1 よくもこんなマギアレコードを!
少しは友達を信じてよ
空の星に負けじと、赤や緑に輝く高層ビル。
だが奈尾達のいる見滝原市とは違い、この街には海から吹く風が潮の香りを運んでくる。
ここは、神浜市。多彩な人々と、不思議な噂で成り立つ街。
そんなこの街で、月のない夜、花火ならぬ火柱が大地から吹き上がった。
「うわあああっ!」
「くっ、きゃあああっ!」
火炎を噴き出す。腕を振り回し、周囲を破壊する。
そんなまるで怪獣の様な相手と戦っているのは、意外なり、二人の少女であった。
「~~~ッ! やちよさん、平気だったか⁉」
髪をポニーテールに結った片方は鎧に身を包んでいたが、身軽で、肌が出ている部分が多く、騎士と言うよりかはどちらかと言うと古代ローマのグラディエーターの装備を女性らしくした様な装いである。剣、と、呼ぶべきなのだろう、でかい鉄板に持ち手を付けた様な、大雑把な得物を地面に突き立て、その陰に隠れる形で自分と、もう一人の仲間を庇った。
「ええ、大丈夫よ……ごめんなさい、庇って貰っちゃって……ただ、それでも大分余波があったわね……」
やちよさん、と呼ばれた、その後ろの年長の少女が呻いた。身体と半ば同化した、半液体状の神秘的な服で身を包んでいるが、動きを阻害しない程度に鎧も着ており、やはり戦いの為の装束である事が分かる。こちらは独特の形状の、槍に似た
その時、二人に手痛い攻撃を浴びせた敵が何処かに歩き出そうとした。槍を持った方が相手に踊りかかる。
『邪魔しないで』
「行かせない、市の外に出す訳には行かない!」
彼女達魔法少女にはそれぞれ担当する土地、言い換えれば縄張りが存在する。例え逃がした相手を追いかけるためだとしても、他所様の土地に無闇に立ち入る事は、縄張りの主を刺激してしまう事を意味する!
『あなたたちの事情なんか知らない!』
敵はやちよを振り払おうと、鋭い攻撃を連続して繰り出す。が、やちよもさるもの、攻撃を紙一重で躱しながら、敵の周りを素早く旋回しつつ反撃を繰り出した。
『この……ッ!』段々と敵の意識が彼女に集中していく。
やちよに完全に気を取られていたそいつは、彼女を飛び越えて上から飛びかかって来たもう一人に気付かなかった。
「おりゃぁぁーーーーーーーーーーー!!!!!!」
『うわあっ!』
咄嗟に両手に持った武器で受け止めたが、二つともへし折られてしまった。
「へっ、どんなもんだっ!」
「ももこ! 気を抜かないの!」
ももこと呼ばれた少女が得意げな顔で言うが、すぐにやちよにたしなめられてしまった。何か言おうとするももこだったが、すぐに、先輩の言う事は素直に聞くべきだと思い知らされる事になる。
『グルルルルルルルッ……!』
押し負け、地面に尻餅をついた敵が不気味な唸り声を上げ始めた。
荒い呼吸と共に口や、服のすき間から炎がシューッ、シューッと噴き出し、徐々に身体を包んでいく。
「何やって……」
「炎を……纏っている……?」
『そうだよ』
彼女達の敵は、立ち上がり、どんどんその姿を大きくしていった。やがて、そいつを包む炎は、耳まで裂けた口に鋭い牙を生やした恐ろしい形相の怪物の形をとる。
『ザコ共がぁ。手加減してやってたからって調子乗ってんじゃねぇぞ』
そう言うと、炎の怪物は大きく息を吸い込み始めた。次の攻撃を受けたらヤバい……やちよとももこが身構える。
『アタシは最強。この土地の
逃げて距離を取るよりも早く、視界を埋め尽くす程の大量の炎が吐き出された。お互いを庇う暇もない。熱は風を呼び、二人は凄まじい温度に弄ばれた。
『がおろろろろろろあッッッ!!!!!!! ごおおおおおおあああああああああっ!!!!!!!!』
やちよが目を覚ますと、ももこも自分と同じ様に、近くに倒れて気絶していた。
「ももこ! ももこ! しっかりして!」
「う……ん……」
「ほら、大丈夫? 生きてる?」
「もうすぐ死んじゃうか……も……」
「…………冗談でも死ぬなんて言わないの」
「はは……ひどいな……やちよさんが先に言ったんじゃん」
肩を貸して立たせて貰う。
「あいつ……逃がしたの……?」
「ええ……でも、取り敢えず今は一旦休む事にしましょう。私も……ぐっ……相当キツいし……みたまの所で診て貰った方が……」
やちよが澄んだ瞳で空を仰いだ。風が長い髪をなびかせる。ついでにその風に乗って、鋭い雄叫びが聞こえて来る気がした。
『がおおおおおお……ん……』
「……なるべく早めに回復して、隣の市に連絡を取らなきゃね。あれを野放しにしたら……何が起きるか分からない」
バトル以外の比重を重くすると言ったな、
あ れ は う そ だ
といったようなわけで、今回かなりバトル編です。
というかお久しぶりです。大変長らくお待たせいたしました。
(前回の更新いつだっけ? 一年前……⁉)
忙しいこともありますが、気長に待っていただければ必ず更新しますので……!