べート・ローガがヘスティアファミリアに入るのは間違っているだろうか【リメイク版】   作:爺さんの心得

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アルゴノゥト編最高です!!!!!
アニメベートきゅん最高です!!!!!!
ユーリってキャラなんですか!!!!!しゅ!!!!!!!き!!!!!!!!
オラトリア十二巻やばいです!!!!!!!





雄牛は求める、かの存在を
凶狼は唖然とし、白兎はそっと目を逸らした


 

 

 

 「---なぁ、ベート君や」

 

 その日の夜、各々で夕食を吟味していた際に、ふとヘスティアがベートの名を呼ぶ。じゃが丸くんにかぶりついていたベートは視線だけを寄越し、ヘスティアの次の言葉を待った。

 

 「ベル君とチームを組むつもりは」

 

 「あるわけねぇだろ」

 

 「ですよねー」

 

 少し期待を持って話を切り出したヘスティアを、ベートは一刀両断する。あからさまに落胆したヘスティアは、ガジガジとじゃが丸くんをハムスターのように貪り始めた。その姿はまるで苛立ちをぶつける子供のよう。

 因みに話に出されたベルは最初はビックリしたものの、ベートの速攻拒否で若干項垂れている。

 

 「……何でそんな話なんてしたんだよ、俺が組むわけねぇだろうが」

 

 不機嫌そうに、ベートは先程の提案を言い放ったヘスティアを言及し始めた。

 ベートは万年孤独でダンジョンに潜ってきた単独冒険者(ソロプレイヤー)である。ベートと組みたいという変わり者の冒険者もいなかった為、必然的に単独で行動するしかなかったのだが。

 しかしそれが返って気楽でいいと思うのがベートだ。自分のペースは乱されなくて済むし、何より調整が可能。いちいちパーティの面々に気を配る必要なし。一時期は単独(ソロ)万歳と心の中で喝采したことだってある。

 単独の為、儲けはそこらのパーティよりは劣るし、何より下の階層に安易な気持ちで行けないというデメリットを持つが、そこはベートの実力でカバーすればなんら問題なんてなかった。

 つまり、単独は何かと都合がいい。だからベートはパーティ編成をする気などもっとうない。

 ……にも関わらず、ヘスティアはベルとパーティを組まないかと提案した。これは何か裏がありそうだとベートは深読みするが、ベル大好きなヘスティアの事だ。そう大したことでもないのであろう。

 

 「んー、単独より二人一組(ツーマンセル)でやった方が効率がいいのかなと思って。二人でやれば収入も増えると思うし……」

 

 「レベルの差を考えろ。そうするんなら分かれて貯めた方がマシだ」

 

 ヘスティアの考えを、ベートは真正面から反論した。

 最もな意見であろう。ベートはこの都市の第一級冒険者。対してベルはまだこの都市に来てまだ一ヶ月の新米冒険者である。こんな凸凹コンビがパーティを組めば、どちらか一方(というか確実にベル)がサポーター扱いになるのは間違いない。

 さらに言えば、この凸凹コンビでパーティを結成するならば、出向く階層は一階層から下の上層だけである。百歩譲って十階層まではギリ行けるかどうか(主にベルが)。否、七階層すら厳しそうである(主にベルが)。そうなると、普段のベートの収入とさほど変わりはないであろう。

 なら分かれた方がマシ。その方が資金も増えるし、ベルの訓練にもなる。だから易々とLv1とLv5だけで組んではダメなのだ。出掛けた芽を潰してしまうことになるのだから。

 ……因みにこの考え方は、単純にベートが戦うことを我慢すれば済む話なのだが、それだと稼ぎにもならないしパーティを組む意味もないので割愛することとする。

 

 「そっかぁ……レベルの差かぁ……」

 

 「か、神様。僕は大丈夫ですよ!」

 

 「でもベル君、君、次は七階層に挑戦するんだろう?さすがにあのナイフを持っているからと言って、単独は……」

 

