べート・ローガがヘスティアファミリアに入るのは間違っているだろうか【リメイク版】   作:爺さんの心得

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前回の投稿から一年になる迄に書き終わらねばという思いで書き終えました。
また半年くらい期間開くと思います(宣言)


相手が狼でなければよかったのに

 

 

 

 

 

 「——今日はありがとうございました、ベートさん」

 

 あれから。

 何とも微妙な作品名でありながらも性能はベートが認める程に素晴らしい防具「兎鎧(ピョンキチ)」を購入したベルと、ただただ店内を歩き回っていたベートは、防具を購入した後、直ぐにバベルを出た。外に出ればひょっこりと顔を出している夕陽が徐々に隠すところで。ベートとしてはそれ程時間はかかっていないと思っていたが、どうやら結構時間はかかっていたらしい。

 防具が入った木箱を大切そうに抱えるベルは、隣で黙々と歩くベートに感謝の言葉を零した。人々の喧騒から離れた路地裏で零れた言葉だからか、ベルの感謝の言葉は一語一句ベートの耳に伝わる。

 

 「……あ?」

 

 ベートはベルの感謝の言葉に訝しげな顔をした。目線をベルの方に向け、「意味がわからない」といったような声色を発して、ベルの返答を待つ。

 

 「僕、冒険者についてまだまだ分からない事だらけで……今回もベートさんに教えてもらわなきゃ、もしかしたらずっとギルドの支給品だけでダンジョンに潜っていたかもしれなかったですし。だから、ありがとうございます、ベートさん」

 

 「……俺はテメェがまだあんな貧弱な装備を使って、ファミリアが下に見られるのが嫌だっただけだ。勘違いするんじゃねぇぞ。全ては俺がやりたくてやった、ファミリアを見下されるのが嫌だったからやっただけだ。決してテメェの為にやったわけじゃねぇ」

 

 「それでも、嬉しいです」

 

 たとえベルの為ではなかったとしても、それでも付き合ってくれたことには感謝するしかない。

 ベルはまだオラリオに来て、冒険者になって一ヶ月しか経っていない新米だ。ダンジョンの事も理解していないことは沢山あるし、装備や規則だってまだ頭が追いついていない。一人でやるにはとても体が辛くなってくる。

 しかしベルにはベートがいた。同じファミリアのベートが。

 ベートがいてくれたからこそ、ベルは着々と冒険者の知識について学ぶ事が出来ているのである。勿論、アドバイザーのエイナだって感謝している。しかしそれでもベルにとって「冒険者」を教えてくれたのはベートであった。

 ベートはベルにとって、「先導者」のような存在であった。自分の一歩先を行き、夢への道をその逞しい背中と凄まじい力で導いてくれる、そんな存在がベートであった。

 だからたとえベートがベルの為にやっていなかったとしても、ベルにとってはそれは「導いていること」と同義なわけで。だからベルはベートに感謝を述べたのである。冒険者としての「当たり前」を教えてくれてありがとうと。新たな出会いを導いてくれてありがとうと。ベートがバベルの事について話さなければ、もしかしたらベルは一生あの作品に出会えなかったのかもしれないのだ。感謝以上のことをしてのけたい。

 

 ふへへ、とだらしなく頬を緩めたベルに、ベートは決まりが悪そうに舌打ちを零してそっぽを向いた。照れているのか、否違うこれはウザがられているな。そう確信出来る程に結構親密になった関係に、ベルが頬をさらに緩ませたその時であった。

 

 「……」

 

 不意に、ベートが歩みを止めた。

 遅れてベルも足を止め、少し後ろで立ち止まっているベートの方を振り返る。どうして止まったのだろう。その理由を聞こうと口を開こうとしたが、次の瞬間ベルは何故ベートが足を止めたのか、その理由を知ることになる。

 

 トットットット。ベルとベートの少し先の方で、何かが走っているような音が聞こえた。ベルはその音を聞いた時、ほぼ反射的に音がした方に顔を向ける。ベルが顔を向けた先には曲がり角があって、どうやらこの駆ける音はあの曲がり角の先から発しているらしい。

 成程、ベートが足を止めたのはこれが原因か。常人よりも遥かに抜きん出ている聴力を持っているベートは、この走り音にベルよりも先に気付き、怪しんだ為足を止めた。これが理由だろう。

 

