比企谷八幡のラブコメには色々ある   作:Soアニ

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いつもと比べて更新遅くなりました。
読む方に集中しすぎて書けてなかったです笑
シリアスな展開ってやっぱり難しい…


彼にはいつまでも手が届かない

わたしはその光景を目の前にしてただただ呆然としているだけでした。

 

嫌だ嫌だ嫌だ

 

なにを考えるでもなくそれしか頭に浮かびませんでした。

 

「かっ……はっ………かはっ…はっ……っ」

 

わたしは信じられない光景を目の前にして呼吸さえままならなくなりました。

 

嫌だ、嫌だ、嫌嫌嫌嫌嫌ーーー

 

パンッ!!!!!!!

 

わたしの頬から乾いた音が響く。

 

雪ノ下先輩が私の頬を思い切り叩いていた。

 

「一色さん!今はパニックになってるじゃないのよ!タオルかなにかで止血してちょうだい!」

 

気づけば雪ノ下は涙を流していました。

 

あぁ、そうだ。雪ノ下先輩も怖いんだ。わたしだけがパニックに陥ってる場合じゃない。

 

わたしはその場にいた人の持っていたタオルを急いで水で洗い、傷口を強く圧迫しました。

 

「由比ヶ浜さん!救急車は!?」

 

「よ、呼んだよ!すぐ来るって、だから、頑張ってヒッキー!」

 

携帯を握りしめた結衣先輩の手も震えていました。誰もが怖いんだ。

 

「気道を確保するから比企谷君を横にして!それから片足と片足と腕を曲げて!」

 

雪ノ下先輩は一見冷静になっているように見えましたが、明らかに焦りと動揺の色が伺えました。

 

ドラマやアニメで人が死ぬというのは特に驚くようなことでもないし、出血を見ても痛々しいぐらいだった。けれど、その場面がもし実際に目の前に起こったら人はとてつもない恐怖で押しつぶされそうになる。

ましてやそれが大切な人なら尚更である。

 

「せん、ぱい……嫌、です……いなく……ならないで……」

 

「何事だ!」

 

駆けつけたのは平塚先生でした。生徒の1人が呼んできてくれていたようで、先生はものすごい勢いでこちらに向かってきました。

 

「ひ、比企谷か…、これは一体…」

 

「すみません平塚先生、説明してる暇はありません」

 

「そ、そうだな、すまない」

 

平塚先生も動揺していました。当たり前のことでしょう。教え子が目の前で死の淵に立たされるなど誰しもが経験することではないですから。

 

「先輩……ダメ、です……死んじゃ……嫌……」

 

わたしはそうやって先輩に呼びかけることしかできませんでした。

出血はおさまってきていたが油断を許さない状況でした。今にも消えそうな先輩の命のロウソクをわたしは必死で消すまいと先輩に話しかけていました。

 

少し冷静になり辺りを見回すとスマートフォンで動画や写真を撮ってる人が何人かいました。

 

その時わたしは怒りで頭がどうにかなりそうになりました。

 

先輩が死の淵に立たされているのに面白半分で周りにいる野次馬たちにかつてない怒りを覚えました。

 

「一色さん、あんな愚かな連中は放っておきなさい。今は目の前のことに集中して」

 

「は、はい!」

 

雪ノ下先輩には何もかもお見通しのようでした。そうだ、今は先輩のことだけ。

 

「ようやく来たか」

 

平塚先生がそう呟くと近くで救急車のサイレンが聞こえて来ました。命の危機が回避されたわけじゃないのに妙に安心していました。

 

「ヒッキー!もう少しだからね、死んじゃダメだよ!」

 

「先輩、大丈夫……ですから……もう、すぐ…もうすぐ、ですからね……」

 

わたしは泣きじゃくりながらも先輩に呼びかけ続けました。もしかしたら先輩の耳に届いてるかもしれない。そう信じてーーー

 

ーーー

 

「こっちだ!急いでくれ!」

 

平塚先生が救急隊員の人を案内し、先輩は担架で救急車に運ばれていきました。

 

「私が同伴する、君達は待ってて…」

 

「わたし達も行きます」

 

とっさに私の口から『わたし達』と言う言葉が出た。

 

「えぇ、私たちも、ね」

 

「うん!」

 

すぐに救急車に乗り、わたし達は車内でも先輩の名前を呼び続けていました。

 

「先輩、大丈夫ですからね…もうすぐです…」

 

「比企谷君、こんな美少女3人に囲まれて死のうって魂胆じゃないでしょうね?そんなの許さないわよ」

 

「そうだよ、ヒッキー。私達待ってるからね」

 

病院に到着し、すぐに先輩は集中治療室に運ばれて行きました。もうここからは先輩の無事を祈ることしかできません。

 

先輩、待ってますからね

 

そう心で語りかけ、運ばれて行く先輩を見送った。

 

ーーー

 

先輩が運ばれてから少し経つと小町ちゃんと先輩のご両親が来ました。小町ちゃんは涙を浮かべ、ご両親もずっと神妙な面持ちで手術室を見つめていました。

 

手術が始まってどれぐらい経ったでしょうか。わたし達は一言も会話を交わすことなく先輩が出てくるのを待ちました。

 

そして手術中のランプが消え、医師の方達と先輩が出て来ました。

 

「せ、先輩は…!」

 

「落ち着いて聞いてください、比企谷さんの身内の方でいらっしゃいますか?」

 

「この子達は違いますが、今ここで話してもらっても構いません」

 

「わかりました。手術は成功しましたが、比企谷さんは今危険な状態にあります」

 

「…」

 

「比企谷さんがこの先目を覚ますかわかりません」

 

医師の方から告げられたのはあまりにも残酷なものでした。

 

「そ、そんな…」

 