 「……は?七階層?」

 

 何気なしに口にしたヘスティアの言葉に、ベートは食べる手を止めて聞き返す。それにヘスティアが「うん?」と首を傾げるが、ベートはジロリとベルを睨む。

 

 「ちょっと待て、おい兎野郎。テメェ七階層に行くつもりなのか?」

 

 「は、はい……!アビリティもEまで到達しましたし、もう大丈夫かなぁって……!」

 

 「Eだぁ……?」

 

 訝しむベートに、ベルは必死にコクコクと何十回も頷く。本当です、本当ですと何度も訴えているのがビシバシと伝わってくる。

 

 「……一ヶ月で、Lv1で、Eねぇ……?」

 

 誰かに問いかけるように零しながら、その『誰か』にベートは視線を向けた。その後、その『誰か』がさっと視線を逸らすのを見るに、やはり『あれ』が原因だということに確信を持つ。

 普通、新米冒険者が一ヶ月でアビリティEに到達するのは極めて異例な事である。アビリティはS、A、B……Iまであり、最初は誰しもがIから始まる。そのIからEまで行くのは至難の技だ。地道に努力し続けても、並の冒険者では最短で一年はかかるであろう。

 ---普通ならば、の話だが。

 

 (……兎野郎にはあのレアスキルがある。恐らくそれが関係しているに違いねぇ)

 

 『憧憬一途(リアリスフレーゼ)

 ベルに突如発現した前代未聞のレアスキル。想いの丈に比例して効果が向上。そして---早熟する。

 恐らくこれに影響されて、成長スピードが異常な程に上がっているのだろう。だから一ヶ月でアビリティEまで進めることが出来た。この仮説が妥当である。

 憧憬(アイズ)を惚れれば惚れるほど猛るように成長する……なんとも反則なスキルだ。最早脅威である。

 

 (……この兎野郎が嘘をつくわけでもねぇし、この駄神も、こいつ(兎野郎)の不利益になりそうなことは言わねぇだろう)

 

 となると、本当と信じた方が何も考えなくて済む、とベートは自己完結する。

 ……しかし、問題はそこでは終わらない。

 

 「……別にテメェが七階層に行くのは止めねぇけどよ……」

 

 「……?」

 

 ベートは服立てにかけられているベルの装備を見る。

 何の防護も施されていない布切れ(コート)に、ギルドから支給された胸当て(もうボロボロ)。服装もそこらの平民と何ら変わらない。

 ---心許なさすぎる。あれで七階層に行けば、死ぬ確率は限りなく100に近い。寧ろあんな装備でよく七階層に行こうと思ったなと、ベートはベルの軽率な行為に呆れて溜め息を吐いた。

 ベートの溜め息に釣られてベルも視線を追う。視線の先が自身の装備だということに気づいたベルは、「あっ」と声を漏らした。

 

 「……………………」

 

 「……………………」

 

 「…………見ないであげてくれベート君!!ベル君のライフが尽きてしまう!!」

 

 「神様やめてください!?」

 

 ヘスティアの必死のフォローも、ベルにとっては生傷をさらに抉られるしかない。ヘスティアが真面目にベートに言うのもプラスして効いているのであろう、ベルは涙目を通り越してもう泣いている。

 

 「…………あの支給品もボロボロなのに、あんな装備でさらに下に潜ろうとしたのか?雑魚は考えることが甘ちゃんだな」

 

 「うぅ……!」

 

 ベートの辛辣な発言にグゥの声も出ない。ベルは何も言い返せずに、ベートの言葉を真意に受け止める。

 いくら伸び代がいいからといって、丸裸同然のあの装備でさらに下に潜るのは命を捨てるも同然。ベートのこの罵倒も当然の言葉である。

 しかし、しかし、とベルは身を縮こませながら、ボソボソとベートに反論した。

 

