過度な期待はせずに気楽に見ていくことをお勧めします。
感想・批評は歓迎ですが暴言・悪口は炎上の原因となりますのでおやめください。
007
「という訳で、君の初陣の相手はドラマツルギーに決まった」
交渉から帰ってくるなり忍野は唐突にそう言った。
何の脈絡もなく話し始めやがった……。
という訳って……どういう訳だよ。
どうやらこいつには『話の流れ』という概念がないようだ。
相手が聞いているいないに関わらず一人で話し続ける面倒なタイプとみた。
「……了解した」
ツッコミを入れたら負けなような気がしたので、俺は簡潔に答えた。
とはいえドラマツルギーか……。
ドラマツルギー
身長2mを超える巨漢。
その体は鎧のような筋肉に包まれ、波打つ刃を持つ大剣フランベルジュを二本携える。
キスショットから右足を奪った。
吸血鬼殺しの――――
重要な情報といえばこのくらいだな。
「まさに『毒をもって毒を制す』ってか?」
「まあ別段珍しいことでもあるまい、人間も動物も植物も、同族同士で争わぬ生物など、儂の知る限り一種類たりとも存在せんよ。まあ吸血鬼は生物ではないがのう」
「そりゃそうだが、なんだって奴は人間側に?」
「吸血鬼であるドラマツルギーがなぜ餌である人間の味方をするのかと問われれば、考えられるのはドラマツルギーが吸血鬼として弱いから―――という可能性が高いじゃろう」
「あぁ、成程」
「食物連鎖において、人間の上位たる吸血鬼は全てにおいて基本的に人間を遥かに凌駕するが、当然人間にも吸血鬼にも個体差というものが存在する。ドラマツルギーは恐らく、吸血鬼の中では弱い部類に入る個体じゃ」
「さすがにその辺の一般人に負けるほど弱くはないが、吸血鬼狩りを専門とする奴らに狙われれば生き残れるかは怪しいってことか」
「うむ、じゃからこそ、ドラマツルギーは生き残るための術として、自らの天敵になりうる吸血鬼狩りの一員となることを考えたのじゃろう、吸血鬼は生き物と違って食事も睡眠も性行為も必要とせんからのう、物質創造能力を使えば衣食住も調達可能じゃ、要は仲間にしておくだけならばコストがかからない存在なのじゃ。ただ一つ必要なのは――――」
「『
「大方、ドラマツルギーの所属している組織が
「どちらにせよ、敵にはなりえないか」
「当たり前じゃ、餌である人間に頼らねば生きられないような吸血鬼など、本来はうぬや儂の足元にも及ばん」
――――という会話をしていた訳だが……。
「結論としては、力押しだけで十分勝てるか……」
ところ変わってここは学習塾廃墟の外、この街にたった一つしかない大型書店の前。
別に用があった訳では無いが、決闘の場所へ向かうためのルートの途中にあったのだ。
しかし、今回の俺はいささか迂闊だった。
街に一つしかない書店なら、当然知り合いに会う可能性だってあったのだ。
そう例えば―――――
「―――ひょっとして、阿良々木君?」
―――――春休みなのにこんな時間になっても勉強している俺の友達とか
本当、迂闊だよなあ……。
「よう、羽川」
そんな考えを押し隠し、俺は平然を装った。
「こんな時間まで勉強しているとはな」
「え?これくらい普通でしょ?阿良々木君だって勉強していたんじゃないの?」
「悪いが俺は家庭学習などしたことがない」
「えー駄目だよ阿良々木君、ちゃんと予習復習はしないと」
「いーんだよ俺は例外だから。その証拠に結果は出しているわけだし」
「うーんそういわれると言い返せないけれど……」
実は授業にすら出なくても十分事足りるのだが…。
つまらないことにな。
「じゃ阿良々木君、何しにここに?」
「いや、ここに用がある訳じゃないんだが……」
「なによ?何か後ろめたいことでもありそうな雰囲気だね、まさか目的はエッチな本とか?」
