ハイスクールDxD 書き換える者    作:裕 紫翠

25 / 37
これで2巻ラストです!
楽しんで頂ければ幸いです。



魔王様にお話です!

─部室へ向かう途中─

「ねぇ、瑚太朗?どうしてこんな事をしたの?」

ギュッと、俺のお腹に回されている腕に少しだけ力が込められた。

「ん?言っただろ、約束守りに来たって」

「そう………瑚太朗は“約束”を守りに来ただけなのだったわね」

ん?なんかリアス落ち込んでる?

『主よ』『マスター』

『『貴方は鈍感なのですね。本当に』』

何かいきなり辛辣なことを言われた!?ひでぇ!

確かに約束を守りに来たけどそれ以外に何かする事あったか?

黒歌のことをリアスが知ってるとは思わないからな。

そこんとこどうなんだろ。

 

それに一つ聞いておいておきたい事があるし

「リアス」

「な、何かしら?」

「戦闘中の俺はどう見えた?」

「え?それは戦争の英雄が私の為に戦っているってそう思ったらとても頼もしいな。とは思ったわよ」

「そっか。なら良かった」

頼もしく見えたんだ、それなら良かった

でも本当は────

 

「ねぇ、瑚太朗」

「ん?どうし────ッ!」

チュッ

 

振り向いたその瞬間に思考が一瞬止まった。そしてすぐに戻ってきた

何が起こったのか理解は出来た。

 

キスだ。

 

リアスの柔らかで甘い唇が俺の唇を塞いだのだ。

だけど理由があまり分からなかった。

助けたから、そのお礼?

約束を守った事への感謝?

それともあの夜の事をハッキリ覚えていたのか?

 

どれだけ思考を働かせても答えにたどり着く事はできなかった。

やがて満足したのかリアスが唇を離し俺の目を見てこう言った

「ファーストキスよ、日本では女の子が大切にするものでしょ?」

「ああ、そうだな───って!ファーストキス!?」

そんな大事なもん俺なんかが貰って良かったのか?

いや、でも。

「あの夜、貴方は言ってくれたわ。月が綺麗ですね。って」

やっぱ覚えてたか、慰めのつもりで言ったんだけど。

……自分で言ったんだ責任持たなきゃダメだよな。

 

「それに対しての返答は。死んでもいいわ。それでいいかしら?」

「あぁ、それで十分だ」

あぁ、帰って黒歌になんて言おう

 

──次の日の朝

「何?この状況……」

普段俺のベッドに潜り込んでいるのは黒歌なのだが。

何故だ、何故ここにいるんだ「リアス」

 

「うぅん」と艶かしい声を出しながら寝ている女の子にツッコミをいれたくなった。

道理でいつもと違う匂いがする訳だ。

強化された嗅覚はリアスの甘く爽やかな香りを鋭敏に感じ取っている、おかげで熟睡出来たんだけど。

 

ただ───うん、なんで裸なの?キミ

 

──数分後

「ごめんなさいね。今日から貴方の家で暮らす事にしたから宜しくね瑚太朗」

あの、話が全くもって見えないのは俺だけなのかな?そうだよね?そうだと言ってくれ!

 

リアスの説明によれば

昨日の件について色々と思うところがあったらしく。

花嫁修行という事で俺の家に住むことにしたという事と、その方が俺との距離は格段に近くなるからな。

それと悪魔サイドが俺と仲良くしておきたいらしく、その架け橋的な存在になれとのお達しらしい。

リアス自身はこの提案を喜んで受けたそうだ。

そりゃ、悪魔サイドが公に俺と一緒にいてもいいって言ってんだから断らないだろうな

 

「そう言えばこの家の持ち主は誰かしら、出来れば挨拶ををしておきたいのだけど」

「手、あわせてくれるか?」

「っ!そう、分かったわ」

リアスは酷く驚いていた。

そうだろうな、手を合わせるという事はこの家の持ち主は既に死んでる事になるんだからな。

同時にやってしまったという少し後悔が見て取れた。

 

「この部屋だ」

襖を開くと、質素ながらも確かな存在感のある少し大きい仏壇だけが置いてある

「この部屋は……」

「俺を拾ってくれた人達の仏壇さ」

 

10年前、俺が一人で街を歩いている時に声をかけて、そして拾ってくれた夫婦の仏壇だ。

あの時この屋敷に住むことが出来なかったらここまで上手く話を進められなかったと思う。

二人には本当に感謝している。本当の子供の様に育ててくれて、屋敷の所有権すら俺に移譲してくれて。

至れり尽くせりの生活だった。

二人には本当の子供がいたらしいが実際にあった事はない。その子が中学生の頃に行方を眩ませたそうだ。

そいつの名前が『瑚太朗』という名前だった。

 

