べート・ローガがヘスティアファミリアに入るのは間違っているだろうか【リメイク版】 作:爺さんの心得
二話のしょんぼりベートきゅんに母性愛が生まれた作者が書いた作品はこちらです。
前略※報告
ダンジョン17階層。現在ベートはその階層を出る所である。溜まりに溜まったバックパックを背負い直し、持ち前の俊足で一気に駆け上がる。
通り際にやってくるモンスターを蹴散らしながら、ベートは昨夜ーーーヘスティアが『神の宴』に行く前の出来事を、徐々に浮かび上がらせる。
*
「何?ヘファイストスに兎野郎の武器を作らせる?」
昨夜、秘密裏にヘスティアに呼び出されたベートは、ヘスティアが出した提案に瞠目した。ヘスティアは至って真剣に、頷く。
「別にヘファイストスに作らせるわけじゃないんだ。ヘファイストスの団員が、出来れば作って欲しいなということを、次の神の宴でヘファイストスにお願いしてみようと思う」
「テメェ、分かってんのか?弱者に強者の武器を持たせれば、弱者は腐れ散る。それくらいテメェも分かってんだろ」
ヘスティアは俯くも、静かに首を横に振る。
「分かってるんだけど、このまま何もせずに、ただ見守る事なんてボクには我慢ならない。お節介だというのは分かっているけれど」
「俺ァ反対だ。まだあいつには早すぎる」
ベートはヘスティアの提案を即刻切り捨てた。
当たり前のことである。まだ冒険者になってままならないベルに、いきなり都市随一の鍛冶ファミリアの武器を持たせるなど、逆にベルが振り回されてしまう。そうなってしまえば、あの時見たベルの勇姿が、全て無駄になってしまう。それだけは、ベートは何としてでも阻止したかった。
ヘスティアは何かを考え込み、やがてグッと口を噤んで、顔を上げる。ヘスティアの瞳にベートが映り込み、またベートの瞳にも、ヘスティアが映り込む。
「そうだね、確かにベル君にはまだ早い。……でも、せめて彼の力になりたいんだ」
「だからまだ彼奴に……」
「今じゃなくてもいい!何年でも、何十年先でもいいから!もし君がベル君を認める時が来たら、その時に作ってもらった武器を渡すのはどうだろう!?それだったら君もいいだろう!?」
「………………」
ベートは少し考え込む。確かに"今の"ベルには早すぎると言った。しかし何十年後、もしベルが自分くらいの強さになったら……と、その姿を想像する。それなら、別にヘファイストスで作ってもらった武器を持っても別にいい。
だが別の問題がある。ベートはそれを提示した。
「……金はどうなる」
ヘスティアファミリアは貧相なファミリアだ。ファミリアの資金は勿論、食材や日用品などは全てベートが担っている。もしその資金が無くなるほどの莫大な値段を取られたら、ファミリアは金欠で終わるかも知れないのだ。
その不安を突きつけてみれば、ヘスティアが「いや」と首を横に振った。
「これはボク自身が決めたことなんだ。ボクが自分で払う」
「ヘファイストスファミリアだぞ?」
「それでもだ。ーーーー可愛い
ヘスティアは優しく、慈悲の笑みを浮かべる。その笑みは、あの初めて会った時のことを思い出させた。
*
あの後、結局ベートはヘスティアの提案を呑むことにした。しかし完全に認めた訳では無い。もしベルが「弱者」としてあるまじき行動をした場合は、即刻ヘスティアの提案を切るつもりである。
いつ武器が作られるかは知らないが、もし作られていなかったら契約破棄の準備でもしようか、と考える。
「…………」
そんなベートの前に、あるモンスターが現れた。フッ、フッ、と荒い呼吸を繰り返し、こちらを見下す牛のモンスター。
『ミノタウロス』。このモンスターは、ベルの宿敵である。
そういえば、彼があんなにも急成長したのは、このミノタウロスとの出会いだったはずだ。そしてその後にアイズに助けられ、叶わぬ憧憬を背負うこととなった。
「…………馬鹿馬鹿しい」
ベートは蹴り一つでミノタウロスを粉砕する。ゴトリと残された魔石は、少し考えて手に持って、歩き出した。
*
「今年もやるのか?あれ……」
「
「あんなのやる意味あるのかしら……」
ベートが地上に出た時は、既にその話題で持ち切りであった。
『怪物祭』。ガネーシャファミリアが主催する。