「はっ、あんな写真の寄せ集めに興味はないな」
「えーホントかなー」
「妙に疑うな……」
「私のパンツ見たくせに?」
「いやあれは不可抗力……」
「しかもじぃーっと見たくせに?」
「記憶の捏造はそのくらいにしてもらおうか」
「だって阿良々木君、無表情だったけれど目をそらしもしなかったじゃない」
「一瞬だったからだっつーの、その後何事もなかったようにしようと気遣ってやっただろうが」
遣うだけ無駄だったがな……。
「なかなか創作物のようにはいかないねー、小説とかの中だったらあの時「見た?」って赤面しながら聞くのがお約束ってやつなのかな?」
「いや俺に聞くな」
「男子はそうゆうの結構好きじゃないの?」
「あらぬ偏見だな」
まあ俺以外にはそうかもしれないが……。
「ふーん、じゃ阿良々木君は私のパンツに興味ないんだ?」
「なんだ?あるって言ったら見せてくれんのか?」
「ダーメ、今日は見せてあげなーい」
あざといな………だがかわいいことは認める。
「今日は?別の日ならいいのか?」
「それはどうかなー?」
いちいちあざとい、だがかわいい(ry
「ところで阿良々木君、なんで図書館来なかったの?あの日に何かあったの?」
聞かれてしまったか……。
仕方がない、こうなったら虚実織り交ぜて誤魔化すしかないか…。
「あぁ、すっぽかして悪かったよ。ちょっとあの後人助けしててさ」
「人助け?」
「うちの妹がそういうボランティアやっててな、ちょっとしたトラブルがあって俺が動いたんだよ」
「あぁ知ってる『栂の木二中のファイアーシスターズ』でしょ?」
「何で知ってんだよ……」
「有名だもの、彼女たち」
妹が厨二臭い名でで知られてやがった……。
兄として恥ずかしすぎる………。
「そっかそっかー阿良々木君もやってるんだー」
「いや俺の場合、アイツらのブレーキ役というか後始末役なんだが……」
法の限界に挑んでいるような奴らだからな……今は俺が何とか抑えているが俺がいなくなったりしたらあいつらマジで法に触れかねない。
火燐は「法律なんて関係ねえ!あたしが正義だ!」とか言ってるし。
月火は「面白ければOK」ってスタンスだから火燐のブレーキにはならないんだよな……。
どちらかといえばアクセルだ。
「あははーお兄ちゃんって言うのも大変だね」
「他人事だと思って…」
まあ実際他人事だが。
「そういや羽川、お前何でこんな時間に本買いに来てるんだ?」
「あー……えっとね、実は本を買いに来たわけじゃないの、ちょっとした散歩のついでというか……」
「夜中に散歩とは、危ないことしてるなぁ、不審者にあったらどうするんだよ」
黒歴史を忘れるために悶絶して夜中に散歩に出たら見事に吸血鬼と遭遇した人間の発言である。
完全にブーメラン発言だった。
お 前 が 言 う なって話だよなぁ……。
「それを言うなら阿良々木君もでしょう?」
おっしゃるとおりである。
グウの音も出ねぇ……。
「はっはっは、心配するな羽川、俺に掛かれば不審者なんぞ木っ端微塵だわ」
「不審者よりずっと物騒な発言だ!?」
「まあ流石に木っ端微塵にはしないけれどな」
「『しない』なんだ!?『できない』じゃなくて!?」
やろうと思えばできる。
今なら吸血鬼パゥアで髪の毛一本残さず消し飛ばすことも可能である。
いや、やらないけれどね。
「そんなわけで俺は大丈夫なの」
「そういう問題なのかな……」
そういう問題なんです(断言)
「俺はこれから帰るつもりだったけれど……お前も帰るつもりなら家まで送っていこうか?」
その瞬間、羽川は微かに動揺したように見えた。
ふむ……どうやら地雷だったようだな。
これは失敗だった。