「ねぇ、この家には他に誰か住んでいるの?ほら、もう既に二本もお線香がたてられているわよ」

「あぁ、いるよ後で紹介する」

俺の答えに納得したのかリアスは仏壇の方に歩いて行った

そういや二人が亡くなったのは黒歌に出会うすこし前だったよな。

 

葬列に並ぶ人はいなくて、俺だけが一人で花を二人に手向けていた。

不幸な事故、そう聞かされていた。

でも、そういうのじゃ無いって俺はそう思った。

だってこの二人が亡くなる少し前からあの胸騒ぎは起こっていたから。

いつもだ、いつもいつも、気付くのが遅いんだ。

全部事後で、手遅れであの二人の時だって────

「瑚太朗?どうしたの?」

「───。何でもない、さぁーてうちの同居人って言うか唯一の家族を紹介するよ」

リアスにはそう言って、先を歩くように一軒家の方に向かった。

そうでもしないと涙を見られてしまうから。

 

この家は広い。それこそ軽い城並みの敷地は持っている。

普段使っている武家屋敷風の和式の建物が建っている

そしてそれに併設するする様に普通の一軒家が建っている

 

武家屋敷の方は黒歌とイチャついたり、日向ぼっこしたり、寝たりするための建物だ。あと他にも色々。

普通の家の方は──うん。普通に生活するための家だ

他にも地下室とか高さと階層数がおかしいとか言われる家だが俺にとっては普通の家だ。普通の家なのだが。

 

本音を言えば─────もう慣れちゃったから、半分諦めてる。

 

ウチは基本的に土足厳禁だ。

ちなみに屋敷と家の通路は全面ガラス張りの渡り廊下になっている。

断熱性も完璧で常に快適な気温に保たれている。

これは、俺の能力を応用して作ったものだ。

なんて、家の特殊な所の1つを紹介したわけだが──

 

それは兎も角どうしようかこの状況…………

目の前にはリアスと黒歌の睨み合っているという風景が広がっているのだが………あの、火花散ってません?

 

「瑚太朗、今すぐそいつから離れなさい!そいつSS級のはぐれ悪魔の黒歌よ!超超危険人物なの今すぐ離れなさい!」

あ、はい。すいません、知ってます。知ってて一緒に住んでました。

 

「それでもこの街を統治している、悪魔なのかにゃ?私がここにいるのは瑚太朗の意思にゃ。それに瑚太朗は私がはぐれ悪魔であることくらい知ってたにゃん♪」

……あの黒歌さん?売り言葉に買い言葉で返すのはよろしくないかと。あぁほらリアスから紅いオーラが迸り始めてるよ。怖ぇ、怖ぇよ

 

「瑚太朗?これはどういう事かしら?」

「あ、あのだな?黒歌と会ったのは中3の頃で───」

「そういう事を聞いているんじゃないの!」

 

(すみません、助けて下さい。俺こういう修羅場に弱いの)

『いつもの様に切り返せば良いかと。あと主が悪いですね』

『自分で考えて下さいマスター。マスターがどう考えても悪いですから』

 

神器の御二方が冷たくて俺泣きそうなのですが。

まぁ、ゼルの言ってた通りにいつも通りにしてればいいのか。

「まぁ聞けって。俺が黒歌を拾ったのは中3の頃で、随分と酷い怪我をしていたんだ、まぁ追っ手の悪魔に傷付けられたみたいでな、そん時は猫の姿だったから気づかなかったんだよ。」

「悪魔だ。って事に?」

「そうだ」

ごめん嘘だ。おかしな気を感じ取ったから様子を見ようと近寄ったら、猫化してた黒歌が倒れてたの。

「それで、俺は軽い手当をして起きるのを待った」

「で、その途中で黒歌が悪魔だって気づいたのね」

「その通り」

「そして起きた私の名前を呼んで、自分で『あっ』て驚いていたにゃん」

「どうしてその時点で私に言わなかったの?」

「いや、中3の頃だぞ?」

「その後もよ、事情を知っていたのならどうして私やソーナ、朱音に言わなかったの?」

リアス今さりげなく話を逸らしたな。

うん、『しまった』っていう雰囲気が滲み出てる、なんか可愛い。

 

