外伝クトゥロニカ神話『4つの愛』   作:カロライナ

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【前回のあらすじ】
 『希望』がプレゼントを用意していたという言葉に一抹の不安が過ぎるドール達。
 現れたのは探索者を模した人形の数々。
 不安は悲惨にも的中し『希望』は醜悪にドール達の精神を根こそぎ削いでいく。繋ぎ止めていた余裕すら粉々に粉砕していったのだった。




Episode5-10 『圧倒的な力量』

 ドール達は気が遠くなったかのように、光景が全て遥か遠くに見えていた。しかし、『希望』の声だけは嫌にはっきりと脳に焼き付けられ、精神がどれだけ拒もうとも意味を刷り込まれる。耳を塞いでもそれは意味を成さない。

 

「それにしても彼女達は何者だったのでしょうか? わたしの超能力を使っても握りつぶせず、何食わぬ顔で平然と出来る怪物(バケモノ)・・・まぁ結果として、崖を倒壊させ亡き者に出来ましたので良いでしょう。彼女達は監禁室から出た形跡はありませんでしたし・・・。」

 

 『希望』は宙に浮きながらも考え込むように周囲をうろうろと動き回る。

 ドール達は震えながらも、怒りの表情を露わにしながら『希望』に対して武器を構える。動かない身体を殺意を狩り立て、絶叫と共に『希望』を抹殺することに駈け出した。

 

「おや? わたしを拒むというのですか? まぁ、お互いの反目が更なる愛を育むことも確か。胎を割る前に、良く語り合いましょう。盲目的な愛よりも、互いに鍛えた愛こそが私達母子に堅固な絆を生みますからね・・・・・・ふふふふふっ。ひひひひ・・・ヒャーッハッハッハッハッハッ!!!」

 

 脳内でけたたましく『希望』は培養槽の中で笑い転げ始める。

 この笑い声はぬいぬいと纏にとって聞き覚えのある声であった。そう。あの記憶の中で笑い叫んでいた・・・。

 『希望』は思う存分4人を嘲り笑ったのち、その不快な笑い声を余韻を残すことなくピタリと止める。すると『希望』はカプセルの中、不気味に血走った眼球を見開く。その瞳は非常に欲望に塗れ、咆哮を上げ自らを奮い立たせていたドール達の狂奔を留まらせ、あんなにも『希望』を我が子のように扱っていた飛鳥でさえ、嫌悪の表情を浮かべていた。

 睨みつける彼の周囲には、名状しがたいエネルギーの塊としか言いようがない渦が巻き起こる。

 そのエネルギーは広場にあった大量の死体どもを、次々に立ち上がらせ 悪趣味な『プレゼント』ととして、用意していたドール達が生前最も関係の深い存在も己を護る隊列に組み込ませる。

 エネルギーをまとった死体は、アンデットのように「生きた死体」として立ち上がったのではない。人形が空中に、糸で吊り上げられるように・・・・・地面に足さえ着けず、ただぶら下がっていると言った表現が最も似合う。無数の死体が、空中に吊られ浮かび上がる。青白い光は、脈打つように死体に絡み付く。

 一部の死体は全身を激しく蠢かせ、狂ったかのように触れるものを引き裂こうと・・・否、動かない死体をエネルギー爪でバラバラに引き裂いた。

 また、凄まじいエネルギーをまとい怪力を発揮している様子を見せる死体もある。『プレゼント』として用意された彼女達もその様子が窺える。

 彼等は亡霊のように宙を滑ったり、地上を半ば転がる様にしながら『希望』を護るかのように立ち塞がる。

 

行動判定

ロジーナ→2【失敗】

ぬいぬい→7【成功】

飛鳥→6【成功】

纏→3【失敗】

 

 ぬいぬいと飛鳥は、これらは通常のアンデットではなく『希望』の“超能力”が無数の死体を操り人形にしていることに気が付く。そして死体を操る『希望』を倒さない限り、この狂った演舞は終わらない事を悟るのであった。

 更にドール達は狂奔を止めたからこそ、視界が広くなり気が付いたこともあった。広場の周囲、路地という路地に、青白い光を微力ながらも脈打たせる死体の群れが立ち塞がっている。

『希望』を倒す他、逃げる手段はないようにひしひしと感じ取った。

 

 

 




【後書き】

【次回予告】
  寝ぼけながらエネミーの隊列は組み込むものではない。



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