「ありがとう、でも送るのはいいわ。気持ちだけ受け取っておく」
「……そっか、んじゃ気を付けて帰れよ。噂の吸血鬼とかに会わないうちにな」
「あはは、吸血鬼ならちょっと会ってみたいかもね」
「やめとけ、吸血鬼なんて碌なものじゃない」
「?…実際に会ったことがあるみたいな言草ね」
「そうじゃねえけどよ……だって人を食うんだぜ?そんな奴らからしたら俺たちは只の食糧でしかないだろうし、俺たちから見れば奴らは『化け物』だ。実在したとして俺たちとは絶対に相容れない存在だろうよ」
これはちょっとした自虐だ。三重の意味でな。
「まあそうだよね……でも…それでも私は……」
羽川………やはりお前…。
「……まぁ吸血鬼がいてもいなくても、これ以上出歩くのは流石に危ないだろ」
「そうだね、じゃ私もそろそろ帰るね。またね阿良々木君」
「おう、またな」
そう言って羽川は去っていった。
さて………予想外に時間かかったけれど、俺も行くとしますかね。
俺は羽川に背を向けると指定された決闘場所へ―――――我が母校『直江津高校』へと向かった。
008
「決闘ねえ……改めて考えてみれば時代錯誤も甚だしいな」
決闘場所に向かいながらそんなことを考えて俺は内心苦笑する。
この現代社会において今時命を懸けた本物の決闘なんてするような奴は恐らく俺ぐらいだろう。
戦国乱世の時代っていう訳じゃあるまいに………。
まぁ、ところかまわず暴れまくるわけにもいかないから時と場所を決めて人目のつかないところで戦うって言うのは間違ってはいないのだが……。
「そうなると『夜』の『学校のグラウンド』っつーのはおあつらえ向きだよな……」
そこそこの広さがあって、誰も注目しないから人目もない――――これほどまでに決闘場所として好条件がそろっている場所は中々無いだろう。
しかし、いくらこの街がド田舎とは言っても、学校が直江津高校一つしかないという訳ではない。高等学校までの教育機関はここにもいくつかある。その中でも直江津高校が選ばれたのはなぜか?
「まあ単純に俺が行き慣れている場所だからってだけだろうな」
穿った見方をすれば地の利を与えるためとも言えなくもないが、恐らくそれは無いだろう。
俺がもともと普通の人間だったらプロのヴァンパイアハンターとの闘いにおいて力量の差を埋めるためにそう言った救済措置が取られたかもしれないが、俺はすでに3人を超える力量があることを忍野に示している。
あいつが中立の立場であると言っている以上俺に過剰なアドバンテージを与えるような真似はしないだろうから、故に決闘場所が直江津高校であることには単純に分かりやすい場所だからということ以上の理由は無いだろう。
「―――っと、着いたな」
そんなことを考えているうちに校門の前に到着していた。
当然のことだが、直江津高校の校舎や施錠されているため夜に入ることはできない。
だが、俺の目的は校舎内に入ることではなくグラウンドへ行くことであって、それだけならば校門を飛び越えてしまえば事足りる。
わざわざ吸血鬼のスキルを使わずとも容易である。
でもまぁ……なんというか…
「誰一人として、今夜ここで異能バトルがあったなんて、夢にも思わないだろうな」
明日になれば、春休み中とは言っても部活などでグラウンドを使う人間はいるだろう。
しかし自分が知らない間にここで本物の決闘が繰り広げられたとは誰も思わないだろう。
そう思うと、何となく奇妙な感じである。
『零崎無闇の奇妙な冒険』
いや、スタンドは出さないけれども(出せないとは言ってない)
キャラ的には吸血鬼だしやっぱDIOかな……。
『
グラウンドに入ると、そこには既に先客がいた。
グラウンドの中央で座禅でも組んでるのか、胡坐をかいて瞑目している筋骨隆々の大男がいた。