 警戒を強めたベルは、その足音の正体を少しでも探ろうと耳を澄ませた。が、その足音は案外近くにあるらしく、ベルが耳を澄ませたその時には、既に足音の正体は姿を現していた。

 ダッ!と曲がり角から出てきたのは、汚れたフード付きローブを羽織っている子供であった。深くフードを被っている為顔がよく見えず、男か女かは判断がつかない。彼は曲がり角から勢いよく飛び出してきた後、真っ直ぐにベルの方に向かっていく。

 

 「ぶっ!」

 

 そして彼はベルの腹に頭をぶつけ、ぶつけられたベルは呻き声を発しながら倒れ込んだ。

 中々強いタックルであった。倒れた時頭を少しぶつけてしまったので片手で頭を抑えれば、背後にいたベートから「何してんだ」と呆れた声が飛んできた。

 

 「い、いえ。誰かが……」

 

 「ンなの見れば分かる……」

 

 「あ、ごめんなさい!大丈夫ですか!?」

 

 呆れた溜め息が漏れるベートにうへへと笑うベルであったが、直ぐに衝突した人物に謝罪した。何が原因とはいえぶつかったのだ。こちらにも非があるかもしれない。一概にぶつかって来た人が悪いとは言えないのだ。

 ぶつかって来た彼は「いてて」と()のような高い声で呻いた後、顔を上げる。その時にベルとベートは、初めて彼の姿を見た。フードに隠されていた、フードの奥の顔を。

 まだ幼さの残るふっくらとした顔に、まとまりのない栗色の髪。つぶらな瞳は愛らしさを彩り、さらに小柄も相まって可愛らしさを引き立てている。

 

 (……女の、子?)

 

 何処からどう見ても、女の子(・・・)であった。

 恐らく小人族(パルゥム)の、女の子。まだ小さく幼い体の女の子が、ベルとベートの前に座り込んでいるのである。

 

 彼、否彼女はベルの顔を凝視した後、顔を引きつらせた。

 

 「あ、貴方はヘスティア・ファミリアの……!?」

 

 悪名が知れ渡っているベートだ。そのベートと同じ仲間のベルは、色んな意味で噂で囁かれているのだろう。

 少女は目の前の人物が「粗暴なベート・ローガの仲間」として知った途端、直ぐにその場から逃げようと後退りするも、ダン、ダンと大きな音が背後から聞こえると、ひゅ、と顔を蒼白とさせた。

 

 「……?」

 

 少女の様子に唯ならぬ事態と判断したベルは、彼女の背後から聞こえる荒々しい音に注意を向ける。

 やがてやって来たのは、一人の冒険者であった。ならず者、という表現が正しい小汚い装備を身につけている彼は、少女を見つけるとギラリと瞳を怒りに添えて、少女に近寄ってくる。

 

 「追い詰めたぞ、糞ガキ……!」

 

 「ひっ……!」

 

 最早怒りでは収まらない範疇の環状に陥っている冒険者が歩み寄ってきたのを理解した少女は、喉を引き攣らせながら後退した。しかしベルが彼女の行く手を阻んでいる為、ドン、とその小さな体は道から出て行けず、ベルの体にぶつかる。

 まずい、まずい!焦りが荒波のように心の中を支配する。もう頭の中は真っ白。どうやってこの場を切り抜けれるのか、少女には正常な判断もつかなかった。

 

 (……追われていた、のか?)

 

 一方、その殺伐とした空気を目の前で見ているベルは、少女の様子に直ぐに思い付く限りの事情を察する。

 一目瞭然とは言えないが、「追われていた」というのは間違いないだろう。この少女が何かをしたのか、はたまた少女の存在がいけないとか、思い付く理由はこれくらいだ。

 普通なら、介入しない方が得策。変な事に首を突っ込んで、いらない因縁を付けられることもない。現にベートも間に入らずに傍観に徹している。くだらない事に手は出したくないのだろう。

 

 (……)

 

 それでも、ベルは。

 

 (———この人は、この子に何をするのだろうか?)