 「ぼ、僕も分かってはいるんですけど……その、お金がなくて。だから、あの、装備を新調する事が出来ない、と、いうか……」

 

 「いくらある?」

 

 詰まりながらも最後まで伝えたベルに、すかさずベートは返す。

 ベルは視線をめいいっぱい横に逸らし、絞り出すように「……一万、ヴァリスです」と答えた。

 

 「あ?一万もあれば十分じゃねぇか。下手すりゃ一式が買える」

 

 「……え?」

 

 「は?」

 

 驚きを隠せないベルに、思わずベートは聞き返す。何か変なことを言ったか、自分は至極真っ当な答えを出したはずだが、とベートは己の発言を見返し、首を傾げた。

 

 「え、と……一万で一式が買えるなんて、ないんじゃないんでしょうか……?あの、ヘファイストス・ファミリアでも、一式だけで数十万も……」

 

 「そんな所に行かなくても、手頃な値段で手に入れられる新人鍛冶師が打ったテナントに行けばいいじゃねぇか」

 

 「え?なんですかそれ」

 

 「は?」

 

 「え??」

 

 ……ああ、なるほど。思わずまた聞き返してしまったが、そういえば彼はこのオラリオに来てまだ一ヶ月の新人だ。ベートの言う事が分からないのも無理はない。とベートは腑に落ちる。

 

 「……バベルにはヘファイストス・ファミリアの他に、新人鍛冶師が打ったテナントも存在する。そこに行けば、たとえお前の寂しい懐でも買えるものが多いだろ」

 

 中々噛み合わない応酬の真相に達したベートは、渋々ながらも、まだ無知に等しいベルに多少ながら知識を与える事にする。

 へぇ、と感心する声を漏らしたベルの体は、身を乗り出している。彼の話に興味津々なのであろう。

 

 「じゃあ、そこに行けば僕の手持ちでも買える装備があるって事ですか?」

 

 「まぁ、大抵は行けるだろ」

 

 素直に肯定すると、ベルは分かりやすく目を輝かせた。自分でも買える、自分だけの装備に夢膨らませたのだろうか。目はキラキラと「早く買いに行ってみたい」と物語っている。

 

 「何!?バベルに行くのかベル君!ならボクも同行して---!」

 

 「テメェ明日仕事だって言ってたじゃねぇか」

 

 「いやあああああああああ思い出させないでくれベート君!!!」

 

 ここぞとばかりに乗ろうとしたヘスティアを、ベートは現実的に論じて押し込める。頭を抱えて絶叫するヘスティアを無視して、ベートは話を続けた。

 

 「まぁ、そこで装備を整えて行った方がいいだろ。詳しい事はアドバイザーにでも聞くなり連れてもらったりしろ」

 

 「……分かりました。明日、エイナさんに聞いてみようと思います!ありがとうございます、ベートさん!」

 

 「……今回だけだ」

 

 素直じゃないなぁ、という生暖かいヘスティアの視線に、ベートは睨みを効かせて返す。別に心配とかそういう気で助言したのではない断じて。死因が装備の新調不可能とかそういう格好の悪いもので言われるのが嫌なだけだ断じてそうだ。

 じゃが丸くんを食べ終えたベートは、ベルとの会話を早々切りつけて、明日の予定を組み立てる。明日は何階層まで行こうか。十八階層まで行ってしまおうか。ああ、そのついでだ、あの不気味な魔石でも持って鑑定所に行ってみるか。どうせ分からないだろうが、適当な額を言って買い取ってくれるかもしれないし。

 取り敢えず明日は十八階層まで行こうと目的を決めた、その時だった。

 

 「……ちょっと待ってくれベル君。君、明日アドバイザー君に防具の事について相談しに行くんだよね?」

 

 ヘスティアが突然話を掘り返してきた。それにベルは「はい」とにべもなく答える。

 

 「……もしかして、そのまま一緒に防具を買いに行く流れだったり?」

 

