外伝クトゥロニカ神話『4つの愛』   作:カロライナ

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【前回のあらすじ】
 教会で一晩夜を明かした一行は、シスターに別れを告げ教会内で見つけたシェルターを目指し前進する。
 しかし、最短ルートでシェルターに向かう場合、森との衝突は避けられず飛鳥の意見もあり、迂回路を通ることに。
 寝起きと血糊の組み合わせは、悪く2名ほど転倒者を出すものの、それぞれに応急手当をするのであった。


3章 『耐える愛』
Episode4-1 『おさらい』


 装甲車はシェルターまでの道中に存在する森の迂回路を走行していた。

 しかし、どれだけ走らせようともそこは民家1つすら目に入らぬ、荒れ果てた荒野が広がるばかりであった。見晴らしの良い荒野である為に、見張りである星乃を車内に戻していた。

 

「ぬい、確認したい事があるのですが、ちょっといいですか?」

「はい。なんでしょうか?」

「正面から相手が斬り掛かってきた場合は、相手の太刀筋をそのまま受け止めるんじゃなくて、受け止める力は最小限で右脇に受け流して、相手がバランスを崩したところに円を描くように刀を振り上げて・・・。」

「反撃として首を落すのです。この時、刀の先端で斬り捨てる事をイメージしてください。・・・しかし、敵の首を落せるかと言われれば貴女の実力ではまだ不可能でしょう。下手をすると刀が根元で折れてしまい役に立たなくなる可能性もあります。ですから、まずは敵の攻撃を真面に受け止めず受け流す事から始めるといいですね。」

「相手が突いてきた場合は・・・」

「剣先を貴女の日本刀で中央の軸から右や左に逸らすのです。軸さえ逸らす事が出来れば、貴女に痛恨の一撃は入りません。」

 

 ぬいぬいは、仮眠に近い熟睡を終え 地図を眺めて方位確認を行っている修羅に近づき、おずおずとした表情で昨晩稽古をつけて貰った剣術復習を尋ねる。修羅は寝起きで、いつも以上に目つきが悪かったものの ぬいぬいに微笑むと嫌がることもなく再び指導を始めた。狭い車内で実際に刀を振り回すわけにもいかない為、互いに片手を出し合いそれを刀に見立て確認作業を行っていた。

 

「ありがとうございます!」

「はい。・・・ぬいぬい。貴女にこれを預けておきましょう。私の家系に代々受け継がれてきた刀です。昨晩、伝えた技法が身に沁み込んでいれば必ずや役に立ちます。」

「え・・・い、いいんですか? そんな大切なものをもらってしまって・・・。」

「えぇ。構いませんよ。貴女は私が指導してきた誰よりも、素質がありましたから。私も教会の方で切れ味の鋭い別の日本刀を頂きましたし、流石に三刀流は出来ませんからね。・・・受け取ってください。」

「た、大切にします。」

「はい。」

 

 確認作業を終えたぬいぬいは、先ほどのおずおずとした様子から一変。華やかな笑顔へと変わる。修羅も僅かにほほ笑むと視線を自分が帯刀している刀へ向けた。そして2本あるうちの一本を手に取ると、それをぬいぬいに差し出す。

 ぬいぬいは刀を渡されると両手で丁寧に受け取り、笑顔からおずおずとした顔に戻ってしまったが、修羅の方は微笑を崩さずに太刀が受け取られると満足したかのように頷き、新しく拾った日本刀をノックするかのように叩いた。

 

対話判定

ぬいぬい→修羅 8【成功】

 

 

 




【後書き】
 『修羅』が『ぬいぬい』に教えた技を使うときは来るのでしょうか・・・(遠い目)
 そもそもとして『修羅』が、まだ太刀での攻撃を一度も行っていないのが問題なのですよね。
 小話として投稿しようかと考えていた時期もありましたが、4章に組み込みました。
 関係が深いほど失った時の代償は大きくなりますからね。(ゲス顔)




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