(……くだらねぇ)
少なくとも、ベートもその一員だ。わざわざモンスターを引っ張り出して戦うなんて高が知れている。そもそも好き好んでやるはずがない。なので何故ここまでしてこの祭りを続ける意味があるのか、ベートには理解出来ない。
ギルドに来て、魔石を換金する。今回の収穫もいつも通り。これなら暫くはダンジョンに潜らなくても家計は保てるであろう。
要件を済ませて、ギルドを出た時だった。グッと突き刺さる好奇の目と、嫌悪の目。それら全ての視線がベートに突き刺さる。殆どの冒険者から向けられた目は、決していいものではない。
ベートは都市中の嫌われ者である。事ある事に罵声やら喧嘩やらと、素行の悪さを悪評させられたせいか、こうしていつも通りに過ごしてもこうやって好奇の目に晒される。
「……ハンッ」
ベートはそれを一瞥した。反省もせず、否定もせず、指摘もしない。何故ならここで暴れても、「彼らは進化しない」と見限っているからだ。
ーーー自分を恨むくらいなら、牙を磨け。
その目を周囲に睨みつけ、彼らを萎みさせたベートは、満足気に残念そうに、メインストリートを歩き出した。
*
ボロ協会の地下深くにヘスティアファミリアのホームがある。やっとのことで扉の修繕を終えたその入口を、ベートは開けた。
「……まだ帰ってきてねぇのか」
ベートは部屋中を見渡して呟く。
ヘスティアが神の宴に行って二日目の昼。まだヘスティアは帰ってきていない。何日か開けるとは言っていたが、もしやヘファイストスの件で伸びに伸びているとは思いたくもない。
……一体どうやって交渉するのだろうと、今更ながらに気になった。
ベルも帰ってきていない。つまり実質、今ここにいるのはベートしかいない。
「……ステイタス更新してぇなぁ……」
ベッドにゴロリと転がったベートの言葉は、砂時計のように消えていく。
ベートはステイタス更新を暫く行っていない。なのでそろそろ自分のステイタスが気になり始めたのだ。出来れば早く帰ってきて欲しいが、二日連続で留守となるとさすがに我慢ならない。
「…………チッ」
入口に背中を向ける形でベートは寝転がり、目を閉じる。
暇になったらダンジョンか睡眠。ベート自身が決めた暇を持て余した"遊び"である。
*
「えっ……ベートさんが?」
ベルが豊穣の女主人に来たのは、あの時食い逃げをしてしまったツケを払う為である。だがどうやら、そのツケはもう支払われた後らしい。
ミアが鼻を鳴らす。
「あんたの分だって言われて渡されたんだよ。その後、あんたから金を巻き上げるって聞いたけど?」
「そ、そうだったんですか……後でお金返さなきゃ……」
ベルは食い逃げ分のヴァリスの袋を抱えながら、不安そうに瞳を揺らした。まさかあのベートが自分の分を払ってくれるとは思わなかったのである。
恐喝されるだろうか。それか凄まれるだろうか。色々なことを考えるだけで胃が痛くなった。自業自得なのだが。
「……ま、これは蛇足だと思うんだけど」
不意に、ミアが頭を掻きながらそう言う。ふっとベルが顔を上げ、ミアの顔を見ると、ミアは遠い、何かを憐れむような目をしていた。
「……あんたが思うように、彼奴は強くないよ」
何故かその言葉が、ベルの心に強く突き刺さった。
神の宴部分も書こうとしたけど断念しました。
今回はすごい短い。ごめんね……怪物祭始まったらいっぱい書くからね……!!
さてソードオラトリア二話。そして皆さん観ましたか?観ましたか?観ましたか??ベートきゅんの姿。あの垣間見るあの映像、
しょんぼりするベートきゅんが可愛すぎてやばいああああああああああああああああああああああああ!!しょんぼり!!耳が垂れてね!!尻尾が力なく振られてるの超可愛い!!ニコ動でも「可愛いwww」って言われとったけど正にそうだと思う!!うん、絶対そう!
つまりベートきゅんは可愛いんですよ!!ああああもう!!
ベートきゅんそんな所も大好きだああああああああああああああああああああああああ!!!
あ、Twitterアカウント作りました→@g_san_nokokoroe
低浮上ですが突然現れてベートきゅんの話をします。あとがきでも抑えきれなかったらTwitterで呟きまくります。