「待たせたようだな、ドラマツルギー」
俺が声をかけるとドラマツルギーはおもむろに口を開いた。
「【一つ言っておくが】―――」
「何だ」
「……あぁ、現地の言葉で―――だな」
そう言って奴はゆっくりと立ち上がった。
「しかし意外だな、その年で私の言葉が理解できたのか」
「まぁ頭は良いほうなんでな」
「なるほど、羨ましい限りだ」
「それよりも、とっとと本題を言ったらどうだ?不意を打つつもりなら今すぐ始めるぞ」
「勘違いするな――同胞よ」
「あ?」
「私は、お前を退治しに来たわけじゃない」
「何だと?」
「あの男―――あの軽薄そうな男の言に従って来たのは、決してお前を退治したいがためではないのだ」
「……何を言い出すのかと思えば、くだらない戯言か」
「戯言などではない、私は本気でお前を勧誘しようと思っている」
「何のためにだ?」
「以前はエピソードとギロチンカッターがいた手前、このような誘いをかけるわけにはいかなかったが、しかし鉄血にして熱血にして冷血の吸血鬼、ハートアンダーブレードの眷属という稀有な存在は―――殺すには惜しい」
「仮に俺がお前の仲間となったとして、メリットは何だ?」
「まずは身の安全だ、もしもお前がこの誘いに乗ったならば、私がほかの二人を説得し二度と手を出さないように取り計らおう。それ以外のヴァンパイアハンターにも同様だ。我々の組織は同じ業界においてかなりの影響力を有する。傘下に入ればお前がヴァンパイアハンターから命を狙われることは無くなると保証しよう」
「次に定期的な人間の供給だ。毎月最低一人は我々に人間が供給される。態々人間を襲いに行く必要もなくなるという訳だ。更には働きに応じて『褒賞』という形で追加の人間が供給されることもある」
「最後は仲間だ。私の下には現在53名の同胞がいる。我々の一員となれば必要に応じて手を借りることや情報を共有することができる」
「お前に訊く。私と同じように―――――吸血鬼狩りに身を窶すつもりはないか」
「……なるほど、確かにメリットはあるようだな」
「ならば――――」
「――――――だが断る」
「何?」
「メリットはあるがどれもこれも俺にとっては別に必要ない。それに、もし俺がお前の組織に入ったとして、最初にやらされることは恐らく――――キスショットの討伐だろう、違うか?」
「いや、その通りだ。ハートアンダーブレードの討伐こそがお前に与えられる最初の指令だろう」
「なら話にならないな、前提条件が違いすぎる」
「―――そうか惜しいな、実に惜しい、お前なら、すぐにでも我々のナンバーワンになれただろうに」
「そんな有象無象共のナンバーワンの座なんて別にいらねえよ」
「……そうか、ではそろそろ始めるとしようあまり時間をかける訳にもいかないのだろう?」
そういってドラマツルギーは腕を回し始めた。
「その前に、条件を確認しておこう。後になって言い逃れされるのは御免だ」
「良いだろう、確認しろ」
「俺が勝てば――――お前はキスショットの右足を返す」
「私が勝てば――――お前はハートアンダーブレードの居場所を教える」
「これでいいな?」
「良いだろう、それではそろそろ―――」
「「始めようか」」
そう言ったとたん、ドラマツルギーは回していた腕を思い切り打ち込んできた。
その巨大な体躯に似合わず、その拳の速度は速く、ヒットすれば岩ぐらいならば粉々にできそうな迫力があった。
しかし―――遅い。
俺を捉えるにはその拳では遅すぎる。
先ずは一発、軽いジャブ。
姿勢を低くして拳を回避し
ドラマツルギーの手首を下から掴み、手前に引く
それと同時にもう一方の腕で鳩尾を抉るように掌底を繰り出す。
ドゴォォォォォォォン!!!