 「え?それはどうでしょう……かね?」

 

 「俺が知るか」

 

 ベルに話を振られて、ベートは興味無さそうに答えた。そんな事は知らないし興味もない。余っ程の世話焼きのアドバイザーならしそうだが。

 しかしヘスティアはこの返答に不満げらしい。彼女はムンムンと唸りながら念仏のように言う。

 

 「確かベル君のアドバイザーは女性だったはず、もしそのアドバイザー君とベル君が話に盛り上がって後日一緒に防具を見に行く約束をしたならばそれはデートと言っても過言ではないのかいやデートだ絶対にそうだ絶対阻止してやる」

 

 何かを決意したらしいヘスティアが、ふんす!とベートを見た。そしてベートにビシッと指をさし、「ということで!」と声を高らかと上げる。

 

 「ベート君、ベル君が防具を買いに行く時は君も付いて行ってくれ!」

 

 「断る」

 

 即答だった。当たり前である。何故駄神の私情なんかに付き合わなければならない。

 

 「頼む!この通りだベート君!ベル君が他の女とデートしている所なんて見たくないんだ!あわよくばそのアドバイザー君がベル君に惚れるなんて事もあるんだぞッ!?それは絶対に阻止しなければならないんだ!分かるかい!?」

 

 「分かるわけねぇだろうが」

 

 しかしヘスティアは退かず、ベートの腕に縋り付いて泣き出した。その言葉の羅列は思いっきり私情満載で、思わずベートは顔を歪めて塵でも見るかのような目でヘスティアを見下す。

 

 「そこを!!そこを何とか!頼むよベート君一生のお願い!!僕はベル君を何処ぞの女の子に取られたくないんだ!頼むよおおおおおお!!」

 

 「うるせぇ!くっつくな!鼻水つく!離れろ!!」

 

 それでもめげない、女神ヘスティア。自分の醜態など気にもせずに、ただ自分の思い優先でベートに縋る。神じゃなかったら一発で殴り飛ばしていたところだ。

 

 「……あの」

 

 ヘスティアの頭を力いっぱいに押し返し、何とか拘束を解こうとしているベートに、ベルが控えめに口を出す。二人の視線を受けたベルは、申し訳なさそうに彼らに言った。

 

 「……ベートさん、明日、僕と一緒にバベルに行きませんか……?」

 

 

 

 

 

 ---翌日。

 

 

 

 「……どうしてこうなった」

 

 隣のベルが彼の呟きに苦笑を漏らし、「すいません」と軽く謝った。

 今、ベートとベルがいる場所はバベル前の噴水広場である。相変わらず冒険者達で溢れ返っており、皆次々にダンジョンの入口へ足を運んでいた。

 あの夜、ベルの誘いにベートは渋々と了承したのがきっかけだった。あのまま行けばヘスティアが面倒臭い事になるのは確実だし、しょうがない決断であった。そうだと思いたい。

 ので、今ベートはベルの共にバベルの中へ入ろうとしている。非常に不本意だが。非常に不本意だが。

 

 「えっと……バベルの何処に行けばいいんでしょう……」

 

 「付いてこい」

 

 辺りを見渡したベルに、ベートは一言だけ告げて足早にバベルの中へ入る。それをベルは追いかけ、彼もバベルの中へ。

 バベルの中はやはり人で賑わっていた。ダンジョンへ向かう武装した冒険者に、上へと昇る一般人など、様々な人達が行き交っている。ベートとベルは、後者の方に付いて行った。

 エレベーターで上の階まで昇る。やがて着いた先では、ベルでは絶対にお目にかかれない代物達がズラリと陳列していた。

 

 「おお……!」

 

 思わず感嘆の声を上げる。

 この武器や防具達は、全てがヘファイストス・ファミリアで造られた物だ。聞けばこのフロア全体は、ヘファイストス・ファミリアのテナントだという。さすが大規模なファミリアは違う、とベルは感動に目を輝かせ、さり気なく展示されている武器の値段を見た。

