外伝クトゥロニカ神話『4つの愛』 作:カロライナ
蛾に対し、鉄拳制裁で粉砕した飛鳥とその瞬間を目撃したぬいぬい。
飛鳥の悲鳴によって、前方を歩んでいた纒とロジーナは2人の仲睦まじい様子を確認する。
飛鳥の弁解が終わるまで、ロジーナは纒へ思い出すことができた記憶について話すのだった。
「うふふふふふ・・・・・・ここは素敵な場所ね~。命で溢れているわ~。賑やかだけど、一体何のお話をしていたのかしら~?」
4人が悪夢のような森の中で『きなこ色の鱗粉』に捲かれながら恋バナを繰り広げたり、長い弁解をしていると突然4人の背後から声が掛けられる。4人が振り返ると、うっとりとした声で歌うように話し、枝葉のこすれ合う音も立てず木々の間から一人の少女が姿を現していた。
10歳ほどの少女は、くるくるとドレスの裾を浮かすように、回り踊りながらどこを見ているともつかない目で話しかけて来る。少女は雪のような白い肌に、黒いドレスで顔と手先以外のほぼ全身を包み込んでいる衣装を着ており、長く白い髪に前髪で片目を隠しながら少女。
纏は思わずロジーナのあすなろ抱きを振り払うようにほどき、写真を取り出す。見比べれば見比べるほど、そこには瓜二つの少女が写っていた。
「あ、えっと、君は・・・・。」
「わたしはアポルオン~。この森で暮らしているの~。」
「アポルオンって言うんだ・・・。あの、君についての記憶にないんだけど・・・ボク達について何か知ってないかな?」
「残念だけど、なにも知らないわ~。あなたたちとわたしは初対面だもの~。」
少女はコマの様に忙しなくクルクルと回転しながら、何処か楽しげに話す。纏は知らないという彼女に怪訝な表情をした。少なくとも、生前ではあるが彼女とは会い一緒に写真を撮っている。さらに写真を取るほどの仲であるのにも関わらず初対面・・・。仮に自分たちと同じように記憶が無いのであれば、その趣旨を伝えるのでは?
纏の中で『アポルオン』に対する不信感は強まって行く。
そして正気に戻ったシスターが話していた内容をふと思い返す。あれは確かロジーナとクリスティーナに対して話しかけていた時だ。
『今も仲が良さそうですね。・・・成長した様子からシェルターから何年経過してしまったのでしょうか・・・。』
もし彼女が、自分たちが生前仲良くしていた『アポルオン』であり、生きているのであればクリスティーナの様に成長している筈なのだ。しかし、写真に写る彼女と目の前に居る彼女は何も変わらない。そのままの彼女である。
行動判定-2
纏 9-2【成功】
そして纏はハッしたように『アポルオン』から距離を取る。彼女を細かく観察していると、彼女が生きた人間でも無ければ、4人の様にアンデットでもない事に気が付いた為であった。
それどころか、正体が何であるのかそれすらも特定できない。そんな
「・・・・纏・・・・・? どうかした・・・・?」
「ロジーナ・・・下がって・・・・・・彼女、生きた人間でもアンデットでもない・・・っ。」
「・・・ッ・・。」
纏の警戒する姿勢にロジーナも背負っていた対戦車ライフルを両手に構える。2人の只ならぬ気配に、背後に居た鱗粉塗れの2人も『アポルオン』に対し身構え警戒する。
すると、あれほどくるくると踊り回っていた『アポルオン』がピタリとその場で動きを止める。
「・・・あ~ぁ・・・この姿なら、油断すると思ったのに・・・・。」
うっとりとした声からは、連想が出来ないようなおどろおどろしい声を上げた。口を大きく開口するのと同時に、口や鼻、眼球、耳などの穴と言う穴から無数の羽虫を吐きだしながら、ドール4人に向けて囲うかのように襲い掛かる。
狂気判定-1
ロジーナ→8-1【成功】
ぬいぬい→9-1【成功】
飛鳥→10-1【成功】
纏→7-1【成功】
行動判定-1
ロジーナ→10-1【成功】
ぬいぬい→4-1【失敗】
飛鳥→7-1【成功】
纏→4-1【失敗】
襲われる最中ロジーナと飛鳥の2人は思い出す。かつて最終戦争間際、各国が作るアンデット兵器に対して作られたのがミュータント昆虫兵器である事。彼らは欧州の人口の60%を死滅させ最終戦争のパワーバランスを大きく変動させた存在であることについて。
目の前にいる群体は、各個体の戦闘能力は低いものの、奇跡的な変異を繰り返し集合体への自我を習得し。さらに彼等はドールやサヴァントを喰らう事で情報を収集し、時には人間も襲い、今や滅んだはずの人類に比肩する知性を得つつある。
蟲の群れはそれぞれが大きな顎を持ち、4人の身体に噛みつき肉を貪ってきていた。
『アポルオン』がある程度の蟲を吐きだし終えた後、くすくすと愉快そうに嘲笑うがその声はもうどうあがいても耳障りな蟲の羽音にしか聞こえなかった。さらに上空や地中からも巨大昆虫が囲み逃げ場を完全に失わせていた。
【後書き】
伏線を大量に張っているつもりですが、回収できているか不安です。
回収できていないものがあれば『謎』としてでも扱ってください。
そう、小説を書くきっかけとなった『E=sの落とし子』と同じようにな!!
『E=sの落とし子』は面白かったですよー。遊ぶ機会があれば、ぜひどうぞ。