俺の放った掌底によってドラマツルギーは盛大に吹っ飛ばされ、体育倉庫の扉に激突した。
常人ならば即死は免れない一撃だ。
「ま、そんなヤワじゃねぇよな」
しかし、ドラマツルギーは大してダメージを受けたようなそぶりもなく、漂う土煙の中で悠然と立っていた。
ドラマツルギーの筋肉の鎧がダメージを軽減したのであろう。
鳩尾を突きはしたが、しかし相手は吸血鬼である。
人間の急所が適応されるはずがない。
しかし、そんなことは想定内。
さっきの掌底は、いわば挨拶代わりだ。
「さて、どう来るかな?」
そう呟いた次の瞬間、ドラマツルギーの姿が消え、俺の前に唐突に出現した。
吸血鬼の霧化能力か……。
そう考える暇も与えまいとドラマツルギーはそ両腕をフランベルジュに変えて斬りかかる。
だが―――
「残念、俺も
ドラマツルギーが振り下ろしたフランベルジェの刃はそのまま俺の身体を透過していく。
しかし、ドラマツルギーとてプロのヴァンパイアハンター、攻撃が通じない程度の事では動じず、間髪入れずに次の斬撃を繰り出してきた。
だがそれも―――当たらない。
続けて3……4発と打ち込んでくるも、その全てが霧化した俺の身体を通り抜けていく。
流石に意味がないと思ったのかドラマツルギーは途中で攻撃を止めて距離を取った。
じっと俺を観察し、どうすれば俺に攻撃が届くのか考えているようだ。
「―――驚いたな、まさか体の一部だけを瞬時に霧化できるとは」
「何、別に大したことじゃないさ」
「いや、いくらハートアンダーブレードの眷属とは言えど、そこまで霧化能力を使いこなすにはかなりの習熟が必要だ。吸血鬼になって数日程度でできる芸当じゃない。一度目の衝突でも思っていたが……お前はどうやら……少々特殊のようだな」
「俺は『例外』だからな」
「なぜ仕掛けてこない」
「初撃以来何もしてこない理由は何だ、なぜスキルを使わない」
「ククッ……」
「何がおかしい?」
「いつから俺が
「何?」
「
そう言われて背後を振り向いたドラマツルギーの視界には、虚空から出現している無数の歩兵銃が一斉に向けられている光景だった。
「
そう言うと同時に俺が腕を振り下ろすと、凄まじいほどの轟音と閃光がグラウンドを支配した。
銃声が鳴りやむと、そこには満身創痍のドラマツルギーがいた。口からは血が流れ、両手のフランベルジュは罅が入り今すぐに折れそうだ。
「まあでも、腐っても吸血鬼だな…人間の武器ぐらいじゃ簡単には死なねぇか」
だが―――お前はすでに
ドラマツルギーの周囲はいつの間にか出現していたさっきよりも更に大量の銃が包囲していた。
逃げ場は―――無い
「で、どうする?」
俺がそう問いかけると、ドラマツルギーはゆっくりとその両手を上にあげた。
「
「随分と諦めがいいな」
「私が間違っていた。たとえ地力で負けていようとも経験で補えれば多少なりとも勝機はあると思っていたが……とんだ勘違いだった。最初から私には勝機など無かった。お前とは……そもそも戦うべきではなかったのだ」
お前はあまりにも―――強すぎた。
そう呟いたドラマツルギーの身体は徐々に霧化していった。
「キスショットの右脚のこと……分かってるな?」
「あぁ、約束は守る。お前の怒りを買う結果になるのはこちらとしても勘弁願いたいところだからな。お前にはできればもう二度と会いたくないものだ」
「それは同感」
さらばだ――――『例外』よ
そう言い残してドラマツルギーは霧になって消えた。
そして一人残された俺は――――
「さて……面倒だが、後片付けしねーとな」
戦闘で荒れに荒れたグラウンドを見て嘆息した。
その矢先だった。
「人影だと?」
校舎の陰からこちらを伺っている人影を発見した。
目が合った。