 

 「アッ」

 

 そしてその武器を見て、卒倒しそうになった。

 黄金色に輝く長剣。その傍に立てかけられている値段表には、ベルの貯金に0を五つも足した値段が書かれていた。その値段で、この武器がどれだけ貴重な素材で、素晴らしい鍛冶師に打ってもらったのかがわかる。

 ……ここまでの物を買えるまで何年かかるんだろう、と遠い目をしたベルは、とぼとぼと少し先を歩いているベートの後を追った。

 

 

 またエレベータに乗って上へ。そして着いた先は、先程の光景と一変していた。

 

 「……?ここ、は……」

 

 先程の煌びやかな装飾とは異なり、ベル達が着いた階は薄暗く、まるで洞窟の中にいるかのような部屋であった。辺りを見渡すと、数多の鍛冶師が大声を張り上げて、自分が打ったであろう武器を売り出している。

 明らかに空気が変わった空間。狼狽えていると、ベートがやっとの事でベルに声をかけた。

 

 「ここはヘファイストス・ファミリアに所属する末端の鍛冶師達が打った武器のテナントだ。末端の鍛冶師達は、ここで武器を売り出して名を上げている」

 

 「ここが……?」

 

 「そこにある武器の値段を見てみろ」

 

 言われた通りに出入口付近に展示されていた槍の武器を見ると、そこにはベルの貯金でも余裕で買える値段で提供されていた。

 

 「あれ、安い……」

 

 「未熟な鍛冶師達が売った武器だ。ブランド名が使われている上級鍛冶師(ハイ・スミス)共と同じ値段なんて使えねぇ。……ここなら、新人の冒険者でも買える武器があるだろ」

 

 確かに、ベートの言う通り。これならベルの持ち金でもある程度の防具や武器は整えられる。こんな場所を知らなかったベルは、さらなる自分の強化を想像して胸踊らせた。

 新しい玩具を見つけた無邪気な子供のように顔を輝かせたベルに、ベートは興味無さげに言う。

 

 「武器でも何でもいいからさっさと買ってこい。こんだけあるんだ、テメェでも気に入るものはあるだろうよ」

 

 「---はい!ありがとうございます、ベートさん!」

 

 そうベートが言うや否や、ベルはさっと駆け出してより防具や武器が集まる棚へ消えていく。その背中を見届けたベートは、欠伸を隠さずにして、億劫そうに肩を竦めたのであった。

 

 (……それにしても、ここに来るのも久々だな)

 

 ふと、ベートはこの光景を見るのが久方振りだと感じる。

 昔のベートは良く装備を酷使させて破壊し、よくこの場所に赴いて買っていたものだ。しかし最近はそんな事があまりなく、この場所に赴く機会もすっかり減ってしまっていた。

 これもLvが上がるにつれ慣れてきたのか、それともただ単に昔よりかはマシになったのか。---この場合は後者か。

 兎にも角にも、ベートは最近ダンジョンに深く潜り込んでいない。大体が自分より格下の敵で直ぐに殲滅してしまうので、装備もそこまで消耗しないのであろう。

 

 (……十八階層より下に潜るか)

 

 この後の予定を密かに変更した所に、トタトタとこちらに向かって走ってくる音がした。顔を上げると、ベルが小走りでこちらに駆け寄ってくるのが見える。

 

 「あ、ベートさん。ちょっといいですか?」

 

 「……?」

 

 少し嬉しそうな、それでいて戸惑いが隠せないベルにベートは訝しむ表情を浮かべるが、ここで拒否する理由もないので、仕方なくベルの後を着いていくことにした。

 やがてベルに連れてこられた場所は、一つの防具一式が置かれている箱だった。見た感じ『ライトアーマー』らしいが……これがどうした、という目をベルに向けると、彼は目を逸らしながら「この装備、どうですか?」と聞いてきた。

