やはり俺が小学生と青春するのは間違っている。 作:雨上がりに咲く花
あれ?何かの間違いかな??俺は確かバスケの練習を見に来たんだよね?何でメイド服来た女の子達が居るの??
俺は何かの間違いだと考え直し,もう一度扉を開く。
「お帰りなさいませ、ご主人様ッ♡」
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「お、お帰りなさいませご主人様ッ」
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「何回閉じたり開いたりしてるんだよッ!!」
薄い黄色の髪の毛をした少女に俺は文句を言われた……が
「いや、普通バスケの練習見に来てメイドさん居たら慌てるよね??」
「真帆の作戦は失敗……という訳ね」
「うるさいな!?何で駄目なんだよ〜…大体の男ならメイドが好きってパパ言ってたのに…ちッ」
「いや普通に考えてびっくりするからね?体育館入ってメイドさんが居るとか何処のギャルゲーだよ…」
「すみません,真帆ったら張り切っちゃって…」
と,如何にもな委員長キャラの青髪の女の子が俺に向かって謝罪した。 まぁ、子どもにしては良く気が回った方なのかな?大分空回りしてたけど。
「本当にすみません、名乗りもせずに…あ、私は慧心学園初等部6年生の湊智花と申します!」
しっかりした子も居るんだなと感心を受ける。
「お-、おにいちゃん。ひなは袴田ひなた、宜しくです♪」
次に俺に挨拶してきたのは、何とも小学六年生と言う割には幼い子であったが、この子の笑顔に俺はどうしても戸塚を思い出していた。それくらい可愛いのだ。……タイプとか言う話じゃないよ??
「あ,あの……香椎愛莉,です……」
俺の前に立ち、おどおどと小さく挨拶する女の子は先程のひなたちゃんと違い逆に、育つところはしっかりと育ち大人っぽい印象を受ける容姿をしていた。強いていえば、純粋な由比ヶ浜。
「私は永塚紗季と申します、以後宜しくお願いしますね。」
先程、俺に謝罪してきた子が礼儀正しく挨拶して来る女の子の後に
「私は三沢真帆!まほかまほまほって呼んで??」
この子あれだな、何だか由比ヶ浜と同じ匂いがする気がするが……いや、この子の方はもっとやばい気がする。
「了解、そんじゃまほまほって呼ぶわ…俺は比企谷八幡、総武高校2年……取り敢えず試合まで宜しく頼むわ」
「宜しく頼むぜ!はっちん!」
「宜しくお願いしますね,比企谷さん。」
「お〜、よろしくね?おにいちゃんっ♪」
「宜しくお願いします,えと…比企谷さんはバスケ歴はどれ位なんですか??」
「そだな,小学校の頃に少しと中学だから…4年位か」
「そんな事よりさ!はっちんのストライクゾーンってどの辺?妹メイド??それとも妹アンドロイド!?」
いや、何妹アンドロイドって?その性癖特殊すぎんだろ……。
「だから真帆は落ち着きなさい!」
「あ、あの!早速で申し訳ありませんが、ご指導をお願いしても宜しいでしょうか!?すみません、不躾に…」
真帆と紗季が言い合いをしてる中、智花が場の流れを変えようと思ったのか早く練習がしたいのか、俺にそう告げる。
「あ、あぁ……そうだな。取敢ず着替えてきて??」
「えぇ〜!?何で?パンツなら心配いらないよ?ほらっ!」 不満気にそう答えた真帆は、徐ろにスカートを捲り上げ体操着のパンツを見せる。
「お,おい!?」
「皆も履いてるよ?ほらっ!」
そうして真帆は次々にチームメイトのスカートを捲る。いや何なのこの子?元気過ぎない??クレイジーなの??
「お-,ひなもはいてるよ?」
「ひなた,見せちゃ駄目だよ!?」
智花が必死に、自らスカートを捲り上げるひなたを止める。自ら俺にパンツを見せて来るとか……この子まほまほと別の意味で大丈夫なのかな…お兄さん心配だわっ!!
