ガンプライブ!サンシャイン!!~水の乙女と宇宙を求めるもの~   作:ドロイデン

10 / 71
精霊使いとの邂逅③

「さぁて……あのドムも近づいてきたわね」

 

 とりあえず果南と昴の邪魔をしないように罠を張りつつ、再びあのドムを映したモニターを確認する。

 

 見た感じ、手持ちの武装は両手のシールドしか持ってないから武装のほとんどはバックパックのカニ……ハーミットクラブの部分に集約してるのは何となく分かる。

 

 ていうか、アシュタロン・ハーミットクラブもそうだったから想像しなくても予想できること。

 

「ならやるべきことは決まってるわね」

 

 手持ちのハイメガキャノン怪を背中にしまい、右手の二連装ビーム砲と肩のメガソニック砲、さらに背中に取り付けたミサイルポットから通常弾頭を選択し、照準をドムに全て合わせる。

 

「何時も通りのシャイニ~よ!!」

 

 当然のようなフルバースト、下手な鉄砲なんとやらとは良くいうけど、小原のプリペンターチームメンバーも搭載してる最新のロックオンシステムを使ってるんだから当たらないわけがない。

 

『残念無念♪うちの“ハーミット”はちょい普通やないんよ!!!』

 

 しかし予想していたかのようにシールドで防いでる……んだけど、

 

『んぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ?!』

 

「あ」

 

 かなり酷い絶叫にそう言えばアシムレイトのことを伝え忘れていたことを思い出す。

 

『鞠莉、そっちのドムのパイロットにアシムレイトのこと伝えた』

 

 しかもタイミング良くか悪くか果南から通信で確認されてしまった。

 

「へ?……Oh~!!ごめん忘れてたわ!!」

 

 慌ててそう言うけど、私の背中には冷や汗が流れて止まらなかった。

 

『いやいや忘れちゃダメでしょ。普段のバトルなら兎も角今回は調査なんだから、この人たちの力も借りなきゃいけないかもしれないし』

 

「OK、そういう果南こそお得意の間接技なんてやらないようにね」

 

 ごめん果南、もう最悪をやっちゃった。とは言うことが出来るわけがなく、声が震えないように何時もの軽口を返すしかなかった。

 

 さて、通信を切って恐る恐る相手の方を見てみれば

 

『なぁなぁ?ちょっとうちとタカマチ式の()()()()…しよか?』

 

 なんか黒いドムなのに白い魔王が見えそうなオーラでそんなことを言っていた。

 

「え、えっと……sorry?」

 

 顔を引き攣らせながら謝るけど、背中から取り出した大型の砲身をこちらに向けて

 

『なぁ?知っとる?うちのドム・ハーミットの背中の“ヤドカリ”から伸びとるコレな?“サテライトリボルバー”って言うんよ?中の弾倉部分に高圧縮エネルギーカートリッジって言うんちょい特殊なエネルギーカートリッジが入っとって、ソレ1発につき通常威力のサテライトランチャーを6回ぶっぱなせるんよ。カートリッジは全部で6発あるから、最大で6×6=36回はサテライトランチャーがノーリスクでぶっぱなせるっちゅーワケやね。もちろんそうそう簡単に避けれんように威力は多少落ちるんやけど拡散タイプなんてインチキくさいモンでぶっぱなそうかと思うんやけど…あなたはどう思う?ナニがどうなっとるかイマイチわからんけど、どうやら機体のダメージが自分に反映される真姫ちゃん的イミワカンナイ♪&スピリチュアルな状態みたいやから、熱々のビームのシャワーなんてモンが全身に降り注いだらきっとドM推奨の嬉し楽しい事態になるね♪さて…熱々のビームのシャワーでダチ○ウ倶楽部っぽいリアクションするんがイヤなら……ちょいナニがどうなっとるか懇切丁寧に誠心誠意真心込めてアホにも簡単に理解できるように全力全開で今すぐに説明してくへれんかな?』

 

 そんな綺麗な脅しを避ける術はなにもないわけで

 

「……はい」

 

 自分の迂闊さ加減に頭を下げながら誠心誠意、せめて殺されないようにしようと思うのだった。

 

 

 

『“アシムレイト”ねぇ…。』

 

 とりあえずドムのパイロット……名前を聞いたら驚き、かのμ'sの東條希さんに事情を全部お話しし、とりあえず情報交換と相成った。

 

 当然ながらアシムレイトの痛覚遮断設定も説明して、数値をギリギリまで下げてる。

 

『そちらさんはそちらさんでこの変な具合にくっついてしまっとるサーバーの調査に来た…った事やね?』

 

「そうでぇ~す。けど、まさかあの希さんとにこさんが調査に来るとは思ってもみなかったわ」

 

 聞いてみればμ'sが結成される少し前で、さらに平行世界だからか私達の知ってる機体とは全然違うから驚きだ。

 

『「ところで、あのジン/ザクのファイターって誰なん/です?」』

 

