外伝クトゥロニカ神話『4つの愛』   作:カロライナ

50 / 60
【前回のあらすじ】
 別れた4人は各々気になった施設へと足を運ぶ。
 4人一塊なって行動するべきではあったが周囲からは物音一つなく人影すらない為、大丈夫だろうと見通したうえでの行動だった。
 雑貨屋で調べものを始めたぬいぬいは、あるものを見つけてしまう・・・。




Episode5-4 『豪邸』

 ロジーナは豪邸の扉を対戦車ライフルで射抜く。いくら頑丈なシェルターの鉄扉でも対戦車ライフルの攻撃に耐えきられる様には作っていないのか、何発か打ち込むとその入口を開けた。

 内装は如何にも金持ちの豪邸と呼ぶにふさわしい内装が施されていた。しかし、その内装も今は見る影もなく、調度品は床にばら撒かれ価値のある絵画は血糊でべったりと汚れている。

 

狂気判定

ロジーナ→1【大失敗】

飛鳥+1

 

赤い絨毯も埃が溜まり、薄汚く2階建ての建物であったようであるものの2階へと通じる階段は既に崩落しきっており、ロジーナがどう逆立ちをしようとも上がることが出来る様な内装をしていなかった。

 ロジーナは適当に部屋を見て回る。応接間、食堂、厨房、娯楽室。記憶にない筈であるのに全て何処か見覚えのある景色。通路の廊下側には植木鉢がいくつかおかれており、現在そこには何も花は咲いていない。土のみが敷かれている。記憶の中の花壇の世話をしたのがココであることをおぼろげに思い出す。しかし、誰と花の世話をしたのかまでが思い出せない。土は完全に乾ききっており、触れればパサパサとしてあの悪夢に満ちた森のように、命に満ち溢れているという感覚は微塵にもなかった。

 部屋の隅に備え付けられていたブレーカーのような物に手を掛け、壊さないように力を込めながら上げてみる。ケーブルは断線していないのか、完全にブレーカーのような機械のレバーを上げきると、窓を覆っていた雨戸が全自動で開いて行く。

 外の光が窓から差し込み、寂れた通路を美しく照らしていた。どうやら日当たりについても十分に考慮された家のようだ。

 そのまま心ゆくまで、この巨大な豪邸をロジーナは徘徊する。

 2人部屋や浴室。書斎なども見つかった。書斎には小さな金庫が備え付けられていたが、不用心にもその金庫には鍵がかかっておらず中身を持ち出すのであれば問題なく持って行けるようにとなっていた。

 ロジーナは好奇心に負けて、その不用心な金庫を開ける。そこには一冊のアルバムが入っているのが目に留まった。適当なページを開いて見てみる。ロジーナが現在知っているクリスティーナを幼くしたかのような外見をした少女や、後頭部に大きなリボンを付けた目つきの悪いショートヘアの赤髪の少女が写っていた。アルバムにメモが貼られていたようであったが削られており読めなかった。それでもなんとなく、この豪邸の両親がクリスティーナ似の少女とその姉妹たちを愛していたことは写真の様子から十分に伝わってきた。

 埃まみれの絨毯の上に腰を下ろすと、そのまま早読するかのようにロジーナはアルバム片手にパラパラと捲り始めた。記録の様子から少なくとも、2150s以降にとられた写真のようだった。ときどき親が書いた保存の良いメモには、『本物の空や太陽を見せてあげたい』等、切実な内容が一言メモのように貼られている。

 最後まで適当に流し見で済ませようと心に決めていたが、とあるページでその手は止まり、写真を注視する。

 その写真にはロジーナ自身が写っていた。クリスティーナ似の少女が手の届かない花壇に如雨露(じょうろ)で水を与えている姿であった。そこからスローペースでアルバムをめくって行く。一緒に食事を摂る姿、共に昼寝をする姿、遊技場で投げナイフで100点を取った時の自分の姿。マジックペンで落書きをされた時の姿。立派な髭が生え、額には肉と書かれている。アルバムを眺めているうちに思わず笑みが零れ、忘れていたはずの記憶も思い返す。なんとしてでも彼女と再会して伝えたい。「ありがとう。」と。

 ロジーナはアルバムを片手に立ち上がり、そのまま外へ出た。

 

記憶のカケラ入手

感謝

 

 

 




【後書き】
 話が早いですが、現在5作目のクトゥルフ神話物語を書こうと構想を練っています。
 昔は腐るほど時間と体力に余裕があったのですが、今は時間はあるのですが体力に余裕がなく執筆するという気力が湧かないのです。
 ですからまた長い目で見ていてください。最後の小説から6ヶ月ほど経ってから新作を出しましたし・・・。この後書きを書いているときは、まだ気力がありますが、書くかどうかは未定なままです。
 書くのであれば、サプリをふんだんに使った『奇妙な共闘』でも書きたいかなーと思っています。



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