ガンプライブ!サンシャイン!!~水の乙女と宇宙を求めるもの~ 作:ドロイデン
輝きたい!!
初めは、孤独を埋めるために始めただけだった。
これといって運動も良くない、容姿も普通、勉強もそこそこ、それでいて友達はいない。小学生でいつも一人だった俺には、何もないのが普通だった。
そんなときだった。スクリーン越しだったが俺は見たんだ……様々な光の雨を浴びて輝く、少女と機械の戦士。
いつの間にか引き込まれて、気づいたときには走っていたんだ。
これは、そんな俺が、新たな9人の乙女たちと共に始める……出会いと夢のような物語――
「こーら昴!!またこんなところに居たんだね」
聞き覚えのあるキレのある声に、俺はげっと思いながら横になっていた大木の枝の下を覗きこむ。そこには見慣れた蒼い髪をポニーテールのように縛った、トレーニングウェアの年上の見知った少女がそこにはいた。
「なんだ、また果南かよ。毎日しつこいね、体力バカなの?」
「ふふん、伊達に毎朝走ったりしてないよ。それよりも、いい加減野宿生活なんてバカなことやめなさい。毎朝探す私や千歌達の立場を考えなさい」
そういって樹によじ登ってくる体力バカ……松浦果南に程々呆れながら、高三女子が木登りなんてするなと心のなかで一人ごちる。
「別に俺は好きでやってるだけだよ。それに野宿じゃなくてテントだ、間違うな」
「どっちも変わらないじゃん。ていうか、自分の家も自分の部屋もあるのになんでテントで生活なんかするのさ」
「あんな広い家に自分一人ってことを考えてみろ?静かすぎて落ち着かないったらありゃしない」
そう言ってやると、今度は果南の方がため息をついた。そして果南がここまで登ってきたので、仕方なく場所を少し譲る。
「ありがと。ほんと、毎日のようにテント生活してて飽きないよね?鞠莉の破天荒が移った?」
「そりゃこっちに来てあんな破天荒な人に毎日のように付き合わされてたら受けない方がよっぽどだよ。て、そろそろ学校の時間か……」
「……いつも思うけど、昴は学校に教材置きっぱにし過ぎだよ?」
「どうせ遅刻も欠席も大抵しないから問題ない。あれも今新しいの作ってる真っ最中だから」
俺はそう言うとなんの躊躇いもなく地面に降りる。
「ちょ!!いきなり飛び降りるな!!」
「別によくやってることだから関係なし。それじゃ放課後な~」
「ま、待って昴!!」
大慌てで呼び止める果南にやれやれと思いながら振り返る。
「なに?」
「…………助けて」
「へ?」
「……思ったより高くて……降りれないから……助けて////」
この時、なにやってるのこの知り合いと思った俺は悪くない、悪くないはずだ。
「「ガンプラバトル部どうですか!!」」
「……何やってるの?」
果南を下ろし、受け取った制服に着替えて登校早々に、揃って声を出してる友人二名を見て、俺は直感的にそう思った。
「あー!!昴くん!!心配してたんだよ!!」
と、詰め寄りながらアホ毛を揺らしてるオレンジの髪の女の子……高海千歌はまるでぷんぷんと言うような表情である。あと、女の子特有の良い香りがヤバイです助けてください。
「千歌ちゃんの言う通りだよ、今日はどこまで徘徊してたの?」
と、その後ろから苦笑いだが目が笑ってないベージュの髪の子……渡辺曜が問い詰めるように聞き返す。
「徘徊って人聞き悪いな、それに普通に登校してるんだから問題なしだ」
「「大有りだよ!!」」
声を揃えて問い詰めてくるのに、個人的にはほんとに勘弁してほしかった。
「はいはい、じゃあさっさと千歌は勧誘に戻れ、早くしないと新入生全員いっちまうぞ?」
「あぁ!!そうだった!!」
と、思い出したように駆け出していく千歌に俺は今日何度目かのため息をつきたくなる。
「――それで、今日の昴くんはいったいどこで寝てたのかな?」
と、真面目に表情が怖い曜が首を傾けて聞き直す。
「別に、家の近くの山道の上だよ。一応家には一度戻ってるし」
「ふーん?ちなみに果南ちゃんになんかアプローチはしたの?」
今度はニヤニヤとにやけながら聞いてくる親友に、こちらもニヤリと笑う。
「そんな下世話なことはしねぇよ。それよりお前こそせっかくの千歌と二人っきりの時間を取られたのにいいのか?」
「ちょ!?いくら千歌ちゃんがそういう事に疎いからってやめてよ!!それに他の皆だって居るんだから!!」
大慌てで否定するが、小学校高学年からこっちに来ての付き合いの俺としては、こいつがそういうやつだと言うことは分かってるので関係ない。
「え?ならこの前曜が千歌のパジャマを着て興奮してたのも……」
「ギャァァ!?な、なななななんで知ってるの昴くん!?その時昴くん居なかったよね!?」
「ん?果南が言ってたよ?最近曜がそっちの趣味に走ってるから同い年としてなんとかしろって」
まぁ実際こいつ、千歌の写真を盗撮して、思い出ファイルなんてものを作ってる位の千歌LOVEだからな。端から見ると美少女なのに残念でならない。
「とりあえず、そういうことは二人だけの時にしろよ?」
「……釈然としないけど、ヨーソロー」
と、その時だった。
「ピギャァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!?」
「「うわ!?」」
突然の大きな奇声に思わず耳を塞いでしまう。ってあれ?この声って……
「やっぱりか、ルビィ」
「ピギッ!?あ、昴お兄さん」
やっぱりあの硬質ポンコツな黒澤家の姉と違って、穏やかかつ小動物みたいな雰囲気の妹……黒澤ルビィだった。
「ずら?ルビィちゃんの知り合い?」
と、今度は聞き覚えの無い天然ボイスと思いながら声の方向へ向くと、黄色いセーターを着た茶髪の、これまた天然そうな顔の少女が千歌の後ろにいた。というかずら?方言か?