 

 安易に見過ごす事など、出来なかった。

 

 「……あ?」

 

 気付けばベルは少女の前に庇うように立っていた。腰に差しているヘスティアナイフの鞘に触れながら、男と対峙していた。

 男は苛立った様子で、今更ベルの事を認識した様子である。舌打ちが零れそうな顰めた顔で、男はベルに向かって怒りを混じえさせながら問うた。

 

 「なんだァてめぇ。そこをどけ、俺はてめぇの後ろにいるガキに用がある」

 

 「ど、どきません……!」

 

 「あぁ……?」

 

 なるべく穏便に済ませようとしたのだろう、口調はなるべく優しく言った男であるが、ベルはそれを拒否した。

 さらに男の苛立ちが募る。「なんで退かねぇんだ。さっさと退け、殺すぞ」と脅しをかける。普通ならば怯えて去るはずの脅しであるが、それはベルには効かなかった。

 

 「だ、だって退いたら貴方、この子に酷いことをするんでしょう……!?」

 

 「——ンなことてめぇに関係ねぇだろうが!さっさと退け!」

 

 ついには声を荒らげた男にベルは肩を揺らすも、少女の前から足は動かない。

 チィ、と舌打ちを零した男は、唾を吐きながらベルに叫ぶように言う。

 

 「大体、お前はそのガキと何も関係がねぇだろうが!!無関係な奴が安易にこっちの世界に踏み込んでんじゃねぇ!!そんな奴を庇って何になる!」

 

 その問いに、ベルは少しだけ口ごもった後に、恐る恐る答えた。

 

 「——お、女の子だから?」

 

 「…………ぶち殺すッ!!」

 

 意味不明、理解出来ない、どうしてこの場でそんな事が言える!巫山戯ているのか!

 ベルの巫山戯た答えに、男の堪忍袋の緒が切れた。腰に差していたサーベルを取り出し、それをベルに向け戦闘態勢に入る。

 ベルはそれを見て一瞬だけ体が仰け反ったが、直ぐに切り替え『ヘスティア・ナイフ』を取り出し、構えた。その時、背後で怯えていた少女の目が煌めいたのをベートは見逃さなかった。

 

 「今更後悔すんなよ、坊主!」

 

 じり、と男が寄ってくる。それに下がりそうになるのを必死に耐えて、ベルはキッ、と男を睨み付ける。

 

 (やばい、やばいやばい!?対人戦なんて全くやってないから、これはまずい!?)

 

 しかしベルの心中は穏やかではなかった。心の中で、この状況がいかに最悪かを必死にぶちまけるベル。

 ベルは冒険者になった今でも、人との戦闘は全く経験した事がない。0にも等しい。ベートとも拳を合わせた事もないし、喧嘩も経験した事がない。いつもモンスターと刃を交えるだけで、意思を持った物にナイフを向けることは初めてなのだ。

 勝てる見込みがない。勝利のビジョンが思い浮かばない!絶望にうちひがれそうになるも、彼の背中には怯えて縮こまる女の子がいる。それがベルの弱い心を叱咤していた。

 ここで女の子を見捨てたら、後で絶対後悔する。だからここで護らなければ。女の子を、絶対に。

 

 「——べ、ベートさん!その子を、お願いします!」

 

 しかしやはり一人で護りきるのは自信が無い。

 だからベルは丁度一緒にいたベートに少女を預けた。信頼のおける相手に頼れば、少女の事を顧みずに戦闘に集中できると踏んだから。

 

 「……は?」

 

 「えっ」

 

 「あっ?」

 

 そしてベルの咄嗟の判断に、各々は別の反応を起こした。

 突然名を呼ばれたベートは「嘘だろ巻き込むんじゃねぇよ」と迷惑そうに。少女は「何であの男の名を口にした」と驚き、男は「何で今この場であの男の名が出てくる」と戦慄した。

 ……そしてこの場で聞こえた第三者の声に少女がそっ、と角の先を覗き込めば、そこにはかの悪名高いベート・ローガが、退屈そうに壁に凭れているのが見えた。

 

 「ヴァ、【凶狼(ヴァナルガンド)】!?」

 

 「はぁ!?【凶狼(ヴァナルガンド)】だとぉ!?」

 

 どうやら少女と男はベートの存在に今まで気付かなかったらしい。

 少女はベートの姿を認識した途端ベルの足にしがみつき、ベートの名を聞いた男は先程の威勢は何処へやら、すっかりへっぴり腰となって戦いていた。

 

 「……チッ」

 

