外伝クトゥロニカ神話『4つの愛』   作:カロライナ

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【前回のあらすじ】
 崩れかけた教会の下に6人と『未來』は固まって就寝に入る。
 纒が修羅に対し反発しようとしたが、修羅の方が言いくるめる力は一枚上手であった。
 クリスティーナはロジーナの心変わりなど、つゆ知らず抱き寄せる。ほのぼのとした空気が辺りをを包み込んだ。そんな気がした。


Episode3-15 『剣術』

行動判定(イベント判定)

ロジーナ→4【失敗】

ぬいぬい→7【成功】

飛鳥→4【失敗】

纏→2【失敗】

 

 夜も更け肌寒くなってきた頃。

 ぬいぬいは耳を一度ピクリと震わせるとその瞳を開けた。武器を片手に周囲を警戒する。しかし、特に敵影のような物は見当たらなかった。右隣では飛鳥の背中に縮こまるようにして、しがみつく纏。星埜にしがみつく飛鳥、抱きつかれながらも仰向きで微動だにしていない星乃の順で寝転がっていた。左隣には穏やかな寝息を立てながらもロジーナの手を握るクリスティーナ、クリスティーナの腕にしがみつくロジーナの順で寝ている姿が見える。片や朗らかな顔、片や暑苦しそうにしつつも嬉しそうな顔をしているのが見える。

 微笑ましさに口元を緩め、焚き火に視界を移す。そこには座ったまま、眠りこける赤大の姿がうつる。ぬいぬいは左手を口元に当てクスリと一度だけ笑う。そして、隅に置かれている布を赤大にそっと掛けると、自分の得物片手に聞こえた物音を確認、かつ修羅の安全を確認しに表へと出るのであった。

 外は相変わらずの漆黒の闇が辺りを包み込んでいた。先ほど聞いた物音を除けば、本当に世界が滅び、無に還ったと誰かから話されれば信じる他無いような殺風景な景色である。これだけ暗ければ、さぞや上空には末恐ろしいぐらいの星の瞬きを見られるはずであったが、星はおろか、月すら見えない。恐らく昼間に空を覆っている鉛色の雲のせいだろう。

 そのまま得物である日本刀を片手に教会の外周を一回りしてみる。自分たちが乗車してきた装甲車が止めてあり、装甲車が停められている奥に修羅の姿があった。黒いジャケットのような物や銃火器は傍らの地面に置かれており、本当に最小限の頭に付けたヘルメットと暗視ゴーグル左腰に帯刀した太刀のみの軽装であった。左手の親指を鍔にかけ、右手も柄に添え、抜刀術の姿勢で微動だにしていなかった。

 

居合&太刀

修羅80→4【クリティカル】

1D3→1

 

 一声かけようとぬいぬいは一歩踏み出す。

 その刹那、修羅も虚空に向けて刀身を振り抜き高らかに切上げ、切り上げた太刀を左手でも握ると素早く下段に斬り伏せた。

 太刀の空を切る音が周囲に反響する。

 

「ぉぉ・・・。」

「・・・誰だ。」

 

 目の前に何かしらの敵が居れば、確実に5体は葬っていたであろう一撃。鮮やかな太刀捌きに思わず口から言葉が漏れ出る。その視線には殺気の色が混じっていたが、相手を確認るや否や抜き身であった太刀を鞘に収め、殺気も周囲に霧散させた。

 

「・・・ぬいぬい、ですか。驚かせないで下さい。・・・どうかされたのですか?」

「いえ、何か奇妙な物音が聞こえたので、なにかなーと思って見に来ただけです。」

「・・・。十分離れたつもりだったのですが・・・起こしてしまいましたか、これは失礼いたしました。・・・・・もうやめることにしますね。」

 

 修羅は何処か胸を撫で下ろしたような表情をすると、左手で額の汗を拭い。落ち着いたような視線でぬいぬいを見つめた。ぬいぬいも、修羅の問いに対してすっとんきょんな声を出しながらうそぶく。しかし、修羅にはそのうそぶく様子に気が付かなかったのか、謝罪の様に一礼ぬいぬいに対して行うと、周囲に置かれている装備を背負い始めた。

 

「ぁ、えっと・・・・・・・綺麗な刀捌きでしたね! 何処で学んだんですか?」

「実家が剣道道場を営んでいまして。この剣術は父から学びました。」

 

 素直に謝罪をしてきた修羅に、ぬいぬいは気まずそうな顔を一瞬浮かべる。そこで思い出したかのような明るい顔で太刀筋を褒める。修羅は背負っていた荷物を持ちながらも淡々と返事を返す。

 

「も、もう知っていると思いますけど、わたしも刀を使うのですが強い一撃を繰り出せなくて困っていたんです! ・・・・それで、あの・・・良ければ・・・ぬいに教えて貰えないかなって・・・。」

 

 ぬいぬいの横を歩き去り、教会へと戻ろうとする修羅に必死に呼び止めるかのような声で声を掛ける。教会へ向かう歩みは、その何処か悲痛とも取れる様な声によってぬいぬいの願い通り止まった。

 

「・・・・・・。」

「わたしも肉盾だけではなく攻撃役として皆さんを守りたいんです。ですから、ですから、その・・・強くなるために、稽古をつけて下さいませんか?」

「・・・。」

「お願いしますっ!」

 

 しばらくの静寂。

 修羅はいつものように考える素振を見せる。ぬいぬいはもうひと押しだと感じたのか、今度は取り繕いではない本心からの叫びのような訴えかけに出る。その表情は真剣そのものであり、迫真なその姿をもしも正面から見たのであれば、息を飲んでいたであろう。

 

「・・・・・私の指導は厳しいですよ? それも覚悟の上ですか?」

「・・はいっ! 望むところです!!」

「わかりました。今回は特別です。」

 

 そして彼女は振り返った。戦艦クラスの眼光に不敵な微笑みまで浮かべた恐怖の顔で。しかし、それでもぬいぬいは嬉しそうに笑うと力強く頷いた。

 

対話判定

ぬいぬい→修羅 9【成功】

 

行動判定

ぬいぬい→8-2【成功】

 

 

 




【後書き】
 せっかく各々のイベントを用意したのにも関わらず、ぬいぬい以外のドール達が行動判定に失敗してしまったため、3話分短くなってしまいました。
 出目は偽ってはならない。偽ることでTRPG小説ではなく、茶番小説になってしまう。

 ・・・・・出目に関して、私、いつも同じこと似たようなこと言ってますね。
 証明する術はありませんが、今回も普通のセッション同様に振っています。



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