「花丸ちゃん、この人が前に言ってたお兄さんだよ」
「なるほど~そうだったずら~」
「へぇ、ルビィの知り合いか?」
あの人見知りの激しいルビィが珍しいものだと、少しだけ感慨深く観察する。
「あ、おら……じゃなくてマルは国木田花丸っていいます。よろしくお願いします」
「おう、よろしく。俺は天ノ川昴、ルビィの知り合いだ。まぁよろしく頼むよ」
そういって挨拶すると、今度はルビィの後ろから何かが落ちる音が聞こえてきた。ていうか、今日は今日で騒がし騒がしいなおい……
「あ、善子ちゃん」
「善子言うな!!……って、ず、ずらまる?」
「じゃ~んけん、ぽい!!」
花丸のじゃんけんの合図に、善子(?)がフレミングの法則の覚え方みたいな指を出す。
「やっぱりその特徴的なチョキは善子ちゃんずら~」
「だ、だから善子っていうな!!ヨハネはヨハネなのよ!!」
ヨハネ?……なんで聖人の名前を……?
「なぁ花丸?そいつ誰?」
「えっと、津島善子ちゃんっていって、マルの幼なじみずら」
「だから善子って呼ぶな~!!私は堕天使ヨハネよ!!ヨ・ハ・ネ!!」
……なるほど、詰まる所また残念系か……なんで最近のかわいい子達に限って」
「か、かわ!?な、なにいってるのよアンタは!?」
「え?口に出てた?」
「おもいっきり出てたわよ!!えーい!!こうなったら逃げる!!」
そういって立ち去ろうとする善子……ヨハネを追って、花丸とルビィも足早に去っていく。
「……はぁ、平穏がほしい」
「……何を言ってますの?あなたは?」
と、ここに来て聞きたくないポンコツ声……主の方向を見ればやはり居たポンコツ生徒会長の鋭い目が
「やぁダイヤ先輩おはようございます。それじゃ俺は教室に……」
「あら?あなたもそこに居る彼女達と共謀してると聞きましたけど?どういうことか説明してくれますわよね?」
「はい?」
ちょっと待て?共謀してる?いったい何を?
「彼女達と一緒にガンプラバトル部を設立するという妄言を言ってると、私は聞き及んでますが?」
「なるほど、ちょっと待ってくれダイヤ先輩?俺はその手の話は一切聞いてない、まさに寝耳に水の事なんだが?」
千歌てめぇ、勝手に人を巻き込みやがって!!何してくれてるんだばか野郎!!
「問答無用!!今日という今日はふざけた生活をもとの通りにしてさしあげます!!」
「イテテ!!襟を引っ張るな!!首、首が絞まる!!」
何とか朝のうちにダイヤさんを納得させ放課後、俺はいつものように自分のテントではない家に一旦帰る。え?千歌達と一緒に行かないのかって?色々と大変なんだよ、色々と。
鍵を開けて入って、生活感の無い、シーンとした室内にため息をつきながら、とりあえず自分の部屋へと向かう。
部屋には様々なガンプラがところ狭しと並べられており、机のうえには作成途中の機体と、いつも使ってる、アサルト装備の『ジン』が乗せられている。
「うーん、やっぱりカッコいいよな!!ジン!!」
皆がガンダムガンダムと、ガンダム系ガンプラを使う中、『ザク』の二番煎じと呼ばれる『ジン』こそが、俺の最大の愛機だった。
だが『ジン』には『ジン』の良さがある。機体性能はそこそこ、シールドこそ無いが機動性は『ザク』に引けを取る事はないうえに、ザクと違ってビームもバズーカだが使える。まさに初期のザフトを支えたということに偽りの無いことこのうえないのだ。
と、『ジン』愛については今は置いといて、新型のパーツ作成を始めた。すでに本体の方はカスタムが済んでいるため、武器パーツだった
「うーん、基本武器はマシンガンと実体ブレード……機体をスピード重視にすれば妥当だけど……」
今作ってる機体も、ベースは『ジン』系のため弄る範囲を悩むのが現状だった。そもそも『ジン』そのものはほとんど完成された機体といっても良いほどにバランスが良く作られてる。それをカスタムするとなると結構難しいのだ。
「いっそのこと『アサルト』をカスタムして装備させる?けどそれだとせっかくのスピードを殺すことになるし……あまり多く積み込むのも同じく……弾丸の口径を大きく……は弾数が落ちるからアウト……ビームサーベルは論外だし……」
ほんとに考える度にマジで詰んでるのだ。ほんとにどうしたものか……と、俺はあるものを見つけた。次の瞬間、怒濤のごとく頭に雷が走った。