 

 「あ?……持ち上げてみる限り、軽いから良いんじゃねぇのか?しかし、ここまで軽いのは初めてだな、まだこんな装備を作れる奴もいたもん---」

 

 ライトアーマーを持ち上げて賞賛し、何気なくこのライトアーマーの製作者の名前を見ようとそちらに目を向けたベートの言葉が、不自然に止まった。その瞬間、さらにベルの表情が困惑と申し訳なさに染まったのをベートは知らない。

 そんな事より、ベートはその名札に視線を奪われていた。

 製作者の名前は「ヴェルフ・クロッゾ」。別にこれはいい。その名前の噂は聞いた事あるが、それはベートにとってはどうでもいい。

 問題は---この防具の名前である。

 製作者の名前の上には、基本防具の名前が記載されている。されていないものもあるが、されているものが殆どだ。防具や武器の名前は大体はお洒落な名前が殆どであるから、その名前を目にしたベートにとっては衝撃に言葉を失っていた。

 

 「…………兎鎧(ピョンキチ)

 

 ベートは呆然と、その防具の名前を口にする。

 兎鎧(ピョンキチ)兎鎧(ピョンキチ)だ。この防具にこんなファンシーな名前だ。一気に蛇足感が増している。

 正直に口悪く言えば---ダサい。ダサすぎる。もっとマシな名前を付けてあげればいいのに、とベートは思った。

 

 「………………」

 

 「………………」

 

 ベートは兎鎧(ピョンキチ)を手にしながらベルの方を見る。ベルは超高速で顔を逸らした。

 

 「……………………」

 

 「……………………」

 

 「……………………」

 

 「…………………………」

 

 「……………………………………」

 

 「……………………………………………………………………………………………………な、名前がそれですけど買ってもいいですかベートさん!?!?いえ買わせてください!!」

 

 沈黙に耐えきれなくなったのか、ベルがベートに言いよってそう懇願した。

 一目惚れなんです!!お願いします!!と土下座でもしそうな勢いだ。そんなに欲しいのか。正直ベートがドン引きしてしまうほどにベルの勢いが強い。

 

 「…………………………買えばいいんじゃねぇか……?」

 

 「ありがとうございますッッ!!」

 

 勢いに押される形でそう言えば、ベルは本当に土下座でもしそうな勢いで感謝を述べた。

 買ってもいい、とベートは思う。名前以外を除けば普通に良作であるし、自分に合ったと思えば即座に買えばいいのに、何を危惧したのか。ベルの一連の行動に疑問が耐えないベートであったが、やがて考えるのが面倒臭くなったのかまた欠伸をし、ベルが意気揚々と防具「兎鎧(ピョンキチ)」を買う姿を見つめるのであった。

 

 

 

 




最近ダンメモが火を噴いてると思うの。
アルゴノゥト編って何???って思いながらプレイしたらね、普通に前編後編胸熱展開で泣いた。普通に書籍化かアニメ化か映画化していいと思う、しないの?(真顔)していいと思う(確信)
アルゴノゥトかっこよかったっす……。


十二巻もやばい展開でしたね……十一巻があれだったからそれからどうなるのかという鬱な気持ちで読んだんですが、いやはや大森大先生は凄いとしか言えないくらいの十二巻でした……。ベートきゅんファンの人は読んでくれ……頼む、あいつ最高にかっけぇんだ……。推しが活躍するところ読むの本当にうれち……。

てか本当にベル君やばいわ(十二巻読んだ感想)

本当に皆、十二巻読んで。まじやばいから、現場からは以上です。
それでは締めに移させていただきます。また今回も期間が空いてしまい申し訳ございません。それでも待っていてくれた方ありがとう!ダンメモやダンまち二期、さらに本編外伝の勢いに負けずに頑張ろうと思います!それでは最後に!

ベート・ローガぁー!愛してるぅーーー!!!


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