外伝クトゥロニカ神話『4つの愛』 作:カロライナ
一足先に修復の終えた飛鳥に、星乃がその手を赤黒く染めながら胎児片手に声を掛ける。
星乃の問いに見栄を張りながら、記憶の無い脳味噌で最大限の誤った翻訳を披露。
戦闘に引き続き、知識ロールすら
「ひっぐ・・・・えっぐ・・・えっぐ・・・・。」
「修羅 縫。飛鳥。泣いた。謝る。謝れ。」
「え、えぇ・・・?」
現在8人は一か所に集まっている。
星乃の背後で飛鳥が泣きだし、ぬいぬいがそれを慰め、星乃が修羅の正面に立ち腕組みしながら、怒りを露わにしていると言った状況が発生していた。
ここまでに至った経緯を説明すると、胎児を一通り掲げたのちに星乃が『エムボリョ』を他の6人に対して見せびらかし、修羅が正しい「Embryo」=エンブリオの名前を解読。
さらに意味は胎児。つまり入れ物ではなく、中身の本体の事を指示していることを伝えると、飛鳥が泣きだしたと言った流れだ。
纏とロジーナは飛鳥を泣かせた修羅を白い眼で見つめ、赤大は飛鳥の翻訳である『エムボリョ』がツボに入ったのか床に腹を抱えて笑い転げ、クリスティーナはロジーナの傍らに立ち、明らかな険悪なムードにオロオロとしていた。
「こ、これは私が悪いですか?」
「そうだと思うけど?」
「・・・・・・謝るべき・・・・。・・・・悪い事したら・・・・謝る・・・。」
「は、はぁ。飛鳥さん、申し訳ないことしました・・・。」
「ぐすっ・・・・ひっく・・・大・・・丈夫・・・です。」
「エムボリョ!! エムボリョだってよ!!! ヒーッ!! ヒッヒッヒーーーッ!!!」
「赤大さん、笑い過ぎでしてよ! 飛鳥さん。落ちこまないで・・・? 人間、誰しも間違いはありますわ。き、記憶が朧げであれば尚更ですわ! ね? ぬいぬいさん!」
「え? あ、は、はい! そうですよ。今回は偶々ですよ。だから気にしない方が良いですよ!」
対話判定+1
ロジーナ→纏 7+1【成功】
纏→ロジーナ 7+1【成功】
集団で囲み、飛鳥も落ち着いたところで適当な作業台の上にカプセルに入った胎児を乗せ、8人で取り囲む。胎児は脈動しながら8人の様子を伺っているようだった。
「この胎児どうしよう・・・。持っていった方が良いのかな?」
「持って行きませんか? こんなところで一人ぼっちにするのは可哀想ですし何よりも、母親らしき人は殺してしまいましたし・・・。」
「・・・・・・・致し方なかった・・・・。・・・・殺らなきゃ・・・・こっちが・・・・殺られてた・・・。」
纏は周囲の7人の顔を見ながら、静寂に包まれた培養室で困り果てたように尋ねる。泣き止んだ飛鳥は困り果てたような纏の様子を確認した後視線をロジーナに移す。ロジーナは、後ろめたそうに俯くと顔をクリスティーナの方角へそっぽを向いた。
「んーでも、問題もあるぜ? 例え、胎児で連れて行ったとしても飯はどうする? もしも、その世界が滅んでいるのが本当だとしたら、メシの調達はどこでする?」
「それだけではありません。見たところ瞳はあるようですが、口が見当たりません。栄養を与えるにしてもどのように与えるのですか? 私の記憶が正しければ、この時期の胎児は母親のへその緒から栄養を受け取り成長をします。ですが・・・この胎児は・・・。」
「わたしも詳しいことは知りませんけど・・・この外の培養液が栄養になっているのでは、ないですか?」
持って行こうとする飛鳥の発言に対し、赤大は少なくとも学校で学んだ知識を、記憶障害により思い出す事の出来ないドールに周知する。それに便乗するかのように修羅、少し悩むような顔つきで赤大よりも正確な情報を口にした。2人を話しながら、ぬいぬいもクリアグリーン色の培養液を指差しした。
「もしその仮説が正しければ、この胎児はカプセルの中で更に巨大化していきますわよ。わたくしもロジー・・・・ゲフン とある方の出産に付きあった事がありますが、食事を摂れるようになるまでの大きさは、そこそこ巨大でしたわ。」
「・・・・・・今・・・・わたしの・・・・名を・・・呼ばなかった?」
「気のせいですわよ。」
