに尖った部分も無くて、寧ろ劣ってて……私って普通すぎるのかな……」

 

「……そんなことねぇよ」

 

 俺はそう言いながら近くの自販機でジュースを買うと千歌に渡す。

 

「お前が引っ張ったから、曜も桜内さんも引き寄せられたんだ、勿論俺もな。でなかったら俺は今頃プロじゃなくなってた」

 

「で、でも……」

 

「お前が普通なら、プロとしても二流な俺はお前以下の普通な凡人だぞ?胸を張れって、お前は俺の救世主なんだからさ」

 

「……そっか」

 

 よっと、そういって千歌はベンチから立ち上がり、

 

「えい♪」

 

 後ろから抱きついてきた。

 

「えへへ、ありがとね昴君」

 

「……勝手に抱きつくなよな、ったく」

 

 そう言いながらも抱きつき続ける千歌にため息をつく。

 

(ありがとうはこっちの台詞なんだよ、このバカ千歌……)


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