「こ、これだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
カッコー、カッコー
~翌朝~
「か、完成だぁ!!」
出来上がった新型に大声をあげながらガッツポーズで起き上がる。あのあと夕食も取らず、睡眠も一切なしで作り上げたこれは、個人的には最高傑作の域に行っていると断言してもいい。
「よし!!このままシステム面を……」
「……おーい、昴くん?なにやってるの?」
「うわぁ!?」
興が乗ってきた途端、まるで最初からそこに居たかのように曜が声をかけてきた。
「よ、曜!?な、なんで俺の家に居るんだよ!?」
「いや家隣だし、昴君が発狂してたの聞こえてたから、外にある合鍵使って入っただけだよ?」
「しまったぁぁぁ!?」
完全に忘れてた。これに関してはほんとに何も釈明できない。と、時間を確認してみるとまだ朝の6時と、だいぶ早い時間だった。
「……とりあえずあと一時間あればシステム回りも完成する。よし、頑張るか!!」
「ヨーソロー!!じゃあ私は朝御飯用意したら千歌ちゃんのところに行くからね~キッチン借りるよ~」
「おーう、好きに使ってくれ~!!」
さて、そんじゃ作り上げますか!!
「……」チーン
俺は今机の上で眠るようにぶっ倒れていた。張り切りテンションとはいえ、徹夜で作り終えたあとにシステム回りを組み上げたのだ、頭痛とかは無いが眠気がくそヤバイ。
「通りで昴くんがグロッキーな訳だね」
と、後ろから苦笑いで千歌がそんなことを言ってるが、俺としては今はできるだけ眠りたい、ただただそれだけだった。
「放っておきなよ千歌ちゃん。でも、部員が足りないって言うのはホントにどうしようか……」
「確かに、μ'sが出てたガンプライブって自分達でカスタマイズしたオリジナルじゃないといけないからね……」
「私も千歌ちゃんも、自分のカスタマイズする技量ですら微妙だしね……」
何やら相手にされてないようだ。よし、今のうちに眠らないと…………
「それに部員もね~今のところ、私と千歌ちゃんと昴くんの三人だけだし」
「ちょっと待て~、なんで俺までカウントされてるんだぁ~」
「え?だって昴くん、入ってくれるでしょ?」
何の疑いもなく言う千歌に嘘だろと思いながら、俺は眠くて重い頭をあげながら少しだけ睨む。
「言っとくけど、入っても俺は試合には出れねぇぞ?ガンプライブはあくまでも女子高生限定だぞ」
「うん、でも昴くんは別の大会の準備始めてるんでしょ?世界大会予選の?」
曜が当然のように聞いてくる。まぁこいつには機体も見られてるからな……。
「そりゃな、予選まであと3ヶ月しかないしな。今日は学校から許可もらったバトルシステムで練習するし」
「けど、もし私達の部活に入れば、部員だから許可なしでバトルシステム使えるんだよ?お得でしょ?」
「……それは」
正直なところ、それに関してだけはホントにお得だから仕方ない。だけど……
「……とりあえず、最低でももう一人捕まえてこい、話はそれからな」
「むぅ……そういうことなら」
とりあえず引いてくれた千歌に安堵しながら、俺は再び眠りにはい……
「はーい、ホームルーム始めるよ!!」
れなかった。なんつータイミングだよと思いながらも、仕方なく姿勢を正す。
「今日は転校生居るから、まず先に紹介するぞ」
転校生?まだ4月だというのに珍しいな……
そう思いながらぼんやり見ていると、入ってきた少女に少しだけ目を見開く。赤柴色に濡れたストレートヘアーに、穏やかな表情、そして留められた白いヘアピン……まさに美少女というにふさわしかった。
「えっと、東京の音ノ木坂というところから来ました……桜内梨子です。よろしくお願いします」
へぇ、音ノ木坂……ねぇ?……なに!?
「奇跡だよぉ!!」
奇しくも千歌の叫びと同じことを考えた俺は確信した。近いうちに、何かドデカイ事が起こるのだと……。
オマケ
鞠莉「ちょっと!!私の台詞ワンテイクもないってどういうことよ!!」
梨子「私も千歌ちゃんとの台詞丸々カットされてるんだけど……」
作者「一話は主人公目線だったから仕方ないんです。けど梨子ちゃんは次回からそれなりに台詞入れますんではい」
鞠莉「私は?」
作者「三話相当になるまで多分出番はそこまで無いです」
鞠莉「No~~!!」