「…嫌よ、そんなの…」

 

「嫌だよ、ヒッキー…」

 

「我々としても全力を尽くすつもりで…」

 

「お願いします!お兄ちゃんを助けてください!お願いします!お願いします!」

 

小町ちゃんは医師の方に縋るように泣き付いていました。

 

「こ、小町ちゃん…」

 

わたしと雪ノ下先輩で小町ちゃんが泣き止むまで背中をさすり続けていました。

 

それからしばらくして小町ちゃんは落ち着いたようで、

 

「すみません、取り乱しちゃって…」

 

「ううん、わたしもどうすればわからなくなってるから」

 

「ほんと、ヒッキーっていっつもどっか行っちゃうんだから」

 

結衣先輩も目が真っ赤に腫れている。

 

「私は学校に戻ってこのことを報告してくる。みんな、遅くならないように」

 

そして先生は少し悲しそうな顔をして、

 

「何もしてやれなくてすまない」

 

そう呟いて平塚先生は帰って行きました。

 

「先生!」

 

「なんだ?一色」

 

「せ、先輩は絶対に助かります。任せてください」

 

「…ふっ、君がそう言ってくれると私も安心できるよ」

 

恐らく先生も不安でしょう。一生徒とはいえ一番面倒を見て来た生徒でしょうから。

 

「雪乃ちゃーん!」

 

そう言って走って来たのは雪ノ下先輩のお姉さんの陽乃さんでした。

 

「比企谷君は?大丈夫なの?」

 

「彼は今病院の先生と病室にいるわ」

 

「…そう」

 

「それと、聞いて欲しいことがあるの」

 

「うん、何?」

 

「彼、もしかしたらもう目覚めないかもしれないのよ」

 

「…そう」

 

以外にも陽乃さんは冷静な口調でした。さすがの落ち着きという感じでしょうか、少し気になりますけど。

 

「そっか、もうみんな疲れてるだろう帰ったほうがいいわね、静ちゃんにもさっきなるべく早く帰らすようにって言われたし」

 

時刻は7時前だった。あまり遅い時間ではなかったものの、こんなことがあったからか疲れてクタクタでした。

 

「そ、そうだね、またお見舞いにだってこれるんだし、ね」

 

「今日のところは解散としましょう、小町さん、比企谷君をよろしくね」

 

「は、はい!」

 

「それから、一色さんも」

 

「はい……って、え?わたし、ですか?」

 

「えぇ、ちゃんと比企谷君のそばにいてあげてね」

 

「わ、わかりました」

 

なぜ雪ノ下先輩が私に頼むんだろう。疑問に思ったけど今はそんなことを考えてる余裕は私にはありませんでした。

 

「それじゃあ、私は雪乃ちゃんと少し話があるから先にみんな帰ってて」

 

「はい、それではお先に失礼します」

 

わたしと結衣先輩は病院を後にしました。

 

明日からどんな顔して先輩に会えばいいんだろう。わたしのせいで、先輩は…

 

「いろはちゃんのせいじゃないよ」

 

「…え?」

 

結衣先輩は私の考えを読んでいるかのように話し始めました。

 

「こんなこと言うのはあれだけど、ヒッキーはいろはちゃんじゃなくてもあそこで助けたと思うよ」

 

「でも…」

 

「だからねいろはちゃん、今度は今までの分ヒッキーを幸せにしてあげてね」

 

「わたしが、ですか?」

 

どうして結衣先輩が先輩をわたしに譲るような事を言うんだろう。この人はわたしが先輩を好きになるよりずっと前から好きなはずなのに。

 

「あたしね、ヒッキーのこと、好きだよ」

 

結衣先輩の急な告白には驚いたけど、わたしは黙って聞いていました。

 

「けどヒッキーと同じくらいいろはちゃんとゆきのんのことが好き。だからね、ヒッキーが一緒にいて1番幸せだって思う人と一緒になるべきなんだよ、でもね」

 

結衣先輩は何かを覚悟したような顔でわたしの方を向き、

 

「それはあたしじゃなかったよ」

 

結衣先輩の顔は今まで見たことない寂しさ、それでいて強い決意のようなものが見えました。

 

「で、でも結衣先輩は…」

 

「うん、ずっとヒッキーのことが好きだったよ。もしかしたらサブレを助けてもらった時から好きだったのかもね。けどヒッキーはあたしを選ばないよ」

 

わたしは結衣先輩の顔を直視することができませんでした。

 

 

 

 

だって、結衣先輩が泣いてたから。

 

 

 

 

「ご、ごめんね……ヒッキーが、目を覚まさない、かもって、時に…でもね……今、言わない…と、もう……言えなく……なる…気が、して……」

 

「結衣先輩」

 

「…ん?」

 

「わたし、結衣先輩が諦めるところなんか、見たくありません」

 

「…え?」

 

「結衣先輩は、ずっと強くて、わたしより先輩のことを見てきたはずです。だから選ばれないなんて、言わないでくださいよ」

 

「…いろはちゃん」

 

「わたし、結衣先輩にも雪ノ下先輩にも負ける気はありませんから」

 

「…うん、そうだね。あたしらしくなかった」

 

そして結衣先輩はいつもの純粋な笑顔を向けてくれました。

 

「あたし、諦めないよ!ヒッキーを射止めて見せるからね!」

 

「わたしも負けません!」

 

堂々とライバル宣言をした後、お互いの顔を見合わせてついつい頬が緩んでいた。

 

ほんと、どこがぼっちなんですか。こんな素敵な女の子達に好かれてるくせに。目覚ましたらこき使ってやりますからね。

 

そんな事を考えながら、ただただ先輩の無事を祈っていました。

 




結構自分的に展開としては悪くない気がするんですけど文章が難しい。。。
がんばります。笑

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