「なぁ比企谷、ちょっといいか?」
「…なんだ」
俺の貴重な昼休みに話しかけてくるんじゃないよ。
「ここじゃ話せない、少し移動しないか?」
「…あー、悪い。忙しいからまた今度な」
「少しでいいんだ。いろはのことなんだが…」
「…わかったよ」
なぜか一色の名前を聞いた途端聞かないわけにはいかないような気がした。それがただの思い過ごしだとしても。
連れてこられたのはいつもの校舎裏だった。え、なに。俺と一色が仲良いからボコられんのかな。
「君は、いろはのことどう思っているんだい?」
「…なんだ?ヤキモチか?大体俺と一色じゃなくてお前と一色との気持ちの問題なんじゃねぇのかよ」
「…質問に答えてくれ」
「…別になんともねーよ。向こうもなんとも思ってない。あいつはクライアントで俺がコンサルタント。それだけだ」
「本当にそれだけだと思っているのか?」
「…どういう意味だ」
「君はそろそろ気づくべきだよ。そしてもっと考えるべきだ。君という存在が周りの人にどれだけの影響を及ぼすようになっているのかを」
「…俺の影響力?そんなもん無に等しいだろ。別に俺は一色だから助けたわけじゃない、今までだってそうだ。特定の人物を私情で助けてるんじゃねぇんだよ。俺はお前みたいに優しくないからな」
「ははっ…君は本当に変わらないな」
「何言って…」
「そんなの、彼女が救われないじゃないか」
その時の葉山の目はいつものキラキラとしたものじゃなかった。葉山自身に秘められた怒り。いや、哀れみともいえるのだろうか。しかしその時の俺にはその目を直視することができなかった、まるで今目の前にある現実から目を背けるように
ーーー
「せんぱぁい、やばいですぅ、やばいんですぅ」
「…なんだ」
「生徒会の仕事、明日までに終わらせないとやばいんですぅ」
「副会長とかに手伝ってもらえばいいだろ」
「むっ…先輩じゃなきゃむりなんですよ!」
「…なぁ、もういいだろ」
「なにが、ですか?」
「もういちいち俺が手伝わなくてもやれるだろう。生徒会のことも、葉山のことも」
「せ、先輩、なに言って…」
「迷惑なんだよ、俺をダシにして葉山と仲良くなろうって魂胆なのかもしれんが生憎葉山とは仲が良くないんでね。デートの真似事なんてもうごめんだ」
自分でも驚くほど冷たい声が出たように思う。いや、ただ単に今の俺の心情がそう錯覚させているのかもしれない。ただ一色に対してこれほどまでに感情のこもっていない喋り方をしたのは初めてだった。それは受け取った側の一色になっても同じことだろう。
「……ばか」
消え入るような声で呟いたが俺には聞き取れなかった。それから一色は走り去っていった。そして取り残された俺は虚無感とも喪失感ともいえる感情の中にいた。だがこれで良かったのだ、俺とあいつのためにも…
まるで、世界から俺以外の人間が消えた。そんな感覚だった
やっと葉山が出てきましたねぇ笑
ちょっとシリアスな感じになってきました!
更新速度は途中まで書きためているので早いかもしれませんがそれ以降は遅くなってしまったら申し訳ありません!
構想はある程度できているのですがもしコメントとかいただいてどういうのが欲しいなどのリクエストがあればそちらも含めて考えていきます!