ガンプライブ!サンシャイン!!~水の乙女と宇宙を求めるもの~ 作:ドロイデン
日曜の夕食時、俺と真央さんがホテルビュッフェを楽しんでるときだった。
「そういえば昴はん、対戦相手の子達ってチーム名とか決めとります?」
唐突に聞かれ、箸で掴んでいたポテトサラダが小鉢に戻る。
「……そういや聞いてなかったな」
「それって大丈夫なんです?ガンプライブ出場にはチーム名と、最低でも三人のメンバーが必要なんでっしゃろ?」
その通りだ。基本的にガンプライブの出場は3~10人と決められており、それと同時にチーム名を表す名前が必要になる。
最も、ほとんどのチームがフルメンバーの10人で挑むため、最低人数など有って無いようなものなのだが、名前に関してはそうもいかない。
「まぁ真面目な梨子ちゃんや曜も居るから大丈夫だろw」
「そうですな。幾らなんでも気にしすぎでしたわw」
「「…………」」
「……どうしよ、多分あいつら気づいてねぇぞ」
今さらの事に頭が痛くなる思いだった。なにせリーダーがあの阿呆丸だしの千歌だ、つまり二人も阿呆に感化されててもおかしくないわけで……
「……あとで連絡して聞いてみます」
「そうですな、その方が良いかと……」
俺のため息混じりに真央さんも苦笑で答える。しかしチーム名か……
「…………」
「およ?昴はんどうかしました?」
「いえ、なんでも……」
(俺が動かなくても、案外あの人が何とかしてくれるかもな)
嘗て、『絶対防御』と唄われ二年前に消滅したガンプライブユニットの少女を思い浮かべ、気付かぬうちに笑みを浮かべていた。
『チーム名?それなら今日決めたばかりだよ』
夜、曜に携帯で確認を取ると案外あっさりと教えてくれた。
「今日まで決まってなかったのかよ」
『う、私達も気づいたのは昨日の昼過ぎだし……そう言われても仕方ないかも』
「まぁ決まったならそれはそれで構わないけどよ、それで?なんて名前なんだ?」
『うん、『Aqours』って言うんだ。水って意味なんだけど』
「…………そっか、悪いないきなり」
俺はそれだけ言うと曜との通話を切る。しかしそれ以上に『Aqours』という名前に歯噛みしたくなった。
(あいつらは……その名前が持つ意味を分かってるのか……)
恐らく考えたのはあの三人じゃない。寧ろ別の人間……そう考えると一人しか思い付かなかった。そう思ったときにはおれは携帯である人に電話をかけていた。
「…………」
自転車を飛ばし、千歌達の家の海岸までやって来た俺はその人物が来るのを待っていた。波のさざめく音だけが聞こえてきて、朧月がうっすらと見える。
と、後ろからサクサクと砂を踏みしめる用な足音が聞こえてきて、徐々に徐々に近づいていた。
「…………待ってましたよ
振り返ると、長く綺麗な髪を靡かせ、黒いロングパンツに白のTシャツを纏ったダイヤさんが立っていた。
「……俺がなんで呼んだが、分かりますよね」
「……ええ、チーム名のこと……ですわね」
その通りだ。寧ろそれ以外で俺がこの人を呼ぶことは今は無いだろう。
「分かってるんですか?あの名前を……『Aqours』を渡すその意味を……」
「…………」
「俺だって事情は知ってますし、何より貴女達にも理由があった事は知ってます。けど……千歌達を、何も知らないあいつらを『
俺の叱責にダイヤさんは何も答えない。いや、答えられないんだ。
「貴女達三人の『Aqours』が、あの日からなんて言われてるか知ってますか?いや、知ってるはずだ」
「それは…………」
「『臆病者』、『名ばかりチーム』、『逃走者』、勿論それが事実とは違うことは分かっています。それでも……」
実際、ダイヤさん達の実力はかなりのものだった事には変わりない。たった三人だけのチームが、地方の小規模な大会とはいえ連勝を続けていたといえばその実力も分かろう。寧ろ下手な全国出場チームよりも腕は上。それゆえに、ファンもそれなりにできていた。
「貴女達はファンだった人達を裏切った。それが今度は後輩たちにその名前を押し付ける?大概にしてくれ!!あんたは千歌達に怨みでもあるのか!!」
「ならどうすれば良かったんですの!!」
突然の怒声に今度は逆に驚かされる。
「果南さんも鞠莉さんも私には大切な仲間であり友人なんです!!両方の気持ちも痛いほどに……それでもどちらしか選べないのに、私はどちらも選べずただ流れに任せて……教えてくださいな昴、私はどちらを選べば良かったんですの!!鞠莉さんと果南さん、どちらの手を取れば良かったんですの!!」
「……だからって、中途半端にアイツらに押し付けるのとは」
「分かってるんです!!けど、私達が戻るべき場所は……あの名前にしか無いんです……少なくとも、私はそう思っています」
さざめく波に消えそうな声で言うその言葉を最後に、ダイヤさんは振り返って立ち去ろうとする。
「ダイヤさん……なら最後に一つだけ聞きます。貴女は、
「…………」
俺の問いに答える事はなく、去っていく歳上の少女を見ながら、俺は悪態を付きながら空を見上げる。
「千歌、お前達の試練はまだ始まったばかりだな……」
どう乗り越えるのかと考えながら、俺は置いておいた自転車に跨がり、ホテルへの帰路へつくのだった。
オマケ
ルビィ「作者さん、私達の出番は……」
作「えっと……まだ暫くは無い……かな?」
ヨハネ「この私を出さないなんて……guiltyよ!!」
花丸「大丈夫ずら善子ちゃん、もう少ししたら出番あるずらよ」
ヨハネ「善子言うな!!次に善子っていったらバスターライフル射ちまくってやるんだから!!」