外伝クトゥロニカ神話『4つの愛』   作:カロライナ

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【前回のあらすじ】
 ロジーナは豪邸に足を運んだ。
 その中にも人間はおらず、寂しい光景が広がっていたが同時に懐かしさも湧き出してきた。
 クリスティーナ似の少女のアルバムを胸に散開地点へと踵を返す。





Episode5-5 『警察署』

 纏は警察署内に入る。中は世界が滅んだとしても少しでも治安を維持しようと努力していたのか、比較的真面なオフィスがそこにはあった。しかし、そのオフィスも今や見る影は無い。大通りの道路よりも銃痕と血痕に満ち溢れているところであり、視線を何処へ移したとしても、必ずと言っていいほどの2つの痕跡が確認できた。

 何が起こったかは分からないが、相当の激戦がこの場で行われ、大勢の命が失われて行った場所なのだろう。

 考えずとも『とうに人間は滅んでいる。』という事は、他の思い出や知識は持っていずとも何故か知っていた。わかりきっていた結末じゃないかと心の奥底で自分に言い聞かせる。人の気配すらなければ、物音ひとつしない。自分だけがたった一人の空間に切り離されたように感じながら、受付とオフィスを区切っている割れた強化ガラスを乗り越え、オフィスに入る。

 床に落ちた書類の殆どは血液と風化、黄ばみにより、何も文字を読み上げることは出来なくなっていた。オフィスには仕事をするための事務机、事務机には引き出しがいくつかついており、今も、その引き出しを引くことは出来たが何か目ぼしいものは入っていない。また事務机の上には大量の書類と巨大な何かを移すスクリーンが1枚、そのスクリーンにコードでつながっている英語と日本語の書かれたボタンが大量に書かれている板が置かれていた。

 纏は何気なく、そのスクリーンを触れてみる。なんということだろうか、黒い画面であったスクリーンは青い画面を映し出した。そしてユーザーネームとパスワードを入力してくださいと書かれたではないか。

 突然の動きに狼狽えながらも、纏は事務机上に書かれているそれらしい2つのパスコードを震える指先で丁寧に打ち込んでみる。扱い方は分からなかったが、不思議と身体が反射的に動いたと言った様子だった。例え記憶になくとも体は覚えているという事なのだろう。

 しばらくすると青い画面のスクリーンは、右端に大量のクリアファイルみたいなものを提示し始めた。『21xx年 加害者』『殺人件数』などと言った文字が綴られている。

適当に1つタップしてみる。すると画面は何かのファイルを開いたのか大量の動画をアップロードした。一番最新の映像をタップする日付は数十年以上前に撮られたものであり、誰も区切る人間が居なかったのか、動画の長さは他の動画最長になっていた。

 動画は警察署の天井から内部の様子を写していたのだろうか。映像の中には大量の生きた人間が業務をこなしていた。机に向かって何か作業をするもの、休憩しているのか飲み物を飲みながら一息ついているもの。受付に訪れる者に対応しているもの。和やかな日常がそこに映し出されていた。

 だが、ある血塗れの民間人らしき男が入って来てから状況は一変する。

 誰もが狂ったかのようにオフィス内を狂奔し映像の下側に集結したかと思うと、次々にショットガンやら拳銃を持ち、外に走り出していった。中には透明な盾を持った人間もいる。そして纏は映像の中に見覚えのあるものを見つけた。

 それは現在、狂奔し続けている人間達が着ているあるものにあった。

 赤大や、修羅が装備していた『SHIELD』と書かれた防具と類似している。否『SHIELD』防具そのものだ。オフィスや受付にも何人かの人間が陣取り、バリゲードを造り避難してくる民間人を保護している。しばらくの間、画面に民間人を助けるでもなく、警察が動く訳でもなく何もないワンシーンがあったが、それは嵐の前の静けさであった。

 唐突に武装している受付側で、武装していた人間達が見えない何かに引きずられると、壁や床、天井に叩きつけられ始めた。それも1人や2人ではない。同時に続けざまに何人もであった。叩きつけられた人間は苦しみもがくかのように銃弾を周囲に乱射する。それが保護した民間人を射抜き、同僚を射抜き、区切っていた防弾ガラスにもいくつか衝突していた。受付側が叩きつけられた肉片と銃痕によるひび割れで何も見えなくなったころ。内部の人間達は非常に緊迫した様子で銃をガラスに付きつけていた。

 再び、外が静かになる。時折、血液の隙間から漏れ出る光も消えていた。そして人間が、オフィスの強化ガラスへ叩きつけられるかのように無理やり叩き割り侵入してきた。叩きつけられた人間は四肢が様々な方角へ飛び散り頭蓋骨は砕け散っていた。開いた穴に向けて発砲する人間達。しかし、その事件を引き起こしている存在には当たることは無く 中に立て籠っていた人も蹂躙され肉片と化して行った。

 そして、最後の2人であろう人物が空中に吊り下げられる。その背後から個人を特定することは出来なかったが、1人は桃色髪でぐったりとしており、もうひとりは赤髪で四肢を暴れさせて逃れようとしていた。ここで止めておかなければ今から酷い事が起きる。唐突に脳内警報が鳴り始める。だが、纏は好奇心の方が強かった。

 暴れていた方が突然動きを止める。すると、今度は全身を圧縮するように折り畳められていくではないか。その光景に隣の人物は震える。そして血液ジュースでも作る気なのか、全身から大量の血液が吹きだし、その折りたたまれた人間はサッカーボール1つほどの肉塊となってぼとりと地面に落ちた。もう一人の人間の方は、そのまま空中に浮遊したまま何処かに連れ去られてしまった。

 

狂気判定

纏→9【成功】

 

 纏はたちの悪い悪戯映像であると思い込むことで、あれが現実であったという真実を捻じ曲げた。だからその現場にこびり付いている大量の赤い液体は誰かがペンキを溢しただけであり、その近くに転がっている赤黒いボールは、誰かが業務中に遊んでいたのだろう思い込んだ。

 

記憶の欠片【入手】

銃声

 

 

 




【後書き】
 ネクロニカの世界線では武器弾薬が大量に残されているらしいです。
 サプリではドラゴンブレス弾や、スラッグ弾などの銃弾のバリエーションが増えているかなーって思ったんですけど・・・そんなことはありませんでしたね。
 代わりに強いパーツやエネミー情報などが記載されていました。



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