外伝クトゥロニカ神話『4つの愛』   作:カロライナ

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【前回のあらすじ】
 部屋の中で少女が4人ベッドの上で眠っていた。
 4/5はファンブルするのに1/4は成功する不思議。
 少女達は人の姿をしていないものもあった。




Episode1-5 『目醒める少女』

 4人が4人の少年少女を見つけてから、何時間程が経過しただろうか。室内は静寂が支配していた。

 クリスティーナは『ロジーナ』の左手を離すまいと、両手で包み込むかのようにベッドに突っ伏したまま入眠し、修羅は妹を弔うかのように顔に布を掛けて、その隣に添い寝するかのように眠っていた。赤大は『桜井』付近の壁に寄り掛かり、ポケットから煙草を一本取り出すと虚空を見上げながらどこか濁った瞳で、タバコを吸っていた。星乃は『飛鳥』を抱えたまま椅子に座っている。

 そんな中『飛鳥』の瞼が「ぱちり」と瞑っていたその眼を開く。

 その両眼は蜂蜜色の虹彩をしており、本当に死んでいるのかと疑わしくなるぐらいに瞳は潤っているように見えた。

 

「ん・・・・ふぅ・・・・・ここ・・・ふぁ!?」

「飛鳥。起きた。おはよう。気分。大丈夫。」

 

 飛鳥は眼を開くと、目前に赤髪の女性が自分を抱き上げ顔を覗き込んでいることに気が付き、思わず上ずった悲鳴を上げる。その悲鳴に連動するかのように左手を握られている『ロジーナ』、『桜井』、『ぬいぬい』の順番にその眼を覚ました。

 

「うっ・・・・・・ここは?」

「あれ・・・? ボク、どうして・・・・・確か・・・・死んだはずじゃ・・・。」

「ん・・・・上手く起き上がれな・・・え? ・・・・・生きている・・・人間?」

「・・・・・!?」

 

 赤大はうとうとしながらも咥えていた二本目の煙草が、唇からポロリと転がり落ちた。

 あの後、星乃を除く3人で確認し合ったはずだ。

 確かに死んでいた。

 しかし、今はその死人どもが起き上がり、聞き取りやすい声で話したではないか。

 

死体がベッドから起き上がったSANチェック【1/1D10】

赤大65→3【成功】

65→64

 

 思わず壁に寄り掛かっていた状態から、目を見開き瞬時に立ち上がる。

 『飛鳥』を除く3人の視線が、一斉に赤大に集まる。赤大は眼を白黒させながら3人の顔をそれぞれ見る。3人も、慌てた様子の赤大に対して困惑の表情を見せる。

 

「あ、えー、えーっと? 初めまして・・・・ですよね・・・? ボクは『(まとい)』って言います。あの・・・・えっと・・・その、まずは互いに自己紹介から始めませんか・・・? このままだとお互いを呼ぶのが大変ですし・・・・どうでしょう?」

「・・・・・・そうだな・・・・・わたしは『ロジーナ』。・・・・・・この手を握っている・・・人間については・・・・・・知らない。」

「寝たままで ごめんなさい。わたしは『ぬいぬい』って言います。えっと、私もロジーナさんの手を握っている人間さんや、隣で寝ている人間さんについては存じ上げないです・・・。」

 

 3人の視線は赤大へと向く。

 

「あー、どうも。アタシは赤大 将。今ロジーナの手を握って起きない奴は、クリスティーナ。で、そっちのぬいぬいの隣で寝ている奴は修羅 縫っていう・・・・アタシの同僚だな。で、向こうの椅子を見て貰えたら分かるんだけどさ。」

 

 赤大は右掌を頭に付けると天井を見た後、熱が無い事を確認する。そして瞬きを数度行ったのち3人に向けて自己紹介を返した。

 また熟睡中の2人の自己紹介も代理で済ませると、飛鳥を抱き上げていた星乃を指差した。

 3人の視線は、その指を指した方向を向く。

 そこには目覚めた3人へ、涙目になりながらも必死に目で助けを求める『飛鳥』の姿と、大事そうに姫様抱っこで『飛鳥』を抱える星乃の姿があった。4人ほどの注目を浴びているはずなのだが、星乃はまったくそちらを見向きもしない。

 

目星

赤大25→25【成功】

 

 代わりに星乃の頭頂部に生えたアホ毛がピクンと揺れたような気がした。

 

「赤髪の白髪を持ち上げている方が、星埜で、持ち上げられている方が・・・・飛鳥・・・だったと思う。・・・おーい! 星埜!!」

「赤大。飛鳥。起きた。飛鳥。起きた。」

「おう、それは良かったな。ちょっと今起き上がった人・・・人? まぁいいか。人達と自己紹介してんだ。その子を連れてこっちに来いよ。」

「わかった。行く。」

 

 赤大に呼ばれた星乃は『飛鳥』を抱え、悠々とベッド側に歩み寄る。

 その体格の大きさに、ぬいぬいと纏は圧倒されたようで口をポカンと開け、星乃を見上げた。

 