気づかれたことを察した人影は逃げると思いきやこちらに向かってきた。
その人影は俺の眼前まで歩いてくると、そこで立ち止まって俺と正面から対峙する。
「――――よう、さっきぶりだな『羽川』」
「阿良々木君、今の―――何?」
嘘誤魔化しは許さないとでも言いたげな眼で俺を見る羽川。
「おかしいと思ったの、これから帰るって言っておいて阿良々木君、家の方向とは全く違うほうに歩いていくんだもの。それも学校の方向に」
「まず何で俺の住所をお前が知っているのか聞いてもいいか?」
「それくらい当然でしょう?同じ学校だもの」
あぁ……そっすか(諦め)
じゃもうそれでいいデス(放棄)
「それで?今の伝奇小説みたいな事は一体どういう事なの?夜の学校のグラウンドで阿良々木君は一体何をしていたの?」
「はっ、どうしたもこうしたもねぇよ、見た通りさ、俺は化け物で、その化け物を狩ろうとする化け物と異能学園バトルの真っ最中だったんだよ」
「化け物………って」
「『吸血鬼』さ、お前と友達になったその日の晩、俺は死にかけの吸血鬼に遭遇して血を吸われて、俺自身も吸血鬼になっちまったのさ」
「それってまさか………」
「そうだよ、お前があの日話した噂の吸血鬼だ」
「それじゃ阿良々木君はその吸血鬼に戦うことを強制されて……」
「勘違いするな、俺が吸血鬼になったのも、今こうして戦っていることも、全て俺の意思によるものだ。俺は自ら進んで化け物になったんだよ」
「どうしてそんな………」
「どうしてだと?そんなの俺がやりたかったからに決まってるだろうが、せっかく巡り合えた『同族』を助けたくなった――――ただそれだけだ。他に理由なんざ無ぇ」
兎にも角にも―――
「御覧の通り俺は化け物だ。人間のお前がそばにいれば危害を及ぼされるかもしれないぞ、死にたくなければ今日ここで見たことは忘れて二度と俺に近づかないことだな」
「嫌、私は阿良々木君を助ける」
「本気で言ってるのか?気は確かか?俺は化け物、吸血鬼だ。俺と一緒にいればお前は俺に食われるかもしれないんだぞ?お前……死にたいのか?」
「死にたいわけじゃない、でも、阿良々木君が私を食べるって言うのなら食べればいい。友達のためなら私、命くらい惜しくないわ」
狂っている。
常人ならば狂気の沙汰としか思えない発言だ。しかし、そこに嘘は一切ないと羽川の眼が語っていた。
あぁ……本当にお前は―――
「怖くないのか……俺が」
「怖くないよ、吸血鬼は怖いけれど、阿良々木君は怖くない」
その瞬間、羽川の周囲の地面が抉れた。
「これでも―――そう言えるのか?」
「言える」
毅然とした口調で羽川は言い切った。
「目をそらしもしないんだな」
「言ったでしょ?阿良々木君なら怖くないって、阿良々木君は私を傷つけたりしないって、私信じてるから」
「分からないな、全く理解できない。何故そこまで俺を信頼できる?俺たちは所詮、まともに関わり始めて数日の間柄だろう」
「友達だからよ」
羽川は真っ直ぐと俺を見据えて言った。
「友達を信じるのは当たり前でしょう?そして―――その友達が困っていれば助けてあげたいって思うのもごく普通の事でしょう?」
だから―――阿良々木君
「私にあなたを―――助けさせてくれないかな?」
真っ直ぐに、羽川はそう言った。
本当にお前は――どうしようもなく例外だよ。
だが―――合格だ。
「………」
「………」
沈黙が訪れる。
俺と羽川は暫しの間無言で見つめあった。
そして――
「―――はぁ……分かった。もう好きにしな」
沈黙を破ったのは俺の嘆息だった。
「どうなっても知らねえからな」
「分かってるわよ」
呆れたような表情の俺に羽川はそう言って微笑した。
全く、良い友達を持ったよ。
「ねぇ阿良々木君、一つ聞いていい?」