 あれ?何か僕おかしなこと言いました?と元凶のベルが戸惑っているのを見て舌打ちを零したベートは、面倒臭そうに少女と男が見える位置まで歩く。今までベートの姿を確認出来なかった男は、あの粗暴で凶悪なベートが姿を現した途端、ひぃと小さな悲鳴を上げた。

 

 「ふ、ふざけんじゃねぇぞ!何であの【凶狼】がここに……!…………?ちょっと待て、てめぇ良く見たら、あの【凶狼】のとこの白兎!?」

 

 「……白兎?」

 

 何とも可愛らしい呼称で呼ばれたベル。やはりベートのせいでベルの存在は公に広まっているらしい。

 くそ、くそ!と悔しそうに男は悪態をつくが、そのサーベルを下ろす素振りはない。当然だ、自分は何も間違った事はしていないのだから。

 そもそもの話。明かしてしまえば、男が少女を追っていた理由は、少女に物を盗られたからである。それを取り返そうとしたところにベルが立ちはだかったのだ。自分は物を取り返そうとしていただけなのに、少女の方が悪だというのに、何故か悪役ポジションにいるのが男は解せなかった。

 これは正当防衛。物を取り返そうとして何が悪い。だから悪くない、自分は悪くない!

 

 「———おい」

 

 だけど、いやだけど。

 気付けばベートが男の前に立っていて。ベートは気だるそうにしながら、兎一匹は殺せそうな目で男を見下していた。

 男の目から涙が濁流のように零れる。足が竦み、呼吸すらも出来ない。今の男は狼に睨まれているか弱い小動物だ。勝てるわけが無い。

 そう、男は間違っていない。多少言動が手荒な事を除けば、男は何も間違った事はしていないのだ。

 ただ、言うとすれば。

 

 「—————失せろ」

 

 「ひぃいいいいいいいいいいいっ!?!?」

 

 相手が悪かった(・・・・・・・)、ということである。

 

 

 

***

 

 

 

 

 みっともなく逃げる男の情けない姿をぼさっと見送ったベートは、後ろに振り返った。そこには未だにナイフを納刀させていないベルと、へたりこんでいる少女がいる。

 

 「す、すみませんベートさん……助かりました」

 

 「テメェが起こした事はテメェで解決しやがれ、兎野郎。俺をコキ使おうとするな」

 

 「ごめんなさい……」

 

 謝りながら、ベルはナイフを鞘に納める。

 騒動が鳴りを治めたのを機に、ベルはへたりこんでいる少女と目線を合わせて、手を差し伸べた。

 

 「大丈夫?立てる?」

 

 少女はその手とベルの顔を交互に見て……そして次の瞬間、脱皮の如く走り出した。

 「うぇ!?」と驚くベルが、慌てて少女が走り去った方に顔を向けたが、そこには少女の姿はもうなかった。

 何かやってしまったのだろうかとショックを受けるベルに、ベートは頭を掻きながら言う。

 

 「放っておけ。あんな面倒臭そうな奴に関わっていると碌な事がねぇ」

 

 「う、うーん……」

 

 ベートなりの助言ではあったのだが、何処かベルは腑に落ちない様子だ。このお人好しが、とベートはベルのいいところを態と貶す。

 

 「——お見事でした、【凶狼(ヴァナルガンド)】」

 

 その時、コツン、と、革ブーツの靴音が路地裏に反響した。

 先程の少女や男の足音とは違う、新たな音。警戒を上げてベートが音のした方に顔を向ければ、夕日を背にこちらに歩んでくる女性がいた。青柳色のエプロンドレスに、フリルがあしらわれたカチューシャを柳色の髪の上に被せている、見目麗しい森人(エルフ)の女性だ。

 ベートはその女性に見覚えがあり、記憶を少しだけ遡る。その間に、森人の女性は柔らかい笑みを浮かべながら二人の近くまで歩いた。

 

 「威圧だけで敵を退けるとは、さすが第一級冒険者。格が違いますね。私が間に入る隙もありませんでした」

 

 「……あー、お前、酒場の女か」

 

 「……相変わらず、他者に関心のない御方だ」

 

 「リューさん!」

 

 ベルが近づいてきた森人の女性の名を口にし、彼は顔を綻ばせる。

 森人の彼女の名前は『リュー・リオン』。ベルとベートが贔屓にしている豊穣の女主人に務める従業員だ。常に毅然とした態度をとっており、それでいて優雅で気品のある佇まいが目を引く美しい女性だ。腕に抱えている果物や野菜が沢山入った袋を見るに、買い出しの最中だったのだろう。

