ガンプライブ!サンシャイン!!~水の乙女と宇宙を求めるもの~ 作:ドロイデン
そんなこんなで、どうぞ
小原鞠莉生誕祭番外編2017
「珍しいですね、鞠莉さんが俺と出掛けるなんて」
とある夏休みの休日、何時ものようにガンプラバトル部……通称Aqoursの練習を終えた俺は、何故か鞠莉さんと沼津にてショッピングに来ていた。
「そうね~いつもは果南やダイヤとかも一緒だからね」
「確かに」
互いに笑いながらそう言うと、俺はふと思い出す。
「そういえば鞠莉さんと果南達ってどうやって出会ったんです?」
「ん?そっか、昴と会った頃にはもう仲良しだったからね」
「えぇ、というかお嬢様というか、お嬢な鞠莉さんがあの二人と会う機会なんてあんまり……」
「そうね~、じゃあ特別に教えてあげるわ。あれは……」
あの日は、今日のみたいに天気がいい日の夕方だった。
すでに夕焼けがシャイニーで、家の噴水が光を反射して輝いていた。
「…………せんわ」
「…………だよ~」
「ん?」
その時、小さく聞きづらかったけど私みたいな女の子の声が聞こえてきた。
この時間帯とはいえ、警備員がいるうちに侵入してくる強者が居るとは思わないけど、一応そこに近づいてみると……
「あ」
「ピギッ!!」
青い髪と黒い髪の女の子二人が隠れていた。
「あなた達……」
私もまさかの事に思考が追い付かず、ただただ問いかける。そして
「……ハグ」
「え?」
「ハグしよ?」
「まぁそんなこんなで、紆余曲折を経て友達になったの」
「何というか……お疲れ様です」
俺が苦笑いでそう聞くと、鞠莉さんも中々に苦笑している。
「そうね~果南ってば昔ッから押しが強いからね。私がガンプラバトル始めたのもそうだし」
「へぇ、っとそう言えば鞠莉さん……気付いてますよね」
「まぁ……そりゃあねぇ?」
揃って視線だけを動かして後ろをチラリと確認する。そこには
「二人っきりなんて……許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない……」ブツブツ
「果南さん、幾らなんでも悪目立ちしてますからお辞めなさいな……」
何やら呪詛を振り撒いてる藍色ポニーテールと、それを疎める黒髪ロングコンビが隠れて追ってきていた。というか全然隠れてない。
「まったく果南は……」
「そうね~」
と言いながら鞠莉さんは鞠莉さんで俺の腕に体を密着させてるし……あ、また果南の呪詛が大きくなった。
「で、今日は何を買うつもりなんです?」
「ふふ、実はね……」
連れてこられたのは意外と古びた感じのアクセサリーショップだった。
「へぇ、こんなところがあったんだ」
「フフ、昴はアクセサリーとか興味無さそうだものね」
「あんま、男で宝石細工って感じも無いだろうかな」
まぁ最近ではそうでもないのだろうし、プロとしてそれなりの収入を得てるから買おうと思えば買えるのだが。
「そうね~っと、これとこれ……あとこれもお願いします」
そう言って鞠莉さんが選んだのは、ダイヤモンド、サファイア、そしてオパールの三種類のネックレスだった。
「もしかして……」
「あ、気付いちゃった?」
そりゃ何となくわかるわ。というかもうそんなに経ってるか……。
「だったら……」
「良いの。これは私の気持ちの問題だから」
そう言って店員にカードを差し出して、鞠莉さんはそれを一つずつ袋に入れてもらうために俺から少しだけ離れた。
「……すみません」
「う~ん!!なんか久々に昴と遊べたから楽しかったわ!!」
「そうですか」
何となく楽しいというのが見て分かるほど、鞠莉さんは笑顔だった。
まぁほぼ毎日、理事長として書類に追われながらAqoursとしても活動して、尚且つ学生としての本分も全うしてるのだから、こういうことでストレスを発散できるならこちらとしても願ったりだ。
