外伝クトゥロニカ神話『4つの愛』   作:カロライナ

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【前回のあらすじ】
 飛鳥はかつて自分がシスターに世話になった場所へと足を運んだ。
 入口はカードロックキー式のカギとなっており生存者がいるのではないかと、心を躍らせる。
 とある部屋の一室で巫女服を見つけると拝借し、ボロボロだった状態から目覚めた当初の姿へと着替えた。




Episode5-7 『実験跡地』

 4人は各々の思いを胸に、一度別れた場所で再び合流する。

 ぬいぬいは気分が悪そうな非常に青ざめた顔、ロジーナはアルバムを胸に抱え何処かホッコリとしたような顔、纏は悪夢を振り払うかのように首を横に振りなるべく笑顔を作ってみせようとする顔、飛鳥は何処か残念そうにしながらも ちょっとだけ良いことがあったかのような顔をしていた。

 

「・・・・・・だ、大丈夫だよ!! 赤大さん達なら、きっとこのドームの何処かに隠れているだけだって。ま、まったくもう。オイタが過ぎる様な気がするなぁ!」

 

 最年少である ぬいぬいが最も落ち込み、顔色が悪いことに真っ先に察知した纏はなるべく、なるべく明るい声色をしながらぬいぬいを励ます。しかし、その励ましは生首を見てしまったぬいぬいに対して何の効果も示さなかった。それどころか止めどなく涙が溢れ出て来る。

 

「お姉ちゃん・・・おねえちゃん・・・・・。」

「・・・・・ぬいぬい・・・・何か・・・・あった・・の・・・?」

「お姉ちゃんの・・・おねえちゃんの首・・・・。」

「首ですか!?」

「首・・・?!」

「雑貨屋の2階を調べていたら、急に背後のクローゼットから物音がして・・・開けたらそこにお姉ちゃんの首が・・・っ。」

 

 ぬいぬいはナイトメアが呟くうわごとのようにブツブツと、自分が見てきたことを話し始める。その話が終える頃には周囲もその悲しみに飲まれる様に暗く落ち込んでいく。

 纏は首の話を聞いてから、謎の力で圧縮されて行った人物が赤大に思えてきたのか、3人には聞こえないような小声で「あれは別人、違う人」と呟きながら自分の両頬をペチペチと2回ほど叩く。

 

「他人の空似・・・・じゃ、ないかな? たまたま似ていただけで、別人とか・・・。」

「そ、そうですよ! 悪い方に考えるのはよしましょう? 奥に行けばきっと会えますから・・・ね? ね?」

「・・・・・・・そう・・・・・。また・・・会える・・・。」

「・・・・・そう、ですよね・・・ごめんなさい・・・気が弱くなってしまって・・・。」

 

 纏は一瞬暗くなるなるものの、無理にでも笑顔を作り、ぬいぬいを慰める。飛鳥も纏に気がついた様子で、焦った表情をしながらも、ぬいぬいの慰め援護に入る。ロジーナも二人が慰める様子を見た後にアルバムを握りしめると、ぬいぬいに一歩近づき頭を撫でて励ました。

 ぬいぬいは一度両目をしっかり瞑ったあと、目を伏せつつも頷いてみせた。

 

「大丈夫だよ。ボクでも気が弱くなることあるんだから。ぬいぬいが謝ることじゃないし、みんな気にしてないから安心して? ねっ。みんな。」

「・・・・・・うん・・・・わたしも・・・・稀に・・・・良くある。」

「ロジーナさん稀に良くあるって結局どっちなんですか。」

「・・・・稀・・・・稀の方・・・。」

 

 纏は無理に作っていた笑顔を、自然な笑顔へと切り替える。そしてロジーナの織り交ぜたボケを飛鳥が拾い上げ、辺り一帯にちょっとした笑いが立ち込めた。

 

対話判定+1

ロジーナ→ぬいぬい 6+1【成功】

ぬいぬい→ロジーナ 8+1【成功】

飛鳥→ロジーナ5+1【成功】

纏→【全狂気点なし】

 

「それじゃ、奥の方まで行ってみよっか。」

「・・・・・ぅん・・・。」

「・・・はい・・・ぐすっ。」

「ゴー!」

 

 4人は人間探しの旅を再開する。数々の陰鬱な建物を抜けた先には広場が見えてきた。

 中央には巨大な噴水があり、水は吹きだしていなかったのが原因か、透明であった可能性のある水は苔生して緑色に染まっていた。

 更に広場の至る所には、ミイラ化した死体が大量に積み上がっているのが一望することができた。これらは明らかに死んでおり、白骨死体同然のものも少なくは無かった。ドール達は『アンデット』の存在に対しては見慣れていたものの『死体』には耐性がなく不気味さを感じさせることになる。

