外伝クトゥロニカ神話『4つの愛』   作:カロライナ

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 時は2161年。人類は核戦争によって滅び去った。
 70億居た人間も1億4千万人まで減り、外を闊歩する存在は突然変異を繰り返した昆虫か、放射能に耐えきったもののみ。今もなお生き延びた人間も、その限りある生存数を自らが撒いた種である放射能の影響によって急速に減らしつつあった。

 これより語られるは、2161年より更に未来の話。
 2xxx年。生き残った人間の人口はついに1億を切った。それでも僅かながらに生き続けている。
 この世界にとって人間は希少な存在となった。
 滅びの一途を辿り、語られるとすれば夢物語の住人。出会うことなど滅多にない生物。

                                   ・・・その筈だった。



序章
Episode1-1 『迷い込んだ人間』


 そこは分厚いコンリートで固められた四角形状の通路。細長い通路の両端面には木製の扉が1枚と、閂状の簡単な鍵の付いた扉が1枚閉じている。

 その2枚の扉の中央。どちら側にもつかない中央で『滅んだ』とされる人が、4人。それぞれの姿勢で佇んでいた。

 

 1人は腕組みをし、向かいの壁を見ながら壁に寄り掛かっている女性。

 桃色髪に長い髪の毛を後頭部でまとめ上げ、ポニーテール状に結っている。目つきは細眼であり三白眼であった。目つきの悪さから人相は悪そうに見える。また何処かの部隊の特殊部隊であったのか、分厚そうな防具や都市迷彩服、ブーツ、革手袋、暗視ゴーグルに加え、ホルスターには拳銃が2丁、予備マガジンは胸元のポーチにあり、最大3回分装填が出来そうな程のふくらみがあった。その他に目ぼしい持ち物といえば、両腰脇には太刀が2本帯刀されており、いつでも敵を切り伏せることが出来そうな重みのある得物が見える。

 

 1人は耐ショック姿勢を取るかのように蹲っている非常に小さな女性。

 彼女の顔を現状況からは確認する術がないが、ふくよかな胸と輝くかような艶のあるスーパーロングヘアのブロンド髪、揉み心地の良さそうな尻が彼女を女性であると示す身体付きが、コートやズボン越しからでも分かるのだった。

 彼女はその衣服から民間人であることが分かるものの、蹲った状態からでも何かしらの武器を所持していることを確認することは出来る。1つは背中に背負ったバックパックから見えるもの。開閉部分には、何やら大きめのロケット花火が見え隠れしており、肩には2連式のショットガンが掛けられており、銃にはスリングが付けられ隠す気のない装備しているのが目に入る。

 更にそのショットガンは この荒廃した世界には似つかわしくないほど、丁寧な彫刻が施されており得物の他に芸術品としても素晴らしいショットガンであることが見て取れた。

 

 1人は、2人目の紹介した女性の脇にしゃがみ込み、蹲っている女性の背中を摩っている。

 1番初めに紹介した女性と同じように、顔つきは悪く見えた。ところどころ古傷や縫傷などで治療痕が残り、人相は決して良いとは言える様な人相ではない。

 髪色は血液並みに赤黒い紅蓮の色をしており、よぶんな後ろ髪が目元に掛からない程度ではあるがカチューシャで止めている。髪形は痛んだボサボサのロングヘアと言った具合だ。そして時々、桃色髪の女性の方へ向き様子を伝えているのか、口が開く。その口内に垣間見える舌は、ヘビの舌の様にパックリと2つに分かれていた。

 彼女もまた、桃色髪の女性と同じ特殊部隊に所属しているのか、分厚そうな防具や都市迷彩服、ブーツ、暗視ゴーグルに加え、革手袋やホルスターに拳銃が2丁、予備マガジンは胸元のポーチに入っているようだった。

 

 そして最後の1人は燃え盛るような鮮やかな赤髪に、長い髪は自然に垂らしているロングヘアのツンとした無表情の女性。

 彼女は何処を見ているのか分からないような様子で、閂状の扉を口を開くこともなく無言でただ見つめていた。

 彼女は武器らしい武器は何も持っているようには見えない。彼女の特徴を上げるとすれば、それはブロンド髪の女性よりも勝る豊満な胸部と、この場に居る3人の中で誰よりも身長が高く、下手をすると目の前で縮こまっている女性の2倍は身長があるかもしれない巨体をしていた。

 決して、コスプレの衣装ではない巫女服を着用し、ただひたすらに閂状の扉方面を見つめている。

 

「・・・・・いつまでそのようにしているつもりですか?」

「・・・。・・・夢では・・・御座いませんのね。背中を摩って下さって ありがとうございました。もう大丈夫ですわ。現実逃避は止めて、この悪夢のような現実を受け入れることと致します。」

 

 4人の呼吸音以外に何も聞こえない空間へ向けて、重々しく桃色髪の特殊部隊風の女性が、蹲っているブロンド髪の女性に向けて視線を落し口を開く。

 ブロンド髪の女性は、重たそうに蹲っていた状態から顔を上げ、周囲を見渡した。

 その瞳に映るものは、無機質なコンクリートの壁と2枚の扉、そして彼女等の姿のみである。

 彼女は何処か諦めがついたような、苦虫を奥歯で噛み潰したように苦々しく特殊部隊風の女性に微笑みかけながら呟いた。

 その顔は非常に整っており、ロシアと日本の良き特徴を兼ね備えた、APP17はありそうなハーフ的美貌には何処か見覚えがあった。そう、それは第一クトゥルフ神話や第四クトゥルフ神話に出てきた熊野クリスティーナ。彼女そのものの姿である。

 

 

 




【後書き】
始まりました。
外伝クトゥルフ神話『4つの愛』
タイトルもまだ確定しきっていないので、今後変動する可能性があります。

今回の小目標は、【前書き】に可能な限り前回のあらすじを加筆していきたいと思います。

これから、また新しい物語をよろしくお願いいたします。



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