「と、取敢ず……マジで着替えて来て」
「わかったよ-…それじゃはっちん!また後でね〜」
とまぁ、一悶着あったものの取敢ず、ファーストコンタクトは何とか上手く行った様だ。
「ん〜…妹メイドは失敗かぁ。次はどんな作戦で行こうかな!?」
更衣室で、真帆が口を開く。初対面の印象では中々に手強そうな相手を見て次の作戦を考え始める。
「あんたが考えると,ろくにな事にならないから駄目。とにかく、比企谷さんに見込みがあるって思わせないと」
冷静な紗季は顎に手を当て、考えを募らせる。
「ごめんね,皆…元はと言えば私のせいで…。」
「それは違うよ!もっかん、これは戦争なんだから!」 落ち込む智花の肩を叩きながら真帆が言う。
「そうだよ、これはもう皆の問題なんだからさ?一人で考え込まないの。」
「私、足引っ張らない様に頑張る!」
愛莉は気弱な心を振り絞り、小さくガッツポーズを決めている。
「お-、やるぞ〜!」
ひなたもそれに乗る様大きく手を上に上げやる気を表現している
「ありがとう…皆」
「「「「「お待たせしました、宜しくお願いします!」」」」」
「おう、宜しくな。それじゃ取敢ず実力も見たいし、今日は総合練習って事で。オフェンスを2人、ディフェンスを3人にして役割を交代していく形で。良いか?」
「分かりました」
「ねぇ、おふぇんす…って何?」
真帆が手を挙げ、俺に訊ねてくる。
「攻撃の事だよ、ディフェンスは守り」
とすかさず智花がフォローを入れる。
「おぉ〜、さすがもっかん!」
「えと…この中でバスケ経験者は湊さんだけか??」
「はい。」
「了解、それじゃわからない所はその都度教えて行くわ…。まずは湊さんとまほまほがオフェンス、残り3人がディフェンスな」
「はっちん、皆の事は呼び捨てで良いよ!その方が仲が深まるし!」
真帆の提案に少し考えるが……まぁ、小学生相手なら意識する必要も無いか。
「…そか、了解。そんじゃ始めてくれ。」
「「「「「はーい!」」」」」
それぞれ皆がコートに走って行くのを見ながら、俺は一人を呼び止めた。
「えと……あ、愛莉?」
「ひゃ,ひゃい!?」
「ディフェンスの事なんだが、お前背が高いだろ? だから、積極的にゴールを…ん?」
その瞬間、智花達が少しざわつく。
え?俺なんか言ったら駄目な事言っちゃった??
「うぅ……うわぁぁぁぁぁん!!!!」
えぇ!?何かいきなり泣き始めたんですけど、これ誰かに見られてたら完全に誤解されて俺間違いなくpolice manに連れてかれるんですけど!?
「やっぱりでかいんだ…でか女だ私ぃっ!!」
あ、マジか……コンプレックスだったのね、それ。
「アイリーン!はっちんにちゃんと誕生日教えないから!!」
「そ、そうだよ!愛莉は早熟なだけだよ!」
「お-、あいり、てぃっしゅあるよ??」
困惑している俺の元に紗季がやって来ると
「愛莉、身長がコンプレックスで…背の事を言われるとあんな感じで」
「あ-…成程、それは悪い事したな…」
やはり俺も、小学生に泣かれるのは気分が悪い……というより罪悪感がな。
「すみません、愛莉に四月生まれって知らなくてって言ってもらえますか?」
え?何、それ何か関係あるの?てか…。
「それで大丈夫なのか?マジで……」
「大丈夫です、その思い込みでずっとやって来てますから」
「マジですか…まぁ,仕方ないか」
その後、何とか落ち着きを取り戻した愛莉だったが その時既に練習時間は終了を迎えていた。皆が掃除を始める中、智花が何気無く落ちていたボールを拾いフリースローを放つ。
「っ…智花!!今のもう一度だけ頼む!」
俺は気付くと、智花に駆け寄りそう言っていた。 そして俺は、もう一度見た智花のフリースローにやはり心を踊らせていた。
「ごめんね…私のせいで貴重な練習時間削っちゃって。」
「ううん、気にしないで!勿論、焦っては居るけど…。皆で楽しくバスケ出来なきゃ意味が無いから」 と何処か神妙な面持ちでそう語る智花。
「よ-し!はっちんの好感度上げるぞ〜!!」
「私…やっぱり背、高いのかな…」
「うぇっ!?そ、そんな訳ないさ〜!」
「そうよ、その成長したおっぱいが早熟の証明だって!気にしてるとまた揉むよ??」
「ひゃっ!?」
「お-、ひなももむ♪」
とひなたはいつの間にか背後に忍び寄り愛莉の胸を揉む。
「お!私もやる〜!!もっかん、紗季 覚悟!」
「ちょ、止め(なさい)てよ〜!?」
帰宅途中、俺は平塚先生の車で送られていた。
「どうだ比企谷?あの子達は」
