べート・ローガがヘスティアファミリアに入るのは間違っているだろうか【リメイク版】   作:爺さんの心得

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 えへへっ(さらっと復帰)

【追記】
原作を読み直してみたところ、結構改変させてしまって「ちょっとやばいな」と内心でビクビクとしています。原作重視の人ごめんね。食人花そんなにいなかったね。ごめんねごめんね。


『蛇』

 

 その美しき髪を靡かせる少女を、彼は知っている。

 才色兼備、容姿端麗、その戦い、舞う姿は、まるで『戦姫』の如く美しく、目を奪われるほど。

 実際、彼も目を奪われたことが一度だけあった。遠い過去の事であるが、彼はその光景を一度たりとも忘れたことは無い。

 美しく靡く、絹糸のような金色の長髪。細くスレンダーな華奢な体。だがその眼光はギラギラと、目の前の敵を討ち取らんとばかりにギラついている。

 正に、獲物を狩る虎のよう。

 彼はその光景を目にしながら、息を吐くように少女の二つ名を零した。

 

 ーーー「剣姫」、と。

 

 

 

 「ーーーアイズッ!」

 

 『剣姫』アイズ・ヴァレンシュタインは、仲間のティオネの声を受けながら、突進した。

 ひゅっ、と風を切るように、疾風の如く親玉の食人花に接近したアイズは、重心を低くしてーーー一気に飛び上がる。

 

 (飛びすぎた。でも)

 

 勢いをつけすぎたせいで予想より遥かに上へと飛び上がったが、関係ない。

 ーーーそれよりもっと、攻撃力を高めればいいだけの事。

 食人花が繰り出す数多の触手を、アイズは体をうねらせ、時に鉄棒のように掴み回りながら避ける。そうして食人花の眼前まで迫ったアイズは、手に持っていた剣を構え、振るう。

 

 「ッはぁ!」

 

 勢いよく振られ、食人花の体に傷が作られる。ぶしゅ、と鮮血が溢れ、地を汚す。

 

 『ーーーーー!!?!?』

 

 「っう、あ!」

 

 食人花は絶叫が何かわからない叫びを迸り、痛みを耐えるように悶える。まるで親に縋る子供のように、猛然と暴れ続ける。そのおかげでティオナを拘束していた触手の力が緩み、ティオナは自力で触手から逃げることに成功した。

 触手がブンッ!と暴れ回っているせいで中々近づけれないーーーだが逆に言えば、それは大きな「隙」とも言える。

 

 「ふッ」

 

 軽やかに着地した直後、アイズは食人花の横薙を伏せて交わす。そしてそのまま振り返り、食人花に向けて疾走した。

 風の如きその速さ。本当に彼女が地に足をつけて走っているのかという程に、彼女の体は軽く見て取れた。彼女に翼があるのではと、この時ばかりは誰もが思った事であった。

 目にも止まらぬ速さで食人花の懐に飛び込んだアイズはーーーーその剣を振り上げる。

 

 「はぁっ!!」

 

 アイズの剣は深々と食人花に刺さり、その胴体と思わしき体をぶった斬る。

 真っ二つとなった食人花はグラリ、と大量の鮮血を地面に垂らしながら、倒れ込んだ。

 

 「……終わった、の?」

 

 ドサッ、と尻餅をついたティオネは、そう呆然と呟く。

 あれだけの喧騒が一気に静寂になったことに、まだ頭が追いついていないらしい。惨たらしく転がる食人花の数々から異臭が立ち込めるが、それすらも凌駕するほどの呆気なさが、ティオネの心を占めていた。

 

 「さっすがアイズぅ!やっぱつよーい!」

 

 対して、ティオナはそんな細かいことは気にせずにアイズに飛びつく。少々呆気に取られたアイズだが、やがて微笑を漏らした。

 

 「……やっぱり、アイズは凄いわ……」

 

 渇いた笑いを零したティオネは、今までの苦労を全て吹き飛ばすかのような笑顔をアイズに向けた。

 

 

 

 一方、美少女達の温和な戯れを前に、ベートはジッと既に息絶えている食人花を見据える。

 アイズによって真っ二つにされた、哀れな食人花。他の雑魚食人花も同様、無残な姿で地に伏せている。息絶えていることは明白だ。

 

 (ーーーー本当に、終わりか?)