 見事に同じタイミングで口にして、さらに機体を指さしてしまった。何となく恥ずかしいんだけど、これ。

 

『あのザクに乗っとるチンピラは本名は鳴神 青空(なるかみ そら)。“電子精霊”持ちのガンプラファイターさんやね。今は色々あってご覧の通りにただのチンピラの親戚みたいなもんなんやけど、アレでも一応は史上最年少の七歳で世界大会を勝ち抜いたとかふざけた戦績持っとるチンピラなんよ?あとは…そうそう♪基本的にチンピラなんやけど、それでも“始まりの精霊使い(オリジナルエレメンタラー)”って二つ名持ちのちょいスゴいチンピラなんよ♪』

 

 その説明に頭が痛くなる思いだった。世界大会を七歳で優勝?いろんな意味でふざけるなと思うと同時にある疑問を持つ。

 

「What's? えっと電子精霊ってなに?」

 

 そう、恐らく私達が今乗ってるコックピットタイプのバトルが主流の向こうの世界で、精霊というまさしく真姫的イミワカンナイオカルトが存在するのよ。

 

『“電子精霊”ちゅ~んはネットワーク上で自然発生した自我を持ったAIさんたちの総称やね。なんでかは知らんけど、この電子精霊さんたちは普通のAIさんたちよりアホみたいに高性能なんよ。その反面、自ら意思を持っとるから、普通の人には従わんようになってしまったんやって。そんな電子精霊さんたちと契約して使役しとる連中の事を“精霊使い(エレメンタラー)”って呼ぶんや。契約とかどうやって電子精霊さんに選ばれるとか、そこら辺がど~なってるんか、ぶっちゃけうちは“精霊使い(エレメンタラー)”やないからようはわからんのやけど…。』

 

 その説明に私はまた頭が痛くなった。電子精霊とかってのはつまりAIの上位互換的なもので、しかもザクのパイロットは世界最年少チャンピオンときた。

 

 てかなんでそんな人が今チンピラになってるのよ。そっちの方が真姫的イミワカンナイよ。

 

「えっとじゃあうちの昴の事ね。名前は天ノ川昴、今操ってるジンが大好きで……同時にザクが天敵というかなんというか……」

 

『ザクが天敵って、その昴君って子はザクが嫌いなん?』

 

「うーん、別にザク自体が嫌いとかじゃなくて……」

 

 一応昴に聞かれないように通信を秘匿回線に変更しておく。

 

「ほら、昴ってジンを使ってるんだけど……回りからジンを使うことに白い目で見られたり、ジンを馬鹿にされたりで……色々あって着いた二つ名が『ザク絶対殺す(シリアルザクキラー)』」

 

『うわぁ……。それは…なんと言うか…なんと言えばえぇか……うん。やっぱりうわぁ…やね…。』

 

 いやまあ、昴がやり過ぎたというところもあるから一概になんとも言えないのが悲しいというか、なんというか……

 

「けど、同時にもう一つ昴には二つ名があるの。流星のように駆け抜け、通った先には合わせ目を切り裂かれたガンプラだけが残る。世界大会本選で呼ばれたそれは正しく……『灰光の流星(グレートシューター)』、それが世界最年少プロガンプラファイター、天ノ川昴なの」

 

 私の説明に希さんはなるほどと頷いて

 

『やっぱりあの子ってプロファイターさんやったんね。それで合点がいったやん。こっちの世界線やと同年代じゃほぼ敵なんておらんそらっちと、まとも以上にやりあっとるなんて、そんなんどう考えてもプロファイターさんレベルがないとムリやもんね♪』

 

 まとも以上、その評価に少しだけ嬉しくなると同時にちょっとした悪戯心が沸いたわけで

 

「あ、それに負けはしたけどあの三代目メイジンとも互角に戦ってたわね」

 

 ちょっとだけ爆弾を落としてみた。

 

『…それマジなん?うわぁ…あのある意味ガンプラバトルが好き過ぎてぶっちゃけ半分位はもうなんかイカれとる感じの三代目メイジンと互角にって…正直ドン引きやねん…。』

 

 嘘は言ってない。四人バトルとはいえ、本気のメイジンと三分ぐらい熾烈なバトルを繰り広げられたんだから、もっと頑張れば互角くらいにはなれると思うわね。

 

「で、どうするの?このまま他のバトルを観戦……なんて言わないわよね?」

 

 私がそう聞くと希さんは通信越しに笑うと、少しだけ距離を取ってシールドを回転させビーム砲を展開する。

 

『ヤるしかあらへんやろ♪』

 

「そう言うと思ったわ!!なら、私のパラス・イリスとdanceを踊って貰おうかしら!!」

 

 私はそう言うと二連装ビーム砲を構える。

 

『盆踊りでえぇなら喜んでお付き合いしたるよ♪うちとうちのドム・ハーミットで!!!』

 

