ブラス老は、魔王と呼ばれた男を観察しているようです。この中でアバンの次に魔王について知っているのは、旧魔王軍に所属していた鬼面導師ブラスなのです。(おそらくパワーが段違いだとか、若いとか、生命力を感じるとか思っていることでしょう)
ブラス達の事など眼中に無いような様子のハドラーは、目の前の男にのみ注意を払っているの様です。「久しいな・・・我が宿敵・・勇者アバンよ!」思ったより静かな口調と声に、私は違和感を感じました。
本来であればここで、俺の野望を邪魔したとか屈辱は忘れんとか、ちっちゃいことを言ってアバンと言い合いになっていた気がするのですが何か様子が変です。
「かつての俺は、貴様ら人間の力を軽視していた。何の戦略もなしに、力押しでどうにかなると思いこんでいたのだ。その結果、お前達の歴史書通り俺の敗北に終わった!・・それはいい!!しかしその結果、人間共は増長し、魔物を駆逐し自然を破壊した。人間の王国は当時の理想を忘れ、王国内部は腐敗し、この島の様に都合の悪い人や魔物を辺境に押しやった!!これが貧民を生んだ歴史である!!」(・・・あれれ・・・まったく私の知らない方向に話が・・・・)
アバンも自分が知っている短気で粗暴な男ではなく、どこか知的な感じすら漂わせるハドラーに動揺を隠せない様子である。
ハドラーの演説はまだ続いています。「ここに至って俺は人類と魔物が今後、絶対に戦争を繰り返さないようにすべきだと確信したのである!!それが貴様に倒された俺が、復活し貴様に相対している理由でもある。本来であれば俺を倒した貴様に敬意を表して、滅んでおくべきであったのだが・・・人間の増長振りに我慢ならん!! おそらく貴様はまた俺の敵に回るだろう。だから宣言しておく勇者アバンよ!!」
一旦セリフを切ってからハドラーは、その身から威厳や誇りといった前世ではありえない雰囲気を纏いながらこう宣言した。
「我が魔王軍は、全世界の王国に対して宣戦を布告する!!」・・・・・・・・誇り高き魔族の王がそこに居た。
「貴様程の男が意見を変えるとは思えんが、念の為に聞いておこう」とハドラーは言い、アバンに先程の話に協力する気がないか返答を求めました。案の定アバンの答えはNOでしたが、最後にこう呟いていました。「言いたい事は解らなくはないが、人間はそれだけではないのですよ」
「残念だが・・・これも必然か!」ハドラーは、言葉とは裏腹に断られた事に嬉しそうな表情をしていました。「やはり勇者はこうあるべきだな!もはや何も言うまい!!」そう言って戦闘態勢に入るハドラーとアバンですが、私には言いたいことがありました。(ハドラーキャラ変わりすぎww)
「では前回の戦い続きといこうか・・・・前回は俺の敗北で終わったが、今回はどうかな?」そう言いつつも、自らの勝ちは揺るがないと感じさせるだけの何かが、今のハドラーにはあった。「貴様は老い、俺は若返った・・・頼りになる仲間はなく、周りには守るべき生徒がいるだけだ」ハドラーは若干悲しそうな表情で「それでも俺は、貴様と教え子をこの世より葬り去らねばならぬのだ!せめて我が手であの世に行くが良い!!」
そのセリフと共に戦闘が開始された。ハドラーが、様子見とばかりに放った
「悲しいなアバンよ!技術や威力は昔以上だが、今の貴様には何としても相手を倒すという気迫が足りない!」そう言ってハドラーも
「凄まじい威力だ・・・・以前戦った時よりもはるかに強くなっている・・・!なぜだ!?」
そう呟くアバンにハドラーはこう言いました。「貴様に倒された後、俺は
「何物だ!?そいつは・・・!!」アバンは思わず、そう叫んでいました。ハドラーはアバンの問いに、こう答えました。「大魔王バーン・・・貴様に敗れ、死の世界をさまよっていた俺を蘇生させて下さった、偉大なる魔界の神だ!!」
そして、アバン達が予想もしていない事が、ハドラーの口から発せられました。「バーン様に忠誠を誓った俺は、
「今の俺は魔王ではない!・・・