 リューはベルを視界に入れ、顔をベルの方に向ける。

 

 「どうも、クラネルさん。お元気そうで何よりです」

 

 「いえ……」

 

 「しかし、あのような事は少し控えた方が宜しいかと。対人戦経験のない貴方を考えれば、あの行動はハッキリ言って早計だと思います」

 

 「すみませんでした……」

 

 リューの厳しいコメントに、ベルは項垂れ謝罪を口にする。さすがに無謀過ぎた行動であった事は自覚しているようだ。

 あの男と殺意を持って対峙してわかった事であるが、あの時一番力量が上だったのは確実に男の方であった。もしベートがあの場におらず、ベル一人だけで立ち向かっていたとしたら、ベルは無様に男の猛攻をただただ受けるしかなかったであろう。

 もっと状況をよく見ないから。そんな説教じみた幻聴がベルの心に突き刺さり、うう、と涙目になる。

 

 「……よくあの兎野郎が経験がないって分かったな」

 

 「見た感じ、経験が無さそうでしたので」

 

 「……そうかよ。で、テメェは買い出しか」

 

 「はい、ミア母さんに頼まれました」

 

 「……こんな路地裏を通って帰るとはねぇ」

 

 「この道が近道なので、帰宅時間を早めるにはいいかと。……貴方方はダンジョンには行っていないのですね」

 

 主にベート達の体の方を見て言ったリューに答えたのは、立ち直ったベルであった。

 

 「はい。今日は僕の装備を買いに行ったんです」

 

 「クラネルさんの?……成程、良い判断ですね。さすがにいつまでもギルドの支給品では、これからの冒険は心許ないですし」

 

 良い物は手に入りましたか?という問いに、ベルは満足気に頷き、「明日、その装備を来てダンジョンに潜ろうかと思うんです」とさらに答える。

 まるでプレゼントを与えられはしゃぎまくる子供のようなベルに、リューは微笑ましいものを見るかのような目でベルを見た。

 

 「ガキみてぇにはしゃぐな、みっともねぇ。さっさと帰るぞ」

 

 溜め息を吐いたベートの言葉にベルが空を見上げれば、既に夕陽は沈みかけており、宵闇が訪れようとしていることが分かった。

 さすがに遅くなるのは頂けない。このままではヘスティアに心配されてしまう。自身の主神を思ったベルは、名残惜しそうにリューに「それでは」と別れの挨拶を口にする。

 

 「ええ。またお時間がある時に、豊穣の女主人にでも寄ってください」

 

 「はい!」

 

 「ふんっ」

 

 ベルは笑顔で、ベートは鼻を鳴らし、リューに背中を向ける。

 その時、リューの口から「——【凶狼】」と、ベートの二つ名が零れた。その声はベートにしか届かず、上機嫌で先に行くベルには届いていない。

 立ち止まったベートに、リューは投げかけるように言った。

 

 「……クラネルさんが助けた小人族ですが、気をつけた方がいい」

 

 「……ハッ、言われるまでもねぇ」

 

 それは忠告だったが、その忠告の内容はベートの予想の範囲内だ。

 リューの忠告を簡単にあしらったベートは、歩き出す。先を往くベルの元へ。突然立ち止まったベートに気付き、不思議そうに立ち止まったベルにベートが軽い蹴りを入れるのを、リューはずっと見詰めていた。

 

 

 





書いてる途中に誤って全てを消してしまい一回挫け、ベートきゅんの新イベにモチベを取り戻し執筆を再開したものの忙しい毎日に体調を崩し……の悪循環。お待たせしました、続きです。
当初はもう少し長くなる予定だったのですが、キリがいいですしここで一旦切りました。えへへ。
ちょくちょく書いていたしたけれど、最近は本も知識も何も取り入れてない状態だったので文才能力は著しくないですが、それでも楽しんでくれたら幸いです。私としてはリューさんに「凶狼」って言わせれたこととベートきゅんの凄みが書けたことで満足なんですけどね!
ではまた半年後くらいで!(確定)

ベート・ローガぁー!!また新イベも楽しみにしてるよー!!愛してるぅー!!


あと漫画ついにベートきゅん編始まる???????


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