クリスティーナは、その中ヒョッコリ顔を出すと胎児を見たことがなさそうな7人に向けて、実際の胎児の大きさを手で表現してみる。7人はクリスティーナの表現の大きさを確認した後、全員揃ってカプセルの大きさと最大成長比を比べてみるが、明らかにカプセルの中からはみ出す大きさであった。
「連れる。置く。」
星乃は話の本題を誰も切り出そうとしない無表情で告げる。その瞳は相変わらずの無機質な感情の籠っていない声色であったが、咎める者も、星乃の顔を見る者も居なかった。
「申し訳ないですが、私は彼・・・? 彼はここで息を引き取らせることが、今後の彼の為になると思います。」
「アタシも・・・コイツには悪いけどさ、無駄に長生きさせるよりもスパッとやっちまった方が互いの為になると思う。安心しろ。汚れ役は慣れているからな。始末する時はアタシがやる。」
「・・・赤大さんや修羅 縫さんの言う通り、この子をこれ以上苦しませないためにも終わらせてあげるべきだと思います。『終わらせてあげる』というのは一方的なエゴですが、長い間一人にして苦しませるよりは・・・いく分かマシかと思います。」
「ボクは連れて行ってあげるべきだとは思うけど、今後を考えると・・・・・・・・うん。」
ぬいぬいを除く、修羅・赤大は培養液に浮かび上がる胎児に気の重くなっているような視線を向けて、ボソボソと呟くように胎児を殺す案を告げる。ぬいぬいも胎児の事を見るに堪えなくなったのか、修羅の裾を掴み、目を逸らしながら呟き、纏も歯切れが悪そうに小声ながらもどうするか、みなまでは言わなかった。
「・・・・他の4人は?」
「私は。私は連れて行ってあげるべきだと思います。母親を殺してしまったのは不慮な事故や正当防衛であるとしても、子供だけは折角生きているのですから・・・助けの手を差し伸べなくてはならないと・・・私はそう思います。」
「・・・・・・・わたしは・・。・・クリスティーナ・・・・わたしは・・・・・育てられる・・・・かな・・・?」
「必要な食料・日用品などがあれば、可能であるとは思いますが・・・。・・・! ロジーナが連れて行きたいと言っているのに断る要素はありませんわ。出来るかどうか分かりませんけど、連れて行くにあたって最大限の補助は致しましょう!」
「・・・・・だったら・・・・連れて・・・・・行きたい・・・・・・かな・・・。」
「飛鳥。胎児。連れる。望む。飛鳥。賛成。私。賛同。」
纏はまだ回答を聞いていない4人に対しても話を振る。
飛鳥は両手を自分の胸元前で握ると、決意の籠った瞳を向けながら持って行くことを提案し、ロジーナと、クリスティーナの一押しもあってか持つことを希望し、最後に皆の視線が集まったのを確認してから 困ったような目の逸らし方をして一呼吸置いたのちに胎児の処分に関して否定的な意見を告げた。
「4対4かぁ・・・。ボクとしては、双方の意見を尊重したいけど・・・うーん。」
「こういうのは如何でしょう。少なくともこの子に対して嫌悪的感情を抱いている人は居ません。とりあえず、持って行くだけ持って行くというのは?」
「・・・・・・ん・・・。ぅぅん、それが一番いいのかな?」
纏は分かれた意見に対し、どのように決定づけるか頭を捻る。
自分の嫌悪の対象である修羅が提案してきたことに対してにすら嫌気があったが、双方の意見を汲み取るには修羅の案が最も適切であった。
念のため、他の姉妹にも確認を取る。全員、修羅の案に納得したのか互いに頷きを返していた。
「っ!」
「・・・! おい! どうした纏?!」
「うっ・・・!!」
「ぬいぬい、大丈夫ですか!?」
狂気判定
ぬいぬい→7-1【成功】
纏→4-1【失敗】
飛鳥+1
方針も決まった所でこれからどうしようか話を切り出そうとした時である。頭を押さえ、苦しそうにしながら纏とぬいぬいが、しゃがみこみ膝をつく。瞬時に隣に赤大や修羅が2人をそれぞれ抱き抱えるが、それでも2人は苦渋の表情なのは変わらない。
記憶の欠片【入手】
ぬいぬい→???
纏→???
【後書き】
設定が、あまりお好きではない方にとっては不評かもしれませんが、設定にそれぞれの探索者の立ち姿をより詳細に記入してみました。モデルも用意しているので、『あまりイメージが膨らまないよー』って方は余裕のある時に調べてみると良いかもです。