「それは、黒歌の事情を聞いて。俺自身が大丈夫だと判断したから。一緒に暮らしててそれは確信に至ってるから間違いない」

その後あった色々も話した。追っ手に黒歌が攫われた事。

少し読み取りの難しい手紙のこと。

リアスも「文末の文字って繋げると───」て呟いていたからまぁ気づいたんだろうな。って思った。

因みに黒歌は俺がその時の手紙をまだ持っているとは思わなかったらしく。真っ赤になりながら俺の横で悶えていた。

とても愛おしく思った。

やっぱり俺は黒歌に『桜架』の姿を重ねて見ているようだ。

ダメだって、分かっているんだけどな。

 

しばらくして、グレイフィアが俺の家にきた。

真面目な格好で、具体的にはメイドとしてでは無く。魔王の『女王』としての格好で来ていた。

当然、黒歌を視界に捉えて驚いていたが、リアスが落ち着いていることや。俺と黒歌が外出用の服に着替えていた事から何となく察したらしい。

「そう言う事ですか……」と少し冷たい視線で言われてしまったが。俺の話したい事について察してもらえたようで何よりだ。

 

留守番はリアスに頼んだ。家事全般が出来る様なので「黒歌とリアスどっちの方が部屋を綺麗に出来るのかな?」と呟いたら快く請け負ってくれた。

流石にその時のグレイフィアの視線は怖かった。

 

 

魔法陣に乗って辿り着いたのは、どっかの社長室とか校長室みたいな豪華なというか、荘厳な場所だった、相向いになる様にサーゼクスが座っていた。

しまった、人数言ってなかったから椅子が1つしかねぇや。

「話の前に椅子をもう1、2脚程用意してもらっていいか?」

「理由を聞いてもいいかい?」

当然だな、理由を聞くぐらいしなけりゃ用意なんてできないだろ。

「人数に対して椅子の数が少ない。俺は自分が座って他の人物に立たせたままっていうのがあんまり好きじゃないんだ」

「どうして1、2脚なんだい?」

「第1に黒歌の分だ、別に俺が立っててもいいんだが。それだと黒歌が納得しない。だからもう一脚欲しい。もう一脚については何て言われるかわからんが、グレイフィアの分だな折角『女王』としてこの場にいるんだ、対等に話そうぜ。それにさっきも言ったけど。俺は自分が座っているのに他人に立たせ続けるのは好きじゃないからな」

教師は例外だけどな、と続ける。

 

「分かったすぐに用意するよ、それで話というのは、そこにいるはぐれ悪魔の黒歌についての事でいいのかい?」

話がわかるようで何よりだ

「そうだ、黒歌の事についてだ」

結局、話は立ったまますることになりそうだな。

 

「では、質問だ。天王寺 瑚太朗あなたの望みは何かな?」

昨日は公の場所だったから。言えなかったから堂々と言ってやるか。

「黒歌のはぐれ悪魔の認定を取り消せ、そして事細かにその原因を調査しろ。可能ならばこいつの元主を俺の目に触れさせないで欲しい」

目に入ろうものなら俺は多分止まれないからな。

 

俺は自分本位だ。俺がやりたいからやる、気に食わないからしないなんてよくある事だ。最近は歳で丸くなって来たけどな。

でも、やっぱり体に心が引っ張られる事ってのはあるみたいだ。

どうしても自力じゃ止まれない

 

「細かい話は黒歌からしてもらう。その為に連れてきたんだからな」

「それで構わない、それじゃ話してもらってももいいかな?黒歌君、君の主が君に何をしたのか」

そして黒歌は実際に起こった事を掻い摘んで説明していた。

俺が聞いた事との違いは無いし。

特におかしなところはなかった。

ただ俺と出会ってからの話を熱心にしていたように思えたが───気にしないでおくか。

 

「分かった。すぐに部下に調べさせよう。今すぐとはいかないかもしれないが必ず黒歌君のはぐれ悪魔の汚名を払拭しよう」

「ありがとう。魔王の寛大な措置に感謝を」

とりあえず形だけ取り繕っておいた。

黒歌も嬉しそうだし、これで万事解決かな。

 

────サーゼクスの次の発言までは

 

「さて、真面目な話はここまでとして。瑚太朗君、君うちのリーアと何処まで行ったんだい?僕のことを義兄さんと────」

ドスッ!!っという低く響く様な音が2回(・・)しかもほぼ同時に鳴り響いた。

「サーゼクス様?お戯れを、面白いご冗談ですね」

「────ぐふっ!!い、や、別に戯れでも、冗談でも、な───ははは、少し戯れ過ぎてしまったようだね」

「ええ、そのようです」

サーゼクスはグレイフィアの刺さる様な突きが横腹に突き刺さり。

 

