まどマギ式☆霊界ナビ   作:サムズアップ・ピース

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 度々、投稿が遅くなって申し訳ないです。









 恐れていたマギレコのキャラとオリキャラのカブり



9 木(ボク)の鼓動(rhythm)を聴いてくれ

 真夏の空では相変わらず、ぎんぎら太陽が独りぼっちで市民権を主張し続けているにも関わらず、森の中は涼しかった。

 ただ、それでも日頃運動不足の木羅建設特別企画開発部長は、額に発生し続ける玉の汗を繰り返しタオルで拭っている。

 哀れなり渥美俊郎氏、結局突然現れた小さな女の子の迫力に負け、彼の人生の全てたる仕事部屋から引っぱり出されたのだった。

 

「今更山に連れて来た所で、我々の計画は変わらんよ。

 私を心変わりさせるつもりかね」

 台詞だけ描けば立派に見えるが、実際にはハーハー息切れしながら言っているので情けない事この上ない。精も根も尽き果てかけた彼を振り向き、芽育奈尾は無邪気に笑う。

「そんなんじゃ無いですってぇ。お父さんお仕事でお疲れでしょ?要するに気分転換みたいなもんですよ。

 一緒にお散歩しましょ、おさんぽ」

 俊郎氏ははあ、と軽くため息をついた。今時の子供にしてはえらく元気だ。第一、制服で汗もかいてないのか?

 

 開発はいけないと言うが、無論我が社だって、その辺りについても充分に注意は払っている。どうして反対派の皆さんにはその事が伝わらないのか。

 ここまで来て、俊郎氏はまだ奈尾の事を開発反対派の手先だと思っていた。最も、彼の持つ凝り固まった大人の脳味噌には、魔法少女がどうしたと言う様な奇抜な発想をする事は到底無理だし、わけがわからなかったのである。

 

 やっぱり脚が速いなこの子は、と思う。運動不足のオッサンには、ついて行くだけで重労働だった。

 と、急に奈尾が足を止めた。

 

「………どうしたんだい?………急に………」

「開発したら、この辺の木って、全部()られちゃうんですよね」

 

 何処か遠くを見ながら言われた。はあ、ともう一つため息。ついでにそこらの切り株に腰を下ろして一息。澄み切った空気で肺を満たして、呼吸を整えさせて貰う事にする。

「それについてはもう説明がされてる筈だがね…一旦伐採して、団地に問題が無い様な配置で植え直すんだよ。山の自然や景観を壊さない様、環境の変化に強くて成長も早い木を、新たに…」

「紙の原料とかになる木ですよね?リスとか、山の動物達の餌になる実がならない種類の。ヤマネさんから聞きました」

 

 出かけていた言葉が喉の奥に引っ込んでしまった。良い加減な対応は出来ない、と嫌でも思い知らされる。この子は一体、どんな人物なのだろう。

 大人とか、子供とか、そう言った概念を超越した、超自然の存在の如く、奈尾は言葉を連ねる。

 

「他にも、色んなお話を聞かせてくれましたよ…ヤマネさん、説明するの上手ですね。

 この山の歴史とか…………」

 

 野乃中山。人々の温かい親しみと共にある大自然。

 かつてここは、一度完全に死にかけた事があった。

 昔、外国産の木材が町に運び込まれた時に、外来種の寄生虫がこの山に入り込んだ。

 原産地とは何もかもが異なる環境で、寄生虫が日本での宿主に選んだのはカミキリムシの一種。

 カミキリムシが木を齧る事で寄生虫を媒介し、真っ直ぐに立っていた木が、次々と立ったまま枯れて行った。

 自然破壊は連鎖する物。木が無くなった事で、葉を餌にしていた昆虫や、実を食べる動物達、更に木漏れ日が無くなって背の低い植物が直接強い日光を受け、地球の創り出した芸術は次々と消滅して行った。

 

 カミキリムシや、海外からいきなり連れて来られた寄生虫は、決して悪ではない。

 でも、意図せず外来種を日本に持ち込んでしまった人間も、悪者とは思いたくない。

 

 この世界には、本当の意味での「悪者」なんて、きっと居ないんだ。

 少女らしい、それがヤマネの、純粋な『願い』だった。

 

「―――――それで、そこから何年もかけて木を植林したんですよね。自然豊かだった頃の山に出来るだけ近い環境になる様に、出来るだけ沢山の種類の木を…………………勿論、それだけで解決は出来なくて、間伐したりとか、人の手でちょこちょこお手伝いして、それでようやく今に至るとか…………ヤマネさんはこの事を図書館の本で読んで知ったそうです。

 …………ねぇ、お父さん。ヤマネさんの意思も尊重してあげません?」

「………どうしろと言うんだ?そもそも、開発をしなくとも、この町そのものが、もともと自然があった所を切り拓いて造った物だ。それも全部壊して、元に戻せとでも言うのか?

 

 この町は、昔から自然を大事にし過ぎて来たのさ。建築資材として、観光資源として、利用できる所は沢山ある。私はそうしたモノ達を使えばこの町をもっと発展させて行く事が出来ると考えている。私もここが大好きだからね。

 そうなれば、どうなる?必然的に人の住む町は発展し、完全な自然のスペースは少しずつ減少して行くだろう。

 人間は最早自然を少しずつ削り取りながらでなければ生きられない様になっているのさ。それが現代人の(さが)なんだ。

 我々はどうすれば自然と言う資源を少しでも長く使えるかを考えるべきなんだよ」

 

「森だって、河だって、そこに暮らす生き物だって、みんな生きてる、生命(いのち)じゃないですか。

 人間は自然に一切触れるな、なんて誰も言ってないです。生きて行く上で、本当の本当に最低限必要な範囲でなら、自然は人間に何かを取られても、また生み出す事が出来る………

 ヤマネさん言ってました。自然と人間が無理なく、お互いに奪い過ぎないで、一緒に寄り添う様に生きて行く世界。

 取り敢えず自分の今の目標は昆虫学者だけど…

 

 何時か自分が大人になった時、そんな世界を見てみたい、叶えたい………」

 

 下らん、子供のたわ言だ。俊郎氏は思った。それが簡単に出来れば苦労は無いと。

「あの子はまだ子供だ!所詮そんなのはただの夢だ‼」

 

 「夢……って、そもそも何なんですかね」それでも黄金(きん)色の瞳が振り返り、その「大人の正論」を真っ向から睨みつけた。

 

「もしも空を自由に飛べたら、難病で苦しんでいる人達が助かりますように………そんな子供が口にする様な願いが現実になって、これまで世界は変わって来たんじゃないですか?」




 自然が好き

 武器が仙人が使うような杖

 秋野かえでがちょっとヤマネっぽくてなんかこわい。

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