外伝クトゥロニカ神話『4つの愛』 作:カロライナ
崖が崩れた。
星乃も落ちた。
装甲車は・・・・分からない。
取り残された3人のドール達は、ワイヤーリールを使い崖を登ってくる飛鳥を3人掛かりで引き揚げていた。彼女の体重は重くはなかったが、様々な持ち物を持っていたためそれを何一つ落とさないように引き上げるのに対して3人の協力が必要不可欠であった。
飛鳥を引き上げた後、呆然と崩落した崖沿いを見つめる。どうやら山の斜面ごと削られたように山は半身を失い、半身を海へ投げ込んでいた。それが現在4人の佇んでいる場所からの光景であった。どんなに崖から頭を覗かせて装甲車が沈んでいないか確認しようにも、土煙が邪魔をし何も見えない。例え視界が晴れていたとしても上から土砂が降り注いでいる分、装甲車が海の藻屑となったか否かの判別は難しいものがあった。
狂気判定-2
ロジーナ→8-2【成功】
ぬいぬい→9-2【成功】
飛鳥→9-2【成功】
纏→2-2【大失敗】
飛鳥+1
行動判定
ロジーナ5,6→【成功】
「・・・道路が全て崩落するなんて・・・。大丈夫かな・・・。」
「・・・・クリスティーナが・・・・・・運転している・・・・・きっと・・・・大丈夫・・・・・。」
「そ、そうですよね・・・ぬいや赤大さん、みなさん、きっと無事ですよね・・・。」
「星乃さん・・・。」
纏は崩落直前に手に入れた音楽プレイヤーを握りしめ、ぬいぬいは受け渡された太刀を抱き寄せる。ロジーナは対戦車ライフルを背負いながら新たに得たスコープで装甲車の安否を確認しようとし、飛鳥は女性座りで地面に座り込み両手も地面につけ頭を垂れていた。
「ロジーナさん・・・どうですか・・・? 赤大さん達、無事ですか・・・?」
「・・・。・・・・確認・・・できない・・・・。」
「そう・・・ですか・・・・。」
ぬいぬいの問いに応じたロジーナの言葉に誰も動けなくなる。打ちつける波が周囲に悲壮感を漂わせ、時間だけが刻々と過ぎ去って行く。
「・・・ここも崩れるかもしれない。ボク達は森を通ってシェルターに向かおう。・・・大丈夫だよ。ロジーナさんの言う通りクリスティーナさんの運転が上手いんだったら皆生きているよ。」
「・・・・・・そうですね・・。あまりここで時間を潰してしまったら、あちらが先に到着した場合待たせてしまいますよね。」
「・・・・・・・大丈夫・・・・・・・きっと・・・・。」
「そうですよね・・・。」
30分ほど経過しても、その場から誰も崩落現場から立ち去っては居なかった。立ち去ることができなかった。
魂が抜けた人形の様にその場から誰も動かない。崩落がドール4人を釘づけにしていた。
だが更に5分経過した後、纏が音楽プレイヤー片手に立ち上がる。その瞳は活力が弱まった色をしていたが、同時に僅かな決意を込めたかのような瞳でもあった。その場から動けない姉妹を元気づけるように励ます。音楽プレイヤーを握る手は震えていたものの、なるべく明るい声を出して勇気づけさせる。
纏の振る舞いに3人も顔を上げ、その場を後にした。
対話判定
ロジーナ→纏 2【失敗】
ぬいぬい→纏 7【成功】
飛鳥→纏 2【失敗】
纏→飛鳥 8+2【成功】
【後書き】
正直、星乃が崖崩れに巻き込まれた時は落ち込みました。
それも100ファンブルですから、どうも救いようがないという。
しかしドール達が然程、狂気に瀕していないことに対しては驚きました。これは無事であると思い込むのは短くも長い間に結成された絆と捉えるべきか、現実逃避と捉えるべきか。
渡されたものは大切な遺品ですから、壊さない様にしなくてはなりませんね。