「私。星乃。星乃 彩。」

「ひゃっ!」

「飛鳥。自己紹介。」

 

 星乃は『飛鳥』を抱えたまま、機械的に無表情で自己紹介を済ませる。そして抱き抱えていた飛鳥を優しく床に降ろすと立たせ、『飛鳥』の尻を軽く叩いた。またもや飛鳥から上ずった声が漏れ出たが、星乃は気にした様子もないと言った表情をしていた。

 それを見たロジーナが星乃に対し、若干の軽蔑するような嫌悪を抱いたような視線を向ける。

 

「あ、えっと・・・飛鳥です。何故、こちらの方が私の名前を知っているのか分かりませんが・・・よろしくお願い致します。えっと・・・ロジーナさん、纏さん、ぬいぬいさん、赤大 将さん、クリスティーナさん、修羅 縫さん、星乃さんです・・・ね?」

「あぁ、アタシは赤大で良いぜ。フルネームだとちょっと歯がゆいからな。そっちの修羅は修羅 縫の方が語呂は良いかもな。」

「分かりました。赤大さん。」

 

 赤大は飛鳥に『ニシシシシ』と笑った表情を向けた。飛鳥は何処か緊張のほぐれたかのような顔をする。

 

「えっとー・・・御互いに聞きたい事は山ほどあるだろうし、とりあえず寝ている奴等を起こしても良いか? バラバラで話して その都度説明するより、まとめて話をした方が良いだろうしさ?」

「・・・・・・・そうだな。・・・・私は・・・・・・クリスティーナを起こす・・・。・・・・赤大は修羅 縫を・・・・・頼む。」

「おうよ。」

 

 赤大の提案にロジーナは頷きを返し、恐る恐ると言った様子で寝ているクリスティーナの肩を揺する。

 赤大も軽く、修羅の頬を往復ビンタするかのように はたき起こす。

 

「うにゅ・・・・?」

「クリスティーナ・・・。・・・・起きて・・・。」

「オラー、修羅起きろ! お前の写真に写っている子が起き・・・・生き返ったぞ!!」

「ぐっ・・・。ん・・・・はい? 死んだ人間が生き返るなどそんなあり得な――」

「・・・ど、どうも?」

 

死体がベッドから起き上がっているSANチェック【1/1D10】

クリスティーナ75→10【成功】

75→74

修羅70→63【成功】

70→69

 

 二人は確かに死んでいた4人が生きていることに対して大きく驚いたが、それよりも親しい友人や肉親が生きていたことの方が喜ばしかったのか、驚きよりも微笑みの表情が零れていた。

 死体が死体のまま生き返った。という事実に対し、本能は恐怖を2人にも平等に訴えかけていたが、感情がそれを勝っていた。

 

「ロジーナァァァァ! 生き返ったんですのね!? もう大丈夫なのですのね?!」

「・・・・う・・・うん・・・・。・・・・・生き返った・・・というよりも・・・アンデットとして甦――」

「あぁっ! これで約束を破りかけたのは3回目ですわよ!! もう勝手にいなくなったりしないで・・・・! 今度こそ! 今度こそ守ってくださいね!?!」

「・・・・ん・・・・・・・。・・・・・何も・・・・覚えてない・・・・・・けど・・・・・分かった。」

「もうあなたを失うのは嫌なんですの・・・っ。」

「・・・・・・ん。」

 

 クリスティーナは眼中にロジーナが、起き上がっていることを確認すると誰しもが驚くような瞬発力で抱きつき、全身で大切そうに抱擁した。ロジーナは戸惑いながらも、身体の表面に伝わる確かなぬくもりと背中を伝う生暖かい水を感知し、クリスティーナを一人にしてはいけないようなそんな気持ちが芽生えているように。覚束ない手取りで同じくクリスティーナを抱き締めた。

 

「ぬい・・・・ぬい・・・・・ですか?」

「そうです・・よ? えー、修羅 縫さんでしたよね?」

「あぁ・・・。夢なら覚めないでください。もっと私が家族を顧みて居れば・・・すみません・・・すみませ・・・ん・・・。」

「あぅ?! ど、どうして泣くんですか・・・!?」

「私が護ってやるべきだったのに・・・護れなくて・・・・本当に悪かった・・・・。許してください・・・。」

 

 修羅は起こした赤大がその場から退くと、かつての自分の妹の手を取る。

 ぬいぬいも修羅が退いたことで上半身を起き上がらせ、修羅に潰されていた天使のような破れ皮膜が動くか確認しつつも戸惑いながらも、泣きながら謝る修羅を慌てながらも励ますかのように左肩を優しく撫で、破れ皮膜をパタパタとせわしなく動かした。

 

対話判定

ロジーナ→クリスティーナ 4【失敗】

ぬいぬい→修羅 10【成功】

 

 

 




【後書き】
今度から、あらすじを3行にまとめてみようと思います。
その方がネタバレが少なく、なおかつ制限をすることで簡易的に伝えられるように努められるかなと。

もうここまで話が進めば、わかりますかね?
今回は2つのシステムを合わせています。



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