ガンプライブ!サンシャイン!!~水の乙女と宇宙を求めるもの~ 作:ドロイデン
「……」
対戦当日の水曜日、放課後の対戦までに自分の機体を、理事長である鞠莉さんから宛がわれた教室の一角で最終調整していた
「おい昴、今回の勝率としてどれくらいだと睨んでる?」
と、同じく教室でやることがなく、今日は使うことはない自らの愛機を調整しているフェリーニさんが聞いてくる。
「そうですね……たった数日でそこまで上達してるとは考えにくいので、真央さんとフェリーニさんが用意されてる素組のそれだとしても……8:2ぐらいですかね」
「随分と言い切るな」
「当然、ガンプラバトルを初めて数週間程度の奴が、少なくとも二年近くバトルし続けたプロと戦えば、よっぽどのことが起きない限りはですけど」
例えばどこかの誰かが三人にコーチを付けてなければ、俺がそう言うとフェリーニさんはなにも言わず機体の関節を確認する。
「ま、それでも六割で勝てますでしょ。なにせ素組というハンデが有っても、操るのは古参の『
「そうかよ。で、今日のセッティングは?」
「アサルトアーマーとディープビーム砲、バルルスとキャットゥスをそれぞれ翼に二つずつ、三連装ミサイルポット二つにビームカービンと重斬刀二振り、あとNJCを……」
「そう言うわりにだいぶ本気じゃねぇか。なんだそのフル装備は」
失礼な、そう思いながらセッティングを終える。
「いつもなら重突撃銃二丁装備してるんですがね、SEED系が二人いるんで実弾だとそこまで大したダメージにならないんで」
「にしても良くもまぁNJCなんてもの取り付けられたなおい」
「EX『ミーティア』の推進ユニットが『ジン・ハイマニューバ』と似たような規格なんで、それ弄くって取り付けたついでに、内部バッテリーにNJCも取り付けた感じですけどね」
お陰で推進エネルギーだけは粒子を使わず自前運用できるため、セッティングではほとんど欠かすことのできないパーツなのだ。
「最も翼を撃ち落とされたりして、推進ユニットがヤられたらその時点で機動性ほぼ皆無になりますがね」
「まぁ当たり前だろうな。お前的に一番厄介そうなのは誰なんだ?」
「……そうですね――」
「それでは、新たなる浦の星のgunpla fighterと昴率いるpro teamとのバトルを始めます」
放課後、体育館の中央に置かれた台座に千歌達三人が相対する。審判にはダイヤさんが俺たちの間にたっている。
「ルールは30分の3対3、ダメージレベルはC判定、千歌さん達はプロチームの機体を一体でも撃破に成功すれば勝利、逆に昴さん達は落とされることなく全員撃破すること、まずは互いによろしいですわね?」
「はい!!ダイヤさん」
「……こちらも同じく」
「はい、では次にプロチームですが、ハンデとして昴さん以外……つまりフェリーニさんと真央さんには、こちらで用意したそれぞれの過去の愛機である『ウィングガンダムフェニーチェ』と『ガンダムX魔王』の、それぞれレプリカの素組で戦ってもらいます」
ダイヤさんのその台詞に、鞠莉さんの近くにいたスーツの男二人がケースを持ってきて、それぞれに中に入っている機体を二人に渡した。
「……確かに素組の『
「こちらも同じくです」
つまり雑に作られた素組では無いことは確認されたわけだ。まぁ鞠莉さんはそう言うところは細かいから、下手にそんなことはしないとは思っていたが。
「それでは次に千歌さん達、チームaqoursは勝てば部の発足を認められます。が、負ければ部員数五人揃うまで発足を認めません。いいですわね?」
「分かっています」
千歌がはっきりとそう言う姿に、内心少しだけだがリーダーらしくなってきたと思うが、まだまだというような雰囲気も見てとれる。
「それでは、両者共に出撃の準備を」
その言葉に、俺ら三人は無言でGPベースに機体をセットし、宙に現れたコンソールをそれぞれ握る。
「……天ノ川昴、『ジン・AHM』出撃する!!」
