ガンプライブ!サンシャイン!!~水の乙女と宇宙を求めるもの~ 作:ドロイデン
「……おい三人とも、こいつはいったいどういうつもりだ?」
現在俺、天ノ川昴は目の前に土の下に座っている知り合い三人娘をジト目で睨み付けていた。
事の発端はテスト明け初日で、前の千歌達との試合での機体の修復に専念しようと思いつつ、久しぶりに果南の手伝いに行こうと考えていた放課後開始の矢先のことだった。
昇降口に来たとたん、無理矢理千歌と曜に捕まり、いつもお世話になってるバトルルームに連れてこられたと思いきや否や、いきなり三人から揃って開幕のポーズをされたのだ。
いくら今日の運勢、星座血液型共に最下位とはいえこれは無いんじゃないか?
「実は部室の片付けを手伝って欲しいといいますか……」←千歌
「あまりにも物置のようになっていて人手が足りないと言いますか……」←曜
「本とか結構重たいものも沢山あって大変で……」←桜内さん
なるほど、確かにあそこは今現在物置というか汚部屋というか……埃やら何やらが一年以上放置されてた場所だ。男一人でも大変だというのに女子なら三人いたとしても尚更だ。だが、
「本音は?」
「昴君が部に入らないからどういうことかと思って……」
「……」
やはり嗅ぎ付けていたようだ。
「別に入らないとは言ってない。というより俺は今日用事があるんだが……」
「え?いつもノープランな昴君が?」
「よし曜、明日ダメージA判定で模擬戦しような「ごめんなさい!!」ったく、ここ最近果南と会ってないから会ってこようと思ったんだよ。ついでに俺の機体も今日は確認作業しなきゃならんし」
何せ最後の最後にパルマで胸を一撃だ。いくらダメージが入らないとはいえ、動かした以上メンテナンスを怠るわけにはいかない。
「ふーん、また果南ちゃんと……ねぇ?」
「……なんだよ曜?」
「べっつにー、私ってあんまり和食得意じゃないからお赤飯なんて食べたくないよ」
まさかの言葉の裏拳を喰らいずっこけてしまう。イヤイヤイヤ、ちょっと待てっておい!!
「曜テメェ!?俺はそんなことしねぇよ!?」
「前に果南ちゃんの家に泊まって、食べられそうになっておいて良く言うよね」
「よ、曜ちゃん……ここ学校だから……////」
完全に紅くなってる桜内さんにジト目を向けながらも、元凶の従姉の言葉には事実ゆえに何も返すことができない。
言っておくが俺は食べてもいないし食べられてもないからな!!事実だよ!!本当だよ(必死)
「ねぇ曜ちゃん?果南ちゃんが昴君を食べるってなに?」
「千歌ちゃん、先に二人で片付け始めましょう。うん、それが良いわ」
相変わらずそっち方面は鈍く、ブー垂れるバカ千歌を桜内さんがどうどうと宥めながら部屋のなかを出ていく。
「……はぁ、別に下ネタを言うなとは言わんが場所を考えろ場所を」
「……ごめん、その通りだよね」
ため息混じりの注意を受け止めたのか、曜も微妙にバツの悪い顔をしている。
「で、本当の目的は?」
「……やっぱり気づいてるよな、お前は」
「当たり前だよ。何年の付き合いだと思ってるの?」
全くもってその通りだ。
「それで?結局どうなの?」
「……ごめん、今は言えない」
こればかりは果南達の問題だしな。時が解決するとまでは言えないが、それでもあの三人の問題に横槍を入れるのは得策じゃない。
「ふーん、まぁ良いけど。それと、この前言ってた……善子ちゃんだっけ?彼女のことも教えてほしいんだけど」
「教えてか、結構有名だぜ」
何せ鞠莉さんに頼んで、バトルシステムに彼女の戦闘データを元にしたAIデータを組み込んでもらったぐらいだし。
「前も言ったけど、津島善子は去年のアンダー15の世界大会の優勝者。まるで未来を見透すような操作技術と、黒い『ウィングガンダムゼロ(EW)』を使ってることから『死天使』なんて呼ばれてるくらいだ」
「『死天使』……『熾天使』と掛けてるのかな」