「さて、最後の目的地にも到着したわね」
「はい、確かにここですね……なんで、いい加減出てきても良いですよ二人とも」
俺がそう言うと、後ろから凄い形相の果南と、明らかに憔悴してるダイヤさんの姿があった。
「気づいてらしたなら何とかしてほしかったんですけど……」
「流石にヤン果南の処理はしたくないから」
「詰まる所人柱にされたわけですか……」
なんとも言えない、ハイライトの消えた目でダイヤさんは睨みつけるが、何時ものようにスルーと決め込む。
「さて、二人とも、なんでここに来たのか分かる?」
「へ?ここって……砂浜ですわよね?」
「うん、しかも私の家からすぐそばの……」
ダイヤさんと正気に戻った果南が、鞠莉さんの質問に疑問で返す。まぁ確かにそうだろうな。
「ふふ、流石に忘れちゃってたか~。ここはね、私たち四人が最初に会った場所なのよ。しかも同じ日付けで」
「「へ?……あ」」
鞠莉さんの言葉で、ようやく二人も分かったのか、納得の顔をしている。
初めて四人で会ったのは、俺が小学5年だからちょうど六年前。あの日も今日みたいな快晴で、一人エアコンで涼みながらテレビを見ていた俺を、果南は無理矢理引っ張り出された。
そしてどういうわけか果南が鞠莉さんとダイヤさんをも連れ出して、完全に海水浴という名の水遊びとなった。
まぁ結局、最後はいつの間にかやって来た鞠莉さん護衛のデュオさんとカトルさんや、ルビィちゃんとかも混ざっての大混戦だったのは良い思い出だった。
「そうですか……もう六年も経ってましたわね」
「完全に忘れてたよ……」
二人はそう言ってるが、俺もアクセサリーショップに行くまでその事を忘れていたのだから人の事を言えない。
「ホントは去年で5周年だからって渡そうと思ったんだけど、留学になっちゃったからね」
「だからってべつに……」
「良いのよ!!これは私の気分、気持ちなんだから!!というわけで、はいこれ」
と、それぞれに紙袋を渡す鞠莉さんに、中身を見た二人は驚いていた。
ちなみにだが、それぞれの単価が最低でも数十万はしたのをここに明記しておく。
「あれ?昴は着けないの?」
「いや、数十万のネックレスを着ける気力が……」
「もう、そんなこと言ってないの!!さっさと着けなさいよ!!」
鞠莉さんにせっつかれる形で、仕方なく俺も首にかける。全体の黒に散らばるように光る赤や緑が、どことなく幻想的な気がしてなら無い。
「うんうん、やっぱり昴には黒い宝石が合うわね!!」
「そりゃどうも。流石に学校ではつけらんねぇけどな」
「当然ですわ。……まぁ大事にさせてもらいますわ」
「あはは、まぁ、鞠莉のプレゼントだからね」
四人揃って笑いあいながら、揃って夕日を眺める。雲一つ見えない、綺麗な茜色の空だった。
「……鞠莉さん」
「ん?どうしたの昴?」
「これ、俺からの分っす」
「へ?」
俺は少しだけ恥ずかしがりながら、一つの小さな紙袋を手渡す。彼女はそれを綺麗に開けて中身を見て驚いた。
「これ…………でも」
「言いっこ無しですよ」
それは少し大ぶりな、光輝く黄色のトパーズのネックレスだった。しかもカットによって星形に形成された代物だった。
「鞠莉さんがちらっと目にしてたんで、何となくですけどこれを……」
「で、でも……」
急にわたわたして落ち着かない鞠莉さんに少しだけ笑ってしまう。人をおちょくったりからかうのは得意なくせに、こういうお節介に耐性がないのが鞠莉さんの良いところ(?)だ。
「良いから。それに、俺らだけ貰って鞠莉さんが何も無しじゃしまらないんで」
「……
だいぶ照れてる姿に果南とダイヤと共に笑いながら、俺はこんな日が続けば良いのにと、少しだけそう思った。
鞠莉さん、happy!!birthday!!