「何だ?」
「今の阿良々木君から見て私って……普通?」
やはりそういう事か……。
その上で言うが答えはNOだ。
普通なわけがない。
だから俺はこう言ったのだった。
「お前は……どうしようもなく羽川翼だ」
ま た せ た な ぁ(蛇的な意味で)
……すいません、調子乗りました。
どうも零崎記識です。
言い訳はしません、単純に筆が乗らなくてサボってました。
感想を書いてくださったCadenzaさんとddd32さんとお気に入り登録してくださっている皆さんには申し訳ない限りです。
気分が乗らないと一切筆が進まないどーしようもない筆者の作品ですがこれからも気楽に気長に読んでいただけると幸いです。
西尾先生とはえらい違いですよねホント……マジで尊敬します。
ここからは作品の内容について
うん、言いたいことは分かる。とりあえず落ち着いてくれ。
うん……あのね、筆者実は一回はふざけないとシリアス書けない人なんだ。
だからその手に持った灰皿を一回机に置こうか。
うん、気持ちはわかる。
シリアスなシーンなのに無駄なネタ仕込んでんじゃねえよ!って言いたいのは筆者も同じだ。
ただどうしてもネタが思いついてしまうといいますか……。
この作品、半分くらい筆者のノリで書いてるとこあるから……。
無闇君がふざけているわけじゃないんだ!
彼はあれでも真面目にやってるんだ(舐めプしてるけれど)
タグの『唐突に入り込むネタ』というのもつまりはそういう訳でして………。
だからまぁ……シリアスなシーンでもお構いなしに唐突にネタがぶっこまれているのも皆さんの寛大な心で許していただきたいなーと………。
ネタが笑えなかったらつまらないネタを披露して盛大に滑ってる筆者を笑ってください。
滑ってやんのアイツダッセーm9(^Д^)プギャーwwww
的な感じで。
こんな調子で終始進めていくのでそのつもりで気楽に読んでいただければ幸いです。
ここからは補足。
キスショットとの出会いのシーンの話ですが、あれは無闇君がキスショットに感じた衝撃をキスショットも同様に感じていたからこそのあの反応です。
簡単に言えば目が合ってこいつ……できる!ってお互いに感じたという事です。
具体的には戯言シリーズのクビシメロマンチストにおけるいーちゃんと零崎人識との出会いと大体一緒です。
筆者と主人公の名前について。
お察しの通り筆者と無闇君の『零崎』は西尾維新さんの戯言シリーズ、または人間シリーズに登場する『零崎一賊』からとっています。
しかしはっきり申し上げますと無闇君と零崎との間には接点がありません。
故に無闇君が実は『殺人鬼』という展開にはならないと明言しておきます。
ちなみに筆者の名前の読み方は「ぜろさき しるしき」と読みます。
「れいざき きしき」じゃないですからね?
そんなどうでもいいこと放っておいて次回はエピソード戦ですね。
御覧の通り本作は『主人公最強』『無双』『俺tueeee』の三要素が入っています。
なので、バトルシーンは基本的に無闇君が舐めプしてネタ吐いてボコボコにする展開になります。盛り上がらねぇ……。
『主人公最強』モノってバトルシーンが一番ムズいよね……。
え?単純に筆者の戦闘描写が下手なだけ?
HAHAHAそんなばかな(目そらし)
誰か無双モノの戦闘描写の書き方教えてください(泣)
そんなことはどうでもいいとして、傷物語の結末をどう締めるか悩み中……。
キスショットと戦わせるわけにもいかないんだよなぁ……。
先に言っておきましょう、この先展開の都合上時系列的に未だ登場していないキャラが登場してオリジナルの展開になる場合があるのでその辺のツッコミは無しの方向でお願いします。
質問・ご指摘等は感想欄へどうぞ
ではまた次回。