外伝クトゥロニカ神話『4つの愛』 作:カロライナ
シェルターに向かうために迂回路を走行する一行。
熟睡から目覚めた修羅に対し、ぬいぬいは昨晩のおさらいを執り行う。
修羅も熱心な彼女に快く応じるのであった。
「星乃さん! 纏さん赤大さん!! 見てください! 未來がまたピクンって動きましたよ!! ピクンって!!」
「話しかけにも応じているみてぇだし、誰が親か認知しているみたいだな。」
「飛鳥さんが一番 未來に話しかけているもんね。赤大さん・・・カプセルの中でも口の動きで分かるんですか?」
「さぁ? そもそも、それだけの脳味噌が育っているか自体怪しい所だが・・・。」
その頃、出口付近に陣取っている飛鳥、纏、赤大、星乃は、『未來』を抱きかかえながら燥いでいる飛鳥に呼ばれ、胎児を覗き込んでいる最中であった。赤ん坊が見せる反応に対して逐一喜ぶ母親の様な飛鳥を生温かな目で見つめる。
「星埜さん! 星埜さんも見てください!! 未來が動いたんですよ!!」
「そう。良かった。」
「むー。もっと感情豊かに反応してくれないんですかー?」
「表情。作る。難しい。鏡。沢山。練習。した。ない。」
「またそんなこと言って。纏さん、ちょっと未來を抱いてて!」
「あっ、はい。」
「よっ。纏もこれで一児のパパだな。」
「赤大さん、茶化すのはやめてくださいよぉ。」
「笑う時はこうやって口角を上げて目尻を下げるんですよー!」
ここまでずっと飛鳥に張り付き動いていた星乃に対しても、飛鳥は笑顔で未來を見せつけた。すると飛鳥の動きに反応するように胎児は反応を返していたが、しかし星乃は素っ気ない返事で淡々と返答する。
それが気に食わなかったのか、飛鳥は頬を膨らませ口を尖らせながら星乃に文句を垂れた。星乃なりに必死に早口の弁解を試みるものの飛鳥にその思いは通じず、それどころか飛鳥は胎児を纏に預けると自由になった両手で、星乃の顔を挿み込むように掴み、両方の親指を星乃の口に突っ込み引き上げ、人差し指で目尻を、中指で目頭を垂れさせるとと無理やり笑顔の表情を作らせた。
目星
赤大25→31【失敗】
「この飛鳥。強引。この飛鳥。怒りんぼ。」
「それは星乃さんが、素っ気ない態度ばかり取るからですよー!!! ぬいぬいさんに修羅さんが何か教えているみたいですし、私も星乃さんに笑顔の作り方を教えます!!」
「強引。この飛鳥。強引。怖い。」
「誰が怖いですかー! これも星乃さんの為なんです!! 今後円滑なコミュニケーションを取れるように必要なことなんです!!!」
「怖い。考え。飛鳥。そっくり。」
「私が誰とそっくりなんですかぁー!!!」
星乃は口角と目尻と目頭を無理やり変化させられながらも、落ち着いた口調で淡々と思った感想を連ねる。そして、その感想を聞いた本人は声を荒げながらも、ふざけるように笑いながら無理矢理、星乃の顔を変化させていく。それを赤大はゲラゲラと愉快そうに笑いながら見つめ、纏は胎児を不思議そうな顔で見つめていた。
対話判定
飛鳥→星乃 7【成功】
纏→赤大 4+1【失敗】
【後書き】
今日も、まだ96式装甲車の中は平和です。辛辣な世界でほのぼのとした光景は、少しだけ心が安らぎますよね。