 

 そんな食人花を睨みながら、ベートは疑念を持つ。

 確かに量が量なだけに面倒であったがーーーどうしてか、嫌な予感が拭えない。このモヤモヤとした気持ちは、一体。

 

 (……まだ騒動は続いてるみてぇだし、出来ればあの駄神の所へ行きてぇが……)

 

 己の主神であるロリ巨乳娘を思い浮かべたベートに焦りが募るも、違和感は拭えない。ベートの視線は、真っ直ぐに地面の方へと向かっている。

 

 「……チッ」

 

 今も尚遠くで響き渡る騒音。まだ悲鳴も上がっているところもあるらしい。やはり気の所為と思って他のところに行こうか、とベートが踵を返そうとした。

 

 

 

 ーーーその時、ゾクリッ!とベートに悪寒が走る。

 

 

 

 その悪寒に突き動かされるように、ベートは反射的に飛び上がった。その際に、今も尚仲睦まじくお互いを労わっている少女達が視界に入り、思わずベートは叫んだ。

 

 「逃げろッ!!」

 

 刹那、彼女の足元に亀裂が走る。

 最初に気付いたのは、やはりアイズであった。足元に亀裂が走った瞬間、アイズは今も抱き着くティオナをそのまま抱えて、跳躍する。

 

 「え、何?う、ああ!?」

 

 一方、反応が遅れたティオネは地中から出てきた「蔓」のようなものに捕まれていた。

 その「蔓」はティオネの腰に巻き付き、彼女を宙吊りにする。そして、べきべきと地面を破壊しながらーーーーそれは現れた。

 

 それを一言で言うのならば、「蛇」だ。長大な体を晒したその蛇の頭は、薔薇のような真紅色に染まっている。身の丈以上ある体躯は、ベート達を悠然と見下ろし、余裕を見せていた。目も、花も、何処にあるのかも分からない『モンスター』。ーーー何故だか、先程戦闘した食人花を連想させた。

 盛大な音を立てて現れた「蛇」は、ギャッ!とティオネを掴んでいた蔓を振り下ろす。

 

 「ッ!」

 

 蔓から放され、強烈な振りで地面に叩きつけられる前に、ティオネは瞬時に受身を取った。だがそれでもダメージは残るらしく、歯を食いしばる。

 

 「ティオネ!」

 

 「待ってティオナ!ーーーまだ、来る!」

 

 姉の危機にアイズの懐から抜け出そうとしたティオナであったが、アイズの張り詰めた声に動きを止める。

 それを狙っていたかのようにーーー「蛇」が再度、攻撃を仕掛ける。

 空中で滞空するアイズ達目掛けて、「蔓」を薙った。目にも止まらぬ速さで振るわれたその蔓を、空中にいるアイズ達は易々と受け止められるわけがなかった。

 

 「ッ!」

 

 地面に叩きつけられるのを想像して受け身の体制を取ろうとした、その時。

 ガキッ!という音と共に、蔓の攻撃が止まる。ハッとして視線を戻せばーーー蔓を受け止める、一人の狼人の姿が。

 

 「ンッガァ!」

 

 灰色の髪を靡かせた彼、ベートは、歯軋りしながらもその蔓を地面に叩きつける。

 

 「チッ、かってぇ……!」

 

 先程の食人花とは比べ物にならない硬さにベートの顔が歪むがーーーそんな暇を、「蛇」は与えてくれなかった。

 轟音を立たせながら蔓に代わるように、止むことなく第2、第3の蔓が彼らを襲っていく。ビュッ!という風を切る音と共に、まだ避ける体制も整えていない彼らを考える隙も与えずに攻撃する。

 

 「ッ!ティオナ、反撃する!」

 

 「分かってる!ティオネ!」

 

 「あんのっっっっクソ蛇がああああああああああああああああああああああああああああああああッッッ!!!!」

 

 「死ねぇっっ!!」

 

 だが、彼らは違う。

 避けれなければーーー迎え撃てばいい。それで、全てが解決する時だってある。

 避ける事を放棄した彼らは、それぞれの武器を培って蔓に真っ向から勝負に出た。アイズは剣を、ティオネとティオナは拳を、ベートは脚で「蛇」に反撃する。

 アイズの斬撃で蔓に傷をつけ、ティオナとティオネの拳で蔓にへこみを作り、空いた隙にベートが入り、その隙を使って「蛇」の脳天らしきところに踵を決めた。

 お互い、今回が"実質"初対面な筈。しかし初対面でありながらここまで息が合うとなると、さすが第一級冒険者と無意識に零してしまうであろう。

 圧巻の協力プレイを見せた彼らーーーしかし、「蛇」はそれで止まる筈がなかった。

 

 『ーーーーーーー!!』

 

