外伝クトゥロニカ神話『4つの愛』 作:カロライナ
どうやら星乃の話では、閂状の鉄扉の奥に泣きわめく女性が居る様子。
通路まで足を運んでいたドールと探索者両名には不快感は及んでいなかった。
無理しながら動く修羅を尻目に、赤大は正しい判断能力を備えてそうな纒に後任を任せる。
8人は閂の付いた鉄の扉を開けて中に入る。
そこは高い天井のある巨大な吹き抜けとなった洞窟のようであった。壁には全て、何段もある棚となっており、数えきれないほどの培養槽がびっしりと所狭しに並べられている。培養槽にはそれぞれ、崩れかけた肉片やふやけて膨らんだ奇怪な塊りが入っていた。床にはいくつかの作業機械が置かれており、中には血液のような液体が媚びりついた機械が置かれているのが目に入る。
そして高い天井の上、上空では奇怪な黒い鳥が浮かんでいた。よく見ればその奇怪な鳥は身体の大半を機械化させた少女のようで・・・狂ったかのように歌い泣き叫びながら、腕にしっかりと小さな培養カプセルを抱きかかえているのが8人には確認できた。
その中にはピンク色の人間の胎児が入っているようであった。
目星+行動判定(+1)
クリスティーナ70→85【失敗】
修羅80→49【成功】
星乃55→25【成功】
赤大25→12【成功】
ロジーナ→10+1【大成功】
ぬいぬい→4+1【失敗】
飛鳥→1+1【失敗】
纏→4+1【失敗】
そして8人のうち、修羅、星乃、赤大はその胎児に対して何か気になる点を感じたが、それは何がそのように感じさせるのかまでは理解が及ぶことは無かった。
それよりも周囲の肉片やふやけた何かが、あの胎児を見ていると・・・何か、人間の形をしているような、そんな思考が狂気として身体を包み込んで行った。
SANチェック0/1
修羅67→29【成功】
星埜76→22【成功】
赤大63→49【成功】
3人が身震いをしている間、戦闘準備を整え終えたロジーナは狂ったように泣き叫ぶ少女に向けて対戦車ライフルの標準を合わせていた。スコープを覗き込んでいた時の事だ。たまたまスコープ越しに『胎児』と目が合った。
その胎児は緑色の培養槽の中でも生きているのか、ピクピクと痙攣し、一度大きくビクンッと震えたようにロジーナには見えた。それは生きているが故の生理的反応ではない。まるで、『何かに対し驚いた』かのような反応に似ていると感じ取る。
ロジーナが胎児の反応について思う事があった直後、警報音が周囲に響きわたる。警告する音声など混じっていない純粋な警告音。その音と同時に床に置かれた作業機械が動き始めドールと探索者ににじり寄ってくるのであった。
「わたしの子! わたしの子!! いい子! いい子!! いいいいいい子! わたさない! わたさないぃぃいぃいいいいい!!!」
奇声を上げながら、空を飛びまわる少女は一旦その場でホバリングすると、探索者ドール双方を狂った眼差しで捉えた。
ロジーナはこれまで通ってきたコンクリートの通路上に素早く寝そべり、銃身を安定させ狂った少女・・・仮の名『レイヴン』に狙い定めた。残りの7人は、ホールの床で武器を構える。
そして今、戦いの火ぶたが切って落とされたのだった。
【後書き】
既に書きたい後書きの内容が、枯渇していますが今回も無事に最後まで【後書き】を記したいです。
今回、クトゥルフ×ネクロニカのドラマ風小説を書いたのは、あるNCさんが回してくださった『E=sの落とし子』というシナリオが、とてもクトゥルっぽい。お前、クトゥルフに居なかった? それっぽい奴居るよな?と思い当たった節があったので織り交ぜてみた次第です。