 お互いに一瞬間を空け……そして

 

「いくわよ!!」

 

 私はスラスターを吹かせ後方へ下がりながらビームを放つ。

 

『その程度なら占わんでもまるっとお見通しや!!!』

 

 が、相手は左片方のシールドで簡単に防ぎ、右のビーム砲でこちらを狙ってくる。

 

「(どうやら見た目通りの固定砲台タイプのファイターみたいね)ならミサイルはどうする!!」

 

 弾頭は焼夷弾……つまり火傷を負わせるミサイルを10発、さらに事前に仕掛けておいた置き型ミサイルを五発死角方向である後から発射させる。

 

『残念やけど…とっくの昔にソレも予測済みなんよ!』

 

 しかし希さんはまるで読んでたように焼夷弾ミサイルはビームで、後からのミサイルはあのハーミットクラブのハサミで防がれてしまった。

 

『バレル展開♪高圧縮エネルギーカートリッジ♪ロード♪』

 

 と、一度しまったはずのサテライトランチャーらしきものを取り出すと、此方に向かって照準を向けて

 

「させない!!ステルスミサイル!!」

 

 流石に嫌な予感がしたため、これまた事前に仕掛けておいたステルスタイプのミサイルで邪魔をしようとしたのだけど……

 

『ハーミットユニット!セパレーション!か~ら~の~♪よっこらしょっと♪』

 

 なんとあのハーミットクラブ、正しくジャスティスのリフターのように機体を乗せると自由自在に動いてきた。

 

 さらにサテライトランチャーにカートリッジみたいなものが取りついてるのを見ると、どうやらマイクロウェーブを無視して射てるとか、言うのは悪いけど、結構ズルい。

 

『それじゃ今度こそお待ちかねの…サテライトリボルバー♪ふぁいや~♪♪♪』

 

 固定砲台ならぬ移動砲台と化したドムから放たれたサテライトキャノン、正直普通なら諦めるわけだが、

 

「私を甘く見ないで!!オフェンスモード起動!!」

 

 そう簡単に諦めるほど、私はお人好しでも意気地無しでもない。

 

 機体の重量からはあり得ない速度で移動し、私はビームサーベルを右手に抜いた。

 

『そんなん武装盛り盛りのてんこ盛りで高速機動とか何の冗談やねん?!』

 

「後方支援が鈍重なんて決まりは無いのよ!!」

 

 降り下ろしたビームサーベルはリフター状態のハーミットクラブの左のハサミを切り裂き、大爆発を引き起こす。

 

「よし、もう片方も……!?」

 

 斬ろうとした次の瞬間、突然衝撃を受けて吹き飛ばされる。何が起こったと思っていると、どうやらナックルガードに変形させたシールドでぶん殴ってきたみたい。

 

『ほれ♪ほれ♪しっかり避けんと痛いんとちゃうん?』

 

 さらにそこからリフターを背中に戻し、後退しながら二つのビーム砲を放ってくる。

 

「ちぃ!!」

 

 慌てて体勢を取り直し、デブリの影を縫うように射線から高速で離れ、大型のデブリの後ろへ隠れる。同時にオフェンスモードの起動時間が終了して待機時間へ入った。

 

「離れたのは良いけど、多分サテライトランチャーを射ってくるわよね……」

 

 エネルギーレーダーを確認してみれば、やはりというか相手はあの場から動いておらず、寧ろその場でかなりのエネルギーが集束していた。

 

「サテライトランチャーと撃ち合い……勝てるか……じゃなくて勝つしかないわよね」

 

 背中にしまっていた特製のハイメガキャノン怪を取りだし、チャージを開始する。

 

「(チャンスはたった一回)」

 

『(これは外しても威力負けしてもアカン感じやね…)』

 

 同じ砲撃型の機体だからこそ、勝負は一瞬だけ。だから

 

「ターゲット、LOCK ON!!」

 

『ターゲットサイトのど真ん中!捉えてかーらーのぉ!!!』

 

「ハイパー……シャイニー!!」

 

『サテライトリボルバー!ファイズブラスト!!!ふぁい!!!!!』

 

 互いの砲撃が放たれるオレンジと白の巨大なビームがぶつかり合う。

 

「ぐっ……!?」

 

 けどやっぱり出力オバケなハイメガキャノン怪とはいえ、サテライトランチャーとのぶつかり合いでは純粋に火力が違う。徐々に押し込まれようとしたその時、

 

「『!?』」

 

 突然メンデルコロニーの方から爆発が轟き、互いに砲撃を慌てて中止する。

 

 流石に高出力ビーム同士が激突した影響でレーダーは磁場嵐を起こしてしまっていたが、そんなもの関係なしにそれはモニターに映った。なぜなら

 

「……うそ」

 

『あれは……ちょいと厄介そうやなぁ…。』

 

 あまりにも巨大すぎる何かがコロニーの外壁を突き破って姿を現してたのだから。


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。