 咆哮とは似ても似つかないモノを上げた「蛇」の姿が、変わっていく。

 頭部と思わしきものは花開き、醜い花弁となる。その中心に咲かせる顔と思わしき部分は、体液のようなものをボタボタと垂らす。

 その姿を、彼らはつい先程まで見た事があった。

 その姿は、先程まで戦っていたーーー「食人花」。彼らが『蛇』だと思っていたもよは、先程まで交えていた「食人花」だったのだ。

 

 「嘘……!?あれも、あの気味の悪いモンスターだったの!?」

 

 目の前の現状に驚きを隠せないティオネを尻目に、アイズは真っ先に駆け出す。

 そのモンスターが、一体どんな姿になろうとも、彼女には関係ない。ただただ彼女は、人々の平穏の為にその剣を振るうのだ。

 疾く、疾く、風のように。逸早く懐に潜り込んだアイズの行く手を、食人花の蔓が遮った。

 

 (これなら……ッ!)

 

 自身の技量で突っ切ることが出来る。そう確信したアイズは、いつものように剣を振るった。

 ーーーその時、予想外の事態が起こる。

 

 それには、ベートも見張った。ティオナが叫んだ。ティオネが瞳孔を開いた。現場を目撃していた一般人と冒険者が、放心した。

 

 誰もが言葉を失う光景。ならそれは一体何だと言うのか。

 

 「ーーーーぁ、」

 

 簡単な答えだった。

 甲高い音を上げて、ひび割れていく"剣"。アイズの手の中でボロボロと零れる剣だったものは、無残にも地面に音を立てて、沈んでいく。

 剣姫の持つ剣が壊れたーーーあの、剣が。"何も事情を知らない"者からしてみればそう思うであろう。

 だが、事情を知っているものは違う。

 彼女は遠征中に、何らかの形で自身の愛剣ーーーデスペレートを痛めてしまい、現在鍛冶師に修繕の依頼をした所であった。さすがに丸腰ではと、デスペレートとは明らかに劣化版のレプリカを鍛冶師が見兼ねてアイズに貸したーーーそれが、今現在アイズが持ち合わせている剣であり、今盛大に散っていった剣である。

 ここで今一度確認しておくが、アイズの剣術と魔法は強大だ。なので、それに耐えられる剣が必要となる。それで作られたのが、デスペレートだ。

 だがレプリカの方はどうなのであろうか。アイズ専用に作られたものでもないし、耐久性はデスペレートより劣る。ーーーそんな武器を、アイズがいつも通りに使えば、どうなるか。

 もう察しがついていると思うが、概ねこういうことだ。

 単純な話ーーーーレプリカが、アイズの力に耐え切れず、破壊された。これだけしかあるまい。

 

 「ーーーーー!」

 

 剣が壊れた事により、動揺でアイズの動きが止まる。

 それを逃す食人花ではない。アイズが止まったのを良いことに、食人花は蔓を猛々しく振るった。

 避けられない、直観がそう呼び、思わずアイズは目を瞑り、せめてダメージを減らそうと試みる。

 

 「…………?」

 

 しかし、ダメージがやって来ない。

 恐る恐る目を開けると、視界に灰色の背中が広まった。ハッとして見上げれば、別ファミリアの狼人が、アイズを守るようにして蔓に応戦していた。

 

 「ボサッとしてんじゃねぇぞ!剣姫!!」

 

 アイズの前に立つのはーーーーベートだ。ベートはアイズに激昴しながら、向かってくる蔓を蹴り倒していく。その脚さばきは目を見張るもので、思わずアイズも見とれてしまっていた。

 しかしベートの激昴で我に返り、立ち上がる。攻撃は受けていない。五体満足、傷一つなく彼女はそこに存在している。それだけで十分だ。

 武器を持たぬ彼女に、戦う意味があるのかと問えば、確かに武器を持たない自分はこの場で誰よりも足でまといだと彼女は応えるであろうーーーしかし、それでこの戦いを止める理由にはならない。

 武器がなくなったのなら、新たに調達すればいいだけの事。

 

 (瓦礫もあるからそれも使えばいいし、私は敏捷が高いーーー撹乱することも出来る)

 

 自分の役割は沢山ある。

 自分に適した行動をすれば、この場に貢献出来る。

 だから、諦めるわけにはいかない。

 

 「ーーー行くよ!」

 

 特攻した凶狼の姿を合図に、彼女は自身を奮い立たせた。

 

 

 

*****

 

 

 

 

 

 

 ーーー私は、何をしている。

 