 

狂気判定

ロジーナ→10【成功】

ぬいぬい→2【失敗】

飛鳥+1

飛鳥→7【成功】

纏→9【成功】

 

「ひぅっ・・・・。」

「大丈夫。ボク達が着いているから・・・。」

「ぬいぬいさんは下がっていた方が良いかもしれませんね。」

 

 ぬいぬいは死体に対して小さな悲鳴を上げ、近くに居た纏の袖の裾を掴む。袖を掴まれると纏は素早くぬいぬいを背中で隠し、ぬいぬいの隣に居た飛鳥もぬいぬいの右半身を隠すかのように一歩前に出る。

 

対話判定

ぬいぬい→飛鳥 5+1【成功】

飛鳥→ぬいぬい 2【失敗】

 

 その間、ロジーナはその死体群に近づき一つ一つ丁寧に赤大やクリスティーナ、修羅、星乃の顔が混じっていないかどうか確認作業を行う。

 

行動判定

ロジーナ→10【成功】

 

 確認作業をしていると、気が付いてはいけない真実にロジーナは気が付いてしまう。

 これらの死体は、いずれも半ば面白半分とでも言いたげに捻られたり、内側から破裂させられたり、皮をはがされたり、全身を執拗に串刺しにされていた。それは、ロジーナの知る限りの武器では押さえつけ拷問まがいの方法を行わない限り不可能な殺害方法であり、不可能な殺害方法であると分かる。

 

狂気判定

ロジーナ→10【成功】

 

 しかし救われたこともあった。その死骸の山にクリスティーナ達らしき遺体は混じっていなかったこと。それだけは不幸中の幸いであった。それが気の遠くなりそうな殺害方法から己の気を逸らすために役立つ。

 

「ど、どう? ロジーナ?」

「・・・・・・・。」

 

 不謹慎ではあるが、ロジーナは纏に問いかけられると振り返り親指を立て、無理やりにでも微笑んだ笑顔を作った。3人は良くわからないと言った表情をする。

 

「・・・・・・この中に・・・・・クリスティーナ・・・・赤大・・・・星乃・・・・修羅 縫は・・・・居ない・・・!」

 

 そんな表情をする3人にロジーナは今度は言葉を添え、もう片方の手の親指も突き立てると前に突き出した。誰もが言葉に表情を明るくする。

 もしかすると、外の教会で出会った少女たちのような友人が居るかもしれない、そうは一瞬考えたものの、思い出せない死んでいるかもしれない友人よりも、僅かな生きている望みを掛けた友人が居ない事は4人にとって大きなことであった。明るくすべきではないとわかってはいるものの、自然と口角は上がり、安心したような溜息が零れる。

 

「やはり、サプライズで何処かに隠れているんですね! 新しい巫女服にも着替えられましたし、星乃さんに会っても恥ずかしくないですよ!」

「・・・・・飛鳥・・・・・髪の毛・・・・・髪の毛に・・・・蛾の鱗粉が着いてる・・・・。」

「えっ! 落とさなきゃ。・・・えっと、これで落ちましたか?」

「後ろ髪にもついていますよ。これはわたしが落しますね。」

「・・・・・そういう・・・ぬいぬい・・・・・鱗粉塗れ・・・・だよ。・・・・落してあげる・・・・。」

「あ、ありがとうございます!」

 

 飛鳥は、安心したように微笑むと小さくガッツポーズを取りロジーナ、纏、ぬいぬいに新しい巫女服を見せつけるように踊る様にくるっと横へ一回転回る。『アポルオン』を撃破する前に粉砕した蛾の鱗粉が髪の毛からパラパラと零れ落ちる。ロジーナに指摘され、急いで大雑把に髪の毛を振り払う、想像以上に鱗粉は髪の毛に付着していたのか、きなこ色の煙が周囲を覆った。

 ある程度落し終わり、再び3人に向けて髪の毛を見せる。表面上は確かについていなかったが、背の低いぬいぬいが飛鳥を見上げると若干、付着しているのが見えるようであり、それを払い落とししてあげる。

 

対話判定

ロジーナ→飛鳥6+1 【成功】

飛鳥→ロジーナ 8【成功】

 

 

 




【後書き】
 久々に3000文字越えの小説を投下したような気がします。
 物語も佳境に入って参りました。戦闘パートが、とあるミスで1パートに収まりきってしまったのでエンディング内容が大体2話。
 戦闘まで残り2話ですが早く探索者達と出会って、心が安らげばいいですねぇ・・・。



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