外伝クトゥロニカ神話『4つの愛』   作:カロライナ

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【前回のあらすじ】
 森の木々や植物が蠢き、飛び散った肉片や蟲の破片を捕食していく光景を目撃してしまった4人。
 逃げるように最深部へと足を運ぶがロジーナと飛鳥は見てしまった。変異体等ではない異形の化物の姿を。
 道中、この森に迷い込んだ哀れな過去の犠牲者の持ち物を拾い装備を固めながら、奥深くに潜っていくのであった。


4章 『果てる愛』
Episode5-1 『合流地点』


 ドール4人は森の中を走り抜けると、草木の生い茂っていない小さな広場に到着する。

 正面は反り立つ崖となっており、崖の中に埋め込まれるかのようにしてその巨大な鉄扉は存在していた。附近の崖を登攀しようと手を掛ければ、その部分から崩れてしまい上る事は困難であると分かる。

 右手を見れば、恐らく迂回路から向かうことが出来るであろう巨大な道路の残骸が目に入った。奥には地図に書かれていた廃墟群が小さく視界に映っている。

 どうやら装甲車は、先に到着しているという訳では無いようだ。

 4人は互いに顔を見合わせる。地図を持っていないが曖昧な地図の記憶から、正確な距離は分からないものの彼女たちの方が移動は速い筈だ。

 到着していないという事は・・・・つまり・・・。

 考えたくもない想像に首を振り、嫌な想像を振り払う。誰もが現実から顔を背け、言葉を発せなかった。

 目標物であったシェルターを目の前にして動けないでいると、唐突に金属製の分厚い巨大な扉が勝手に開いた。隙間から地下へと続く横幅の広い階段も見える。

 互いに顔を見合わせる。しかし、誰も扉に接近して居ない。ロジーナが崖を触った程度ある。

 

「あ、赤大さん・・・?」

 

 纏はわずかとなってしまった希望に掛けるように、震えた声で勝手に開いた巨大扉に接近し、中を覗き込んだ。既に非常灯は切れており、通路の中は真っ暗であったが纏の目には昼間の様に中を確認することが出来た。

 随分と長い間、この階段は使われていないのか埃が積雪のように積もっている。しかしその埃を踏みしめるかのような人間の靴による足跡が4組、続いているのが窺えた。

 

「み、みんな! みんな来て!!」

 

 纏の曇っていた表情は明るくなり、震えた声は歓喜に満ち溢れたような声で3人を呼ぶ。

 3人は先ほどまでと声のトーンと異なる纏に釣られる様に扉の前に集まった。纒の指をさした方向を見ると其処には足跡が存在している。3人の表情を明るくなった。寄り道することなく足跡は直線状に階段を降りて行ったようであった。

 

「赤大さん、遅れちゃってごめんなさい・・・。ボク達も急いで最短ルートを通って来たつもりだったんだけど・・・地図が無いから時々迷っちゃって・・・・。」

「・・・・流石・・・・・クリスティーナ・・・・あんな崩落は・・・・・余裕だよね・・・・・。」

「ぬい、わたしやりましたよ!! 縫に教えて貰った通り敵の攻撃を受け流しました!!」

「星乃さん! 私もまた強くなりましたよ! 未來も居ますし、こっちは全員生存して到着です!! 星乃さん達も大丈夫ですか? こんな暗闇の通路ではなくて、外でお話ししましょうよー。」

 

 4人は通路の入口から、中で先に待っているであろう4人に向けて嬉々としながら各々話しかける。不思議とその呼びかけは一心同体になっているような不思議な感覚がする。

 

対話判定

ロジーナ→飛鳥 7+1【成功】

ぬいぬい→ロジーナ 1【大失敗】

【恋心】→【信頼】

飛鳥→ロジーナ 7【成功】

纏→【全対象発狂点なし】

 

行動判定

ロジーナ→3【失敗】

ぬいぬい→2【失敗】

飛鳥→2【失敗】

纏→4【失敗】

 

 ところが、4人からの返答はなく通路は不気味なほど静まりかえっていた。

 ロジーナ、ぬいぬい、飛鳥、纏の4人は首を傾げる。

 

「反応・・・・ありませんね。」

「クリスティーナ・・・・・! わたしの事・・・嫌いになった?」

「赤大さぁーん!」

「ぬいー!!」

 

 されど反応は無い。

 

「・・うーん・・・・。・・・・・・・はっ・・・!」

「飛鳥、どうかした?」

「もしや、これはサプライズって奴なんじゃないでしょうか?」

「・・・サプライズ・・・・・?」

 

 ここで飛鳥が考え込むようにしながら、突然閃いたような顔をする。

 その表情を覗き込むようにして纏が尋ねると、己の顔の真横で人差し指を立て、至って真面目な顔で4人の顔が見えるようにやや前傾姿勢になりながら説明する。そんな説明にロジーナも食いつくように近寄りながら興味ありげな顔をした。

 

「みなさん、本当は再開を喜びたいのですが、普通にお祝いするのは嫌でこの先にある空間で感動の再開!! なんて準備しているんだとおもいます。ここで私たちの元に出てきてしまったら、サプライズも何もなくなってしまいます。そんな事情で私たちの前に姿を見せられず、返答も出来ず・・・苦しい思いをしているのでは?!」

 

 確信めいた顔で飛鳥は、目を輝かせながら夢と希望に満ち溢れた解説を3人に説明する。

 

「ぬいは・・・・しなさそう・・・。」

「・・・・・・クリスティーナ・・・・だったら・・・・・・確実にやる・・・!」

「赤大さんは・・・どうかなぁ・・・。」

 

 ぬいぬいは飛鳥から最も離れた位置で腕組みをし、首を傾げ怪訝な顔をしていたが、ロジーナはしばらく考え込むような仕草をした後、両目をカッと開いたかと思うと飛鳥の予測に力強く頷いた。纏もぬいぬいと同じような仕草をする。

 

「あー・・・・でも、赤大さんもクリスティーナさんのノリでやりそう・・・。」

「そうです! あの人ならやりますよ! あまり待たせるのも良くないですし、行きませんか!?」

「・・・そうだね。」

「・・・・・・クリスティーナ・・・・・ふふふっ♪」

「あ、待ってよー!」

 

 纏も頷きを見せたところで飛鳥の声は一段と大きくなり、一足先に階段に足を踏み入れる。それに続くようにぬいぬいも飛鳥の後ろに付く。その背後にサプライズと再会を楽しげにしているロジーナ、最後に纏が続いた。

 

対話判定

ロジーナ→飛鳥 5+1【成功】

飛鳥→ロジーナ 4【失敗】

纏→【全対象発狂点なし】

 

 

 




【後書き】
 惜しい人を亡くしてしまった。
 そしてダイスの女神よ。クソビッチって言って申し訳なかった。申し訳なかったから、これ以上ダイスの出目を輝かせるのはやめてください。いろんな意味で私が死んでしまいます。

 シナリオの最終章始まりました。残すところ現段階で13話です。
 彼女たちは幸せを手に入れることができるのか。次回へと続きます。



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