降り立ったフィールドは、どうやらサイコガンダムで有名なニューホンコンのようだった。しかも真っ昼間だ。
『あちゃー、これはちょいとワイには厳しいかもしれへんですわ』
とりあえず近場のビルの影に纏まりながら、真央さんが通信で苦笑いで言ってるが、俺としてはまぁ『サテライトキャノン』が使えないというだけで結構痛手だった。しかも、
(『ジン・AHM』は重力下で飛行できないというおまけ付きかよ)
元々『ディン』や『シグー』と違って、空中戦闘を想定していない『ジン・ハイマニューバ』をベースにしてるだけに、ロングジャンプぐらいならまだしも他の二人と違って飛行移動できないという足枷までつけられてしまった。
(まぁ低空飛行ならできるから問題ないが、相手の動きはっと……)
千歌達の動きを探るべくレーダーを確認するも、やはり建物が多く確認ができない。
『どうする昴、奴さんはどう動くと思う?』
「……ニューホンコンは建物が多いので、『ガナーザクファントム・リリィ』の収束ビームを除けば、彼方も接近せざるを得ないと思います」
『ですやろな。何せ天候は快晴、ワイの『X魔王』にはサテライトシステムはあれどソーラーレイシステムは模造品やさかい非搭載や、使えるのはビームサーベルとビームライフルぐらいでっせ?』
「だったら『お前ら散開しろ!!』な!?」
いきなりのフェリーニさんの言葉に、大慌てでスラスターを吹かして建物から離れる。するとその直後、紅い砲撃ビームの光線が、俺達の居たビルの根本を貫通し、轟音と共に崩れ落ちた。
「『オルトロス』か!!てことは!!」
手早くカメラを確認すると、砂煙が立ち込めていたが、やはりそこには重粒子砲塔『オルトロス』を構えた紅い『ザクファントム』……『ザクファントム・リリィ』が確認できた。
「フェリーニさんはすぐに『リリィ』を落としてください!!何発も射てる代物じゃないですが、射たれたら恐らく次は無いです!!」
『了解した!!真央、お前は昴の直掩に付け、恐らく狙いは各個分断することだ!!素組で使える武装が少ない『魔王』じゃ援護が関の山だ!!』
『分かっとりま……!!接近アラート!?』
まるで狙ったように上から現れた『クロスボーン』のカスタム機……恐らく曜の機体にビームの雨霰を撃ってこられ、今度こそ完全に分断されてしまった。援護しようと反転して援護しようにも、後ろからの接近アラートに慌てて重斬刀を抜く。
「くそ、思惑通りかよ……千歌!!」
そこに居たのは、青かった部分がオレンジのカラーリングに直され、肩のブーメランと小型のシールドを両腕に装備し、さらに手にはビームを展開したフォースシルエットの下翼を改造した対艦刀で鍔迫り合う『インパルス』の姿がそこにあった。
『そうだよ!!これが私達が昴くんに勝つための方法!!』
「そうか……よ!!」
とりま蹴りを相手に入れて、一端距離を離す。改めてよく観察してみると……
「……なるほど、『デスティニーRシルエット』を組み込んだか」
そう、オレンジに塗られているが展開され中に三つの小型ウィングを搭載した大きな翼と、腰には今手に持っている対艦刀を左にもう一本装備しており、だいぶ接近戦を予想した機体に組み上げられていた。
『うん、これが私の機体、『インパルス・サラバティ』だよ!!』
「『サラバティ』……なるほど、水の女神か……『aqours』の名前にぴったりの名前だな」
『へへ、そうでしょ!!』
そう言いながら、千歌は左手にビーム砲を構えて撃ってくる。俺はスラスターを巧みに動かし避けながら、ビームカービンとディープビーム砲を千歌に放つ。
『う、やっぱり昴くんは強い!!』
「当たり前だ、世界大会出場者を舐めるんじゃねぇ!!」
『けど!!それでも!!』
避けながら近づいてくる千歌が再び右手の対艦刀を水平方向から薙ぐ。それに対して俺もカービンを捨てて、両手に重斬刀を握り受け止める。
「『勝つのは俺/私だ!!』」
ここに、aqoursの初めての戦いが火蓋を切って下ろされた。