外伝クトゥロニカ神話『4つの愛』 作:カロライナ
クリスティーナが操縦する陸上自衛隊が保有している96式装輪装甲車は快適に走りだす。
しばらくすると赤大も気絶していた状態から復帰し、絶望の継続に落胆した。
さらに圧倒的な装備不足に2人は非常な現実に苦笑するほかなかった。
「ねぇ、星乃さん。」
「何。」
「この子に名前とかって付けた方が良いのかな?」
2人が看病されながらも頭痛に苦しんでいる間、飛鳥は胸元から仕舞っていた胎児を取り出す。胎児は液体の中でピクピクと脈動していたが、飛鳥はその姿に何処か愛おしさでも感じているのか大切そうに抱きかかえながら、隣で正面を無表情で見つめる星乃に声を掛けた。星乃は一切の感情の乗っていない声色と表情で、飛鳥の方を首だけ向けるが、飛鳥はそれでも根気良く星乃に対して精一杯の笑顔を向けていた。
「名前。」
「そう、名前。エンブリオっていうのは、胎児という意味でこの子の名前じゃないんでしょう? だから、名前を付けてあげなきゃいけないかなって。本来は8人全員で付けた方が良いかも知れないけど・・・クリスティーナさんは作業でお忙しそうですし、ロジーナさんは周囲の警戒の最中ですし、ぬいぬいさんや纏さんもそのような状況ではないですから・・・。」
「私。飛鳥。一緒。名前。考察。」
「はい。星乃さん、何か名案はありますか?」
「分からない。」
「即答しないでちょっとは一緒に考えてくださいよー。私は一応考えているのですよ! まったくもう・・・。」
「ごめん。飛鳥。考察。飛鳥。名前。何。」
あまりにも、星乃の何も考えていないかのような素早い返答に飛鳥は口を尖らせ、ふて腐れたかのように怒る。腕組みをし最大限に怒りを表現するが、胎児は胸元に大切そうにしまい、星乃に対して本当には怒っていないのか、チラチラと横目で星乃の顔色を伺っていた。
「男の子でしたら
「男。希望。女。未来。」
「ね。いいでしょう?」
「いい。」
そして、星乃が名前に対して聞いてくると怒っているような素振を止め、笑顔になり星乃へと向き直る。無表情なのは変わらなかったが、それでも飛鳥は笑顔を浮かべ、星乃に対し丁寧に自分が考えた名前とその意味について解説した。
星乃に賛同してもらえると更に上機嫌になり優しく胎児をカプセル越しに撫でた。
記憶の欠片【入手】
飛鳥→母の手(02)
「・・・・・・鳥。飛鳥。飛鳥。」
「えっ・・・あ、どうかしたんですか? 星乃さん。」
「急。飛鳥。生気。ない。」
「えっ。」
「心配。大丈夫。」
「だ、大丈夫。ごめんなさい、少し忘れていた記憶を思い出せたようで・・・。我を忘れてしまったみたいです。」
「記憶。どんな。」
「あれは・・・お母さんの記憶だと思います。温かい手で私をそっと抱き締めてくれて・・・。」
「・・・。」
「そのお母さんの顔は思い出せないのですけど、確かに「あった。」そんな気がしたんです。」
「・・・。」
飛鳥は星乃に呼ばれる声で、何処か夢うつつになっていた状態から現実へと引き戻される。
そこには両肩に両手を置いて、飛鳥の名を呼ぶ星乃の姿があった。少し錯乱したかのような表情をするが、すぐにそこが夢ではない現実の肌寒さであることに気が付くと我に返ったかのように笑顔に戻る。そして自分が一瞬の白昼夢ではあるが体感したことを星乃に告げた。
対話判定
飛鳥→星乃 3【失敗】
【後書き】
17話目にして本格的に【後書き】として書き記すことがなくなってきました。
どうしましょうか・・・。