前回も言いましたがもうすぐでこのSSも完結です!
後この話を合わせて2、3話と言ったところでしょうかね?
残り少ないですがどうぞ暖かく見守ってください!
それから毎日先輩のお見舞いに通い、二週間が経った頃でした。その日は生徒会が長引いてしまい、急いで向かおうとしていた。
「いろは先輩」
校門を出た瞬間不意に横から声をかけられた。声の主はーー
「遼君……」
「すみません突然」
「ううん、わたしも話さなきゃいけないことがあったから」
「もう会わない、ですよね」
「……うん」
おそらく詩織から聞いたのでしょう。それを本人を前にして言うのはやはり胸が締め付けられる思いでした。
「ごめん、わたしね」
「1つ、お願いがあります」
「……え?」
「最後に、比企谷先輩のお見舞い行かせてください」
「それは……」
「分かってます。好きな人に他の男を合わせるなんて嫌だってこと。でもそうじゃないと俺諦めきれないんです先輩のこと。だから、お願いします」
土下座をするような勢いで深々と頭を下げる遼君。本当は会わせるべきではないのかもしれない。けれど親友の頼みとはいえ会ってしまったわたしの責任、そしてお見舞いに行こうと言う誘いを軽く承諾してしまったわたしに非がある。
多分彼は葉山先輩に似ている。優しく、嘘をつけない。少しだけ自分の気持ちに正直なだけだ。先輩のためのお見舞いなんだからわたしがどうこう言える立場じゃないかもしれない。けれどこれはわたしが取るべき責任なんだ。
「……わかった」
ーーー
校門を出てから15分程で病院についた。道中でわたしと遼君が言葉を発することはありませんでした。
わたしはずっと先輩に早く会いたいという気持ちと本当に2人を会わせていいのだろうかという気持ちが交差していました。幸い今日は奉仕部のお二人は用事があるということで先輩のお見舞いには来れないとのことでした。
病室に着き、軽く深呼吸をしてドアを開ける。
「よう、一色……ん?」
先輩も遼君の存在にかなり驚いてる様子でした。
「あ、彼はですねわたしの親友の弟で上本遼君です。総武高の1年生です。実は先輩が目を覚ました時わたしとその親友と遼君でお見舞いに来てくれてたんですけど、すぐに帰っちゃったみたいで、それでまたお見舞いに行きたいって言ってくれて連れてきました」
「こんにちは比企谷先輩。上本遼といいます」
「お、おう。よろしく」
コミュ力の無い先輩はいつも通りキョドッてますねぇ。まぁそんな先輩も好きなんですけどね?
「比企谷先輩の話は一色先輩からよく聞いてます」
ちょっとぉ!?何暴露しちゃってんの!素直なのはいいことだけどもうちょっと自重してよ……。
そういえば彼、わたしのこと『一色先輩』って、彼なりの気遣いなのでしょうね。ありがたいです。
「え、なに。悪口とか?」
「むっ、わたしそんなこと言いませんよ!」
「大丈夫ですよ、悪口じゃありませんから」
「ならいいんだけど……」
それから3人で談笑しました。主に学校のこととか奉仕部のこととか。そして1時間ほど経って帰ることにしました。わたしとしてはもう少し先輩といたかったんですけど、先輩が「上本に送ってもらえ。その、お前女の子なんだからこれ以上暗くなったら1人で帰らせるわけにはいかねぇよ」なんて言われちゃったので止むを得ず帰ることに。かっこいいです先輩大好きですもう付き合いましょう。
……というわけで2人で帰ることになりました。わたしたちは行きと同様に言葉を発することはなかった……はずなのですがおもむろに遼君が口を開きました。
「一色先輩」
「……なに?」
「俺、先輩のこと最初勘違いしてました。」
「え?」
「こんなこと言うのはあれですけど、正直もうちょっと軽い人なのかなって思ってました」
「でも全然違いました。俺が思ってた以上に一途で素敵な人でした。だからあんな純粋で幸せそうな顔されちゃあ太刀打ちできる術なんてありませんよ」