「どうこう言われても…愛莉に泣かれてほとんど見られませんでしたし」
「ふふっ、初めはそんなものか…」
「ただ…一人、やっぱり気になる子は居ましたね」
「そう…か」
そう呟いた俺の言葉に対する先生の顔は、何処か嬉しそうに感じた。
本日も授業が終わると,俺は真っ先に立ち上がり教室を出る。
「あ、ヒッキー!一緒に部室行こ?」
背後から声を掛けてきたのは、同じクラスの由比ヶ浜。
「あ〜…悪い、今日は用事があるんだわ。悪いけど雪ノ下にも言っといてくれ」
「えぇ〜?またなのヒッキー?最近良く居ないけど…なんか嘘っぽい…。本当はサボりとか!?」
「いや、ねぇから」
むしろサボれる物ならサボりたいんですがね…。
俺はそんな由比ヶ浜を軽く流し慧心学園へと向かった。
三回目の練習が有り、この日はパスの練習やシュートの練習をしていた。
俺の教えをすぐに実践しそれを吸収する早さはさすがであり、俺も何処と無く教え甲斐が出て来ていた。 そんな時、騒ぎは練習終了間近で起こった。
「(成程な…昨日のシュートといいパスといい、やっぱり智花は経験値が高そうだな。まほまほも無駄が多いが足も早くてジャンプも高い…そして何より疲れ知らずだ。紗季も思い切りの良い動きが出来てるし、状況判断も的確だ…が、問題はあの2人だな。)」
と俺が彼女達の練習を見ていると、智花が近付いて来た。
「あの、比企谷さん。練習メニューを見て欲しくて…」
「あぁ、分かった」
俺は智花に差し出された練習メニューを1から見てみる事にした。
「それじゃ、今まではこれでやって来たのか…」
「はい」
「まぁ……悪くは無い、けどワンツーからのレイアップはまだ早いだろうな」
「はい、分かりました」
「まぁでも、基礎だけじゃ確かに詰まらんし…その辺りは考えるか…」
「はい……あっ…!」
顔の距離が近かったのか、照れて離れる智花。 これを由比ヶ浜がやればビッチと罵ってやる所だが…智花なら許せる俺はもはやロリコンなのだろうか?え?違うよね?
「あ、練習メニューだ!」
俺が下らない事で頭を埋めていると、真帆が背後から抱き着いて来た。
「おいこら、止めなさい」
「えへへ、良いじゃん〜!」
良くありません、こんな怪しい目をした奴に抱きつくんじゃありません!親御さんが心配するでしょう!?
「ねぇねぇ、はっちん!すっごいので私達を強くしてよ!?1時間位でレベル30上がる位の!」
「いや、1時間でレベル30て…学習装置付けて四天王と戦えばそりゃ行けるだろうが…そりゃ無理だな」
「え…?」
「お前達の事情は知ってる、確かに横暴な事だし思う所はある、だから俺も出来る限りはしてやるが…昨日今日始めたお前らが成績も残す実力のある男子に勝つなんて、はっきり言って無謀だ。だから…」
俺がこれからのプランを発表しようとした途端、真帆が声を荒らげた。
「……そんなの困るよ!!ねぇねぇ、何で??ゲームなら一日頑張れば上がるのに??何で??練習すれば勝てるよね!?」
「だから、このままじゃ無理だって言ってるだろ?その為に…」
「…はっちんの馬鹿!もう良いもん!」
真帆は目に涙を貯めながら走り去って行く。
「あ、おい!…はぁ…」
結局その日は解散となり、体育館を離れた俺は憂鬱な気分に堕ちていた。
「たく…人に教えるのがこんなに難しいとはな…まぁ、相手が小学生っていうのもあるか…」
久し振りに頭をフル回転させつつ、俺は家路に着いた。
─── chat ───
智花 「真帆…?」
真帆 「居るよ」
智花 「良かった、先に帰っちゃったから大丈夫かなって思って…」
紗季 「そうだよ?みんな心配したんだから!」
真帆 「だって、はっちんにはがっかりしたんだもん!」
智花 「でも残念だけど、比企谷さんの言う通りだよ」
紗季 「こうなったら、もっと私達ができるってところを見せないと…」
愛莉 「そうだよね…自信は余り無いけど、頑張らないと」
ひなた 「お-……おにいちゃん…」
紗季 「でも……本当なら出来るだけ、好感度を上げときたかったんだけど…」
真帆 「アイリーン!はっちんにおっぱい揉ませてやれ!!」
愛莉 「ふぇぇ!?」
紗季 「馬鹿真帆!!」
ひなた 「お〜?ひなのおっぱいならいいよ??」
智花 「ひなた、そういう事言っちゃ駄目…」
── chat ──
次の日の翌朝、小町と何時もの様に朝食を摂っていると目の前に座るマイラブリーエンジェルが口を開いた。
「お兄ちゃん…何かあった?雪ノ下さんか由比ヶ浜さんと??」
「あ?別に何もねぇよ」
「嘘だ、お兄ちゃん。腐り方が増してるもん」