 

「瑚太朗?今の話はどういう事にゃ?説明するにゃん」

もう1発は丁度俺の鳩尾に黒歌さんの拳が突き刺さった。

 

「────ふぅっ!ライザー戦の前の合宿の時にリアスを落としました。ライザーぶっ飛ばして完全に落ちました。は、反省はしてる後悔も少ししてる。でも、笑っていて欲しかったから。俺はリアスにしたことは後悔してないよ。ちゃんと幸せにしてやるつもりだ。1番は黒歌なんだけどな。」

 

 

……最後の二言目当たりから黒歌の殺気が抑えられた。

正直首に鎌を当てられた気分だった。あのまま選択を誤ったら。恐らく黒歌の全力の黒い一撃が飛んできて、俺もかすり傷ではすまなかったはずだ。

「そう、ならいいにゃん。どうせ瑚太朗には女の子ご沢山寄ってくるにゃん、その点に付いてはどうしようもにゃいけど、みんな幸せにするならいいにゃん」

語尾が完全に猫化していらっしゃる。

かなりキてますな。これは。

最近やってないからな。今日当たりにでも1回やっておこうか。

リアスも一緒に。

 

「瑚太朗君。リーアのことをよろしく頼んだよ。君の周りは力に溢れている。君や赤龍帝は大きな力を呼び込むだろう。その時はどうか──」

こいつが言わんとしていることは分かった。

「安心しろ、どうしてもダメだなってなったその時は俺が支えてやる。それでもダメなら俺が出る」

それでいいか?サーゼクス・グレモリー

「分かった。先程は冷たい対応をしてすまなかったね黒歌君。君は良い主人に拾われたようだ。これからも少しだけ、追っ手が来るかもしれないが彼に守ってもらうと良い。出来るだけ早く対処するつもりだから、それまでに待っていて欲しい」

 

「は、はいですにゃ!」

あはは、黒歌緊張してたんだな。気負うものが無くなれば俺も黒歌と堂々と外を歩ける訳だ。

あぁ、楽しみだなデート。

 

「瑚太朗様。先程の件と先日のお部屋での件は申し訳ございませんでした。魔王の『女王』ともあろう者が実力を見誤るなど……」

あぁ、気にしてたんだ。あの程度のこと別にどうって事無いのに。

寧ろ俺が気休め程度で作ったあのリストバンドが思っているよりも絶大な効果を発揮していることを知れて良かったよ、今はそれを強化した奴を着けてるんだけどね

「気にすんな、俺だってグレイフィアのおかげで収穫があったし実際にサーゼクスとの縁も出来た。リアスと正式に付き合えるようになったら義兄(にい)さんと義姉(ねえ)さんって呼ばせてもらうさ」

 

グレイフィアは少し複雑な表情をしていたがサーゼクスは随分と義兄(にい)さんという呼び名を気に入ったらしく。子供みたいに喜んでいた。即座にグレイフィアに沈められていたが。

 

その後は少しだけ談笑した。

好きなものや今後の学園行事(・・・・・・・)、学園にいる悪魔達についてどう思うかなどの話をした。

まぁ、俺の目的は達成出来たし、サーゼクスも楽しそうだったからいいか。と俺一人で納得した。

 

 

家に帰る前にリアスが家に来たお祝いをするために。色々と買い出しをする事にした。

何だかんだで、黒歌はリアスが家に来たことを喜んでいるみたいだった。だって、買い物中の黒歌はいつもよりも笑顔の数が多かったから。

 

久々にキッチンに立ってて、本気の料理、ケーキ作りをした。

何故か二人に揃ってキッチンに立つのを禁止された。

リアスはせめて差し入れ作る時だけにして、と割とガチな懇願をしてきた。俺、そんなに料理下手だったけ?

でも、その割には二人とも蕩ける様にケーキを頬張っていたような。

気のせいか。

 

 




ア)マスターがついに二人目を!
ゼ)この調子でどんどん増やして行きましょう。
瑚)何をだよ!
ア)それをは兎も角、マスターお二人とは何処まで行ったのでしょうか
ゼ)そうです、私共が眠っている間にナニをしていたんですか?
瑚)お前ら聞き方に悪意を感じるぞ。
ゼ・ア)気のせいですね。
瑚)ここぞとばかりに揃えてきやがって。特に何もなかった。これでいいだろう。
ア)ダメです!もっとはっきり言いましょう!
瑚)誰が言うか!規制かかるだろ。って言うか消されちまうだろ!

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。