 血溜まりに沈む中、レフィーヤは朧気な意識で自分に問いかける。もう腹からの痛みは感じない。ただ、口から抑えきれない程の血液をゴポゴポと零しながら、今も尚レフィーヤを呼び続ける若いハーフエルフに身を任せている。

 声が掠れ掠れになっているハーフエルフの声を聞きながら、レフィーヤは再度、自分に問いかけた。

 

 ーーー私は、何をしている。

 

 霞む視界に映る、憧れの人の姿。自分をいつも気にかけてくれる、優しくて逞しい姉貴分達。

 そしてーーー共に戦っている、狼人の姿。

 

 (ーーー違う)

 

 どうしてお前が、憧れ(アイズ)と共に戦っている。

 どうしてお前が、姉貴分達(ティオナとティオネ)と背中を合わせている。

 どうして、どうして。

 

 (ーーー私は、あの場にいない……ッ!!)

 

 食人花の奇襲を受け、早々に戦線離脱してしまったレフィーヤ。今も尚、傷はレフィーヤを蝕んでいる。

 正直、血を流し過ぎたせいで意識は消え入りそうだし、体も痺れてまともに動く事も出来ない。杖を握るのも、一苦労である。

 だけど、だけど、だけど!

 

 (なん、で……何で私は、ここにいる!)

 

 ここにいる理由は何だ。

 彼女らと共に、あの食人花を討ち取るために、自分はいるのではないか。

 彼女と共に並び、彼女と背中を合わせ、高め合わせ、力を合わせてアレを討ち取るのだろう!

 

 (それは貴方の使命じゃない)

 

 彼女らと共に戦う狼人に、レフィーヤは断言する。

 

 (それは、その場所の役目はーー!!)

 

 自分勝手だと自覚している。

 何とも傲慢で惨めな理由だと、自分でも鼻で笑うレベルだ。

 それでも、その場所は譲れない。

 

 ハーフエルフの制止を振り切って、彼女は地面に手をついた。そして、今残る最大限の力を振り絞って、彼女はーーーレフィーヤは立ち上がる。

 傷口から血が溢れ出す。痛覚も戻ってきた。まだ体が痺れるし、意識も朦朧としている。

 それでも彼女は、立ち上がる。

 自分の使命を果たす為。自分の存在意義を示すため。

 もう彼女達に頼るわけにもいかないーーーあの男に、自分の居場所を取られるわけにはいかない。

 

 「ーーー私の名は、レフィーヤ・ウィリディス!!」

 

 エルフの少女は、自らの真名を叫び、決意を顕にした。

 もう、彼女達に迷惑をかけたくない。

 もう、あの男に役目を取られたくない。

 もうーーー自分を、偽りたくない。

 その一心で、彼女は杖を手にし、魔力を高め始める。

 

 

 ーーー千の妖精(サウザンド・エルフ)の猛攻は、ここからだ。

 

 




 ーーー最終投稿日以降の話を大まかに説明しよう。

 最終投稿日から一ヶ月後、修学旅行でエンジョイした。その後、学年末テストが始まりそれで高2の人生が終わった。
 だが休む暇もなく、高3の時代にはあれが待っているーーーそう、進路である。
 元々進路は就職と決めていた私。そんな私に迫ってきたのは、『就活』であった。
 夏休みに入る前に企業を決め、必要な書類を整理、提出。夏休みは日々日々勉強と面接練習に明け暮れ、夏休みが開けた途端に就職試験。
 ああ、一時期はストレスやら緊張やらで体調を崩したさ。倒れかけたし無様にトイレでゲロっちまったさ。
 だが俺は今日ーーーーやっと、安寧が来る。

 就職試験が終わって安心した途端に体調を崩して寝込んだが、そんなのは関係ねぇ。
 昨日が誕生日で盛大に祝ってもらったりお祝いの言葉に舞い上がったりもしたさ。最高に楽しかった。
 そして、そして今日ーーー!


 内定を貰いましたああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!




 そんな色々な事があって、やっと一段落つきました。就活で小説の方に手が回らなくて、少々腕が落ちているところもあるかと思われます。9ヶ月前?より文章力が拙いところもあるかと思われます。
 しかし私はベートきゅんパワーで帰ってきました。ベートきゅんのパンデミックシナリオを見て元気ハツラツとなりました。

 読者様。今まで待っていてくれてありがとう。待たせてごめんなさい。
 ーーーまた今日から、ベートきゅんライフで、頑張らせていただきます!


 ベート・ローガァ!愛してるぅぅぅぅぅぅううう!!!


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