「朝から失礼な妹だ。……マジであいつらは関係ねぇよ。今回はな」
「そうなの…?」
「あぁ、奉仕部絡みじゃねぇから安心しろ。ごっそさん」
「それなら良いけど…あ、行ってらっしゃい〜」
ったく、こいつは変な時に勘が鋭いな…俺は小町にそう告げると、そのまま学校へと向かった。 そして特に考えても何も思い付かないまま、気付けばその日の学校が終わり部室に顔を出しても雪ノ下の暴言の相手をする気にはなれなかった。
「比企谷君?聞いているのかしら??」
「あぁ」
「…さっきから鳴き声みたいな返事ばかり…比企ガエル君、貴方は人の話をまともに聞くという事が出来ないのかしら?」
「あぁ」
読書をする振り…をして、俺はこれからどうするかで頭がいっぱいだった。出来る事なら男バスに勝たせてやりたいが…。
真帆のあの必死さ、あいつらに何があるんだろうか…。
「比企谷君…貴方という人は…!」
「ひ、ヒッキー…大丈夫?ゆきのんが怒ってるよ…??」
「……悪い、帰るわ」
特にここにいても良い案が思い付かず、俺は家路に着いて歩き始めた。
「あっ…」
帰宅途中、俺が歩いていれば偶然にも目の前から智花がやって来たのだ。
「よう…今帰りか?」
「あ、こんにちは…はい。そうなんです」
「そうか…わ、悪かったな…昨日は」
「あ、いえ!気にしないで下さい。無責任に勝たしてやる…何て言えなかったんですよね」
小学生に同情されるとか、マジでダサいな……俺。
「…そういや、智花は何であそこでバスケしてるんだ?お前の実力なら、校外チームでも充分通用するだろ??」
俺はそう聞きながらその近くの河原に腰掛け、疑問を投げ掛ける。 俺は前々から疑問だったのだ。こんなに経験値が高く、センスも良い。 校外チームでも間違い無くエースになれる、大袈裟な話では無い。だから俺は、初心者に混ざっている智花が不思議で仕方なかったのだ。
「…今のチーム以外でのバスケは、意味無いですから」
「何でそこまでは拘るんだ…?」
「私がバスケを出来るのは、皆のお陰なんです。私は去年の夏まで慧心の生徒じゃなかったんです。私、バスケの事になると負けず嫌いになってしまって、どうしても勝たないと気が済まなかった。だから毎日必死で練習して、それを皆にも強要したんです。私は孤立しました…当たり前ですよね、勝ち負けに拘って皆の気持ちを考え無かった…その学校には居られなくなって、転校してもずっと一人で居ました。皆と何を話せば良いか分からなくて…でもある日、竹中君と真帆が喧嘩してて…男女対抗バスケ試合で決着を付ける、みたいな話になったんです。その時に今の担任の先生、美星先生が私にも参加するように言って、本気も出して良いよって言われたんですが…結局いつもの癖で全部1人で引っ掻き回して勝ったんです。でも、また皆に引かれたな…って思ったら、真帆が褒めてくれて、凄いって言ってくれて…それでバスケ部を作ろうって話になって真帆が幼馴染みの紗季を誘って、その内愛莉とひなたも入ってくれて…晴れて女子バスケ部になったんです」
「……成程な」
「私、また嫌な自分が出てくるかもって思ってたんですけど……でもすっごく楽しくて、皆が教えてくれたんです。楽しくバスケをする事を。勝ち負けよりも、もっと大切な事があるって。だから勝ちに拘るとしたら、その大切な場所を無くしたくない、それだけです」
「……もし試合で負けたら、どうするんだ?」
「辞めます、バスケっ!もう二度としません…バスケが無くなっても、皆と居られれば」
「……好きな気持ちに、嘘ついちまうのか??」
智花の言葉を聞く度、俺は胸が締め付けられる思いに悩まされる。
こいつは好きな事より、自分を慕ってくれる連中の側にいる事を選ぶのか…俺には出来なかった選択を、智花は出来るのか…
「嘘じゃありません、バスケは好き。でも一番大切なのは…五人で居られる場所だから…」
そう笑顔で答える智花は、立ち上がり 「話を聞いて貰ってありがとうございました。また……練習は宜しくお願いします」 と言って去って行った。
らしく無いかも知れない、俺は智花の話にやはり何故か共感していた。 ずっと一人、孤立してぼっちだった。
誰からも嫌われ、ぼっちだと言い聞かせても、やはり俺は…きっと智花と真帆達のような、そんな関係の相手に憧れていたのだ。だから智花の話を聞いた時…胸に来るものがあった。そして俺は自分の悩みに答えらしいものが何とか出た。 …俺の本物はまだ無い。けどせめて、あいつの本物の居場所は守ってやりたい!