「だろうな、何せ機体名は確か『
そういうとぎょっとした目でこちらを見つめる。
「ど、どっちもガンプライブとか選手権で有名なところだよね!?どうして浦の星に!?」
「さぁな、少なくとも同じ静岡だし俺もガンプラ学園に入学してると思ったんだがな……」
しかしそう考えると、少なくとも戦力不足に事欠くことは無くなる。何せ、メイジン杯級ビルダーの桜内さん、まだまだ未熟だが光るもののある千歌、そして今あがった善子の三人なら、例えチーム戦でも並みの敵だったら相手にすらならないのは目に見えて分かる。だから、
「ま、そのためにはまずはルビィと花丸を入れるところから頑張れや。俺は帰るぞ」
「ヨーソロー!!果南ちゃんによろしく言っておいてね~」
「うーん……どうしよう……」
自転車にてたどり着いた果南の家の店に入ると、何やら難しい顔でカタログを覗きこんでる果南の姿があった。店番ちゃんとしろよ、おい。
「……なにやってんだ果南」
「あぁ、昴。ちょっと相談なんだけどさ」
「相談?いったいなんだ?」
珍しく果南が相談してくることに、若干不安を覚えるもとりあえず聞いてみる。
「実は、鞠莉から小原が夏から運営する屋内プール施設のプレオープンチケット貰ったんだけどさ」
「ふーん……」
なんだ、何時もの鞠莉さんのお頼みか。そんなの何時もの事だし悩む必要が……
「で、貰ったのは良いんだけど……
「へぇ…………はい?」
チョットマテ、イッタイナンテ言ッタ?
「カップルチケット?……え?なんで?」
「うん。なんでもカップル限定の特別なサービスがあるとか無いとかで……その調整のためにって」
ここまで言われて漸く今日の運勢が大当たりしていたと思う。うん、もう察しましたよ
「だからね、一緒に……行こ?」
「ッ!?」
まさかの上目遣いからの疑問符系の質問である。しかもかなりラフな薄い服から見える谷間。うん、普通に悩殺物である。
「……」
「昴?」
「……!!」ダッ!!
たまらず俺は逃げた。振り返って全速力、それはもう普段使わない足の筋肉を総稼動して――
「知ってた?私からは逃げられないんだよ?」
――為す術なく捕まった。しかも後ろから首に両手を回して体を押し付ける体勢……果南お得意の拘束ハグだ。
実際これには鞠莉さんやダイヤさんも逃げる度に使われて、最終的にはちゃんと放すか、子悪魔的に首をゴキゴキさせるかの二択しかないのだが。
「デスヨネー。分かった、行きます。ちゃんと誠心誠意行かせてもらいますよ」
「うん。よろしい!!じゃあ今度の土曜日、一緒に水着買いに行こう」
「流石にそれは「ハグしちゃうぞ♪」……はい、ご一緒させてもらいます」
そこまで言って漸くご満悦なのか、首ゴキリは無しで普通に放してくれた。
「あ、それと今日は一緒にお風呂に入ろっか♪泊まる為の服も準備してあるし」
「お願いだからそれは勘弁して「ハ・グ♪」……せめてお風呂だけは勘弁してくださいお願いします」
もうどうにでもなれ、そう思いながらルンルンと走っていく果南の後ろ姿を見て、
「俺はどうしてここに来てしまったんだろう」
そう呟いてしまったのは仕方ないと思いたい。
オマケ
鞠莉「かな~ん!!これ、プレゼントでぇす!!」
果南「また突然来て……プールのプレオープンチケット?それもなんでカップル?」
ダイヤ「あまりにも昴さんが果南さんに手を出しませんので、私と鞠莉さんで相談して」
鞠莉「これで昴のheartをcatchingするのデェス!!ついでに水着を一緒に買いに行けば」
果南「……そっか……そうだね……そうだよ!!うん!!やっぱり私がお姉ちゃんとしてちゃんと昴の面倒を見ないとね!!うん!!」
ダイヤ(果南さん……いつもはさっぱりとしていますのに、昴さんが絡むと……何と言いますか……お姉さんぶりたくなるような……これがいわゆる姉ショタ好きの考えなのでしょうか……)
こんな会話が有ったとか、無かったとか……