八幡くんの異世界無双記   作:カモシカ

5 / 8
短いです。そして書きたいところまではこの位の長さとクオリティです。


五話 試験

ユキノシタの姉であるハルノ・ユキノシタと出会い、不敬罪で縛り首にされかけるも何とか助かり今に至る。異世界転生でテンションが上がっていたとはいえ、なぜあんな行動を取ってしまったのか。王族にあんな態度取ったらそりゃ捕まるわ。

とは言え明日にはガイル王国の王様、つまりユキノシタの父ちゃんに合わなければならない。めんどい。王族相手に色々やらかしておいてまだ言うかって感じだがめんどい。

 

 

 

 

****

 

 

 

「……そんで、俺は一体何をやらされるんですか」

「ん?……いやー、ユキノちゃんが君をスカウトしたでしょ?だからどれ位強いのか見せて貰おうと思って」

「はあ……」

 

それなら何故俺は五人の騎士に取り囲まれているのでしょうか。しかもここ闘技場か何かですよね?何故いかにも貴族っぽい方々で席が埋まってらっしゃりますのん?

 

「ちなみに負けたら縛り首だから。昨日の不敬罪で」

「ぐっ……」

 

とはいえこれを乗り越えれば晴れて自由の身(制限つき)だ。それに【鑑定】で見た感じこいつらのレベルは20から25程。いくら五体一でも負ける心配は無いだろう。

とは言え油断をしたら足元を掬われるというのは前の世界からの常識だ。全力は出さないが、かと言って出し惜しみはしない。

 

「はーい。と言うわけで審判は私、ハルノ・ユキノシタが行いまーす」

 

ハルノさんはどうにも自由奔放で、護衛で疲れていた俺をこうして謎の試験に引っ張り出す位には横暴だ。眠いだけだから別に良いっちゃ良いのだが。

 

「ルールとしては、相手が降参するか戦闘不能になったら勝ち。後遺症が残るような怪我をさせるのも禁止。他は自由だよー。何か質問はある?……無いみたいだね。と言うわけで、両者構え」

 

その合図と共に、俺を囲んでいる騎士達がそれぞれの得物を持つ。あるものは武骨な片手剣と円楯を、ある者はどでかい両手斧を、ある者は二本の杖を、ある者は短槍を、ある者は弓を、それぞれ構える。

そして俺は【武具召喚】を使用し、フィンガーガードがついた刃渡り二、三十センチほどのナイフを二本召喚する。剣だと攻撃が過剰になるからな。

俺は素手で戦うのかと、しかも五対一なのかと戸惑っていた騎士達が今度は別の戸惑いを見せる。いくら魔法も含めた技術において秀でているガイル帝国といえど、虚空から武器を取り出すようなスキルや魔法は存在しないのだろうか。

 

「……始めっ!」

「すまないが、こちらも命令には従わなければならんのだ。恨むなよ……らあっ!」

 

その合図と共に、何やら語りかけてきた片手剣と円楯を持つ騎士が肉薄する。そしてその手に持った片手剣を俺の手首を狙って降り下ろした。

しかしそれは態々【自動防御】を使う必要もなく、レベル差によるステータスの開きが騎士の攻撃を受け止める。俺の防御力が騎士の攻撃力を圧倒的に上回ったのだ。

 

「なっ……!」

 

闘技場に居た全員が自分の目を疑っただろう。何せ闘志も覇気も感じられなかった青年が、ハルノよりは弱いとしてもガイル王国内において相当な力量を持つ騎士の一撃を受け止めたのだから。しかもスキルや魔法を使った訳ではない。即ち単純なステータスによって、熟練の騎士の鋭い一撃を防いで見せたということだ。それを理解し、俺は今一度女神とやらに押し付けられた力の強大さを思い知る。騎士の攻撃には反応出来なかったわけだが。

 

「……ありゃりゃ、こりゃユキノちゃんも相当ヤバイの連れてきたねー……」

 

そう呟いたハルノさんの一言はその場に居た全員の気持ちを代弁しているのかも知れない。……いや、流石にそれは自惚れか。

 

「おいおい、よそ見してて良いのかい?――《ダンシング・スピア》」

「どっせぇぇぇぇい!!!――《アースシェイク》ぅぅぅぅ!!!」

「『虚空に舞いし清らかなる風よ、我が導きの元、千の矢となれ』――《旋風千矢》」

 

短槍を持った騎士と両手斧を持った騎士の攻撃が殺到する。正面からは大地を揺らすほどの威力を秘めた斧の一撃が迫り、背後からは踊るように繰り出される槍の連撃が俺を狙う。

さらにその隙間を縫うかのように、魔力によって形作られた千の矢が俺にだけ当たるよう放たれる。魔法やスキルによる効果なのかあの騎士の技術なのかは定かではないが、どちらにせよ相当な実力者であろう。

 

「……【自動防御】」

 

しかし【自動防御】によってそれらの攻撃は全て弾かれた。ぱないわ。このスキル。

 

「ぐっ!……ならばっ!――《獅子咆哮》っ!」

「援護するっ!――『気高く荒々しき魔力よ、彼の者に力を与えよ』――《リインフォース》」

 

杖を二本持った魔術師風の男から強化魔法《リインフォース》を受け、退避していた片手剣の騎士はスキルを使用する。瞬間、騎士の持つ剣が赤く光り、目にも止まらぬ速さで突き出される。至近距離で放たれたその剣戟はまさに神速の一撃。

しかしそれはあくまでその騎士と同レベルの場合である。レベル100である俺にとって、その一撃は大したことの無い速度なのだ。しかしまだ俺は攻撃をしていない。これは俺の強さを見る試験なのだから何かスキルを使った方が良いだろう。

 

「【高速思考】【並列展開】【魔力強化】――《ファイヤーボール》」

 

瞬間、騎士の体が炎に包まれる。【火炎魔法】の初級魔法である筈の《ファイヤーボール》は、九万を越える俺の魔法攻撃力と【魔力強化】の力で必殺の一撃となった。勿論本当に殺してもいけないので大分手加減しているが。

しかしそれでも圧倒的なその魔法は、たったの一撃で片手剣の騎士の意識を刈り取った。

 

「【詠唱破棄】、【身体強化】、【魔法付与(エンチャント):雷風】――《神速》、《ザ・ライトニングサイクロン》」

 

俺は【魔法付与】によって二本のナイフに雷と風を纏わせる。そして【身体強化】によって身体能力を上げ、さらに《神速》によって文字通り光速となり騎士達の周りを駆け抜ける。風の魔法によって一瞬だけ三メートルほどの竜巻が起こり、その中を雷が駆け巡っていく。勿論そんな攻撃を受けて立っていられる筈もなく、竜巻に巻き込まれた四人の騎士達は同時に膝を着いて崩れ落ちた。

それらを《神速》によってもののコンマ数秒で成し遂げ、試験は終了した。


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