奈尾の年齢を十三歳にしたのは、まどマギで多かったのは十四歳なので、後輩っぽくしたかったのと、今までその年齢の子が少なかったからなんですが……マギレコで一杯出て来ましたね……
虫の
夜空を見上げてみた。星が一つも無い中で、飛行機だけがぽつんと星の様な光を放って何処かに飛んで行く。虫が、虫の音が、鳴き声が本当に煩い。
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最初にあの冷たさを感じた時から数ヶ月、少しでも褒められようと私が頑張ると、
『人を
そう言われるのが嫌だったから、偶にちょっと手伝いをするのをやめてみれば、
『あら、気楽そうで良いわねえ。毎日遊び歩いている様な母親の娘だから、人に迷惑をかけても何も感じないんだわ』
こう言う有様だった。もうその頃になるとおばさん達は私に対する悪意を隠そうとしなくなり、おじさんやいとこまでそれに加担する様になって、私は冷たい感情のシャワーを浴び続けた。
その日の夜、おばさんは私に突然少しばかりのお金を差し出して言った。今日からご飯は外で何か買って食べなさいと。
何も言えずに戸惑っている私を暫く見下ろした後、おばさんは深い深いため息を吐くと、
『あのね、貴女は本来うちの一家とは何の関わりも無いの。お父さんお母さんに子供として認知されて無いんじゃあ、伯母の私とだって他人同士みたいな物でしょう?可哀想だからうちで預かってあげてるだけなのよ。そうよ、ただそれだけの関係なのよ。だから、貴女なんてね、うちで飼ってる、何ていうの、ペット、そう、ペットの様なもんなのよ。どんなに大事に大事に育てられてるペットだってね、家族と一緒に食卓について食事をしたりはしないでしょう?イヌがテーブルに座って、スプーン持って、カレー掬って食べてるのなんて想像出来る?
大体貴女は何?何時も何時もこの世の終わりみたいな暗いオーラ出して、毎日餌を貰ってブラッシングもされて芸も仕込んでやってるってのに生意気だわ。ペットの癖に。ペット風情が。貴女の周りのその辛気臭い空気が私達にまで
あんたがそう言う気なら、良いわ、今夜一晩位家に帰らないで、どっかで野宿でも何でもして来たら良い。それで何時も育ててやってる私達の恩が分かるでしょう。ついでにばい菌も落として来たら良い。
何をしてるのとっとと食べに行って来なさいよほら、行け、行って来い。お前の頭が冷えるまで帰って来るな!』
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寝静まった街のあの日の私の姿を
「…♪~…どうして~…ふんふんふん…~たくなくて~」
TVのCMか何かでやっていた、ゲームの主題歌?を、ただ何となく歌っていた。そうでもしないと、今までおじおばの家で溜め込んで来た凍える程に冷たい思い出が胸の奥から溢れ出して来て、モンスターの様に私を飲み込んでしまいそうだったから。
「…ふんふんふん~…む~きあった~、あっ!」
そうしたフラフラと覚束ない足取りで夜の街を歩いていた物だから、途中でつまらない石に気躓いて、転んだ拍子に地面にへたり込む。
膝小僧を見てみると、赤く血が滲んでいて、それが非常に痛み、何だか涙が溢れて来た。
ばい菌人間。ばい菌動物。ばい菌。
おばさんの言葉が脳内で何度もリピートする。
もう、嫌だ。もう限界が来た。いや、とっくの昔に限界なんて通り過ぎていた。
何もしなくても、
しばし、うずくまったまま、子供の様にぐすぐす泣いた。泣いたって良いじゃないか。だって、私はまだ13歳だよ?十分子供だよ?
やがて、生暖かい風が吹き始めたのを感じ、顔を上げると、そこには身長が何メートルもあるお坊さんがゆらりと立っている。
直感的に、そして馬鹿にあっさりと、私は状況を受け入れる事が出来た。ああ、今から私は、目の前に居るこの化け物に喰われて死ぬんだなあ。もう何でも良いや。どうせ生きてたって良い事無いもん。私要らない子だもん。
お坊さんの姿をした怪物が、アホみたいな無表情のまま、大きく息を吸い込み始めた。それに合わせて、私の頭の中の何かがずるずると耳や鼻や口、全身の穴と言う穴から大気中に引きずり出されて行くのが分かった。その感覚が、生暖かい闇に堕ちて行く様で心地良かった。
「馬鹿っ!!!」
最初は稲妻だと思った。
強い、蒼い閃光に思わず目に手を翳し、それを離すと、そこには家でよくやるRPGの勇者みたいな恰好をした、白いマントに手袋の少女が凛として立っている。
ああ、私もとうとうアタマに来たんだな。そう思った。