遼君は下を向いてくすりと笑うとまたこちらに向き直してきた。
「だから俺、先輩のこと応援しますから」
「……ありがとう遼君。それから、ごめんね。わたしが最初から断っておけば」
「謝る必要なんてありませんよ。実際、結構楽しかったですし後悔もしてません」
遼君の表情は後ろから照りつける夕日が眩しくてよく見えなかった。ただわたしに向かって微笑んでいるのがなんとなくわかる。
「ありがとね遼君」
「こちらこそ一色先輩。では、またどこかで」
いつの間にか分かれ道に来ていたようで、遼君は軽く手を挙げると振り返ることなく帰って行きました。
明日詩織にあやまらないとなぁ。
ーーー
「ごめん、いろは!」
次の日わたしが教室に入り席へ着くとすぐに詩織が駆け寄って来てなぜか頭を下げて来ました。
「ど、どしたの詩織」
「昨日遼にいろはと比企谷先輩のお見舞いに行ったって聞いて……」
相変わらず正直だな……。でも今回は恐らくわざとだと思いますけど。
「でもあの子いろはのこときっぱり諦めたみたいでね。なんかあったの?」
「んー、何かあったってわけじゃないんだけど。でももう会わないって約束はしたよ。まぁもちろん学校で会うことはあるだろうけど」
「ふーん、何もないんならいいんだけど、」
詩織も結構心配(?)してくれてるみたいでした。
「っていうか昨日からなんの話!?」
昨日と同じく会話についていけない亜美でした。
ーーー
この日も生徒会のせいで先輩のお見舞いが遅くなっちゃいました。まぁ雪ノ下先輩と結衣先輩がこの時間にはいないので2人で話す絶好のチャンスでもあるんですけどね?
わたしは先輩のいる病室に走って向かいたい衝動を抑えて早歩きで向かいました。
「せーんぱいっ」
「おう、相変わらずあざといな」
「あざとくないですぅ!」
こんな『かみまみたっ』みたいなお決まりなやり取りをしながらいつも通り談笑する……はずだったんですけど、どうも先輩の様子がおかしいです。
「なぁ一色」
「なんですか?」
「その、上本のことはいいのか?」
「いいってどういうことですか?」
「まぁ、なんだ。間違ってるかもしらんが、あいつお前のこと好きなんじゃねぇの?」
心臓がドクンと跳ねた。この人は自分に対する好意は鈍感なくせに人の感情を読み取ることには長けているんだ。だからこの先を言わせてはいけない、そう頭が警鐘を鳴らした。
「お前がどう思ってるのかは知らんが、その、お似合いなんじゃねぇか?」
先ほどとは比にならないレベルで動揺し、冷や汗が出てくる。
「すげぇイケメンだし、葉山みたいだけど結構中身は素直で優しそうだし……」
「……わけ、ない……です、か」
「え?」
わたしは先輩をキッと睨みつけた。
「そんなわけないじゃないですか!わたしは先輩のことが……」
ここまで言ってなんとか踏みとどまった。先輩が勘違いしてるこの状況で告白するのはまずい気がする。だからわたしはーー
「こ、この後家の用事があるのでもう帰りますね!」
逃げました。だってこんな状況耐えられませんもぉん!
でもわたしが帰ろうとして病室のドアに手をかけた時、先輩に呼び止められた。
「明日、予定あるか?」
明日は土曜日で特に予定はありません。
「ありません、けど」
「そ、そうか。あぁそういや言い忘れてたんだが来週の土曜日に退院することになった」
「ほ、ほんとですか!よかったぁ」
「お、おう。それでだな、日常生活にほとんど支障がない程歩けるようになったから病院の先生が明日一日外出許可くれたんだ」
先輩が言いたいことがさっぱりわからなかったわたしはポカンとしてました。
「それで、だな。お前さえ良ければ、その」
「明日俺とデート、しないか?」
「ふぇ?」
いかがでしたか?次は久しぶりのデート回です!
ネタを考えるのに時間がかかりそうなのでもう少しお待ち下さい……。