俺は携帯電話を取り出し、電話履歴から我が妹を呼び出す。
「すまん、小町…今日は少し遅くなるわ」
俺は自転車で智花の跡を追い、何処か悲しげに歩く智花の後ろ姿を見つけた。
「智花!」
「へ!?…八幡…さん?」
「……辞めんな」
俺は自転車を乗り捨て、智花に近付く。
「へ…?」
「俺がこんなに、何かに熱くなれるとは思って無かった。もっと冷めてると思ってたが…けど無理だ、無理なんだよ…俺にはお前を見過ごせないんだよ、智花…」
俺は、もう自分でも何が何だか分からなくなっていた。 ただ…口からは言葉が勝手に零れ落ちる。 俺は智花の肩に手を掛け、言葉を続ける。
「バスケが出来る場所が、一つしか無ぇなら…手放したら駄目だ。頼むからあんなに綺麗で…人を惹き付けるシュートが出来るのに、簡単に辞めるなんて言わないでくれ…!」
智花の感情が溢れ出した様に震えながら俺に思いの丈をぶつけてくる
「…簡単なんかじゃないです…私だって本当は…本当は辞めたく無いです!」
「じゃあ辞めるなっ!」
「でも!!」
「…守ってやる」
「えっ??」
「俺が…両方守ってやる、正直俺が人の為に何かに出来るって柄じゃねぇ…けど…お前がやっと掴んだ本物で居られる場所…俺が守ってやるっ…守らせて欲しい…。そして見せてくれ、俺が求め続けてきた…本当の友情ってやつを…」
「でも、勝てないって…」
「…まだ勝てないとは言ったが、負けるとも言ってねぇだろ」
「っ!!」
「安心しろ、俺が…お前達を勝たせてやる」
自分でも分る。多分俺は…今何か重荷が一つ降りて、今度は心地の良い重さの重荷がまた背中に乗っかったのだと。
そのまま俺は、号泣する智花を優しく撫でてやった。
「あっ、平塚先生…あの…」
智花と別れた後、俺は再び学校に戻り平塚先生の元を訪れるとそこにはもう一人学生の様な女性が1人居た。
「ん?おぉ、比企谷か!丁度良かった。こいつが慧心女バスの顧問の篁 美星だ」
「おっ、君が噂のコーチだねぇ?ふ〜ん……中々いい顔してるじゃん?」
マジか、この人先生なのかよ…合法ロリってこの人の為にある様な言葉だな。
「あ、どうも…比企谷八幡です。あ、それ関係でその…頼み事があるんですが…」
「頼み事?」
「はい、男バスの資料とか…有りますかね??」
すると2人は顔を見合わせ、クスクスと笑い始めた。
「あ、あの…」
そんなに俺の目が腐ってました?え?何ですか、その顔は??あなたは初対面で失礼過ぎません?
「あぁ!悪いねぇ、実はそろそろ要るんじゃ無いかなって思って、これを静に渡しに来たんだよん」
そう言って俺に渡してきたのは、男バスの試合映像が詰まったDVDだった。
…何か、俺掌で踊らされてね?何これデスノートに行動でも書かれてんの?不審に思いながらも、受け取り礼を言っておいた。
「あ、ありがとうございます…」
「比企谷君よ!」
帰ろうとする俺を美星さんが止め、
「…勝算、あるの?」
「…今の所は無いですね、けど…」
「けど?」
「それをひっくり返すのが、勝負の醍醐味かと。」
うわ、俺何臭い事言ってんだよ…はっずかし!これで負けたら最悪だなおい…。
「アイツめ…良い目をしやがって」
「にゃははん、結構ロマンチストじゃない?負け戦をひっくり返すのがロマンとか??」
「ふふ、私は最初からそう思っていたがな…」
一度全部消して書き直しました……また見てくれると幸いです!!